118話 知恵の実
明けましておめでとうございます。
本年も異世界いったらヒーローごっこ
よろしくお願いいたします。
------異世界某所地下室---
金属の壁に囲まれ、壁側に様々な機械装置が並ぶ一室。
広さは、おおよそ学校の教室2つ分はあろうか……部屋にある機械装置や操作パネ
ルを忙しく操作するアントマン達。(オブリヴィオン雑兵)その部屋中央部には、
縦3m横5mの大型モニターがあり、そこに身長は163cmぐらいの小太りで、
顔の下半分が白い髭に覆われ、額には深い横じわが3本、頭頂部がハゲた1人の老
人と、その横に立つローマ帝国の軍人のような鎧兜に身を包み。髪はブルーでオー
ルバック。短い前髪を一房垂らして、 額には縦ジワが走っていている。目元はマ
ツ毛が長く眼光鋭男が先ほどまで何かを映していたであろうその大型モニターを見
つめていた。
大型モニターが映像を映さなくなり、画面が”ザー”となった所でローマ帝国の
軍人風の男が横に立つ老人に言った。
「ふーっ、ソンブル翁……作戦は失敗に終わりましたな」
とため息を付きなが言う男の言葉に、
「インヴィクタ……それは違うぞ」
と言った。
「えっ、翁それはどういう意味ですか?」
と老人の言葉に驚く男を見て老人は”ニヤリ”と笑い言った。
「大将軍と呼ばれる帥にしては少々物の見方が浅はかではないか?」
「それは、どういう意味ですか翁!」
老人の言葉に少しイラつきながら男が言い返すと、
「だいたい、奴らはあの電空のダンジョンをいとも簡単に脱出し、その後サディコ
率いる我軍勢を倒した奴らなのだぞ、帥はあの程度の仕掛けで倒せるとで
も思っておったのか?」
と老人に言われ男は口ごもる。
「いや、その……」
「失敗ではない、むしろ成功したとワシは思うぞ」
「奴らの個々の能力やら、あの勇者の弱点らしきものも少しは見えたしのぅ」
「はっ……」
「それに……」
「それに?……」
と老人に聞き返す男に、老人は手にしたものを見つめながら、こう言った。
「それに……この実は使えるぞ、インヴィクタ」
その老人の言葉に、インヴィクタと呼ばれる男は、老人が手に持っている果実を同
じように見つめるのであった。
◇◇◇◇◇
俺はソフィーのキスで目覚めた。
俺はゆっくり起き上がり、あたりを見回すと、皆が居た。
「あ……あ、皆、助けに来てくれたのか」
の俺の言葉に、ミオンが言った。
「うん、でも私達は罠にかかっちゃって……結局、セイアや私達を助けてくれたの
は、ソフィーと電ちゃんなんだけどね」
「えっ!そうなの?」
と驚きながら俺は、ソフィーと電龍の顔を見ると、ソフィーは少し照れていたが、
電龍は胸(こいつの胸がよくわからんが)を張り自慢げに立っていた。
「ありがとう~ソフィー……電龍♪」
そう俺が2人にお礼を言うと、
「いえ、わたくしなんて……」
と顔を赤らめるソフィーに対し、さも当然のような態度の電龍。
「僕にかかれば、ちょちょいのチョイさ」
「でも、装置を動かしたのはソフィーでしょ」
とミオンに言われ電龍は少しムッとした感じでミオンに言う。
「でも、その装置を操作するソフィーっちの背中を押したのは、僕だよミオンっち」
と言い返す。
「あっ、それは、屁理屈ってもんよ電ちゃん」
「へが理屈言わないよミオンっち!」
と電龍とミオンが言いやいになりかけた時、少し離れた場所に居たゲキが、ボソリ
と言った。
「誰か……火を起こしてくれないか?」
そう言いながら、松の枝に突き刺した何かの肉を手に持っていた。
◇◇◇◇◇
魔力を使い切って、気を失っているクレアさんに、魔力の実を食べさせ、ゲキの
持っている何かの肉をシノブが携帯用バーナーで焼いてゲキがその肉を食べるのを
待って、俺達は、この魔物の砦内を皆で、手分けして調査した。
俺達が居た地下室の天井には、以前俺達が電空のダンジョンに飛ばされた時に見
たUFO型の装置と同じ装置が設置してあったので、俺がGUY BRAVEに変身
して、プログレッシブ ブレードで天井の一部と共に切り取り回収し、また、2階部分にあった俺に電磁パルス(EMP)を照射したと思われる装置もシノブが外し、いずれの装置もブレイブ基地に持ち帰り、時田さんや、シノブの所の科学班の人に見てもらうため、それも回収した。
そして、1階にあった、散らかった、恐らく魔物が食事をしていたであろう部屋を俺と、ゲキが調べている時、ゲキがある物を手に俺に見せて言った。
「セイア……これ」
俺はゲキが差し出す果物を見て、
「えっ、これってゲキ……」
「ああ、これはイチジクだなセイア」
俺の言葉に頷きながら言うゲキ。
「でも、なんで、こんなものが……」
そう言って、ゲキがイチジクを拾ったであろう付近を更に見て見ると、食べかけの
イチジクが見つかり俺と、ゲキは首を傾げていると……。
「それは……知恵の実だと思います。セイア様」
と俺の後ろからソフィーが言った。
「「えっ。知恵の実!」」
ソフィーの言葉に俺とゲキがソフィーの方に振り向き尋ねると、
「はい、召喚士などが、魔物を使役するのに使う木の実です。」
「召喚士って!」
と部屋の外に居たはずのミオンがソフィーの言葉を聞いて、部屋に入って来て言っ
た。
ミオンの言葉を受け、ソフィーが説明する。
「召喚士は、わたくしのように魔法アイテムを持っていて、アイテムから魔獣やド
ラゴンを召喚するものと、魔獣やドラゴンに”契約の首輪”をつけて使役する者が
います。」
俺、ゲキ、ミオンは、ソフィーのその言葉に”ふんふん”と頷くと、ソフィーがさ
らに言葉を続けた。
「”契約の首輪”を取り付けられた魔獣やドラゴンは、首輪をつけた者の命令には
逆らえないのですが……ただ、一つ問題があるのです。」
「問題って!?」
とソフィーの言葉にミオンが尋ねると、ソフィーはミオンに頷きこう続ける。
「はい、幾ら命令に逆らえないとは言え、その魔獣やドラゴンが使役者の命令が理
解出来るだけの知恵がないと、”契約の首輪”の効果が発動できないんです。」
と言うと、ソフィーの横に居た電龍がすかさず、
「ドラゴンの場合、命令が理解できないってことはないけどね」
と口を挿んだ、その電龍にソフィーは頷き、
「そうですね、ドラゴンは個体によっては人間以上の知恵を持つものがいるんでしたね」
と言うと電龍はソフィーに頷き、
「この僕なんか……」
と言いかけた時、ミオンが自慢げに言いかけた電龍に
「電ちゃんの話はいいから……ソフィー話の続きを」
と電龍の話を止めて、ソフィーに話の続きを促した。
「あっ、はい……えー魔獣達が命令を理解できるだけの知能を持たせるのが、この
”知恵の実”と言う訳です。」
「えっ……じゃこれを食べると賢くなるの?」
とソフィーにミオンが聞きなおすと、
「はい……と言っても人間の子供(8歳児)程度ですので、人間が食べても効果は
ないですよ」
と言うソフィーにミオンが残念そうに言う。
「あっそうなの……それは残念ねぇ」
「ってことは、奴ら……今回のグレタウロスやグレウルフ……?グレムリンって魔
物の中で頭がいいんだったな……ソフィー」
と言う俺の言葉を聞いてソフィーは頷き言う。
「はい、でもグレムリンが頭が良いと言われていますが、せいぜい人間の6歳児程
度ですが……」
「だが、その6歳児が8歳児の知恵を付けたってことになる」
とゲキがソフィーの言葉に言うと、
「おそらく、グレムリンの上半身をミノタウロスやダイアウルフにつけたのは命令を実行できるようにってことで改造したんだろうけど……それを強化するこの”知恵の実”を食べさせたところで、そんなに効果はないように思うし、その程度の知恵が付いたからと言って、この砦を作ったり、ましてやあの装置を動かしたりはできないだろうに……」
と俺が疑問を口にするとミオンが俺に言う。
「でも、セイアそれでいいんじゃないの、あの装置類はアントマンがあの部屋で操
っていたんだし、この砦だってそのアントマンなりオブリヴィオンの誰かが指示し
てやればこれくらい作れるんじゃない?」
「そう言うことか……」
ミオンの言葉に一応俺は納得したんだけど。
念のため、このイチジク……”知恵の実”は回収して、マジックボックスに仕舞
っておくことにした。
◇◇◇◇◇
一通り調査を終えた俺達は、皆で一旦砦を離れ、砦から1km位離れた所で、俺
以外のメンバーに待機してもらって、俺だけはフニックスを呼び出し、合体シーケ
ンスに入る。
両腕をフレイムアームに変えジャンプするそして両掌から勢いよく炎を出し、
そのまま上昇する。
「聖獣合体だ!こい!Phoenix」
≪Charge up Garuda≫
頭の中のカーソルを選択する。
するとフェニックスは俺の真上に来て、俺と平行に飛び、俺の背中付近に近づく
と両足と腹部の一部を体の中に収納しそして、俺の背中に合体すると同時にフェニ
ックスの首が胴体部分に収納され短くなる。
「完成!Garuda!」
そしてすぐさま、両腕を前に突き出し、掌から勢いよく炎を吹き出しながら急上昇
した。
俺が両掌から炎を出すと同時に、フェニクスも翼を含む全身から炎を吹き出し
……やがて俺の全身は炎に包まれた。
「ガルーダ・シャイン!」
俺がそう叫ぶと、俺の体を包む炎の温度が上がり、炎の色が赤から黄……そして青色に変わり……真っ白な光に包まれた。
真っ白な光に包まれた俺は、そこで急上昇を止め、そこから一気に砦目掛けて急降下する。
降下速度はグングン上がり音速を超え……おおよそ、M2.4(マッハ2.4)
に達する。
そして、降下を続け砦にぶつかる寸前で、
「ガルーダ・スパーク!」
そう叫んだ俺はそこから反転し、急上昇した。
音速を超える急降下で発生した衝撃波と共に、俺の全身を包むプラズマの炎を同時に砦にぶち込むと。
”ドッカーン”
物凄い轟音と地響きが鳴り響き、爆炎があたり一面に広がり、砦全体を覆った。
”ガルーダスパーク”で砦を木っ端みじんに吹き飛ばしたのを確認した俺達は、
そのまま、宿場に向かうことにした。
俺はそのまま空を飛び、他のメンバーは電龍の背中に乗り、宿場へと向かったん
だ。
(オブリヴィオンの連中が何を考えてんのかわかんないけど……)
まぁ、取り合えず、エドモンドさんの”太陽剣”は、シノブが回収してくれたみ
たいだし、魔物の砦は破壊したし、今回のミッションってかクエストは果てせたん
だから、良しとするか。




