113話 罠にはまったブレイブチーム
「くっ……このっ!!」
高周波ブレードで俺は奴の(大亀)甲羅の側面を切りつけたが、ブレードの刃が奴
の甲羅に通らない……。
「なにっ!」
俺は一瞬目を見張ったが、よく見ると奴の甲羅は微妙に振動していた。
(くっそ!俺のブレードと同じ高周波振動を起こし、俺のブレードの振動を中和し
ているのか……)
甲羅を切りつけた俺に対し奴は(大亀)、ゆっくりと向きを変え始めた。
(また、火岩を吐くつもりか……)
ならばと、俺は両腕をフレームアームに変え、手首を合わせて手を開いて、体の
前方に構える。
そして、腰付近に両手を持っていきながら両手を完全に後ろにもっていて、両手か
奴に(大亀)向けて放た。
「プラズマボール!」
丁度奴も(大亀)俺の方に方向転換を終え、俺に向けてその大きな口を開け、今まさに火岩を放とうとしているところだった。
俺の放ったプラズマボールが口の中に入った奴(大亀)は、少し目を見開き思わず口を閉じてしまうが……。
その後、鼻から煙を勢いよく出す。
”シュー”
そして、何事もなかったような顔をして再び口を開け、火岩を俺に向け放とうとする。
(うっわ!こいつプラズマボールを食っちまった!)
そして俺に向け火岩を立て続けに打ち出した。
”ボシュー”
”ボシュー”
”ボシュー”
それをよけながら俺は、心でこう叫ぶ。
(なんて非常識な奴だ!)
◇◇◇◇◇
------美音視点---
電ちゃんが、魔物の砦上空で
「シャー!」
そう唸り声をあげた電ちゃんはまず、口から高圧電流放ち、そしてその太い尻尾で
魔法障壁に攻撃を加えたわ。
”ゴー””ビリビリビリ”
”ズドーン”
”バキバキバキ”
電ちゃんが攻撃を加えるたびに、砦上空にあると思われる魔法の障壁が、虹色に輝
き震えたわ。
これで3度の目攻撃……だったかな?
電ちゃんが攻撃を加えた時、砦上空にあると思われる障壁が7色に輝いたかと思っ
たら、ひびが入り……。
”ピキピキピキ”
”バリーン”
と音を立て、
”ズーン”
と衝撃が地上にいる私に迄、伝わったと思ったら、
「ミオンっち、壊れたよ~」
と砦上空の電ちゃんが、私に言ったの。
見ると、電ちゃんが障壁を壊したのを裏付けるように、魔物達が投石器を使い上
空の電ちゃん目掛け攻撃をしようとあわただしく準備をしだしたの。
それを見て電ちゃんが4つある投石器に向け電流を口から吐き攻撃したわ。
”ゴー”
”ズドーン”
”ドッカーン”
電ちゃんが攻撃を加えるたびに投石器もろとも魔物達が吹っ飛ぶの。
電ちゃんが4つの投石器とそれに群がる魔物達を吹っ飛ばしたのを確認した私は
、砦の正面まで進んで、その前に立ちはだかる例の植物系の頭が口になった魔物に
向け、
「電空ブーメラン!」
電空ブーメランを放ったの。
ブーメランは砦を囲む口の魔物うち、正面の魔物に対し、魔物の毒の触手をかいく
ぐり、次々にその口(頭部)を切り裂いて行ったの。
”ブシュ””ブシュ””ブシュ””ブシュ””ブシュ””ブシュ”
”ドサ””ドサ””ドサ””ドサ””ドサ””ドサ”
口の魔物は口(頭部)を失い次々にウネウネと動く触手の動きが止まったわ。
私は念のため、ロボに命じたの。
「ロボ、ふんずけちゃいなさい」
『マッシ!』
ロボは私の命令にそう返事をして、次々と地面に転がる魔物の口(頭部)をまるで
子供が地団太を踏むように踏みつぶして言ったの。
「ぷっ」
そのかわいらしい様子に、私は思わず吹いてしまったけどね。
ロボが踏みつぶしたのを確認してから、私とロボは砦内に入った言ったの。
そしたら、砦中心から出て来たわ魔物がうじゃうじゃと。
先程の魔物は頭がクレムリンで体がミノタウロスの筋肉系だったんだけど、今出て
きたのは……。ダイヤウルフの背中にグレムリンの上半身がくっついた魔物。
そしたら、それを電ちゃんが砦上空から降りて来て、次々に大きな口を開け飲み
込んでいくのよ。
”スー”
”シュポ””シュポ””シュポ””シュポ””シュポ””シュポ”
あっという間に10体くらいの魔物を飲み込む電ちゃん。
(んーもーっ私の出番ないじゃないの)
◇◇◇◇◇
------ゲキ視点------
耳につけた無線機の端末から、ミオンがあらかた魔物を倒したと報告を受けた俺
達は、砦外部にあるトンネルへ侵入を開始した。
俺を先頭に、エドナさん、シノブ、アイーシャさんそして殿をクレアさんが勤めトンネル内を駆け抜ける俺達。
しばらくトンネル内を走っていると、ダイヤウルフの背中にグレムリンの上半身がくっついたような魔物が3匹現れ、先頭を走る俺に向け手に持ったボーガンを構える。
俺はそれを見て背中の斬馬刀に手を掛けた瞬間、俺の後ろから、シノブが放つ弾丸と、エドナさんが放った矢が飛んできて、その3体の魔物を次々に倒して行った。
俺は後ろを振り向き2人に頷くと、シノブとエドナさんは親指を立てて俺に合図を送ってくれた。
(頼りになる仲間達だ)
◇◇◇◇◇
俺達はトンネルの終着点に立っていた。
そこには、金属製の両開きの重そうな扉があった。
俺は扉の前に立ち、そして扉の後方に居る仲間へと頷くと、皆も俺に頷き返して
くれた。
そして俺は、背中の斬馬刀を手にかけ、
「秘儀!一刀両断!」
両開きの金属の扉を片方を切り裂き、残った扉を足で蹴り倒し、扉内へとはいる。
俺の後に居た仲間達も俺に続き扉の中にはいいた時、
「しまった!」
「Damn it!」
「あっ!」
「わぁ~!」
「にゃっ!」
部屋入った途端俺達は眩い光包まれた。
◇◇◇◇◇
------美音視点---
しばらくして、ゲキ達からの無線が途絶えたわ。
「ゲキ?……シノブ?……クレアさん?エドナさん?アイーシャさん?……おか
しいわね」
そう私は首を傾げながら、耳につけた無線端末を外し、確かめてみるんだけど異常はないみたいなの。だってソフィーには連絡つくんだもの。
「ソフィーゲキ達と連絡取れなくなったのよ~」
「えっゲキ様達と……」
私の言葉を受けてソフィーが驚いたの。
「ソフィー、セイアの反応はまだある?」
「えっ、はいまだあります」
「分った、じゃ、私が建物の中に入って見に行ってみるからもし、セイアの反応に動きが合ったら無線で私に教えてくれるソフィー」
「えっ、はい、わかりました」
そうソフィーと無線で会話してから、私は電ちゃんに言ったの。
「電ちゃん~私ちょっと建物の中に入ってみるから、その間に砦を囲むあの口の魔物をお願いねぇ~」
「え――――あいつら青臭いからやだよぉ~ミオンっち!」
ていう電ちゃんを睨みながら砦を囲む魔物を指差し言ったの。
「贅沢言わない、野菜を食べないと大きくなれないわよ!」
と言う私に電ちゃんは、不満たらたら言うのよ。
「もう、ずいぶん大きいですけど僕」
「文句言わないの電龍!」
と電ちゃんに大声で叫び怒る私見て、電ちゃんは渋々
「は~い」
そう言って、砦を囲む魔物達を次々に飲み込んで行ったの。
それを見た私は、ロボの方に振り返り言ったの。
「ロボ、行くわよ」
『マッシ!』
(ロボは素直でいいわね)
そう思いながら、建物の入り口までロボと向かったんだけど、砦の建物の扉高さは
いいんだけど、幅がちょっとねぇ……ロボには狭かったからロボに命令したの。
「ロボ、メガトンパンチ!」
『マッシ!』
私の命令で、ロボは渾身のパンチを扉に放ち破壊したわ。
”バッキーン”
「よし、これで入れるね」
そう言ってロボと私は建物の中に入ったの。
建物の中には、あちらこちらにランプが吊ってあり、明るくはないけど何とか前
に進めたの。
テーブルなどもチラホラあり、そこには食べかけでほったらかしの食べ物が散乱し
てたりして……。
「本当、汚ったないわね」
そう思いながら、地下に通じる通路を見つけた私。
そこをロボと一緒に降りて地下に向かったんだけど……。
「あっ」
そう私が声をあげた瞬間、私とロボは眩い光に包まれた……。
◇◇◇◇◇
(どうしたものか……)
巨大な亀の前に俺は考えていた。
この大亀……口から吐く火岩は確かに強力な攻撃だが、動きがあまりにも遅いた
め、奴の攻撃を食らって俺が負けるって言う気は全然しないんだけどね。
かと言って、
俺の今までの攻撃は全て弾かれている……負ける気もしないが、勝と言うことも
イメージはできないでいた。
(とは言えこのままでは……)
そう、俺のエネルギーと言うか魔力も無限ではない、既に半分以上のエネルギー
と言うか魔力が奴との戦闘に使われてしまっていた。
(一か八かあれを試してみるか)
俺はそう心に決め、ユニコーンを召喚した。
そして俺は、ユニコーン向かいこう言った。
「こうなれば聖獣合体だ!こいユニコーン!」
≪Charge up Kentauros≫
頭の中のカーソルを選択する。
すると俺は、自分の意思とは関係なくユニコーンに向かって走りだしていた。
ユニコーンも俺の方に向かって走って来る。
そして、俺とユニコーンがお互い迫る中、俺は自動でジャンプする。ユニコーンは
空中にジャンプした俺目掛け額の角を飛ばす。
ユニコーンの角はみるみるでかくなり、騎士が使うランス(細長い円錐の形にヴァ
ンプレイトと呼ばれる大きな笠状の鍔がついた形状のもの)に変わる。俺はそれを
受け取ると、また自動で空中で体をひねり、向きを変えそのままユニコーンの方に
落下していく。
ユニコーンと落下する俺が交錯する寸善、ユニコーンの頭が胴体に収納され、俺の
下半身が首のなくなったユニコーンの胴体と合体する。
「完成!Kentauros!」
そして、手に持っていたランスを捨てると、まず、両腕をフリーザーアームに変え
、奴の口からの火岩攻撃に注意しながら、奴の周りをグルグル回りながら掌の穴か
ら冷凍ガスを勢いよく噴出させた。
「フィリーザーブリザード!」
奴は、俺の攻撃に慌てて手足を引っ込めた。
(おおその方が都合がいい)
俺は奴の周りをぐるぐる回りながら、更に冷凍ガスを浴びせ続けた。
奴の甲羅っを含む表皮部分は見る見る凍りいて行った。
(これで、奴を倒せるとは思ってないけどね)
この攻撃の真意は、奴の甲羅の高周波振動を止めるためだからね。
そして、奴の体が十分凍るのを確認した俺は次に、ユニコーンの移動速度のリミッ
ターを外す。
これは、本来ユニコーンと言うよりケンタウロス形態で、音速を超えた場合、構
造的に(主に空気抵抗)耐えられないため前もって亜音速の速度制限を掛けていた
のだが、俺はこれを外した。
そして、音速を越える速度で奴の周りをグルグルと回りながら右腕をシールドアー
ムに変えた。
本来シールドアームはその掌にある穴から円形のバリアーを発生して敵の攻撃を
防ぐものだが、今回バリアーを発生させた直後、それを握りこむ。
すると、右腕全体がバリアーに包まれる。
そのまま、俺は音速を越える速度で奴の周りをまわっていると、その勢いで風の渦
巻きが発生する。
体中がミシミシを音をあげ、あちこちにヒビが入りだすが、それでもお構いなし
に俺は回り続けた。
やがて、俺が起こした風の渦が奴の巨体を持ち上げた。
クルクルと回転しながら上昇する大亀。
(まるで特撮怪獣の大亀の飛行形態のようだ)
そう思いながら、奴の体が40m近く持ち上がったのを確認した俺は、奴の周りを
まわるのを止め、奴の真下に移動した。
俺が回転を止めてしばらくすると、風の渦がやみ同時に奴の体が落下してきた。
奴の真下に居た俺はそのままバリアーに包まれた右腕を真上に向け突き出し、奴の
落下を待ち構えた。
「必殺!正拳突き!」
”ドーン”
”バキ、バキ、バキ”
落下する奴の体を俺の正拳(拳)が突き破って行った。
”ズドーン”
奴の体は俺の突き出す拳の左右にと真っ二つになって砕けた。
その直後、俺は目まいを起こし、変身が解かれて元の大鷲青空に戻り気を失った。
◇◇◇◇◇
------ソフィー視点---
わたくしは、ミオン様から、ゲキ様達と連絡が取れないと報告を受け、しばら
くはテントの中でそわそわしていました。
その時です。
「あっ、セイア様の反応が……」
またもやセイア様の反応がなくなったのを感じました。
それをミオン様にお知らせしよう無線で呼びかけたのですが、
「ミオン様、ミオン様……」
応答がありません。
わたくしは居てもたってもおられず、自分の身の程を弁えもせず、魔物除けのテ
ントを飛び出し砦の方へ走り出してしまいました。
(セイア様、ミオン様、皆さま……どうかご無事で!)
劇中セイアが使う「必殺!正拳突き!」はアニメ闘将ダイモ〇の必殺技の
オマージュです。




