111話 セイアの危機……その時ソフィーは(後編)
------第三者視点---
ミオンが、慌てて喫茶店を飛び出すのを路地から見ていたイケーズンがニヤリと
笑う。
「俺達にも運が向いてきたぜ」
そう言って、ケッチルン、タンキーに目で合図を送るとソフィーの居る喫茶店へと
向かった。
店に入ると、ソワソワしながら、テーブルに座っているソフィーを見つけたイケ
ーズンは、ソフィーの席に静かに近づいた。
ケッチルン、タンキーもそのイケーズンの後を追いソフィーの席へと向かった。
「あの~あのお方からお言付けがあるのですが……」
イケーズンの言葉に振り返りソフィーが言った。
「えっ!セイア様からの!?」
涙目で言うソフィーを見て、イケーズンはニヤリと笑い。
心でこう思った。
(セイアか……これはいけるな)
「はい、セイア様からお言付けを承って参ったのですが……」
「ご無事で!ご無事なのですか?セイア様は……」
そう興奮気味で言うソフィー。
「はい、もちろんご無事ですよ」
とニッコリ笑って言うイケーズン。
それに合わせてケッチルン、タンキーも引きつりながらも笑顔でソフィーに向かっ
て笑う。
「良かった~」
それを聞いて”ほっ”とするソフィー。
「ただ……」
「ただ?」
イケーズンの言葉に不安げに聞くソフィー。
「だだ、少し厄介なことがありましてねぇ~今は私どもでお世話させていただいているんですよ」
「それは……」
と聞き返すソフィーにイケーズンは首を振り、ソフィーの耳元へ顔を近づけ、
「ここでは……申し上げられません。ご案内しますのでついて来ていただけますか
?」
と耳元で言うイケーズンにソフィーは黙って頷いた。
そして、イケーズン達に促されるまま、ソフィーは席を立ち店を出て行った。
◇◇◇◇◇
裏通り、倉庫街。
その倉庫街の一角にある一つの倉庫に男3人に案内され、ソフィーは倉庫の中に入った。
”ガラガラガラ”
”ピシャ”
”ガチャン”
ソフィーが倉庫に入るとすぐに、タンキーが扉を閉め鍵を掛けた。
「えっ!」
扉を閉める音に反応して、ソフィーが後ろを振り向き驚きの声をあげた。
「悪いな~お嬢ちゃん」
とニマニマ笑いながらタンキーが言った。
「では……」
「察しが良いね~その通りだ、ここにはセイアとやらはいねーよ」
ソフィーの言葉にケッチルンが答えた。
「騙したのですね!」
そう怒りながら言うソフィーにイケーズンがやんわりと言う。
「悪いことは言わないよお嬢さん、どう頑張っても貴族の娘が家を離れて、駆け落
ちなんぞしても、自分では何もできないんだ、ひどい目に合うだけだ、やめときな」
その言葉にソフィーは首を傾げ
「はぁ?わたくしが駆け落ち?」
そう答える。
「そうさ、だからそんな格好して、こそこそ歩き回ってたんだろう?」
と言うイケーズンにソフィーは、自分の格好を確認して、
「ああ、これは……」
「これは……?」
とソフィーの言葉を重ねるイケーズン。
「これは、わたくしが魔導士だからですよ」
とソフィーが言い返すと、3人はケラケラ笑い出した。
「本当です!」
3人があまりにも笑うので、ソフィーはむきになり言う。
「はっはははぁ、そんな小枝みたいに細くて短い魔法の杖なんざ、俺は生まれこの
方見たことがない。」
そう笑いながら言うイケーズンにソフィーは、にっこり笑って言った。
「では、お試しになりますか?」
そう言うと、今だソフィーに笑い続けるイケーズンに魔法スティックを向け、ステ
ィックの青色のボタンを押した。
すると、そのとたん、スティックからイケーズンに向け大量の水が浴びせられる。
”ジャー”
「うぇっ、ぺっぺぺ」
大量の水を浴びせられたイケーズンがそう言いながら、口に入った水を吐き出した。
「「何っ無詠唱だと!!」」
それを見たケッチルン、タンキーはそう叫ぶと、即座に腰の剣を抜いた。
「「この~!!」」
その時、すかさずソフィーは3人の足元に向け、ステックをかざすと、茶色いボ
タンを押す。
その瞬間、3人の足元に大きな穴が現れ、そのまま3人は穴に落ちて行く。
「「「あ~れぇ~!!!」」」
”ドスン”
「うっ!」
「痛って~」
「あいたたた」
穴に落ち、しこたま腰を打ち付けた3人が声をあげる。
「くっそ~なめやがって~!」
「おい、イケーズンありゃ本当に貴族の娘か?……ひょっとして本物の魔導士じゃ
……」
と吼えるイケーズンに弱気になったケッチルンが言った。
「なに言ってんだ、あんな小娘が魔導士の訳はない!行くぞタンキー!」
「おっ?おぉー!」
とイケーズンの言葉にタンキーが答える。
2人は穴の外に出ようと、穴の壁をよじ登るのを見たケッチルンも慌てて、穴の
壁を同じようによじ登った。
3人がやっとの思いで穴の淵にたどり着くと、そこにはソフィーが仁王立ちで、
3人を見つめ、
「わたくし、魔法だけではございませんのよ~」
にこやかに言って、ローブの内ポケットからコンパクトを取り出し、3人の方に向
けた。
「いでよ!電龍!」
そうソフィーが叫ぶとコンパクトの蓋が開き、勢いよく何かが飛び出した。
”ドスン”
"バリバリ~”
”メキ”
”ドンガラガッシャン”
と言う音と共に倉庫の屋根を突き破った身長25mの電龍の姿があった。
「ジャンジャジャ~ン」
巨大な電龍を見た3人は驚き、慌てふためいて、
「「「ひえぇ~!!!ば・ば・バケモノ~」」」
そう言って穴に再び落ちた。
”ドスン”
「「「うげ~!!!」」」
3人が落ちた穴を電龍が覗いて言った。
「ソフィーっち、これ食べていいか~」
その電龍の言葉に……3人は震えあがり……失禁した。
◇◇◇◇◇
------美音視点---
そりゃーもう驚いたわよ~。
シノブとアイーシャさん達と宿場の西側で合流して、北側にいるゲキ達とも合流
しようとした矢先だったんだもん。
宿場の西側に居た、私やシノブやアイーシャさんにも見えたわよ~。
電ちゃん……大きいから。
それに突然現れた大きなドラゴンに宿場中は大騒ぎよ~、昔の特撮怪獣映画のよう
に……。
で、
直ぐに、シノブ達と掛けつかたわ。
その時、北側に居たゲキ達にも見えたみたいで、お陰?で現場で皆合流はできた
んだけどねぇ。
私達が現場で見たのは、粉々になった倉庫と、大きな電ちゃんの横に立つソフィ
ー……と口から泡を吹き……おもらしし、気を失って倒れてる男達3人だったの。
ほどなく、宿場の交易ギルド関係者ってか宿場の警備にギルドに雇われた傭兵さん達が現れ、ソフィーが事情を聴かれ、気を失っている男3人はほどなく交易ギルドの出張所の救護室に運ばれたみたい。
宿場長の事情聴取を受けるため、ソフィーも出張所に連れて行かれると言うので
、私達も、ソフィーの付き添いで一緒に向かったわ。
私達は、交易ギルドの出張所の1階の冒険者受付前で、2階の宿場長の事情聴取
を受けているソフィーを待ったの。
ソフィーが宿場長の部屋に入って30分くらいかな……1階の私達が待つ冒険者
受付前にソフィーがやって来たの。
「どうだったの?ソフィー」
と私がソフィーの顔を見るなり尋ねると、
「はい、今回は冒険者同士の小競り合いなんで、お互いお咎め(おとがめ)なしで
すが……」
「えっ、襲ってきたあいつらも!?」
とソフィーの言葉に私が驚き聞き直すと
「はい、基本、冒険者や傭兵同士の争いはお互いのことなので、それは互いのチー
ム同士で話を付けなさいって事でした。」
「はぁ!?か弱い女性を襲っておきながら……それはないんじゃない?」
って私は思わず大きな声で叫んでしまったわ。
一瞬、冒険者受付の人に睨まれたけど。
ソフィーの話を詳しく聞くと、この世界では、傭兵や冒険者はある意味力でのし
上げって行く人間なので、強いものが弱いものを倒す……つまり殺しても何の罪に
も問われないらしい。
但し、一般人や貴族などを傷つけたりすれば、事件のあった国の法律が適応され
るらしい。
それ故、よくダンジョンではアイテム(宝物)をめぐって冒険者同士殺し合う
こともあるそうなの。
「じゃ、ソフィーがイーシャイナのお姫様って言えば、あいつら牢屋にぶち込め
るわけ?」
ってソフィーに聞いたら、
「えっ、もし、わたくしが、本当の身分を名乗った場合……3人とも首チョンパだ
と思います」
と言われ私は驚いたわ。
「そんなに極端なの!?」
「はい、3人だけではなくその家族もです。」
ソフィーのその言葉に私は絶句したわ。
その絶句する私にソフィーはすまなさそうに付け加えた。
「……あの~お咎めは無しですが……実は……壊した倉庫を弁償しなければならな
いのです……」
と申しわけなさそうに言う。
「なんで、ソフィーが弁償しなきゃいけないのよ!」
と私がソフィーに言うと
「例え身を守るためと言いましても……壊したのはわたくしですので」
そう答えるソフィーに私が、
「で、いくら?」
「はい……白金貨6枚……600万ドルマ(日本円で600万円)です。」
「えっえ――――――600万!!」
思わず大声でそう叫んだので、出張所中の職員に睨まれた私だったの。
◇◇◇◇◇
とりあえず、ゲキが預かっているセイアの巾着から私が白金貨6枚を出しソフィ
ーに渡したの。
なぜ、私が白金貨を出したか?ってそれは、ゲキってこの世界のお金がまだよく
わかっていないみたいなのよ……だからね私が代わりにね。
本音を言えばセイアにゲキではなく、私に財布を預けなさいって言いたいんだけ
ど、どうもセイアは私に預けると、訳のわからないものをすぐに買い、無駄遣いす
るって思ってるみたいなのよねぇ~ホント失礼しちゃうわねぇ~このしっかり者の
ミオンちゃんに対してそんなこと思ってるなんて。
それは兎も角、ソフィーが宿場長の所に行き、お金を支払った後、皆でギルド出
張所近くで、軽くお昼を食べて……そうそう、そのお昼なんだけどねぇ。
硬いパンに、ミネストローネのようなスープだけなのに1人、何と3,000ド
ルマ(日本円で3,000円)も取るのよ~かなりのぼったくりよねぇ。
◇◇◇◇◇
お昼を食べ終え、兎に角出発の準備を手早く済ませ、セイアが居ないので馬車が
使えないから、シノブが背負っていないマジックボックス小の方を私が背負い、マ
ジックボックス中の方は宿場の外まで、シノブとゲキが2人で運んで、宿場の外に
出てから、ソフィーに電ちゃんを呼び出してもらい、電ちゃんの背中にロープで固
定して、全員で電ちゃんの背中に乗ったの。
「ほんじゃ~、皆、出発するよ~しっかり捕まっててねぇ~」
そう言って、私達を載せた電ちゃんは空に舞い上がり、セイアが偵察に行った魔物
の砦へと向かったの。
(セイア!無事でいてね)
今回電龍が登場時に言った「ジャンジャジャ~ン」は、分かりにくかったと思いま
すが、アニメ マ〇ンガーZやグレー〇マジンガーに登場するボスボロットが登場
時に言うセリフです。(かなり、分かりにくかったと思います(笑))




