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101話 S級冒険者

俺達が地上へ出ると、東の空の方から飛んでくるファルコさんの姿が、肉眼で

もはっきりわかるくらいに近づいていた。


「ファルコさ~ん!こっち、こっち~!」


ミオンが大きく手を振りながらジャンプして叫ぶ。


「いや、ここから叫んでもファルコさんには聞こえんだろ」


と呟くゲキ、しかし、ファルコさんは、ミオンの声が聞こえたのか?羽ばたく翼を

更に羽ばたかせて加速し、グングンこちらに近づいてくる。


それを見たミオンがゲキに勝ち誇ったように言った。


「聞こえたみたいだね~」


「……」





◇◇◇◇◇





俺達がいるなだらかな丘の上……その上に建つ3階建てのジグラット側にファル

コさんは降り立とうとしたが、長距離飛行で体力を使い果たしたのか、着地後よろ

めくファルコさん。


「ファルコさん!」


俺はそう声を掛け、ゲキと共に倒れそうになる彼の体を支えた。


 息が上がり、苦しそうなファルコさんを見て、時田さんが近づき、


「これを……」


と言って、ミネラルウオーターのペットボトルを俺に手渡した。


俺は、時田さんからボトルを受け取ると、ボトルのキャップを開けそれをファルコ

さんに手渡した。


「あ・ありがとうございます」


そう言って、ファルコさんは受け取った500mlのボトルの水を”ゴクゴク”と

一気に飲み干す。


「ふ~……生き返りました」


と一息ついたようだ。


そのファルコさんにソフィーが声を掛ける。


「ファルコ、お父様の火急の用とは……いったい……」


そう言いかけたソフィーに時田さんが、やんわりと口を挿んだ。


「ラグナヴェール様……ファルコ様は遠くイーシャイナ王国からお越しになったば

かり、まずはお部屋でお休み頂いては……」


時田さんの言葉にファルコさんは首を横に振り、


「いえ、お気持ちはありがたいのですが……一刻を争う事態でして……」


というファルコさんに対して、時田さんは諭すように言った。


「にしても……お食事もまだなのではございませんか?」


そう聞かれファルコさんが、時田さんの言葉に首を振ろうとした時だった。


ファルコさんのお腹が”ぐぅ~”っとなった。


「まだなようだな」


とお腹の音を聞いたゲキが少し笑いながら言う。


「あっ、はい……おはずかしい」


と恐縮するファルコさん。


「Mr.ファルコ、急ぐと言うなら、コントロールルームで軽食ならとれる……

それなら、食事をとりながら、説明できるのではないかい?」


笑顔で言うシノブの言葉にファルコさんも恐縮しながらも笑顔で答える。


「助かります~」





◇◇◇◇◇





 ファルコさんを連れて、コントロールルームに戻った俺達。

V字の左側の部分に、俺、ミオン、ゲキ、シノブ、時田さんの席にファルコさんが

座り、右側の方にソフィー、クレアさん、エドナさん、アイーシャさん、ニールさ

ん皆が席に着いた。


 時田さんは、奥の台所に入り、先程俺達がお昼に食べたアメリカンサイズのハン

バーガーにポテトフライそれにレモネードをファルコさんの前に置く。


「お昼に皆様で食べた残り物で恐縮すが……」


そう言う時田さんに恐縮気味のファルコさんが言う。


「何をおっしゃいます。ありがたく頂戴します。」


そう言ってハンバーガーにかぶりつくファルコさん。


 ハンバーガーにかぶりつき、引きちぎっては飲み込む……ファルコさんを見て俺

は心で思う。


(確かに顔が鳥だから?歯がないから……飲み込むんだね)


 俺が1人心で思っている間に時田さんは皆に手際よく飲み物を配って行く。


 俺、ミオンにはコーヒーを、ソフィーはじめ異世界組には紅茶を配る中で……シ

ノブとゲキの前にはファルコさんと同じハンバーガーのセットが置かれた。


(?さっき、お昼に食べたよな……)


って思っていたら、2人は俺の視線を受けて俺に言った。


「お相伴にあずかっているだけだ」


「……だけだMr.オオワシ」


「ファルコさん1人だと食べにくいだろう」


って言われた……。


(言い訳だろうけど……さ)





◇◇◇◇◇




 ファルコさんの食事が終わり、説明を聞く。


 現在、アルブ王国とカカ帝国が砦を築いて監視している【永久凍土の監獄】デン

スアーラ共和国(獣、鳥系)とウクラハンバ王国(ドワーフ系)が砦を築き監視し

ている【炎毒の谷】、そして ベラトーラ首長国 (爬虫類系)が砦を築き監視し

ている【冥界のオベリスク】のどれもが、オブリヴィオンの姿もなく、また、ダン

ジョンの魔物が大量に出て来る気配もないようで、各国の騎士団は、その騎士の半

分の戦力を砦に残し、一旦、それぞれの国に帰還している最中だそうだ。


 当然、俺達とイーシャイナ王国とデスロ同盟国(ポリス連合)が戦い、オブリヴ

ィオン軍を倒した【雷風の丘】も封印を再起動させるまでの間、イーシャイナ王国

の第7、第8騎士団並びに、デスロ同盟国の第5軍団を残し、残りの騎士達は本国

に帰っているということだが……。


 今のところ、オブリヴィオンの姿はなく、一見、平和になったと思われる。


 では、何が問題か!と言うと……。


 この世界の生い立ちに関係しているのだが……。


 この世界は魔物が闊歩する世界……故に各国々はその国境に城壁を築き、また魔物除けの結界を張り、魔物の侵入を防いだ来た……つまり、他の国との関係を持たず、自国内で、すべての物を賄ってきたのだが、そこにデスロ同盟国(ポリス連合)が交易に乗り出してきたのだ。


 デスロ同盟国(ポリス連合)は4つの都市の同盟で成り立っている。

それぞれが100万人程度の小規模の国と言うより都市国家で、自国の産物だけでは到底やっていけない、そこで、4つの都市はそれぞれ役割分担を持つようになった。


 陸上の交易は、連合最大の商業都市であるトンリコが、海運はテネアが担当し、それを陸上は軍事国家のパルタスが、海上はケナイがそれぞれ自国の軍事力を生かし護衛する形で交易が始まり、いつしか交易で莫大な富を得るようになった。


そして、国家の元に発足した交易ギルド(商業)やそれを護衛する傭兵ギルドを発足させ、その下部組織に冒険者(Treasure Hunter)ギルドを発足させた経緯がある。


 因みに、交易ギルドの本部はデスロ同盟国(ポリス連合)のトンリコにあり、傭兵ギルドと冒険者ギルドの本部はパルタスにあるそうだ。


 話を戻す、そしてこのこの世界の交易に欠かせない傭兵ギルドの主要なメンバーは当然デスロ同盟国(ポリス連合)のパルタスの騎士(兵)なのである。


 そして今現在の問題は、傭兵ギルドの組織にある。

傭兵ギルドはそのレベルに応じてランクがある。


S級……主に予備役(騎士の試験に合格したが配属されていない者)

A級……主に退役した騎士並びにB級から昇格した者。

B級……主にA級の傭兵に指導され認められた者。

C級……主にギルドの採用試験に合格した者。


 つまり、今回【雷風の丘】ダンジョンの戦いでシーシャイナ王国とデスロ同盟国

(ポリス連合)は兵の1/3を失った。


 そこで、デスロ同盟国(ポリス連合)の主な兵のパルタス軍は軍の立て直しに、傭兵ギルドに所属しているS級のすべてとA級の一部を正規軍に編入したため、傭兵ギルドでは、腕利きのS級すべてとA級の一部を失い、交易で商隊につける護衛が不足し、冒険者ギルドから上位の冒険者を借りて商隊護衛に付けやりくりしていたが、ここで大きな問題が起こる。


 それは陸上での交易ルートに、魔物が住み着き交易の妨げになっているというより、その住み着いた魔物達を今の傭兵ギルドのメンバーでは排除できなくなり、物資が滞っているようだ。


しかも、その交易ルート上にある宿場が宿場を挟み2か所に魔物が居座っているため、物資が滞り、また、その宿場に住む又は、立ち寄った商隊や冒険者達が逃げ出すこともできず、孤立し、大変危険な状態なんだとか。


 それに今やイーシャイナ王国を初め他の国々も、この交易による物資を必要としていて、交易が滞ると物の値段が跳ね上がり、インフレ状態におちいっているらしいのだ。


「なるほど……わかりましたファルコさん」


と俺がファルコさんに言ってから、時田さんの方を向いて言った。


「トレーラーの発進準備にどれくらい時間が掛かりますか?」


「そうですね……1時間もあればご準備できるかと」


時田さんの言葉を聞いた俺は皆の方に向き直り


「それじゃ……」


と言いかけたら、すかさずミオンが割って入り言った。


「Team BRAVE出動!」


その言葉を聞いて各人コントロールルームを飛び出そうとしたら、ファルコさんが俺達を呼び止める。


「少し、お待ちを!」


その声に俺達は再びコントロールルームに戻り、ファルコさんの話を聞いた。


 今回宿場の救援並びに、交易路上の魔物の一掃にあたり、エドモンドさん(王)から俺達にお願いがあるそうだ。


 俺達はTeam BRAVE……つまり、勇者として救援に向かうのではなく、1冒険者チームとして救援に向かってほしいと言うのだ。


 それは、オブリヴィオンへの警戒……もあるのだが、何より勇者がイーシャイナの国王の……というか1国……この場合2国間だけど、の頼みを聞いて魔物を退治するって言うのが公になると、他国からイーシャイナ王国が勇者を独り占めしてると取られかねない……と言うのだ。


(まぁ、そう言う考えもあるよね)


 そこで、エドモンドさんが昔の伝手つてで、俺達をS級冒険者”TeamUltimate”として登録し……登録し……?


(えっ、Ultimateってあの特撮のアルティメットマンから名付けたのではないだろうか……そーいやソフィーがエドモンドさんに家で見たDVDの話してたっけ?)


 しかし、いくら伝手つてがあると言っても何の実績もない俺達がいきなり、S級の冒険者で良いのだろうか?と思ってファルコさんに聞いてみたら、


「なんせ、あの【雷風の丘】をクリアなさったではないですか」


とファルコさんに言われてしまった。


(なるほど……なるほどなのか?)


 そして、ファルコさんから冒険者証を受け取った。


 受け取った冒険者証ってのは、よくアメリカの警察が見せるバッチのような形をしていた。


(へーこれが冒険者の証なんだ)


と思いながらもバッチをしまうと、皆に向かって言った。


「それでは、各人出発の用意をして1時間後に地下7階ってことで」


俺の言葉を合図に各人が、一旦自分の部屋へと向かうためコントロールルームを出る。


コントロールルームを出る時、ゲキがエドナさんに声を掛ける。


「エドナさんどうやら試射はお預けのようだ」


そうニヒルな表情で言ったゲキのセリフと言うか顔に、エドナさんの顔が少し”ぽっ”としたように見えたのは俺の気のせいだろうか?


ここで言うアルティメットマンは、ウル〇ラマンのことです。

折角お揃いの儀礼服を作ったのですが、当面は冒険者として行動するため、

しばらくはお預けです。

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