99話 えっ!かぼちゃパンツにタイツですか?
翌日、朝食を終えた俺達は中央コントロール室兼作戦室に向かう。
今日は、ミオン曰く第一回チームブレイブ会議だそうだ。
地下5階から地下6階へ、エレベーターで降りて小型のパルテノン神殿へと向か
い神殿の中の通路を通り、正面に大きな扉……。
お!正面の扉には、俺が描いたGUY BRAVEの横顔のシルエットの下に
Team BRAVE……カックイイ。って思いながらしばし扉を見て立ち止まっ
ていると
「なに、1人感動してるのセイア」
と言いながら、ミオンが俺の横をすり抜け扉を開け部屋に入って行った。
(ちょっとくらい、感動してもいいだろうミオン)
と思いながらも、慌ててミオンを追いかけ部屋に入った。
部屋に入った俺達はV字のテーブルのそれぞれの自分の席に着く。
V字の左側の部分に、俺、ミオン、ゲキ、シノブ、今回時田さんは、自分の席に
座らず、大型モニターの横に立つ。
右側の方にソフィー、クレアさん、エドナさん、アイーシャさん、ニールさん皆が
席に着くと、
「皆さんがお揃いになったので始めさせていただきます」
と言いながら少し会釈して説明にはいる。
「まず初めに、ブレイブ基地地上部分の整地につきましては、昨日皆様にお骨折
りいただきまして無事終了しました。ありがとうございます。」
(俺達って言うより……電龍1人でやったんだけどね)
「今日より地上部分の施設整備に取り掛かります……つぎに」
(どんな設備が出来るんだろう?)
「以前、白鳥様から提案いただき、皆様と協議し、決定した儀礼服といいましょう
か、Team BRAVEの制服が1日遅れましたが今日出来上がりましたので、ご
報告いたします。」
そう時田さんが言うと、
「やった~早く着てみたい時田さん~」
と嬉しそうに言うミオンに時田さんは、笑顔で、
「部屋の外のロッカルームにすでにご用意できておりますので、後ほど試着のほう
よろしくお願いいたします。」
とミオンに言ってから、この基地の諸々説明を続けた。
時田さんが言うTeam BRAVEの制服ってのは、今より10日ほど前に話
は遡る。
◇◇◇◇◇
俺達が自分の世界に戻り、数日が経ったある日。
丁度、ソフィーの誕生会の準備にンドワン国大使館にソフィーを含め俺達全員が集まった時、たまたまミオンが言い出したことに、ことの発端があるんだが。
「ねぇねぇ、今度異世界に戻ったら、せっかく私達の秘密基地があるんだからさ~
防衛チームみたいな制服を作って皆で着ようよ~」
その言葉にシノブは真っ先に賛成するが、
「ミオン、基地内で特撮の防衛隊のような服を着て、一体何になるんだ」
とゲキが反対する。
「だって私達、オブリヴィオンの魔の手から異世界を守る……ってまさに防衛隊そ
のものじゃん」
「そーだよMr.シモトウゲ……Missシラトリの言う通りではないか」
とミオンに援護射撃をするシノブ。
「いや、2人ともよく考えて見ろ!特撮の防衛隊は、怪獣が現れた場所に基地から
戦闘機などで現場にいち早く駆けつけ、そのまま戦闘するいわば戦闘服だろう?」
「うん」
「Yes」
とゲキの言葉に頷くミオンとシノブ。
「5人~6人の隊員達が基本同じ装備で怪獣と戦う訳だろう」
「うん」
「Yes」
とゲキの言葉に、再び頷くミオンとシノブ。
「それに比べて俺達は、まず魔物と戦うにしても、現場にビユーっと飛んで行け
ないだろう?」
「うん」
「Yes」
とゲキの言葉に、またまた頷くミオンとシノブ。
「それに、一番は皆それぞれ獲物(武器)が違うし、戦い方だって違う」
「うん」
「Yes」
とゲキの言葉に、段々声が小さくなり頷くミオンとシノブ。
「第1、恐らくブレイブ基地に居る間、魔物との小競り合いはあっても大規模戦闘
にはならないし、むしろ、戦闘に備えて英気を養う場所になるはずだ」
「「……」」
と言うとミオンとシノブはゲキの言葉に黙って頷くだけになる。
だが、ここでゲキから意外な言葉がでた。
「お揃いの戦闘服を基地で着るために作るのは反対だが、お揃いの儀礼服を作るの
は賛成だ!」
「「「あ~ん儀礼服!」」」
ゲキの言葉に俺とミオンとシノブが驚き声をあげる。
「ゲ……ゲキあんたまさか……ドレス着るの?」
とミオンが声を荒げゲキに聞くと
「馬鹿か?ミオン、何で俺が女の服を着るんだ」
と呆れぎみにミオンに言い返すとミオンが少し拗ねたように言う。
「だって、儀礼服って言うから……パーティーで着る……て、ぉもった……」
と段々声が小さくなるミオン
「儀礼服って男性用のモーニングとか紋付き袴とかもあるだろうに」
とゲキに言われ、俯きながら両手の人差し指をツンツンとくっつけながら体をもじ
もじさせるミオン。そこにシノブが口をはさんだ。
「それなら、アルブ王国の王と謁見した折、僕とMr.オオワシはフロッグコート
でMissラグナヴェールはドレスを着ていたのだから、それでいいのでは?」
と聞き返すシノブにゲキが
「ああ、確かにそれで間違いではないが……では、クレアさん、エドナさん、アイ
ーシャさんはどうする?」
とシノブに聞き返し、言われたシノブは少し困りながらも
「騎士なんだから鎧でいいのではないかい?Mr.シモトウゲ」
そのシノブの答えに、ゲキは首を横に振り言った。
「では、シノブに問うが……現在の軍隊でも、軍属が公の式典で、実際の戦闘服を
着て出席するのか?」
「NO!公の式典には……儀礼……OHそうだねMr.シモトウゲ」
そう言うシノブにゲキがニヤリとしてから言う。
「だろう」
「でもさ、アルブ王国やイーシャイナ王国で、お城に居た騎士達は鎧姿の人しか見
てないぞ、誰も儀礼服って着てなかったけどな……」
と俺が口を挟むと、突然ソフィーが言い出した。
「今私達の世界は、魔王軍と戦争状態になっておりますので、城での鎧兜着用並び
に武器の形態は許されておりますが、平時は城に登城の騎士達は儀礼服での登城と
定められております。」
ソフィーの言葉に頷いたゲキが話を続ける。
「まぁ、俺達はセイアが勇者ってことで、特別扱いではあるけど……」
と言ってから一息おいてさらに言葉をつづける。
「これから、いろんな国に出向く際、当然、異世界の王侯貴族に招かれることが多
くなると思う」
その言葉に皆頷く、
「俺達は、異世界の人達から見れば勇者一行……つまりチームだな……しかも武力
を持った……って言うことはだ」
とまた一呼吸おいてから話を続けるゲキ。
「つまり騎士団ってことだ……その騎士団が礼服とは言えバラバラの服装だと異世
界で言う冒険者(Treasure Hunter)や傭兵と言えば聞こえがいいが……ソフィーさん気を悪くしないで聞いてくれ」
とソフィーに同意を求めてからゲキは続きを話す。
「ならず者っていうふうに取る人もいるってことだ」
「「「なるほど」」」
と俺、シノブ、ミオンが納得する。
「まぁ、ソフィーさんやニールさんは、王女や魔法省の長官って肩書があるから、
2人は無理に同じ服を着なくてもいいとはい思うけどな」
とゲキが付け加えて言うと、シノブが徐にクレアさんに尋ねる。
「Missリード、時に騎士団の儀礼服ってどんなものだい?」
と聞くとクレアさんが少し考えてから言う。
「文化の違う皆さんに言葉で説明するのは少し難しいかと……あっ、アイーシャ絵
描いてよ、それなら皆さんにわかってもらいやすいと思うし」
「はいですにゃ」
そう言うアイーシャさんに、俺がソフィーの誕生日の打ち合わせ用に持ってきた
メモ用紙とペンを渡すと、アイーシャさんはスラスラっと儀礼服の絵を描いてく
れた。
「「「えっ!」」」
その絵を見て男3人、俺、ゲキ、シノブが絶句した。
◇◇◇◇◇
アイーシャさんの描いた絵は、羽飾りが付いた幅広の帽子に、チェニック?袖な
しのワンピースのような服で肩の所は丸く膨らんでおり、ベルト(剣帯)に……か
ぼちゃパンツ……それにタイツで先がとんがった靴。
「あっ、この格好って♪リ・ボーンの騎士のサフィーネと同じだ~」
と喜ぶミオンをよそに、俺、ゲキ、シノブが固まる。
「よりによって、かぼちゃパンツにタイツ……か」
頭を抱える俺。
「Missアイーシャ男性用の服はどんなんだい?」
と聞くシノブにきょとんとするアイーシャさん。
「いえ、男性用もなにも、元々騎士は男性しかいませんし」
と真顔で言うクレアさんに、ゲキが慌てて言う。
「でも、3人は女性騎士なんだろう?」
そう言うゲキに
「はい、でも女性用の服なんてありませんよ、私達もこれを来てましたし」
「「「えっ……えっ」」」
クレアさんの言葉に、俺、ゲキ、シノブが同時に言う。
クレアさんの話だと、異世界では女性の騎士と言うのはそもそも存在しない。
オブリヴィオンとの戦争状態になり騎士の不足を補うため現イーシャイナ王国国
王エドモンドさんが女性騎士の採用を決めた。
その話を聞いて、アイーシャさんとエドナさんは騎士になりたくて、このイーシ
ャイナに来たと言う訳だが……そして、結局合格したのは、クレアさんを含めたこ
の3人だけで、それゆえ、女性である3人を通常の騎士団に入れることもできず、
かといって3人だけの騎士団と言う訳に行かず、仕方なくソフィーの護衛としたら
しい。
因みに、ソフィーが襲われた時、側にいなかったのは、アルブ王国でソフィーを
匿ってもらうための下準備をするために、先遣隊として派遣されていたいたから、
とのことだった。
アイーシャさんの絵を見て固まり、困り顔の俺とゲキとシノブにミオンが言った。
「んじゃさ~”ベルサイユのユリ”のアスカルの服なんかどうかな?」
と言うミオンの言葉に俺達3人は
「「「お~!その手があるな」」」
と言い少し安堵する。
「まぁ、アスカルの格好をするのは気が進まんが……これよりかはましだな」
とゲキは呟いた。
もっとも、この俺達の気持ちやゲキの言葉の意味は異世界組にはわからないだろ
うが、兎に角”アスカル”の服を参考に俺が服のデザインをすることになった……
って訳。
◇◇◇◇◇
時田さんの現状の説明が終わり、俺達は部屋を出て、部屋の外の通路に男女それ
ぞれに別れたロッカールームに入り早速制服に着替える。
ロッカーで着替えを終えた俺達は、一度中央コントロールルームへ戻り、お互い
の服を見せ合うことにした。
服の色は3種類、女子がピンクで男子が紺。
但し、俺だけは白。
ミオン曰く”勇者なんだから、私達とは違う色にしたら”って言うことで俺だけ
白なんだ。
色は違うが、デザインンは皆同じで、白い立て襟のシャツにベストそれに立て襟
の肩に金色のモップのようなフサフサが付き、袖の返しがある上着で、背中は燕尾
服のように2つに割れていて、それベルトに白いズボンで膝下までの革のロングブ
ーツを履いていると言う感じの服。
皆この服にそれぞれ、満足のようだ。
「ねぇ~セイア……あんた顔が子供っぽいから仮面つけない?」
ってミオンに言われた。
(それって、やんわり似合ってないって……ことかミオン?)
劇中のベルサイユのユリはベ〇サイユのバラで、アスカルはオ〇カルです。
当時の少女漫画で人気となり、後にアニメ化そして宝塚で上演されるなど一大ブームになりました。
豆ごはんは少女漫画が苦手ですが……これは覚えてます。




