98話 電龍の特技
部屋から出て、向かいの女子の棟の奥にある食堂になっている建物に俺は向かっ
た。
見た目は、前見た時のレンガ造り風の建物で、その建物の一番手前の扉から中に
入る。広さは学校の教室位で、中央に幅の広い大きな長いテーブルが設置されてお
り、そこにはすでに、ゲキ、エドナさんにクレアさん、そして、アイーシャさんに
シノブが席についていた。
俺も自分の席に着くと、時田さんが俺に言った。
「今回はここにきてすぐですので、簡単な昼食しかご用意できませんでした……」
そう言う時田さんに俺は、
「いえ、そんな気にしなくていいですよ」
と言いながら軽く会釈すると、
「もう少々、お待ちください、もうすぐラーキン様とラグナヴェール様がお越しに
なりますので……」
「あっ、はい」
俺がそう時田さんに言うと、時田さんはこの部屋とカウンターで仕切られた隣の厨
房へと向かう。
俺は自分の席から時田さんが入った厨房を立って覗いてみると、そこはここの
(食堂)の半分の広さで、大きな窯や焼き場、調理台が並び、まるでちょっとした
給食センターのように見えた。
(俺達10人分にしては大きな施設のようだが……)
そう思ったいたんだけど、後ほど時田さんに聞いたら、俺達だけでなく、シノブの
所のスタッフもここで食事をとるためだと説明してくれた。
(なるほど)
しばらく待っていると、ニールさんとソフィーも食堂にやって来て、全員そろっ
ての昼食をとる。
「今日は、冷やし中華とチャーハンにサラダでございます。」
そう言って、お盆に乗せたそれらを手際よく配る時田さん。
目の前に置かれたそのセットを見てエドナさんが目を輝かせて
「わぁ~これはラウメンとは違うのですか?」
と時田さんに聞く。
「はい、別の食べ物です」
そう答える時田さん。そして、例の食いしん坊2人には俺達のセット以外にから揚げてんこ盛りを置いた。
「「「「「「「「「いただきます!」」」」」」」」」
皆そろって、手を合わせて合掌してからお昼を頂く。
「う~ん!冷たくておいしい~また、そウめんとも違うんですねぇ~」
そう笑顔で言うエドナさんにゲキが食べながら言う。
「まぁ、そうめんもだが、これも夏の風物詩と言うか、食べ物だ」
「へぇ~そうなんですか」
ゲキの言葉に感心するエドナさん。
(エルフって麺好き?それともエドナさんが?)
2人の会話を聞きながら俺は心でそう呟きながら冷やし中華をすするのであった。
◇◇◇◇◇
お昼ご飯を食べ終わり、腹ごなしって言うかここの基地の整備のお手伝いをしよ
う~とミオンが提案。俺達も同意して地上へと上がった。
砦の(基地)の中心の3階建ての塔下部から外に出てみると……。
塔がある場所は少し小高くなった場所なので、砦(基地)の様子が見て取れる。
先ほど中央コントロール室のモニターで、ニールさんから説明を受けながら見た
風景。
砦(基地)の周りには水が張られた堀、その堀の外と内のフェンス。
そして、3時から6時の方向は更地になっているが、そのほかの所は、今だ朽ちかけた建物がそのままの状態……。
「うん?」
あるものを見て俺はそう呟いた。
「あれは……なんですか?」
と指差しながら、ニールさんに言うと。
俺が指差す方向を見たニールさんは
「ああ、あれは……なんでも飛行艇の滑走路だそうです。」
そう答えるニールさん。
この砦(基地)の地上での玄関は北側(アルブ王国の方角)だけなのだが、南にもゲートらしき物があるんだけど、そのゲートの先が……。
先が、幅30m以上でおよそ1.7kmくらいかな……の真っすぐな水のない空堀。
「?滑走路って……」
と俺の疑問にシノブが答えた。
「Mr.オオワシ……たぶんH-16……アルバトロスの滑走路に使うんだろう」
「「H-16?」」
とシノブの答えに、俺とミオンが声をそろえて言った。
「ああ、恐らく飛行艇アルバトロスのだと思うよ」
「「飛行艇?」」
とまた声をそろえて言う俺とミオンに笑いながらシノブが言う。
「ほら、さっき地上に出るときこの塔の1階部分にプロペラと星形エンジンが置いてあっただろう?」
そう言われ、思い返してみると、確かにプロペラのついた大きなエンジンらしきものや船底のような形をした飛行機のボディーらしきものがあったような。
「でもでも……滑走路ってあれはどう見ても水のない堀にしか見えないけど?」
と疑問を投げかけるミオンにシノブがウインクて言う。
「でも、あそこに水を張ったらどうなると思うMissシラトリ?」
「えっ、水を張ると水路……なるほどね」
とミオンが納得した。当然俺も心で納得したが……。
ゲキや、ニールさん以外の異世界組は、ぽか~んとしていた。
どうやら移動手段の一つとして時田さんは飛行艇の運用を考えているようだった。
とは言え、まだまだそれは先の話と言うことで、取り合えずは、目の前のことを
やって行くことにした俺達。
ってことで、残りの場所の朽ちた建物の撤去のお手伝い。
建物は基本、シノブの所の修復班の人達が重機を使って壊していたのだが、建物
を壊そうとショベルカーなどが近づくと、建物の中からものすごい勢いで小型の魔
物が飛び出してきて、重機を攻撃するのだとか、流石に重機を破壊するほどのパワ
ーはないが、ショベルカーなどの重機の操縦席のフロントガラスを割ったりして、
作業がなかなか、はかどらないし、重機には効かないが、生身の人間がその攻撃を
受けると大怪我をしてしまうらしい。
その魔物ってのが
≪名称 アルミラージ≫
≪戦闘力 500≫
≪防御力 200≫
≪スピード 150≫
≪MP 50≫
≪特技 ジャンプ、頭に生えた角での突撃≫
普通のうさぎよりは大きく毛は黄色く、真っ黒な螺旋状の1本角を持つ非常に獰猛
な肉食獣で、自分より大きな獣でも襲う。
鋭い角で刺した獲物を旺盛な食欲でたいらげてしまう。(人も襲う)
角の長さは40~60cmと言う魔物だそうだ。
おそらく、俺達がイーシャイナ王国に向かった留守中に入り込んだのかもって言
うのが時田さんの見解。
俺達に代わり留守を守っていた、シノブの所の警備兵達は主に地下施設の警備を
していたので、地上まで手が回ってなかったためだろうと言っていた。
時間は掛かるが、まず、アルミラージ達を1匹づつ俺達が狩ってから修復班の人
達に建物を順次壊してもらうのが、妥当だろうな……と考えてる矢先にミオンが俺
に言う。
「じゃ~さ、セイアここはひとつガルーダ・スパークで一気に……」
と言うミオンに俺やゲキが横に首を振り、
「なに言ってんだミオンそんなことしたらこの基地事破壊してしまうぞ!」
と無邪気に言うミオンに俺が真顔で言うと、
「じゃ、プラズマボールは……」
と屈託のない顔で俺に言うミオン。
「確かにそれなら……っておいおい、廃墟に隣接してるフェンスとかが溶けるぞミ
オン」
と一瞬ミオンの案に同意しかけたが、思い直した俺が言う。
「それなら、うちのDaddyに言って戦車持ってこようか?Mrオオワシ」
とこれまた屈託のない笑顔で言うシノブ。
そんなシノブにゲキがぽつりと言った。
「もし、戦車が有効なら時田さんはとっくに実践してないかメイトリックス」
「ああ、それもそうだねMr.シモトウゲ」
そんな会話をしている時だった。
ソフィーが持っていたコンパクト(モンスターカプセル)が、カタカタ言い出し
た。
「電ちゃんさんが、何か言いたそうなんですが」
「えっ電ちゃんが?」
ソフィーの言葉にミオンが言う。
「じゃ、あそこの整地されたスペースまで移動しよう……ここだとこの塔ごと破壊
されてしまいそうだから」
俺がそう言って、皆も同意したので、既に建物を取り潰し整地されたスペースへ俺
達は移動し、そこで改めてソフィーに言った。
「ここなら大丈夫だろう……。ソフィー電龍を出してくれていいよ」
「はい、わかりました。」
そう言ってソフィーはコンパクト(モンスターカプセル)の蓋を俺達がいない方に
向けると、
「いでよ、電龍~!」
そうソフィーが叫ぶとコンパクトの蓋が開き、勢いよく何かが飛び出した。
”ドスン”
と言う地響きと共に身長25mの電龍が現れた。
「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャ~ン」
(あれ?どかで聞いたようなセリフ)
出て来てそう言う電龍に、ミオンが迷惑そうに言う。
「あんたねぇ~出て来る時はいつものように30Cmの大きさで出てきなさいよ!」
「いきなり、その大きさで出て来るってびっっくりするでしょ」
少し、プンプンしながら言うミオンに電龍はすまなさそうに、頭を下げ。
「ごめんチャイ、ミオンっち」
とミオンに謝る電龍。その時、ゲキが不意に電龍に言った。
「ところで、電龍。その頭の上についてるものはなんだ?」
「ああ、これ……これはねぇ~ニールっちが作ってくれた操り防止の魔動機」
頭をゲキの方に向け言う電龍。
そのやり取りで、俺も電龍の頭を見て見ると、電龍の頭にあるブレード状態の角
の根元に、俺達の世界で言う中華丸帽子……。よく中国の時代劇に出て来るフチな
しの円い半円状の帽子のようだった。
そこから電龍の角が突き出た状態でハマっていると言うか、かぶってるというか
そんな感じ。
例のソフィーの誕生日で披露されなかった、ニールさんからソフィーへの誕生日
プレゼント……ってのがこれって訳。
ニールさん曰く、操り防止の魔動機事態作るのは、そんなに難しくないそうなん
だけど、なんせ、電龍は身長が30Cmから25mまで変えれるので、それに合わ
せて、同じ比率になるよう魔動機に仕込むのに苦労したらしい。
それは、さておき、電龍が言うのには、建物の破壊と魔物退治を自分ならいっぺ
んに出来るからやらせてほしいと言うのだ。
と言うことで、早速電龍にやってもらうことにした。
電龍はその小さな羽をパタパタさせて、まず、空中に浮くと振り向きざまに尻尾
を朽ちた建物に向け、横に縦に縦横無尽振るい建物を次々と破壊する。
”ドスン””メキメキ””バリバリ””ガシャン”
そして、思い切り口を開け息を吸い込むと、破壊された建物の残骸や建物が破壊さ
れ押しつぶされたアルミラージの死骸並びに逃げ惑うアルミラージをも吸いつくす
電龍。
あっと言う間にそこはきれいになった……が、次に電龍はそこに今飲み込んだで
あろうものを次々に吐き出す!?
砂、木材、金属、そして皮、角……それぞれ分別してきれいに片付いた地面に吐
き出した。
因みに、砂は壁に使われていた石、そして皮はアルミラージので、防寒用の生地
として売れるそうだ。
そして角もアルミラージの物で、これがけっこな値段で売れる代物らしい、特に東
のカカ帝国では細工物やハンコの材料として……言わば、俺達の世界で言う象牙の
ようなものらしい。
あっけにとられる俺達。
その俺達に電龍が言った。
「悪いけどアルミラージの肉だけは僕のお腹の中だからねぇ~」
こうして、夕方までにはブレイブ基地はきれいに整地されるのであった。
(何なんだ~こいつの特技は……)
劇中の電龍の特技は、昔、豆ごはんは小さいときに放映されていたアニメおらぁグ〇ラだどの主人公の怪獣の特技を参考にしましたグ〇ラは鉄を食べ火を吐けるのですが、時折食べてはいけない鉄類例えば
家で使うフライパンや、パパさんのゴルフクラブなど、グ〇ラは怒られて食べたものを吐き出すと、さ錆びていたものが新品同様に変わると言う特技がありました。(笑)
また、劇中の電龍のセリフ「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャ~ン」はご存知アニメ、ハクション大〇王が壺から出て来るときのセリフです。




