0話 プロローグ 上から降ってきた女の子
俺は、大鷲青空マンガ研究部に所属する高校2年生。今、うちの部で共同制作しているヒーロー漫画のヒーローキャラクターをタブレットに描いているところ。
◇◇◇◇◇
俺は、父親のアニメ・特撮オタクの影響を受けその方面の知識はかなり豊富だと思う。それに、子供のころから絵を描くのが好きだったので、それなりに絵が上手だと言われてる。それを知っている幼馴染みの白鳥美音が高校入学後、俺を強引に この マンガ研究部に誘った。
彼女は、幼稚園からの幼馴染で、幼馴染の俺から見ても美人で、スタイルも良くそして聡明…… だが、いかんせん性格に難あり。わがままで、傲慢、常に人に対して上から目線。それに……根っからのオタク。
俺をマンガ研究部に誘ったのだって……いや半ば強制だったか?(笑)自分が入りたいが……絵を描くのが苦手ってか……正直、ものす~ご~く残念な絵。ハッキリ言って3歳児が描く絵より下手。今回は、ミオンが設定ストーリを考え俺が描くことになっている。
あっ!そうそう、うちのマン研にはもう一人部員がいたな……忍・メイトリックス(シノブメイトリックス)。
アメリカ人の父と日本人の母を持つハーフの男子。こいつも言わずと知れたオタクのハーフ。
クールジャパンに憧れ、アメリカからわざわざこの高校に入学してきた。この高校に入ったのは当然 マン研があったからってことだ。こいつは、特撮・アニメ・まんが・だけでなく軍オタでもある。
細マッチョ、でブルーの瞳で金髪。一見、モテそうだが、髪はボサボサで、今時珍しい黒縁メガネに分厚いレンズと言う結構残念な見た目。
今回のマンガでは、主に武器や主要メカの監修役である。まぁ、要するにこいつも絵が描けない訳だが……
俺達が入部当初は、部員ももっといたが、3年生の先輩たちが卒業すると今の俺達3人だけになった。
その原因は……ミオンにある……。彼女の仕切りっていうか、自分勝手な態度に折角入部した1年生達が次々やめて……結局、俺達3人になった。
◇◇◇◇
「ふぅ~っ……こんなもんかな」
誰もいない美術室で、俺はタブレットに描き終えたヒーローの絵をチェックしながら、独りごちる俺。画像のチェックを一通り済ませ、タブレットを机に置き、椅子に座ったまま「ふぁっ~!」と大きく伸びをした。
(後はこれをシノブとミオンに見せる……)
と思ったその時!カタカタタっと机の上のタブレットが揺れだしたと思ったら、グラグラ~と教室が揺れた。
「ぐっ!……わぁ~~」
「地震!?」
俺は慌てて、教室の壁側に背中を預け足に力を入れて、踏ん張って地震の揺れに耐えていると。不意に揺れが止まったかと思った瞬間!俺の目の前にドスンと物体が落ちてきた。
「うゎっ!」
俺は驚き、思わず声を出した。そして、恐る恐るその物体を遠巻きに観察した。仰向けに倒れてるそれは、ヨーロッパ系の顔立ちをし、髪はグリーン。ローブのようなものを着て、耳は……尖がってる?手には何かの木でできた杖を握りしめ気を失って倒れている男。
(これは何かのコスプレ?)
その男に近づき、男が落ちてきたであろう天井を見上げる。天井には、穴と言うか何か黒い雲のようなものがウニョウニョ動いている。
(いったい何なんだ!)
と思いながら、俺は天井に浮かぶそのウニョウニョを見上げてポカーンと、していると……
「キャー!!!」
と女性の悲鳴らしき声とともに、俺の頭上のウネウネから降ってきた……女の子が!
俺は、降ってきた女の子の下敷きになり床に頭を強く打ちつける。
「痛って~!!」
頭を強く打ちつけたせいか、しばらく俺は気を失ってようだ……
俺は、体を強く揺さぶられるのを感じ、ぼーっとしながらも体を起こすが、視界がぼやけてよく状況が分からない。ぼやけた視界に、人の顔らしきものが近づいてきたのが感じられた。そして、ぼやけた視界から徐々に視界が戻って来ると……近づく顔と目が合う。
「うわっ!」
思わず俺の目の前の顔の近さに驚き声をあげる。その声に驚いたのか、近づいてきた顔も少し俺の顔から距離をとる。そこには、涙目で俺を心配している女の子の顔があった。
「すっげ—――!かわいい♪」
俺は、目の前の少女の顔を見て、つい口走ってしまった。
青髪のセミロングの髪に、ブルーの瞳。きゃしゃな腕。そして、どこかのお姫様のような薄いピンクのドレス。ホント二次元の少女がそのまま飛び出してきた感じの美少女が俺の目の前に居る。
しばらく、彼女に見とれていると……少女が、
「※△◇◎☆¶§¨×ΘΛΓΞΨΠЮ」
(何か一生懸命しゃべっているようだが、意味が全然わからん!)
「ΞΨΠЮ◇◎¨×Θ☆¶§ΛΓ※△」
さらに、俺に涙目で何かを訴えている。
俺が困惑していると……何かを感じたのか、その少女は自分の胸の前で手を組み、何かブツブツと独り言をったかと思ったら、突然!俺の頭の中に声がした。
≪早く逃げて!≫
「えっ―――!」
その頭の中に響く声に驚き俺は叫んだ。驚き目を見開いたままの俺の手を彼女が取り俺を立たせようとした時だった。ドスン!と物凄い音がした。音のする方に振り返る俺と彼女。
その目の前には、天井のウネウネから降りたであろう物体が3つ。2つは身長2mくらいで緑色の体皮膚で筋肉モリモリの大男。
(ファンタジーゲームに出てくるオークっぽいな。)
そして1つは、身長2mくらいで、黒っぽい紫色の体皮で筋肉質、顔の色は緑で目は爬虫類ぽい。腕や足首筋に黒い鱗で覆われていて尻尾があり、顔は頭巾のようなものにおおわれ、その頭巾の上には蛇の顔があり、マントを羽織ってる。
その黒っぽい紫色の男が、こちらに近づき、
「¨×Θ☆¶§◇◎¨※△Ξ」
と声をあげると同時に俺の頭の中に、
≪手こずらせおって……さあこっちに来い≫
という言葉が鳴り響いた。
≪嫌です!≫
と彼女が?言ったらしい。
嫌がる彼女の手をその黒っぽい紫色の男が乱暴につかみ引っ張る。俺は彼女の手から、その男の手を払い。
「何すんだよ!嫌がってるじゃないか。」
と言いながら、男と彼女の間に立ち男に向かって言い放つ。
≪なんだ!?小僧邪魔立てする気か……≫
と頭に響く男の声と同時に、俺は”ひょい”とその男に持ち上げられ、
≪邪魔だ!!≫
と言って俺を教室の壁に投げつけた。
”ドスン!”と言う鈍い音とともに俺は壁に後ろ向きで激突。俺は壁に激突とともに、
「ぐっわっ!」
声を出し、壁からずり落ちながらも踏ん張って立とうとするが、今の衝撃で全身の骨が砕けたらしく体に力が入らない。口からゴボゴボと血が出てきた。
(あ~……俺、死ぬんだな)
薄れゆく意識の中で俺はそう思いながら彼女を見つめていた。彼女は必死で俺に駆け寄り、涙を流しながら俺にしがみついている。普通なら、こんな可愛い子にしがみ付かれたら至福の時なんだろうけど、今の俺には、感覚がすでになく何も感じられない。
黒っぽい紫色の男に命令された、オークっぽい奴の1人が、女の子を引きはがそうとするが、いくらやっても剥がすことが出来ないでいる。
(彼女、結構力持ち?)
なんて考えていたら、そのオークぽい奴が俺もろとも、しがみつく彼女を、美術室天井にある黒いウネウネに向かって投げつけた。
俺と彼女は天井のウネウネに突っ込む。
◇◇◇◇◇
ウネウネの中はなんかトンネルっぽい作りのようだ。暗いトンネルの中を彼女と通り抜けながら、俺は思う。
(折角こんなかわいい子に出会えたのに……俺にもっと力があればな……例えば、さっき描いていた”マンガのヒーロー”のような力があれば、彼女を守ってあげられたのに……)
そう思いながら俺の意識は途切れた。