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17 周囲と違うスピードで

12月の慌ただしさとクリスマスの楽しい暖かな気分を、バイクを通して書いてみました。

 加速だけがバイクの魅力ではない。

 以前にここでそう記した。

 バイクがくれるもの、バイクに乗ることによって得られるものは、色々なものを認識する力、感じる力じゃないだろうかと私は思う。

 ゆっくりとバイクを走らせる時、よくそんな風に感じる。

 ある日、仕事を昼で早あがりして、いつもの通勤路を家に向かう。

 12月の平日、金曜日の午後。

 世間はあと2週間をきった残り(わず)かな『今年』という時間に()かされ、(あわただ)しく動いている。

 そんな中をバイクの背に跨り、普段よりゆっくりとしたスピードで、トトトというエンジン音を聞きながら抜けていく。

 すれ違うトラックのドライバーも、買い物に向かうらしいコンパクトカーの女性も、肩をいからせ、眉間にシワをよせているように見えた。

 急にポンと空いた時間の中で、私だけがいつも加速をもたらしてくれるバイクの背にいながらにして、周囲の世界よりゆっくりと…いや、(ゆる)やかに世界を進んでいく。

 お先にどうぞ。

 先を譲っても、誰もがこちらを見もせずに、スピードを上げて通り過ぎていく。

 12月の空気は冷たいが、風は穏やかで、陽射しが少し暖かい。

 いつも前方に向かって加速をする意識を、心持ちスローダウンさせる。

 アクセルを開ける角度を普段より小さく、エンジンの鼓動音を穏やかなリズムに留め、その音に載せて感覚の手のひらを周囲の世界に向けて広げていく。

 民家の窓辺を飾るクリスマスツリーのオーナメントが、暖かい陽射しの中でこちらに笑顔を向けていた。

 コンビニの窓には白いサンタクロースや雪の結晶の絵が描かれている。

 ピザ屋の宅配スクーターには若いサンタクロースが跨っていた。

 冷たい空気がヘルメット越しに流れていくのに、気持ちがなんだか温かくなる。

 周囲は、残り少ない12月の加速度に巻き込まれるように、苛立ち混じりに人が行き交う。

 自分のスピードで進むことが出来ればこんなにも温かな気持ちになれるのに。

 エンジンの回転数を高回転まで引っ張らず、音が心地よい辺りでポンとシフトアップした。

 加速は穏やかで、体に当たる空気は親しげなくらい優しい。

 自宅への道から脇に逸れ、少し遠回りする。

 忙しく通り過ぎるクルマの流れとは逆方向の行く先。

 ウィンカーを出して農道に入り、わずかにペースを上げる。

 それでもエンジン音に余裕がある程度の回転数。

 12月の田んぼ道は寂しいくらい何も無いが、遥か遠くまで見渡せて気持ちがいい。

 大きな鳥がゆったりと羽ばたきながら空を横切ってゆく。

 バイクの上空で進行方向を変え、並んだ。

 お互いこんな日はのんびり行くのが気持ち良いな。

 そんな風に声をかけてきそうだ。

 空は薄い水色で、空気と同じく透き通っている。

 農道は溜池を迂回するように緩やかにカーブし始める。

 私とバイクは体を斜めに倒しながら弧を描いていき、鳥はそのまま真っ直ぐに飛び去っていく。

 街ではクリスマスソングの中を人々が忙しく行き交うのに、私とバイクは何も無い田んぼの真ん中の道をいつもより緩やかに進んでいく。

 またウィンカーを出して街の方向にバイクを向けた。

 田んぼの向こうに国道を走る車列が見える。

 みんながせわしなく移動し、急かされることにイラついているように見えた。

 せっかく空いたこの時間も、きっと今までの私なら、あの中の1人としてイラつきながらクルマを運転していたことだろう。

 バイクが、この相棒がいてくれてよかった。

 こうして、意識を研ぎ澄ますような加速でなくとも、周囲と異なる自分のスピードで世界を認識することが出来れば、冷たい空気の冬の日にも、温かな陽射しとクリスマスの楽しげな気分をちゃんと感じられる。

 さあ、帰ろう。

 スピードを上げる必要は無い。

 お急ぎの方はお先にどうぞ。

 周りとスピードが違っても、私は私のスピードで、世界を楽しませていただきます。

 『今年』が終わっても、何もかもが終わってしまう訳じゃないんですよ。

 ちゃんと『来年』という新しい1年が待っていますから。

 ちゃんと自分のスピードで、周囲と違うスピードで行こう。

クリスマスって子供の頃はただ楽しくケーキを食べて、オモチャを買ってもらってというイベントでしたかね(>_<)ゞ

今はケーキを買って、オモチャを買わされる立場ですが、同時に暖かい気持ちになります(^^ゞ

家族に感謝ですね(^-^)

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