09 雨とバイクのこと
今回も短いエピソードです。
雨が降ったらバイクには乗りませんか?
私は雨男ではないんですが、出先で降られることはよくあります。
そんな時に感じたことです。
バイクには屋根が無い。
搭乗者をおおう壁もない。
そこが良い。
バイクは直接風や温度を感じ、世界とつながったまま走る乗り物だ。
そしてそれは、雨の日でも同じだ。
雨の日にはバイクに乗らないと言うバイク乗りも多いだろう。
それは正しい。
雨は視界を奪い、路面を滑りやすくし、ライダーの体温と体力を削り取る。
雨が降ったら乗らないというのは、事故を起さないため、ケガをしないために、ライダーとして正しい判断だと思う。
ただし、これが出来るのはバイクで家を出る前と、時間とお金を自由に使える一部の特別なヒトだけだ。出かけた先で「あー、降ってきちゃった…」という多くのライダーには、この選択肢は使えない。
それに、常に正しい判断だけをしなければならない訳でもない。
私は、技術的にはまだまだ未熟ではあるが、雨の日に乗るバイクも好きだ。
もともと雨が嫌いではない。
雨の日は、いつも聞こえるさまざまな音が包み込まれるように覆い隠され、静かに感じる。
湿った空気は雨の匂いでいっぱいになり、視界は霞がかかったように白っぽくなる。
スピードを抑え、路面状況に注意をしながら、レインウェアを着込んでそんな中を走る。
街から離れるほどにヒトもクルマも減っていき、世界が貸し切りになったみたいに感じる。
そして、足元の路面で水を蹴立てるシャーと言う音とエンジン音だけが世界を満たし、霞をまとった世界が私の物になる。
これが意外に気持ち良い。
ただし、雨の日のバイクは怖い部分もある。
マンホールや工事中の鉄板には特に気を使う。
濡れて摩擦抵抗の極端に減った路面は、常にライダーとバイクの足下をすくってやろうと待ち構えているからだ。
気を抜いて斜めにタイヤを乗せたりすると、ツッと簡単にタイヤを横にすっ飛ばされる。
ヘルメットのシールドは雨に濡れて視界が悪くなる。レインウェアもキチンと手入れをしておかないと、だんだん雨が浸みてきたり、中が蒸れてサウナスーツのような状態になることがある。ブーツの中も濡れてしまうと気持ちが悪い。
先を急ぎたい時の雨は、まるで銃弾を浴びせるように激しく体を叩き、いつも以上に気力と体力を奪っていく。
こんな風に雨の日のバイクはマイナスの面が多い。
それでも、私は雨の日に乗る価値はあると思う。
雨の日は不安がたくさんあって、でも静かで、空気も少しだけ優しい気がする。
私だけかもしれないが、雨の日のバイクはそんな風に少しだけ特別なのだ。
それに、雨が上がった瞬間の陽の光を見ることが出来るのも雨の日に走ったバイク乗りだけだ。
だから、雨の日でも走るバイク乗り達がいる…‥のかもしれない。
雨の運転は気疲れしますけど、キライじゃないですね。
ヘルメットの中が曇るのはちょっといただけないですけどね。