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愚者な俺と悪魔な彼女  作者: 天野遥
魔術師の襲撃
6/10

正義のヒーローはいると思うか?


『おい、おいっ』


僕の答えは断固としてnoだ。


『目をあけてくれっ』


自分の声がどこか遠くから聞こえてくる。


どこか朧気にさえ感じる。


それでも考えを進める。


ヒーロー達は地球や仲間を守ると言いながら力によって結果的に人の大切なものを奪っていく。


『死ぬんじゃねえよ』


思い出の詰まったものや場所を根こそぎだ。


『まだ、約束おわってないだろ』


やっていることは敵と全く同じ。


確かに守るために努力してるかもしれないけど、


結果的に元通りに場所とか大切なものを直したり、誰かの心を慰めたりするのは非力な人間だ。


昔は誰かを守り、戦うことにあこがれていた時期もあった。


自分もいつか大切な人を守りたいとさえ思っていた。


だけど、本当につらい時や苦しい時に助けてくれたり、支えてくれるヒーローなんていない。


それにヒーローだってきっと辛いだろう。


だれにも分かってもらえずヒーロー自身だってきっと孤独なはずだ。


誰も救われない、報われないこの世界に正義や幸せが本当にあるのだろうか。


確かに僕が言っていることは間違っているかもしれないし、


八つ当たりがしたいだけなんてことは自分にだって分かっているつもりだ。


『うぉおおおおおおおおおお』 


野獣のような雄たけびを上げながら僕は言葉に表現できない何かに向かって叫んでいた。


でも、燃え盛る炎の中でそれでも僕は思う、傍らに大切な人を抱きながら。


だから……、僕はヒーローになんてなりたくない。






やみの王子「オ例も」








辺り一面を焼き尽くす炎。


聖書の時代から語り継がれている災厄の数々。


悪魔は容赦なく人の命を刈り取り、世界を恐怖のどん底に突き落とした。


まるで底なしの泥沼や逃れられない蟻地獄のように。


「止めてくれ、この子だけは……」


≪悪魔≫は聞き飽きていた。


出会う人間出会う人間が命を助けることを望み、立ち向かってくることもせず、


ただ助命を願うのみ。


絶望のみをその体に宿し一体何が出来るのか。


知恵も使わず、なんの意思もない人間に果して何を成し遂げられるのか。


「知っているか、人間よ。親が子を守る精神というのは愛なんかじゃなく、


自分の大切なものが一つなくなることが怖いからわが子を守るのだぞ。


どうせ今お前が死んでもこの子は生きられまい」


そう言いつつ懐に刺した脇差を振りかぶった。


父親は自分たちがこの悪魔によって生命の息吹を刈り取られることを悟った。


唯一の心残りは娘を救えなかった事だろうか。


そして死への恐怖があふれ出ながらも悪魔に背を向け娘を守ろうと抱え込んだ。


その背中に無慈悲にも悪魔は刃を振り下ろした。


「…………?」


いくら待っても来るべきはずの痛みが来ない。


背後に立つ気配を感じ後ろを振り返る。


そこには自分よりも一回り程小さい少年が悪魔の剣をさも


当然かのように受け止めている姿が見えた。


戦闘服ではないから軍人ではないだろうが


相当場数を踏んできていることが覗える。


そんな父親に向かって彼は叫んだ。


「早くここを立ち去れ。いついかなる時でも諦めるな。生きることのみ考えろ」


父親は少年に感謝しながら戦火の最中を被害の少ない方に離れていく。


それを見届けた後悪魔はふと思った事を聞いた。


「なぜお前はあやつらを逃がした。


あやつらがこの戦火の中生き延びれるなど所詮世迷いごとでしかない」


「俺は少しの可能性に賭けてみただけだ。なんせ俺は人を信じることしかできない“愚王”だからなっ」


しばしの静寂の後、剣戟の交わる音が辺り一面に響いた。



















時は2075年、クリスマス。


歴史にその名を残す最悪の日。


時の教皇はひた隠しにしていたファティマ第3の予言を事件の起こる半年前に全貌を露わにした。


当初世界は事件が起こることに対し理解を示さなかった。


物語の中に現れる架空の存在が本当に居るわけがない大勢の人が詰った。


教皇庁の連中はどうかしている、誰もがそう思ったに違いない。


何十年間もその正体を隠し続け教皇すらも卒倒してしまったほどの大事件はまるで幻想の世界であり、


真相が子供の悪ふざけよりも性質が悪かった。


そう性質が悪かったのだ。




悪魔の襲来。




近年そのように呼ばれる一回目の襲撃は人類勢の軒並みがそろわない中はじめられた。


結果は人類勢の火力不足や指令が朝令暮改などしたため敗北、何カ国もの国が悪魔たちによって滅ぼされ、


人類勢は劣勢に追い込まれた。


そこに現れたのが7人の偉大なる能力者達だった。


彼らは自らのお














瞼をひらくと、空は目が染まるほどに鮮やかな赤に染まっていた。

黄昏時の赤は自然と心が和む、そして睡魔が襲ってくる。

元々人は太陽の動きによって生活リズムを決めていたんだ、

だから俺が2度寝してしまうのも無理はない、

そう結論づけるも場所が場所なだけにコンクリートとのスキンシップを夢うつつにあきらめる。

学校の屋上はいつも鍵がかかっているのだが、

よく用務員のおばさんが掃除をし終わった後、鍵を閉めることを忘れるので、

部活をさぼって昼寝をするのにもってこいの場所だった。

今日はバイトのシフトもない。よってのびのびと休みの時間を満喫することが出来た。

彼のとっておきの昼寝場所である。

時に今の時期は午後の風は暑くもなく涼しくもなくとても過ごしやすい。

今日は正に絶好の日向ぼっこ日よりだったのだ。

そんな一般の高校生は勉強しているであろう時間から授業をさぼるこの男こそ

篠崎智春、すなわち俺である。

帰るかと誰にともなく呟き、

危ない危ないと思いながら携帯を取り出す。

時計の長針は今まさに6時を指そうとしていた。

完全に帰宅予定時間を過ぎてしまっている。

本当は5時には帰るつもりだったのにと自分が悪いはずなのにもかかわらず悪態が口から出てしまう。

軽い焦りを感じた時には学校指定のカバンを肩にかけて走っていた。

寮の門限が学生は夜遅くまで遊んではならないという寮の規則から7時に門を閉じてしまうのだ。

諸事情から彼は昔から寮に住んでいるのだが、昔から生活態度には煩かった。

5時には寮に帰宅など遊び盛りの子供にとっては辛いものだったと今でも思い出す。

7時を超すと中には簡単には入れない。

二回ほど門限の時間に遅れてしまったのだが、

反省文は書かさせられるし、

晩御飯も食べさせてもらえない。

寮の門限が早すぎるような気がするのだが、

部活に(真面目に)入っているやつはどうしてるんだろうな、

なんていくら考えても価値を見いだせないようなことを考えながら廊下の階段を駆け降りると、

校門の前に誰かが立っているのが見えた。

いや、否応なく目に入ってきた。

髪はウェーブがかかったブロンドで頬は百合のように白く、

目は渓流の水のように深い翠で道を歩いてるほとんどの人が振り返るぐらい色沢やかだった。

たぶん外国の留学生とか研修生あたりだろう。

見れば小動物のような仕草で頻りに辺りを見渡していた。

そんな子が校門にいれば周囲の注目を浴びないはずがなく、

よそ見していた野球部員が「練習しろ!」と先輩にはたかれていた。

へー、うちにもこんなかわいい子と付き合っているやつがいるんだ、

なんて思いながら彼女のそばを通り過ぎようとすると、

透き通るようでどこかに吸いこまれてしまうかのような声で呼びとめられた。

「篠崎さんという方を探しているのですが、お知り合いでしょうか?」

矢庭に自分の名前を呼ばれた、そう勘違いをしていたのははたしてどのくらいのことだっただろうか。

一瞬の逡巡の後、混乱は次第に疑問に変わっていく。

これって俺のこと待ってたのか?

いやいやいや、そんなことはないだろ。

口には出さないが顔には『どうしよう』という文字が傍からにはよく見えた。

この人に会ったり話をしたりした記憶もない。

たぶん俺の知らない同級生か先輩を待ってるんだろう。

よく考えたら篠崎って名字もそんなに珍しい名字ってわけでもない。

でも、そんなこと言われても俺一年だし、

この学校に来てから3か月ぐらいしか経ってないんですが。

「篠崎さんですか?私も一応篠崎なのですが……。さすがに僕は違うでしょうし」

そう言うと少し残念そうに

「そうですか。では待ちます。教えてくれてありがとうございました」

と、軽く微笑みながら挨拶してくれた。

「どういたしまして。また困ったことがあったら聞いて下さい」

「ありがとうございました」

彼女の声を後にして俺は振り返りもせず校門を出た。












私立海浜高校。

それが今現在俺が通っている高校だ。

なぜ俺が海浜高校に通っているか、

それは学費が安いからである。

いや、安いというのは間違いだ。

この学校は奨学金制度を導入しているため学費がである。

また、寮があるため寮費を稼ぐだけで済むのは好都合なのだ。

俺がここまで金に困っている理由、それは家族にある。

まずじいちゃん。

剣道8段、柔道7段、槍道5段、空手道6段、合気道4段。

カポエラ、マーシャルアーツ、バリツ、ジュウクンドー師範。

篠崎流武術開祖でもある。

……自分でも言っててよく分からない。

この爺さんはそれぞれ武道ごとに別の道場を建て、

その代金のせいで借金に追われている。

それなのに競馬とかパチンコで遊びながら暮らしているという体たらく。

まあ、ちゃんと道場や遊び代のお金は自分で稼いでるんだけど……、演舞とかで。

師範……。

まあ、そんなわけでお金は出してもらえない。

次にばあちゃん。

この人は元々公安の女狐と呼ばれていたらしく、

拳銃の扱いや逮捕術に優れている。

また当時から貯めていた金があるはずなのだが、

守銭奴なので渡してくれるはずがなく……。

母さんはといえばこれまた公安の外事に所属していたらしいく、

親父とは内戦地域で出会ったらしい。

この人も常時どこかに旅に出ているのであてに出来ない。

最後に親父。

こいつが一番の曲者だ。

親父は戦場カメラマンなのだが、

内戦が起こったせいで家族を失った少女のために内戦を終わらせたらしい。

まず火器を支援していた軍事会社を壊滅させた。

その次にSealsやGreenberet、Delta Forceなんかとも戦ったらしい。

そんな彼は現在も戦場で戦っているのでアウト。

そんなこんなで自分のことは自分でやらなければならずこの学校を受験したのだ。

そんなわけで俺はここにいる。






なむなむ荘は学校から徒歩12分、バス4分の小高い丘の上に立っている。

学校から遠くもなく近くもない距離にある。

普段俺は走って学校に通っているのだが今回ばかりは急いでいたのでバスに乗って帰った。

バスの中は仕事帰りの会社員や帰り途中と見られる学生で明太子の中の卵のように

パンパンになっていた。

しかしなるべく早く帰った方が良いのは事実。

なので、仕方なくバスに乗ることにした。

ぎゅうぎゅう詰になったとしてもホテルに泊まることの方が財布の事情的に辛い。

だから汗まみれになったサラリーマンと俺は必死に戦う。そう決めたんだ。

そんな訳でサラリーマンと必死に戦っていた俺は、

この後の惨状を引き起こした張本人が俺のことに気付かなかった。





「ただいま、ばあちゃん」


「お帰りさね、今日はずいぶん遅かったね」


「そうでもないだろ、だいたい門限が早すぎるんだよ、

いまどきの高校生は5時になんて帰らねえよ」


「そうかい、私の頃は高校なんてなかったからな」


「そんなことはどうでもいいんだよ、今日の夕飯何?」


「ガーリックシュリンプと真鯛のポワレじゃよ」


「さっきまで昔の日本の話だったのに突然ヨーロッパの話になったな」

なぜだか分からないがこのばあちゃん昔から和食より洋食の方がおいしいので

しょっちゅう洋食が出てくる。

「食べれるものだったらなんでも感謝して食べることが一番大事な事じゃろうに」


「そうなんだけどなんか納得いかない、普通話からいって和食だろ」


「偏見じゃな、さっさとバッグを置いてこい。

そうしないとまたあの馬鹿に全部食われるぞ」


そんな他愛もない話をしながら俺の人生は過ぎていくのかなと思いながら階段を上る。


正に彼が思い描いた夢は数十秒後に覆されることとなった。


俺は鍵を取り出しドアを開けた。


さっき話しかけて来た少女がいた。


そして主人公は戦いに巻き込まれやがて彼女と恋に落ち戦いを通して強くなっていくのだ………


と今よんでいるような本ならそうなるだろう。


だけど現実だったらそんなことになるはずかない。


ここで俺が考えついた理由は3つ


一つ目、却下。


こんな可愛い子が泥棒なはずがない。


もし泥棒だったら………だったら……許す。


可愛い子は何をしても許されると誰かが言っていた。


次に二つ目、これも却下だ。


夢かどうかなんて自分でも分かる。


これは明晰夢なんかではない、


もし夢ならこのまま夢を見させて欲しい。頼む、頼むから!!


なら三つ目だな。


俺は大きく息を吸った。


「すいません、部屋間違えました」


寝不足かな、変な幻覚が見える。


昼寝してたんだけど、


でも部屋の番号はあってるはずなんだけど。


「ちょ、ちょっと待ってください」


「待ちませんよ」


「ふぇ」

と、彼女は間抜けな声を出していた。


「ストーカーの言うことなんか聞きません。僕がかっこいいからつけて来たんでしょ。言い訳なんて聞きたくありません。続きは署でお願いします」


「か、かっこいい?それはともかく私はストーカーなんかではありません」


なんで、なんで。


「疑問形で僕に聞かないでください。ツッコんで欲しかったのに……。じゃあなんでここにいるんですか?」


「そ、それは……。って、携帯を取り出してどうするんですか?」


「二進法の数字を打ち込むんですよ」


「あぁ、1と0のやつですね。私知ってます………って、警察呼ばないでください。信じてください」


必死になって止める彼女は少し可愛くて、

仕方なく、本当仕方なく、俺は携帯をしまうと彼女に聞いた。


「どうしてうちにいるのか説明してもらってもよろしいですか?」


一瞬の間の後、


「まぁとにかく座ってください。これ、座布団です」


「やですよ、ていうかあなたの使ってる座布団俺のなんですけど。他人の家にずかずか入ってくるなんて非常識ですよ。こういうの四字熟語でなんていうか分かります?」


「清廉潔白?」


「ちがーう」


「孤軍奮闘?」


「真面目にかんがえてるのか?」


「残念無双?」


「お前自分のことどう思ってんの⁉︎それ四字熟語じゃないし」


顔の割にほとほと残念なやつだった。


「私の名前はアイリス ベレスフォード。

アイリスって呼んで下さい。呼んでくれないと怒っちゃうぞ」


そう言ってほおを膨らませながら顔を近づけてくるアイリスに俺は少し声が裏返ってしまいながら、。


「っ、で、何の用だ?早く帰ってくれないか?早くしないとアン○ンマンが始まっちゃうじゃないか」


「それ話早く終わらしたいだけですよね!」


と、すぐさまツッコミが飛んできた。

「そんなことはないよ。ちゃんと話聞いてたよ」


「私の名前は?」


「もちろん分かるよ。ストゥーピッド コックローチだろ」


「全然話聞いてないじゃないですか。っていうかさりげなく私バカにされてません?」


してる。


「……そんなことより」


「そんなことより⁉︎」


「どうやって部屋に入って来たんだ。鍵がかかっていたはずなんだが」


「あぁ、それは窓を壊して中に入りました」


「なるほどね、窓を壊して入って来たのか……って窓壊したーーー⁈」


「すみません」

ドヤ顔で謝って来た。


「すみませんじゃないよ、弁償しろよ」


「今さっき美味しい棒を買ってしまってお金がありません」

と、堂々と言ってきた。


「そんな言い訳通じるか!!どうしてくれるんだよ」


「なんとか必要経費で落とします」


「分かった」


「分かってくれるんですか?」


「あぁ、警察に突き出す」


「やめてーー、突き出さないでなんでもするからーーー」


「ほぅ、なんでも」


「え」


「じゃあ、俺の雑用係ということで」


「あの、それ本気ですか」


「マジだ」


「私に選択権は?」


「なし」


「そんなーーーーーー!」

「あのさばあちゃん、唐突だけどさ、こいつ寮の雑用係として雇ってくれない?お金は少しでいいからさ」


唐突に俺が聞いた質問は彼女を訝しげな顔にさせた。……なんか英文和訳みたいな文になった。


「なんでさね」


「こいつが俺の部屋の窓を壊したからだよ」


そう言うと一瞬わけの分からないと言う顔になったが、


「そうかいそうかい、100円でもいいかい?」

と、許してくれた。


「いいよ」


「私なしで話を進めないで下さい。時給100円って安すぎませんか?労働基準法に抵触するしもし見つかったら危険だと思います」


と、アイリスの反論


「だれが時給っていったよ。日給100円だ。それにこれはボランティアみたいなもんだ」


「そんなバカな⁉︎」


「お前はバカだ。それでばあちゃん夕食は?」


「もう残っておらんよ」


「そんな……バカな⁈」


「貴方も馬鹿ですね。私と喋っている間にみなさんが食べられたのでしょう」


「なぁ、睦美、少し分けてくれんか?同じ三大落ちこぼれとしてお情けを」


今この寮に住んでいるのは俺と睦美、そしてもう一人しかいない。


この睦美俺と同じクラスにして隣人、そして俺と同じくとある理由から落ちこぼれとして見られている。


それはともかく、

必死の頼み、生死がかかった頼みだったのだが、


「やあよ、私だって成長期なんだから」

と、さも当然のことのように言った。


「もう十分育ってるじゃないかーーー!」


そう彼女はスレンダーな見た目に反し胸が大きいのだ。


「はいはい、ごちそうさま」


睦美はあっという間に残りのおかずを食べ終えるとさっさと自分の部屋に戻ってしまった。


「はいよ」


見殺しにされた。この食べ物の恨みいつか必ず晴らしてやる。そう心に決めた俺だった。









「すぐに支度するから少し待ってろ」


ここは俺の部屋。ばあちゃんが作ってくれたおかずは睦美が全て食べてしまったので、俺は仕方なく料理を作っていた。

そうすること15分後


「はいよ」


「私の分まで作ってくれたんですか⁈嬉しいです」


そう言って顔を近づけてくるアイリスにたじろいでしまうのは男子高校生としては当然のことかもしれない。


「これはなんですか?」


俺が作った料理を指さして聞いてきた。


「それは、麻婆豆腐っていうんだ。食べたこと無いのか?」


「ないですね、私の祖国は余り食にこだわっていませんから」


「そっか、美味しいから食べてみろよ。俺の麻婆豆腐は隠し味に鶏ガラを使っていて美味しいぞ。俺の得意料理だ」


まぁ、それもあるけど作った最大の理由は簡単だからなんだが。

それでも美味しそうに頬張るアイリスを見ていると自然と口元が緩んでしまう。


「どうかしたんですか?」


「いや、なんでもない。それよりさっき聞きそびれたけどなんで俺の部屋にいたんだ?」


「それは……」


アイリスは座り直すと説明し始めた。


「貴方がミカエルの契約者となったことを伝えるためです」


……こいつ頭おかしいの?

一人心の中で呟いた俺でした。


「はぁー、お前何言ってるんだ?俺は契約者なんかじゃなくて普通の高校生だぞ。そもそも宗教とか信じてないし」


うちは代々法華経の宗派だったはずだ。それに俺が何たらかんたらの契約者になるわけがないし、なった記憶もない。

そんなことを思いながらかわいそうな子を見るような目で見ていると、


「貴方は何年か前に何かを経験したんじゃないですか?それで貴方はミカエルの契約者になったのだと私達はてっきり思ってました」


何かってなんだよ!


「何かってなんだよ。そんなことに心当たりは……うっ」


今一瞬炎の中に少女がいたような幻覚が

……、


「どうしました?」


「なんでもない。少し頭痛がしただけだ。それより私達ってことは他にも俺がミカエルだかなんだかの契約者だって思っているやつがいるのか?」


「他は分かりませんが、我がイングランド魔法連合王国はそう考えています」


「イングランド魔法連合王国だって⁈」


イングランド魔法連合王国とはイングランドの王が元々のイギリスの領地に加え、デンマークとオランダを併合して出来た国で世界屈指の魔法師排出国である。


「はい、私はそこの災害対策本部の三番目に位置しています」


……その災害対策本部とはこんなばかな人材を使わなければならないほど人材が困窮しているのだろうか。


「今失礼なこと考えていませんでしたか?」


考えてました。


「いいや、別に」

と、うそをスラスラ述べる俺。


「貴方は私がばかだばかだと言いますが、私は魔法大学を史上最年少で首席で卒業したんですよ。貴方の学校のテストの点数何点なんですか?」


それを今聞くか。


「ぐっ、英語85点、数学81点」


「はっ」


「笑うなよ」


「いや、笑うつもりはなかったんですが、つい笑ってしまいました」


「お、俺がばかだって言ったのはその脳みその使い方についてだ。しかも日本じゃこれは高得点て言うんだよ」


「あっ、逃げた」


逃げてない!!


「それであんた達は俺がミハイルの契約者だって言うのか?」


訝しげにそう聞くと、


「はい、ミハイルではないのですが、貴方が紛れもなく契約者であると考えています。まぁそう言っても分からないと思いますから、私が詳しく教えて差し上げます」


と、高飛車で上から目線な視線を浴びせられた。


その時俺は殺意と言うものを覚えた。


「まず初めにこの世の始まりから話をしたいと思います。昔彗星が地球に衝突して生物が生まれました。これがパンスペルミヤ説です」


確かパンスペルミヤ説とは彗星が衝突したことにより彗星のアミノ酸が変化して生物が生まれた説だった気がする。


……夢うつつだったからあまり覚えてない。


「それでそのパンスペルミヤ説が何の関係があるんだ?」


そう言うとアイリスは顔をしかめた。


「分からないなら口を閉じて待っていてください。では説明を再開します」


そう言うと話し始めた。え、俺はって……じたんだ踏んでましたよ、悔しくて。


「生物は長い年月をかけて進化していき、植物、昆虫、恐竜、動物へと進化していったのです。そしてそれを束ねる神が出て来ました」


「それが原始の神なのか?」

そう尋ねると、

「はい、貴方は各々の神話が似ていると感じたことはありませんでしたか?」


「確かに」


そう言われると似ている気がする。


「それは元々神話が同じルーツから生まれたからなのです」


炎で世界が焼かれその後に雨が降り海が出来たなどといった出来事は何回も神話で聞いたことがある。

それなら神話が似ていることに納得できる。


「神が生まれて何万年かは皆が平和な毎日を送っていました。もちろん死とか病気、食物連鎖などもありましたけれど皆平和に暮らしていたんです。ところがある日隕石が落ちて来ました」


恐竜がいた頃だから、


「もしかしてシバ・クレーターか?」


「しらな、知ってるんですか?」


「あぁ、授業で習った」


「はい、そのシバ・クレーターが落ちて来たんです。そこには今現在我々が伝承されているノアと言う一人の人がいました。彼はノアの箱舟と呼ばれるシバ・クレーターに乗ってやって来たのです」


「そうなると人類の祖先は宇宙からやって来たと言うことなのか?」


「はい、しかしノアの子孫には原始の神を信仰するものも出て来ました。彼等は

次第に数を増やしていきたくさんの神話が伝承されて来たのです。ノアはその後ヤハウェという神を後世に伝え、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教と分かれて行ったのです」


「そして神の下辺である天使の一人がミカエルです。彼は神に似しものという意味の言葉を与えられ、兄であるルシファーをも超える力を持ちました。つまり貴方は世界最強の天使の契約者ということです。何か分からないところはありましたか?」


「原始の神はどうなったんだ?」


「彼は















-----Original Message-----

From: 来正義のヒーローはいると思うか?


『おい、おいっ』


僕の答えは断固としてnoだ。


『目をあけてくれっ』


自分の声がどこか遠くから聞こえてくる。


どこか朧気にさえ感じる。


それでも考えを進める。


ヒーロー達は地球や仲間を守ると言いながら力によって結果的に人の大切なものを奪っていく。


『死ぬんじゃねえよ』


思い出の詰まったものや場所を根こそぎだ。


『まだ、約束おわってないだろ』


やっていることは敵と全く同じ。


確かに守るために努力してるかもしれないけど、


結果的に元通りに場所とか大切なものを直したり、誰かの心を慰めたりするのは非力な人間だ。


昔は誰かを守り、戦うことにあこがれていた時期もあった。


自分もいつか大切な人を守りたいとさえ思っていた。


だけど、本当につらい時や苦しい時に助けてくれたり、支えてくれるヒーローなんていない。


それにヒーローだってきっと辛いだろう。


だれにも分かってもらえずヒーロー自身だってきっと孤独なはずだ。


誰も救われない、報われないこの世界に正義や幸せが本当にあるのだろうか。


確かに僕が言っていることは間違っているかもしれないし、


八つ当たりがしたいだけなんてことは自分にだって分かっているつもりだ。


『うぉおおおおおおおおおお』 


野獣のような雄たけびを上げながら僕は言葉に表現できない何かに向かって叫んでいた。


でも、燃え盛る炎の中でそれでも僕は思う、傍らに大切な人を抱きながら。


だから……、僕はヒーローになんてなりたくない。






やみの王子「オ例も」








辺り一面を焼き尽くす炎。


聖書の時代から語り継がれている災厄の数々。


悪魔は容赦なく人の命を刈り取り、世界を恐怖のどん底に突き落とした。


まるで底なしの泥沼や逃れられない蟻地獄のように。


「止めてくれ、この子だけは……」


≪悪魔≫は聞き飽きていた。


出会う人間出会う人間が命を助けることを望み、立ち向かってくることもせず、


ただ助命を願うのみ。


絶望のみをその体に宿し一体何が出来るのか。


知恵も使わず、なんの意思もない人間に果して何を成し遂げられるのか。


「知っているか、人間よ。親が子を守る精神というのは愛なんかじゃなく、


自分の大切なものが一つなくなることが怖いからわが子を守るのだぞ。


どうせ今お前が死んでもこの子は生きられまい」


そう言いつつ懐に刺した脇差を振りかぶった。


父親は自分たちがこの悪魔によって生命の息吹を刈り取られることを悟った。


唯一の心残りは娘を救えなかった事だろうか。


そして死への恐怖があふれ出ながらも悪魔に背を向け娘を守ろうと抱え込んだ。


その背中に無慈悲にも悪魔は刃を振り下ろした。


「…………?」


いくら待っても来るべきはずの痛みが来ない。


背後に立つ気配を感じ後ろを振り返る。


そこには自分よりも一回り程小さい少年が悪魔の剣をさも


当然かのように受け止めている姿が見えた。


戦闘服ではないから軍人ではないだろうが


相当場数を踏んできていることが覗える。


そんな父親に向かって彼は叫んだ。


「早くここを立ち去れ。いついかなる時でも諦めるな。生きることのみ考えろ」


父親は少年に感謝しながら戦火の最中を被害の少ない方に離れていく。


それを見届けた後悪魔はふと思った事を聞いた。


「なぜお前はあやつらを逃がした。


あやつらがこの戦火の中生き延びれるなど所詮世迷いごとでしかない」


「俺は少しの可能性に賭けてみただけだ。なんせ俺は人を信じることしかできない“愚王”だからなっ」


しばしの静寂の後、剣戟の交わる音が辺り一面に響いた。



















時は2075年、クリスマス。


歴史にその名を残す最悪の日。


時の教皇はひた隠しにしていたファティマ第3の予言を事件の起こる半年前に全貌を露わにした。


当初世界は事件が起こることに対し理解を示さなかった。


物語の中に現れる架空の存在が本当に居るわけがない大勢の人が詰った。


教皇庁の連中はどうかしている、誰もがそう思ったに違いない。


何十年間もその正体を隠し続け教皇すらも卒倒してしまったほどの大事件はまるで幻想の世界であり、


真相が子供の悪ふざけよりも性質が悪かった。


そう性質が悪かったのだ。




悪魔の襲来。




近年そのように呼ばれる一回目の襲撃は人類勢の軒並みがそろわない中はじめられた。


結果は人類勢の火力不足や指令が朝令暮改などしたため敗北、何カ国もの国が悪魔たちによって滅ぼされ、


人類勢は劣勢に追い込まれた。


そこに現れたのが7人の偉大なる能力者達だった。


彼らは自らのお














瞼をひらくと、空は目が染まるほどに鮮やかな赤に染まっていた。

黄昏時の赤は自然と心が和む、そして睡魔が襲ってくる。

元々人は太陽の動きによって生活リズムを決めていたんだ、

だから俺が2度寝してしまうのも無理はない、

そう結論づけるも場所が場所なだけにコンクリートとのスキンシップを夢うつつにあきらめる。

学校の屋上はいつも鍵がかかっているのだが、

よく用務員のおばさんが掃除をし終わった後、鍵を閉めることを忘れるので、

部活をさぼって昼寝をするのにもってこいの場所だった。

今日はバイトのシフトもない。よってのびのびと休みの時間を満喫することが出来た。

彼のとっておきの昼寝場所である。

時に今の時期は午後の風は暑くもなく涼しくもなくとても過ごしやすい。

今日は正に絶好の日向ぼっこ日よりだったのだ。

そんな一般の高校生は勉強しているであろう時間から授業をさぼるこの男こそ

篠崎智春、すなわち俺である。

帰るかと誰にともなく呟き、

危ない危ないと思いながら携帯を取り出す。

時計の長針は今まさに6時を指そうとしていた。

完全に帰宅予定時間を過ぎてしまっている。

本当は5時には帰るつもりだったのにと自分が悪いはずなのにもかかわらず悪態が口から出てしまう。

軽い焦りを感じた時には学校指定のカバンを肩にかけて走っていた。

寮の門限が学生は夜遅くまで遊んではならないという寮の規則から7時に門を閉じてしまうのだ。

諸事情から彼は昔から寮に住んでいるのだが、昔から生活態度には煩かった。

5時には寮に帰宅など遊び盛りの子供にとっては辛いものだったと今でも思い出す。

7時を超すと中には簡単には入れない。

二回ほど門限の時間に遅れてしまったのだが、

反省文は書かさせられるし、

晩御飯も食べさせてもらえない。

寮の門限が早すぎるような気がするのだが、

部活に(真面目に)入っているやつはどうしてるんだろうな、

なんていくら考えても価値を見いだせないようなことを考えながら廊下の階段を駆け降りると、

校門の前に誰かが立っているのが見えた。

いや、否応なく目に入ってきた。

髪はウェーブがかかったブロンドで頬は百合のように白く、

目は渓流の水のように深い翠で道を歩いてるほとんどの人が振り返るぐらい色沢やかだった。

たぶん外国の留学生とか研修生あたりだろう。

見れば小動物のような仕草で頻りに辺りを見渡していた。

そんな子が校門にいれば周囲の注目を浴びないはずがなく、

よそ見していた野球部員が「練習しろ!」と先輩にはたかれていた。

へー、うちにもこんなかわいい子と付き合っているやつがいるんだ、

なんて思いながら彼女のそばを通り過ぎようとすると、

透き通るようでどこかに吸いこまれてしまうかのような声で呼びとめられた。

「篠崎さんという方を探しているのですが、お知り合いでしょうか?」

矢庭に自分の名前を呼ばれた、そう勘違いをしていたのははたしてどのくらいのことだっただろうか。

一瞬の逡巡の後、混乱は次第に疑問に変わっていく。

これって俺のこと待ってたのか?

いやいやいや、そんなことはないだろ。

口には出さないが顔には『どうしよう』という文字が傍からにはよく見えた。

この人に会ったり話をしたりした記憶もない。

たぶん俺の知らない同級生か先輩を待ってるんだろう。

よく考えたら篠崎って名字もそんなに珍しい名字ってわけでもない。

でも、そんなこと言われても俺一年だし、

この学校に来てから3か月ぐらいしか経ってないんですが。

「篠崎さんですか?私も一応篠崎なのですが……。さすがに僕は違うでしょうし」

そう言うと少し残念そうに

「そうですか。では待ちます。教えてくれてありがとうございました」

と、軽く微笑みながら挨拶してくれた。

「どういたしまして。また困ったことがあったら聞いて下さい」

「ありがとうございました」

彼女の声を後にして俺は振り返りもせず校門を出た。












私立海浜高校。

それが今現在俺が通っている高校だ。

なぜ俺が海浜高校に通っているか、

それは学費が安いからである。

いや、安いというのは間違いだ。

この学校は奨学金制度を導入しているため学費がである。

また、寮があるため寮費を稼ぐだけで済むのは好都合なのだ。

俺がここまで金に困っている理由、それは家族にある。

まずじいちゃん。

剣道8段、柔道7段、槍道5段、空手道6段、合気道4段。

カポエラ、マーシャルアーツ、バリツ、ジュウクンドー師範。

篠崎流武術開祖でもある。

……自分でも言っててよく分からない。

この爺さんはそれぞれ武道ごとに別の道場を建て、

その代金のせいで借金に追われている。

それなのに競馬とかパチンコで遊びながら暮らしているという体たらく。

まあ、ちゃんと道場や遊び代のお金は自分で稼いでるんだけど……、演舞とかで。

師範……。

まあ、そんなわけでお金は出してもらえない。

次にばあちゃん。

この人は元々公安の女狐と呼ばれていたらしく、

拳銃の扱いや逮捕術に優れている。

また当時から貯めていた金があるはずなのだが、

守銭奴なので渡してくれるはずがなく……。

母さんはといえばこれまた公安の外事に所属していたらしいく、

親父とは内戦地域で出会ったらしい。

この人も常時どこかに旅に出ているのであてに出来ない。

最後に親父。

こいつが一番の曲者だ。

親父は戦場カメラマンなのだが、

内戦が起こったせいで家族を失った少女のために内戦を終わらせたらしい。

まず火器を支援していた軍事会社を壊滅させた。

その次にSealsやGreenberet、Delta Forceなんかとも戦ったらしい。

そんな彼は現在も戦場で戦っているのでアウト。

そんなこんなで自分のことは自分でやらなければならずこの学校を受験したのだ。

そんなわけで俺はここにいる。






なむなむ荘は学校から徒歩12分、バス4分の小高い丘の上に立っている。

学校から遠くもなく近くもない距離にある。

普段俺は走って学校に通っているのだが今回ばかりは急いでいたのでバスに乗って帰った。

バスの中は仕事帰りの会社員や帰り途中と見られる学生で明太子の中の卵のように

パンパンになっていた。

しかしなるべく早く帰った方が良いのは事実。

なので、仕方なくバスに乗ることにした。

ぎゅうぎゅう詰になったとしてもホテルに泊まることの方が財布の事情的に辛い。

だから汗まみれになったサラリーマンと俺は必死に戦う。そう決めたんだ。

そんな訳でサラリーマンと必死に戦っていた俺は、

この後の惨状を引き起こした張本人が俺のことに気付かなかった。





「ただいま、ばあちゃん」


「お帰りさね、今日はずいぶん遅かったね」


「そうでもないだろ、だいたい門限が早すぎるんだよ、

いまどきの高校生は5時になんて帰らねえよ」


「そうかい、私の頃は高校なんてなかったからな」


「そんなことはどうでもいいんだよ、今日の夕飯何?」


「ガーリックシュリンプと真鯛のポワレじゃよ」


「さっきまで昔の日本の話だったのに突然ヨーロッパの話になったな」

なぜだか分からないがこのばあちゃん昔から和食より洋食の方がおいしいので

しょっちゅう洋食が出てくる。

「食べれるものだったらなんでも感謝して食べることが一番大事な事じゃろうに」


「そうなんだけどなんか納得いかない、普通話からいって和食だろ」


「偏見じゃな、さっさとバッグを置いてこい。

そうしないとまたあの馬鹿に全部食われるぞ」


そんな他愛もない話をしながら俺の人生は過ぎていくのかなと思いながら階段を上る。


正に彼が思い描いた夢は数十秒後に覆されることとなった。


俺は鍵を取り出しドアを開けた。


さっき話しかけて来た少女がいた。


そして主人公は戦いに巻き込まれやがて彼女と恋に落ち戦いを通して強くなっていくのだ………


と今よんでいるような本ならそうなるだろう。


だけど現実だったらそんなことになるはずかない。


ここで俺が考えついた理由は3つ


一つ目、却下。


こんな可愛い子が泥棒なはずがない。


もし泥棒だったら………だったら……許す。


可愛い子は何をしても許されると誰かが言っていた。


次に二つ目、これも却下だ。


夢かどうかなんて自分でも分かる。


これは明晰夢なんかではない、


もし夢ならこのまま夢を見させて欲しい。頼む、頼むから!!


なら三つ目だな。


俺は大きく息を吸った。


「すいません、部屋間違えました」


寝不足かな、変な幻覚が見える。


昼寝してたんだけど、


でも部屋の番号はあってるはずなんだけど。


「ちょ、ちょっと待ってください」


「待ちませんよ」


「ふぇ」

と、彼女は間抜けな声を出していた。


「ストーカーの言うことなんか聞きません。僕がかっこいいからつけて来たんでしょ。言い訳なんて聞きたくありません。続きは署でお願いします」


「か、かっこいい?それはともかく私はストーカーなんかではありません」


なんで、なんで。


「疑問形で僕に聞かないでください。ツッコんで欲しかったのに……。じゃあなんでここにいるんですか?」


「そ、それは……。って、携帯を取り出してどうするんですか?」


「二進法の数字を打ち込むんですよ」


「あぁ、1と0のやつですね。私知ってます………って、警察呼ばないでください。信じてください」


必死になって止める彼女は少し可愛くて、

仕方なく、本当仕方なく、俺は携帯をしまうと彼女に聞いた。


「どうしてうちにいるのか説明してもらってもよろしいですか?」


一瞬の間の後、


「まぁとにかく座ってください。これ、座布団です」


「やですよ、ていうかあなたの使ってる座布団俺のなんですけど。他人の家にずかずか入ってくるなんて非常識ですよ。こういうの四字熟語でなんていうか分かります?」


「清廉潔白?」


「ちがーう」


「孤軍奮闘?」


「真面目にかんがえてるのか?」


「残念無双?」


「お前自分のことどう思ってんの⁉︎それ四字熟語じゃないし」


顔の割にほとほと残念なやつだった。


「私の名前はアイリス ベレスフォード。

アイリスって呼んで下さい。呼んでくれないと怒っちゃうぞ」


そう言ってほおを膨らませながら顔を近づけてくるアイリスに俺は少し声が裏返ってしまいながら、。


「っ、で、何の用だ?早く帰ってくれないか?早くしないとアン○ンマンが始まっちゃうじゃないか」


「それ話早く終わらしたいだけですよね!」


と、すぐさまツッコミが飛んできた。

「そんなことはないよ。ちゃんと話聞いてたよ」


「私の名前は?」


「もちろん分かるよ。ストゥーピッド コックローチだろ」


「全然話聞いてないじゃないですか。っていうかさりげなく私バカにされてません?」


してる。


「……そんなことより」


「そんなことより⁉︎」


「どうやって部屋に入って来たんだ。鍵がかかっていたはずなんだが」


「あぁ、それは窓を壊して中に入りました」


「なるほどね、窓を壊して入って来たのか……って窓壊したーーー⁈」


「すみません」

ドヤ顔で謝って来た。


「すみませんじゃないよ、弁償しろよ」


「今さっき美味しい棒を買ってしまってお金がありません」

と、堂々と言ってきた。


「そんな言い訳通じるか!!どうしてくれるんだよ」


「なんとか必要経費で落とします」


「分かった」


「分かってくれるんですか?」


「あぁ、警察に突き出す」


「やめてーー、突き出さないでなんでもするからーーー」


「ほぅ、なんでも」


「え」


「じゃあ、俺の雑用係ということで」


「あの、それ本気ですか」


「マジだ」


「私に選択権は?」


「なし」


「そんなーーーーーー!」

「あのさばあちゃん、唐突だけどさ、こいつ寮の雑用係として雇ってくれない?お金は少しでいいからさ」


唐突に俺が聞いた質問は彼女を訝しげな顔にさせた。……なんか英文和訳みたいな文になった。


「なんでさね」


「こいつが俺の部屋の窓を壊したからだよ」


そう言うと一瞬わけの分からないと言う顔になったが、


「そうかいそうかい、100円でもいいかい?」

と、許してくれた。


「いいよ」


「私なしで話を進めないで下さい。時給100円って安すぎませんか?労働基準法に抵触するしもし見つかったら危険だと思います」


と、アイリスの反論


「だれが時給っていったよ。日給100円だ。それにこれはボランティアみたいなもんだ」


「そんなバカな⁉︎」


「お前はバカだ。それでばあちゃん夕食は?」


「もう残っておらんよ」


「そんな……バカな⁈」


「貴方も馬鹿ですね。私と喋っている間にみなさんが食べられたのでしょう」


「なぁ、睦美、少し分けてくれんか?同じ三大落ちこぼれとしてお情けを」


今この寮に住んでいるのは俺と睦美、そしてもう一人しかいない。


この睦美俺と同じクラスにして隣人、そして俺と同じくとある理由から落ちこぼれとして見られている。


それはともかく、

必死の頼み、生死がかかった頼みだったのだが、


「やあよ、私だって成長期なんだから」

と、さも当然のことのように言った。


「もう十分育ってるじゃないかーーー!」


そう彼女はスレンダーな見た目に反し胸が大きいのだ。


「はいはい、ごちそうさま」


睦美はあっという間に残りのおかずを食べ終えるとさっさと自分の部屋に戻ってしまった。


「はいよ」


見殺しにされた。この食べ物の恨みいつか必ず晴らしてやる。そう心に決めた俺だった。









「すぐに支度するから少し待ってろ」


ここは俺の部屋。ばあちゃんが作ってくれたおかずは睦美が全て食べてしまったので、俺は仕方なく料理を作っていた。

そうすること15分後


「はいよ」


「私の分まで作ってくれたんですか⁈嬉しいです」


そう言って顔を近づけてくるアイリスにたじろいでしまうのは男子高校生としては当然のことかもしれない。


「これはなんですか?」


俺が作った料理を指さして聞いてきた。


「それは、麻婆豆腐っていうんだ。食べたこと無いのか?」


「ないですね、私の祖国は余り食にこだわっていませんから」


「そっか、美味しいから食べてみろよ。俺の麻婆豆腐は隠し味に鶏ガラを使っていて美味しいぞ。俺の得意料理だ」


まぁ、それもあるけど作った最大の理由は簡単だからなんだが。

それでも美味しそうに頬張るアイリスを見ていると自然と口元が緩んでしまう。


「どうかしたんですか?」


「いや、なんでもない。それよりさっき聞きそびれたけどなんで俺の部屋にいたんだ?」


「それは……」


アイリスは座り直すと説明し始めた。


「貴方がミカエルの契約者となったことを伝えるためです」


……こいつ頭おかしいの?

一人心の中で呟いた俺でした。


「はぁー、お前何言ってるんだ?俺は契約者なんかじゃなくて普通の高校生だぞ。そもそも宗教とか信じてないし」


うちは代々法華経の宗派だったはずだ。それに俺が何たらかんたらの契約者になるわけがないし、なった記憶もない。

そんなことを思いながらかわいそうな子を見るような目で見ていると、


「貴方は何年か前に何かを経験したんじゃないですか?それで貴方はミカエルの契約者になったのだと私達はてっきり思ってました」


何かってなんだよ!


「何かってなんだよ。そんなことに心当たりは……うっ」


今一瞬炎の中に少女がいたような幻覚が

……、


「どうしました?」


「なんでもない。少し頭痛がしただけだ。それより私達ってことは他にも俺がミカエルだかなんだかの契約者だって思っているやつがいるのか?」


「他は分かりませんが、我がイングランド魔法連合王国はそう考えています」


「イングランド魔法連合王国だって⁈」


イングランド魔法連合王国とはイングランドの王が元々のイギリスの領地に加え、デンマークとオランダを併合して出来た国で世界屈指の魔法師排出国である。


「はい、私はそこの災害対策本部の三番目に位置しています」


……その災害対策本部とはこんなばかな人材を使わなければならないほど人材が困窮しているのだろうか。


「今失礼なこと考えていませんでしたか?」


考えてました。


「いいや、別に」

と、うそをスラスラ述べる俺。


「貴方は私がばかだばかだと言いますが、私は魔法大学を史上最年少で首席で卒業したんですよ。貴方の学校のテストの点数何点なんですか?」


それを今聞くか。


「ぐっ、英語85点、数学81点」


「はっ」


「笑うなよ」


「いや、笑うつもりはなかったんですが、つい笑ってしまいました」


「お、俺がばかだって言ったのはその脳みその使い方についてだ。しかも日本じゃこれは高得点て言うんだよ」


「あっ、逃げた」


逃げてない!!


「それであんた達は俺がミハイルの契約者だって言うのか?」


訝しげにそう聞くと、


「はい、ミハイルではないのですが、貴方が紛れもなく契約者であると考えています。まぁそう言っても分からないと思いますから、私が詳しく教えて差し上げます」


と、高飛車で上から目線な視線を浴びせられた。


その時俺は殺意と言うものを覚えた。


「まず初めにこの世の始まりから話をしたいと思います。昔彗星が地球に衝突して生物が生まれました。これがパンスペルミヤ説です」


確かパンスペルミヤ説とは彗星が衝突したことにより彗星のアミノ酸が変化して生物が生まれた説だった気がする。


……夢うつつだったからあまり覚えてない。


「それでそのパンスペルミヤ説が何の関係があるんだ?」


そう言うとアイリスは顔をしかめた。


「分からないなら口を閉じて待っていてください。では説明を再開します」


そう言うと話し始めた。え、俺はって……じたんだ踏んでましたよ、悔しくて。


「生物は長い年月をかけて進化していき、植物、昆虫、恐竜、動物へと進化していったのです。そしてそれを束ねる神が出て来ました」


「それが原始の神なのか?」

そう尋ねると、

「はい、貴方は各々の神話が似ていると感じたことはありませんでしたか?」


「確かに」


そう言われると似ている気がする。


「それは元々神話が同じルーツから生まれたからなのです」


炎で世界が焼かれその後に雨が降り海が出来たなどといった出来事は何回も神話で聞いたことがある。

それなら神話が似ていることに納得できる。


「神が生まれて何万年かは皆が平和な毎日を送っていました。もちろん死とか病気、食物連鎖などもありましたけれど皆平和に暮らしていたんです。ところがある日隕石が落ちて来ました」


恐竜がいた頃だから、


「もしかしてシバ・クレーターか?」


「しらな、知ってるんですか?」


「あぁ、授業で習った」


「はい、そのシバ・クレーターが落ちて来たんです。そこには今現在我々が伝承されているノアと言う一人の人がいました。彼はノアの箱舟と呼ばれるシバ・クレーターに乗ってやって来たのです」


「そうなると人類の祖先は宇宙からやって来たと言うことなのか?」


「はい、しかしノアの子孫には原始の神を信仰するものも出て来ました。彼等は

次第に数を増やしていきたくさんの神話が伝承されて来たのです。ノアはその後ヤハウェという神を後世に伝え、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教と分かれて行ったのです」


「そして神の下辺である天使の一人がミカエルです。彼は神に似しものという意味の言葉を与えられ、兄であるルシファーをも超える力を持ちました。つまり貴方は世界最強の天使の契約者ということです。何か分からないところはありましたか?」


「原始の神はどうなったんだ?」



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