ら
瞼をひらくと、空は目が染まるほどに鮮やかな『赤』に染まっていた。
少し青色が濃くなってきたがまだ赤色が存在感を出している。
そうリンゴも青ざめてしまうほどの赤である。
冗談はともかくリンゴの赤がかすんで見えるほどには赤だった。
個人的には包容力があって俗な『赤』の夕方よりはブルーアワーの時の
夕方の方が好きなのだがこんな夕方もたまにはいいかなと思った。
黄昏時の赤は自然と心が和む、そして睡魔が襲ってくる。
スペインのシエスタという文化は意外と理にかなっているのかもしれない。
まあ、厳密には2時から3時の間なのだが。
元々人は太陽の動きによって生活リズムを決めていたんだ、
だから俺が2度寝してしまうのも無理はない、
そう結論づけるも場所が場所なだけにコンクリートとのスキンシップを夢うつつにあきらめる。
さすがにこんなところで何時間も過ごしたら風を引いてしまう。
因みに俺がこんな閑散とした学校の屋上にいるのは、
よく用務員のおばさんが掃除をし終わった後、鍵を閉めることを忘れるので、
部活をさぼって昼寝をするのにもってこいの場所だからだ。
今日はバイトのシフトもない。よってのびのびと休みの時間を満喫することが出来た。
彼のとっておきの昼寝場所なのである。
まあ、この事実を教えてくれたのは友達なのだが。
時に今の時期は午後の風は暑くもなく涼しくもなくとても過ごしやすい。
今日は正に絶好の日向ぼっこ日よりだったのだ。
一般の高校生は勉強しているであろう時間から授業をさぼる。
まさに快感とさえ感じられた。
くだらない授業から解放され自由を満喫する、
品行方正とは言わないまでも真面目に授業を受けている篠崎にとっては授業をさぼることなど今まで一度たりとてなかった。
しかしこの解放感はまさにやみつきになりそうだった。 改稿
しばらくまどろんだ後帰るかと誰にともなく呟き、
危ない危ないと思いながら時間を確かめるために携帯を取り出した。
時計の長針は今まさに6時45分を指そうとしていた。
完全に帰宅予定時間を過ぎてしまっている。
本当は6時には帰るつもりだったのにと自分が悪いはずなのにもかかわらず悪態が口から出てしまう。
軽い焦りを感じた時には学校指定のカバンを肩にかけて走っていた。
寮の門限が学生は夜遅くまで遊んではならないという寮の規則から7時に門を閉じてしまうのだ。
諸事情から彼は昔から寮に住んでいるのだが、昔から生活態度には煩かった。
6時には寮に帰宅など遊び盛りの子供にとっては辛いものだったと今でも思い出す。
7時を超すと中には簡単には入れない。
二回ほど門限の時間に遅れてしまったのだが、
反省文は書かさせられるし、
晩御飯も食べさせてもらえない。
寮の門限が早すぎるような気がするのだが、
部活に(真面目に)入っているやつはどうしてるんだろうな、
なんていくら考えても価値を見いだせないようなことを考えながら廊下の階段を駆け降りると、
校門の前に誰かが立っているのが見えた。
いや、否応なく目に入ってきた。
そしてすぐ、今までにあった女性のなかで一番美しいと見てとった。
彼女の髪は鮮やかな茶髪で、目を凝らすと金色に煌めいた。
木陰から一歩出たからだろうか。
閉じ込められていた日の光が出るような感じだった。
髪はウェーブがかかったブロンドで頬は百合のように白く、
目はでまたもや日の光を思い起こさせる榛色で色沢やかだった。
そんな子が校門にいれば周囲の注目を浴びないはずがなく、
よそ見していた野球部員が「練習しろ!」と先輩にはたかれていた。
たぶん外国の留学生あたりではないだろうか。
見れば小動物のような仕草で頻りに辺りを見渡していた。
げた箱で上靴に履き替え、いつもは行くはずの道場にはひと眼もくれず、
帰りを急ぐ。本当は留学生の子をもう少し観察していたかったが、急いでいたのであきらめつつ、 改稿
彼女のそばを走って通り過ぎようとすると、
透き通るようでどこかに吸いこまれてしまうかのような声で呼びとめられた。
「篠崎さんという方を探しているのですが、お知り合いでしょうか?」
矢庭に自分の名前を呼ばれた、そう勘違いをしていたのははたしてどのくらいのことだっただろうか。
一瞬の逡巡の後、混乱は次第に疑問に変わっていく。
これって俺のこと待ってたのか?
いやいやいや、そんなことはないだろ。
口には出さないが顔には『どうしよう』という文字が傍からにはよく見えた。
この人に会ったり話をしたりした記憶もない。
たぶん俺の知らない同級生か先輩を待ってるんだろう。
よく考えたら篠崎って名字もそんなに珍しい名字ってわけでもない。
でも、そんなこと言われても俺一年だし、
この学校に来てから3か月ぐらいしか経ってないんですが。
「篠崎さんですか?私も一応篠崎なのですが……。さすがに僕は違うでしょうし」
そう言うと少し残念そうに
「そうですか。では待ちます。教えてくれてありがとうございました」
と、軽く微笑みながら挨拶してくれた。
「どういたしまして。また困ったことがあったら聞いて下さい」
「ありがとうございました」
彼女の声を後にして俺は振り返りもせず校門を出た。
私立海浜高校。
それが今現在俺が通っている高校だ。
なぜ俺が海浜高校に通っているか、
それは学費が安いからである。
いや、安いというのは間違いだ。
この学校は奨学金制度を導入しているため学費がである。
また、寮があるため寮費を稼ぐだけで済むのは好都合なのだ。
まあそれ以前からもじいちゃんのつてで安く住まわせてもらっていたからもう実家のようなものだが。
俺がここまで金に困っている理由、それは家族にある。
まずじいちゃん。
剣道8段、柔道7段、槍道5段、空手道6段、合気道4段。
カポエラ、マーシャルアーツ、バリツ、ジュウクンドー師範。
篠崎流武術開祖でもある。
……自分でも言っててよく分からない。
この爺さんはそれぞれ武道ごとに別の道場を建て、
その代金のせいで借金に追われている。
それなのに競馬とかパチンコで遊びながら暮らしているという体たらく。
まあ、ちゃんと道場や遊び代のお金は自分で稼いでるんだけど……、演舞とかで。
師範……。
まあ、そんなわけでお金は出してもらえない。
次にばあちゃん。
この人は元々公安の女狐と呼ばれていたらしく、
拳銃の扱いや逮捕術に優れている。
また当時から貯めていた金があるはずなのだが、
守銭奴なので渡してくれるはずがなく……。
母さんはといえばこれまた公安の外事に所属していたらしいく、
親父とは内戦地域で出会ったらしい。
この人も常時どこかに旅に出ているのであてに出来ない。
最後に親父。
こいつが一番の曲者だ。
親父は戦場カメラマンなのだが、
内戦が起こったせいで家族を失った少女のために内戦を終わらせたらしい。
まず火器を支援していた軍事会社を壊滅させた。
その次にSealsやGreenberet、Delta Forceなんかとも戦ったらしい。
そんな父は現在も戦場で戦っているのでアウト。
そんなこんなで自分のことは自分でやらなければならずこの学校を受験したのだ。
そんなわけで俺はここにいる。
なむなむ荘は学校から徒歩12分、バス4分の小高い丘の上に立っている。
学校から遠くもなく近くもない距離にある。
まあ電車通学の奴らに比べたらどこが近くないんだと怒鳴られそうだが。
普段俺は走って学校に通っているのだが、今回ばかりは急いでいたのでバスに乗って帰った。
バスの中は仕事帰りの会社員や帰り途中と見られる学生で明太子の中の卵のように
パンパンになっていた。
しかしなるべく早く帰った方が良いのは事実。
なので、仕方なくバスに乗ることにした。
ぎゅうぎゅう詰になったとしてもホテルに泊まることの方が財布の事情的に辛い。
だから汗まみれになったサラリーマンと俺は必死に戦う。そう決めたんだ。
そんな訳でサラリーマンと必死に戦っていた俺は、
この後の惨状を引き起こした張本人が俺のことに気付かなかった。
「ただいま、ばあちゃん」
「お帰りさね、今日はずいぶん遅かったね」
「そうでもないだろ、だいたい門限が早すぎるんだよ、
いまどきの高校生は5時になんて帰らねえよ」
「そうかい、私の頃は高校なんてなかったからな」
「そんなことはどうでもいいんだよ、今日の夕飯何?」
「ガーリックシュリンプと真鯛のポワレじゃよ」
「さっきまで時代の隔たりを感じさせる話だったのに突然欧米風の話になったな」
なぜだか分からないがこのばあちゃん昔から和食より洋食の方がおいしいので
しょっちゅう洋食が出てくる。
「食べれるものだったらなんでも感謝して食べることが一番大事な事じゃろうに」
「そうなんだけどなんか納得いかない、普通話からいって和食だろ」
「偏見じゃな、さっさとバッグを置いてこい。
そうしないとまたあの馬鹿女に全部食われるぞ」
そんな他愛もない(?)話をしながら俺の人生は過ぎていくとのかなと、
ぼんやり思いながら階段を上る。
正に彼が思い描いた夢は数秒後に覆されることとなった。
俺の部屋は階段を上ってすぐの部屋だ。
前述の通り小さいころからここに預けられているのだが、
ここまで生活に適さない部屋はみたことがない。
玄関を含め6畳間というあまりにも狭すぎる空間、それに加え隙間風や足音などが如実に
現れるというおまけつきだ。
それでも月に5000円は破格といってもよい。
そんなこんなで不満タラタラの状況でもこうして貧困生活を送っている。
階段を駆け上がるようにして上ると、
俺は鍵を取り出しドアを開けた。
さっき話しかけて来た少女がいた。
そして主人公は戦いに巻き込まれやがて彼女と恋に落ち戦いを通して強くなっていくのだ………
と今よんでいるような本ならそうなるだろう。
だけど現実だったらそんなことになるはずかない。
ここで俺が考えついた理由は3つ
一つ目、却下。
こんな可愛い子が泥棒なはずがない。
もし泥棒だったら………だったら……許す。
可愛い子は何をしても許されると誰かが言っていた。
次に二つ目、これも却下だ。
夢かどうかなんて自分でも分かる。
これは明晰夢なんかではない、
もし夢ならこのまま夢を見させて欲しい。頼む、頼むから!!
なら三つ目だな。
俺は大きく息を吸った。
「すいません、部屋間違えました」
寝不足かな、変な幻覚が見える。それもこれも深夜まで起きてアニメを見てるのが悪い。
昼寝してたんだけど、
でも部屋の番号はあってるはずなんだけど。
「ちょ、ちょっと待ってください」
「待ちませんよ」
「ふぇ」
と、彼女は間抜けな声を出していた。
「ストーカーの言うことなんか聞きません。僕がかっこいいから学校からつけて来たんでしょ。
言い訳なんて聞きたくありません。続きは署でお願いします」
「か、かっこいい?それはともかく私はストーカーなんかではありません」
なんで、なんで。
「疑問形で俺に聞かないでください。ツッコんで欲しかったのに……。じゃあなんでここにいるんですか?」
「そ、それは……。って、携帯を取り出してどうするんですか?」
「二進法の数字を打ち込むんですよ」
「あぁ、1と0のやつですね。私知ってます………って、警察呼ばないでください。信じてください」
必死になって止める彼女は少し可愛くて、
仕方なく、本当仕方なく、俺は携帯をしまうと彼女に聞いた。
「どうしてこの狭い圧倒的に閉鎖感あふれる俺の部屋にいるのか説明してもらってもよろしいでしょうか?」
一瞬の間の後、
「まぁとにかく座ってください。これ、座布団です」
「何まあまあ落ち着いて感を出そうとしてるんですか、ていうかあなたの使ってる座布団俺のなんですけど。
他人の家にずかずか入ってくるなんて非常識ですよ。こういうの四字熟語でなんていうか分かります?」
「清廉潔白?」
「ちがーう」
「孤軍奮闘?」
「真面目にかんがえてるのか?」
「残念無双?」
「お前自分のことどう思ってんの??それ四字熟語じゃないし」
顔の割にほとほと残念なやつだった。
「私の名前はアイリス ベレスフォード。
アイリスって呼んで下さい。呼んでくれないと怒っちゃうぞ」
そう言ってほおを膨らませながら顔を近づけてくるアイリスに俺は少し声が裏返ってしまいながら、。
「っ、で、何の用だ?早く帰ってくれないか?早くしないと某国民的アニメがが始まっちゃうじゃないか」
「それ話早く終わらしたいだけですよね!」
と、すぐさまツッコミが飛んできた。
「そんなことはないよ。ちゃんと話聞いてたよ」
「私の名前は?」
「もちろん分かるよ。ストゥーピッド コックローチだろ」
「全然話聞いてないじゃないですか。っていうかさりげなく私バカにされてません?」
してる。
「……そんなことより」
「そんなことより??」
「どうやって部屋に入って来たんだ。こんな部屋だが曲がりなりにも鍵がかかっていたはずなんだが」
「あぁ、それは窓を壊して中に入りました」
「なるほどね、窓を壊して入って来たのか……って窓壊したーーー?」
近づいて良く見ると綺麗な三角形が切り取られ鍵をあけたことがみてとれる。
まさに職人技だ。並みの泥棒を超えている。
「すみません」
ドヤ顔で謝って来た。ほめてねーよ。感心してるけど。
「すみませんじゃねーよ、弁償しろよ!!」
「今さっき駄菓子を大量に買ってしまってお金がありません」
と、堂々と言ってきた。
「そんな言い訳通じるか!!どうしてくれるんだよ、ただでさえ最近家賃滞納してばかりで金がねーんだぞ」
「なんとか必要経費で落とします」
「分かった」
「分かってくれるんですか?」
「あぁ、警察に突き出す」
「やめてーー、突き出さないでなんでもするからーーー」
「ほぅ、なんでも」
「え」
「じゃあ、俺の雑用係ということで」
「あの、それ本気ですか」
「マジだ」
「私に選択権は?」
「なし」
「そんなーーーーーー!」
「まあ、弁償代とかもろもろの経費は見性院のごとく爺さんからもらった金で何とかしよう。
使わにゃならん時に使うのが金持ちってもんよ」
金持ちはこんなことでは金は使わないということには気付かないふりをする。
「それより、この落とし前、どう付けてもらおうか」
「ギ、ギクゥ」
「ギ、ギクゥなんて口で言う奴なんか初めて見たぞ。
まあ金はしっかり払ってもらうけどな。さてどうやって稼いでもらおうか」
「きゃ、きゃーーー。犯されるーーーー。
神様迷える子羊を助けたまえーーーーー。たじゅけてーーー。ひっぅう」
いや半分以上自業自得だろ。
「まあ安心しろ」
「ふぇ」
「必ず想像以上のことをしてやる」
「全然安心できなーーーーーーーい!!」
後にはある一人の少女が悲壮感に打ちひしがれ連れ去られた・・・らしい。
場面は変わって。
「あのさばあちゃん、唐突だけどさ、こいつ寮の雑用係として雇ってくれない?」
唐突に俺が聞いた質問は彼女を訝しげな顔にさせた。……なんか英文和訳みたいな文になった。
「なんでさね」
「こいつが俺の部屋の窓を壊したからだよ」
そう言うと一瞬わけの分からないと言う顔になったが、
「そうかいそうかい、タダ働きでもいいかい?」
と、笑顔の奥に般若の顔を見せつつ許してくれた。
「いいよ」
「私なしで話を進めないで下さいよー。労働基準法に抵触するしもし見つかったら危険だと思います」
と、アイリスの反論
「これはボランティアみたいなもんだ」
「そんなバカな??」
「お前はバカだ。それでばあちゃん夕食は?」
「もう残っておらんよ」
「そんな……バカな?」
「貴方も馬鹿ですね。私と喋っている間にみなさんが食べられたのでしょう」
「なぁ、睦美、少し分けてくれんか?お情けを」
今この寮に住んでいるのは俺と睦美、そしてもう一人しかいない。
この睦美俺と同じクラスにして隣人、そして俺と同じくとある理由から落ちこぼれとして見られている。
それはともかく、
必死の頼み、生死がかかった頼みだったのだが、
「やあよ、私だって成長期なんだから」
と、さも当然のことのように言った。
「もう十分育ってるじゃないかーーー!」
そう彼女はスレンダーな見た目に反し胸が大きいのだ。
「はいはい、ごちそうさま」
睦美はあっという間に残りのおかずを食べ終えるとさっさと自分の部屋に戻ってしまった。
「はいよ」
見殺しにされた。この食べ物の恨みいつか必ず晴らしてやる。そう心に決めた俺だった。
「すぐに支度するから少し待ってろ」
「40秒でしたくしな」
「お前が言える義理じゃないよな、雑用係」
「しゅ、しゅみません。料理は不得手で」
に経らに減らしているその顔がむかつく。
ここは俺の部屋。ばあちゃんが作ってくれたおかずは睦美が全て食べてしまったので、俺は仕方なく料理を作っていた。
綺麗な美少女もとい雑用係は料理だけは苦手だというので俺が料理をしているのである。
そうすること15分後
「はいよ」
「私の分まで作ってくれたんですか?嬉しいです」
そう言って顔を近づけてくるアイリスにたじろいでしまうのは男子高校生としては当然のことかもしれない。
「これはなんですか?」
俺が作った料理を指さして聞いてきた。
「それは、麻婆豆腐っていうんだ。食べたこと無いのか?」
「ないですね、私の祖国は余り食にこだわっていませんから」
「そっか、美味しいから食べてみろよ。俺の麻婆豆腐は隠し味に鶏ガラを使っていて美味しいぞ。俺の得意料理だ」
まぁ、それもあるけど作った最大の理由は簡単だからなんだが。
それでも美味しそうに頬張るアイリスを見ていると自然と口元が緩んでしまう。
「どうかしたんですか?」
「いや、なんでもない。それよりさっき聞きそびれたけどなんで俺の部屋にいたんだ?」
「それは……」
アイリスは座り直すと説明し始めた。
「貴方が第一の権能の保持者となったことを伝えるためです」
……こいつ頭おかしいの?
一人心の中で呟いた俺でした。
「はぁー、お前何言ってるんだ?俺はなんだかの保持者なんかじゃなくて普通の高校生だぞ。」
それに俺が何たらかんたらの保持者になるわけがないし、なった記憶もない。
そんなことを思いながらかわいそうな子を見るような目で見ていると、
「貴方は何年か前に何か権能に触れる事件に巻き込まれたのではないですか?
それで貴方は第一の権能の保持者になったのだと私達はてっきり思ってました」
事件ってなんだよ!
「そんなことに心当たりは……うっ」
今一瞬炎の渦の中に少女が一人佇んでいたような……。
「どうしました?」
「なんでもない。少し頭痛がしただけだ。それより私達ってことは他にも俺がその保持者だって思っているやつがいるのか?」
「他は分かりませんが、我がイングランド魔法連合王国はそう考えています」
「イングランド魔法連合王国だって?」
イングランド魔法連合王国とはイングランドの王が元々のイギリスの領地に加え、
デンマークとオランダを併合して出来た国で世界屈指の魔法師排出国である。
「はい、私はそこの災害対策本部の三番目に位置しています」
……その災害対策本部とはこんなばかな人材を使わなければならないほど人材が困窮しているのだろうか。
「今失礼なこと考えていませんでしたか?」
考えてました。
「いいや、別に」
と、うそをスラスラ述べる俺。
「貴方は私がばかだばかだと言いますが、私は魔法大学を史上最年少で首席で卒業したんですよ。貴方の学校のテストの点数何点なんですか?」
それを今聞くか。
「ぐっ、英語85点、数学81点その他もろもろ」
「はっ」
「笑うなよ」
「いや、笑うつもりはなかったんですが、つい笑ってしまいました」
「お、俺がばかだって言ったのはその脳みその使い方についてだ。しかも日本じゃこれは高得点て言うんだよ」
「あっ、逃げた」
逃げてない!!戦略的撤退だ。
「それであんた達は俺が剣呑の保持者だって言うのか?」
訝しげにそう聞くと、
「はい、剣呑ではないのですが、貴方が紛れもなく保持者であると考えています。みたところ目覚めてる様子もないですし。
まぁそう言っても分からないと思いますから、私が詳しく教えて差し上げます」
と、高飛車で上から目線な視線を浴びせられた。
その時俺は殺意と言うものを覚えた。
「まず初めにこの世の始まりから話をしたいと思います。昔、宇宙が生み出される前、
無から二つの神が生まれました。一人は有世を治める神≪名を封印した神≫、もう一人は無世を治める≪名を捨てた神≫です」
「まず分からないんだが有世は現実世界にあるんだよな」
「いや現実世界こそ有世ですよ」
「で、無世ってのは?」
「この世に近いもので近くないもので構成された世界のことです。
西欧の真実在の矛盾ではとけない問題を東洋の(全ては無から始まる)という考えを元に仮定され、
魂や死といった概念的なこともここに含まれると考えています」
「えっ、それって大発見じゃない!?死とか魂の謎が解けるんだぞ」
「はぁ、話聞いてたんですか?あくまで考えられていただけで確証はないんですよ。
少し黙ってもらっていいですか」
窓割って部屋に入った常識のない奴に言われたかない。
「まあ言ってみれば、その≪名を捨てた神≫の能力を分割したのが権能です」
いきなり大雑把になりやがった。
「と言うわけであなたの権能譲ってもらえないでしょうか?もちろん謝礼はお払いします」
「まあいいけどよ」
「いいんですか?!」
お前が聞いたんじゃないかよ。
「聞いた感じ厄介そうなものだしお前の国にやるよ、タダで」
「本当にいいんですか。一生遊んで暮らせますよ」
「ま、マジで。だ、だが男にニ言はねえ。もってけ泥棒」
目の恥にうっすらと涙がたまっていた事は言わずもがなである。
「そうですか、まあこちらにしても利はあっても害はないので良しとしましょう。
私はこの件をもちかえって・・・」
そう言ってぼぉーっとした様子で立ち去ろうとしたアイリスの襟をつかむ。
「どこに行くんだ、雑用係」
引き攣った笑みを俺は浮かべながらすごんだ。
「なあ、窓ガラス壊したのもう忘れたとは言わせないぞ」
そこは御愛嬌、とはならずアイリスはおばあさんに引き渡されたのであった。・・・・・・?改稿
朝目が覚めると目の前に美少女がいる。
そんな夢のような話を同級生達が聞いたならば、あるものは発狂し、またあるものは己の人生を呪い他人をも呪い始めるのではないだろうか。
それぐらいにこの世代にとってはインパクトがあることだし、
自分でさえそんな行為を受けてる者がいるとするならば目を真っ赤に腫れあがらせるだろう。
しかしこのシチュエーションでもそれがゆるされるのであれば問いたい。 増
なぜ俺は空を飛んでるんだーーーーーーー。
確かに美少女が前にいるよ、だけどね、