第二話
次の日学校へ行くと、靴箱の前に少女が立っていた。
もっともこれだけでは別におかしいことではないだろう。僕が通っているのはごく普通の共学の公立高校なのだから、靴箱の前に女の子が立っていても特段不思議なことではないし、僕もわざわざそんなことを気に留めたりしない。
では、なぜ今回に限って僕がそのことを意識してしまったのか、それはそこに立っている女の子に見覚えがあったからである。その少女は、僕の姿を見つけると周りの目を気にしながら恥ずかしそうに駆け寄ってきた。
「あの、昨日写真撮ってた人ですよね」
少女は少し息を弾ませながらそう言った
僕が「そうだよ」と答えると、少女はホッと息を吐いた。
「よかったあ。そうじゃなかったらどうしようかと思った」
これは後から彼女から聞いた話なのだけれど、彼女はここで僕に似たような人に片っ端から話しかけていたらしい。
「どうして僕がここに通ってるってわかったの?」
僕と彼女が昨日話した時間はせいぜい五分程度、ましてや自己紹介などした覚えはないのだが。
「どうしてって、昨日この学校のカッターシャツで写真撮ってたよね」
そういえばそうだったかもしれない。確証がないのはきっと写真を撮るのに集中してたせいだ。うちの学校のカッターシャツには胸に特徴的な刺繍があるから一目でわかったのだろう。
「そういえばずっと僕を待っていたみたいだけれでも、何か用でもあるの?」
昨日何か忘れ物でもしたのか、それとも何か僕に言いたいことがあるのか。全く心当たりがない。
「うん、特に大した用でもないんだけどね、昨日撮影邪魔しちゃったからそのお詫びを何かしようと思ったんだけど、そういえば名前を聞いてなかったなあと思って」
そういって彼女は僕の制服の胸についている名札を見た。
「とかいばやしだいや?くんでいいのかな?」
彼女は指を唇に当てて首を傾げた。
「東海林大哉ね。よく間違える人はいるけど、こんな間違え方をされたのは初めてだね。西條氷華ちゃん?」
僕が呆れながら彼女の名前を呼ぶと、彼女は大仰に飛び退いた。
「ふぇ!?なんで私の名前を知ってるの!」
僕はまた呆れ、そして一つ、大きな息を吐いた。
「キミが今さっき読んだのは何なのかな」
すると彼女は自分の名札を見てああなるほどと手を打った。そしてその大きな眼を僕に向けた。
「よろしくね。ダイヤくん」
遅くなりましたが第二話です。
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