第5話 通信機
レオネスさんと通信機の実験を行った。通信機の1つに魔石を、もう一つは僕が魔力を流し実験を行う。うまくいかなかった。
「一つの魔石を使ってそこからコードを継ぐとうまくいくのだが、魔石の魔力でないと動作しないのかな」
「じゃあ、そのコードに僕が魔力を流してみます」
2つの通信機から出ているコードを掴み、同時に魔力を流す。
「通信できる、人族の魔力でも問題ない。何が問題なんだろう」
とレオネスさんは頭を抱える。
僕は思いついたことを言ってみる。
「周波数が違うんではないですか」
「なんだ、その周波数というのは」
「魔石は属性によって波動が違うとおっしゃっていましたよね」
「いろいろな文献や実験の結果、それは間違いないはずだ」
「では、同じ属性の石でも少し波動が違うことも考えられますよね」
「多少だがな。そうか、その少しの違いが問題なのだな」
「そう思います」
レオネスさんの表情は喜びに溢れていた、と思った瞬間、暗い表情になった。
「この魔石を切ったらまずいよな」
「それはまずいでしょう、国宝ですから」
レオネスさんは何か真剣に考えている。そして、
「そうだよな。じゃあ、魔石の実験をやろう。ここに木の魔石がある、俺の実験費で買える安物だ。これを2つに切って使う」
「でも闇の魔石じゃないと通信できないんじゃないですか」
「この機械を組み立てて分かったことがある。必要なのは闇の波動なんだ。だからこの木の魔石に君の闇の魔力を貯めて使うんだ。木の魔石は他の魔力をため込む性質がある、取り出すのに少し工夫がいるのだがな」
「それで魔石は何とかすると言われたんですね」
「そうだ、闇の魔力を持つものがいればね。火の波動だって溜められるんだぜ木なのに。しかも純度があまり高くない方がいいのだよ、純度の高いのにはあまり溜められないんだ、安くて大きいのがいいんだ」
話し出すと長くなりそうだ。割り込もう。
「じゃあ、やって見ましょう」
「そうだな。この魔石に魔力を流してみてくれ」
木の魔石を受け取り魔力を流す。レオネスさんはそれを受け取り魔石カッターで半分に割り2つの通信機にセットする。魔石はある程度の大きさがあれば性質は保たれるそうだ、これもレオネスさんが発見したそうだ。
「おっ、反応した。通信できるはずだ。君はここにいてくれ俺は少し離れてみる」
レオネスさんは通信機を抱えて部屋を出て行った。しばらくして通信機から声が聞こえた。
「サトシ君、聞こえるか」
「はい、聞こえます」
「よし、成功だ」
レオネスさんは戻ってくると、
「もう一つの木の魔石にも魔力を頼む。少しでいいから」
僕がもう一つの魔石に魔力を流すと、
「いろいろ実験したいからもう帰っていいぞ、ありがとう」
と言って、なにやら実験の準備を始めた。もうこうなってしまうと周りが見えなくなってしまう性格のなのだ。挨拶だけして部屋を出る。もちろん挨拶に返事はこない。
家に帰ると、今度はセシリアたちの興奮した話し声が聞こえる。
「ミルルさんのデザインは凄いね」
「そう、イバダンさんのは実用一点張りだものね」
「やはり、女性のデザインっていいよね」
とミルルさんの株がどんどん上がっていく。できあがりまでには3週ほどかかるそうだ。
次の日にスウェードルさんの店から剣ができたと知らせが入り、取りに行った。イバダンさんが、
「これだ、これなら片手でも何とか振れるだろう」
剣は両手剣だった。片手剣と両手剣の間くらいの大きさだ。
「基本は両手ですよね」
「そうだ、左手にはこれを着けてもらおうと思ってな」
と手甲を渡される。金属でできている手の甲から肘くらいまであるものだ。
「リトルフェンリルの皮も張っておいた。土の魔石で物理攻撃の力を軽減してくれる構造にしている。お前の豪力を合わせて使えばそこいらの盾よりは防御力は強いはずだ」
スウェードルさんが、
「合わせて金貨3千枚です」
あまりの値段に驚いていると、
「リトルフェンリルの余った皮の大きい部分を1つを売って下さい。この前にもお話いたしましたように相場はありません。私どもの店でざっと試算して金貨1万枚くらいで引き取らせていただきます」
「1枚でですか」
「はい、1枚です。あとは後日相談と言うことで」
「分かりました」
そう言ってカードを渡す。剣と手甲を作ってもらってお金をもらったようで不思議な感じだ。もちろんリトルフェンリルの皮は渡すんだけど。
そして黒帝龍の53日、通信機を1つを預かり、馬車を借りてクラチエに向かって出発した。クラチエに着くと久しぶりに『黒龍の牙』全員が揃うことになる。クラチエまではセシリアの希望で、タンガラーダ、ラーツ山の麓の村、コルウェジ草原で1泊ずつすることになった。時間的にはかなり余裕のある旅程となった。通信機の実験にもそれが良いとレオネスさんも喜んでいた。
タンガラーダでは前に住んでいた家や行ったことのある店を回り、ラーツ山の麓ではブートドッグを狩り、コルウェジ草原では町中を見たりして前に経験をしたことを踏襲した。宿も同じ所に泊まった。部屋は別だったけれども。
通信機は十分に使うことができた。距離が遠くなることで声が小さくなることもなかった。さすがは魔法具だ、中継基地局なんていらないんだ。
そしてクラチエの王宮に入り、王の執務室に通された。その部屋にはガルシアス王とディオジーニ宰相と2人の男性、それにシェリルがいた。ディオジーニ様がみんなを紹介してくれた。
「王と私はご存じですよね。こちらはモリエール大将軍、そしてエルフの長老カルメリット様です」
僕がみんなを紹介しなくてはと緊張していると、シェリルが僕たちを紹介してくれた。
一通り挨拶を終えると、ガルシアス王が、
「さっそくで済まぬが本題に入らせてもらう。シェリルがどうしても君らと『黒龍の牙』を続けたいと言う。こちらにいる重臣たちと相談した結果、条件次第で許しても良いということになった」
シェリルの顔がパッと明るくなった。シェリルも初めて聞いたのだろう。でも条件というのは何なのだろう。




