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異世界はバラ色に  作者: 里中 圭
第5章 迷走編
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第4話 復帰

 教国の使者が冒険者ギルドに来たそうで、僕はギルドへ呼び出された。リーナとギルドに行くと、応接室には教国の使者2名とクラウディオさんがいた。教国の使者は挨拶のあとシェリルからの手紙を僕に渡し、「マリリアの瞳亭」に泊まるので返事を今日中に欲しいと言って部屋を出て行った。


 手紙には、閉じ込められる心配は無いので安心して欲しいとのこと。また、『黒龍の牙』の件でガルシアス国王が話したいことがあるので一度クラチエに来て欲しい、ということが書いてあった。簡潔な文章で誰かに見らることを前提に書いたことが分かる。


 リーナに相談すると、

「取り敢えず行ってみましょう。行って捕らえられることはないでしょう。何か要求されたらそれから考えましょう、すぐに返事をする必要は無いしね。師匠たちに相談するといえばいいんだから」

「そうだね。通信機ができたらその試験も兼ねて遠出したほうが良いだろうしね」

クラウディオさんが、

「君たちの働きでメルカーディアだけが得をするのが耐えられないのだろう。情報がどんなに貴重なものなのか、ディオジーニは分かっているからな」

「サトシ。私とシェリルは教国人なのよね。2人が、特に王女がメルカーディアだけのために働いているのは耐えられないでしょうね」

「それならルグアイもだよね。ナナはルグアイ人だよ」


 クラウディオさんがにっこり笑って言った。

「アラスティアや国王には悪いが、国に情報をもたらすよりは冒険者ギルドに情報を流すというのはどうだい」

リーナが、

「クラウディオさんも教国人ですよね」

「今はメルカーディア人だよ。でも、このままでは2つの国からお前たちが狙われることになりそうだからな」

「そうですね。僕たちがメルカーディアにばかり利益をもたらすとなると、狙われなかったとしても動きを制限されるようになるでしょうね」

「他の冒険者もな。ギルドとしてはそれが困るんだ」

「それで、情報をギルドのものとして各国に分配すれば良いのですね」

「そう巧くいくかどうかは分からないが、今よりはましになるだろう。アラスティアには怒鳴られると思うがな」

「これまでのものはどこまで情報を流すのか、アラスティア様に相談することにして、今後はギルドを通すことにすれば少しは風当たりも弱くなるかもしれないわよ」

「じゃあ、そうしよう」

「俺からアラスティアに伝えておこう」

「ありがとうございます。では、教国に行くことにします。通信機の試験もしたいので出発は4日後ということにします」

「セシリアも連れて行ってくれるだろうな」

「もちろんです」

「じゃあ、セシリアを呼んでこよう」


 クラウディオさんが部屋から出てしばらくして、ドアをノックする音が聞こえた。

「はい、どうぞ」

というと、セシリアが入って来た。

「初めまして、じゃないんですよね」

「うん、僕たちにとってはね」

「パーティーに戻ってもいいですかって変ですよね、こんな言い方」

「もちろんよ。これからまた一緒に冒険しましょ」


 セシリアは思い詰めたような表情で言った。

「あの、マルチェリーナさん」

「リーナって呼んで」

「リーナさん、席を外してもらえますか。サトシ様と2人きりで話したいのですが」

「分かったわ、『さん』もいらないよ呼び捨てにして、終わったら呼んでね」

そう言って、リーナは出て行った。


 セシリアと2人きりになった。

「サトシ様」

「僕も呼び捨てにして」

「えっ、でも・・・」

セシリアは黙り込んだ。そして言葉を続けた。


「私、覚えていないんですサトシ様とのこと。首輪の奴隷だったときにはサトシ様を愛していたようなのですが、今の私はサトシ様とは初対面なのです」

「分かっているよ」

「私が経験したこと、ノートに書いていることは、父や母の話からも本当のことだと分かりました。でも私、その、・・・、あなたに抱かれたという記憶がないんです。ですから今まで通りに同じ部屋、同じベッドで寝ることはできないと思います。キスするのも・・・」

なるほど、それは分かる。あのときセシリアも僕も初めてだった。セシリアは記憶の中ではまだそういう経験が無いままなんだよな、そして僕とは初対面。トリニダの森で出会ったような衝撃的事実もないし両親も一緒だ。好きも嫌いもないよね。

「分かった。セシリアにとってはみんなと初対面なんだよね。部屋は何とかするよ」

「ありがとうございます」

「敬語もいらないからね。じゃあ、リーナを呼んでくるね」


 セシリアも一緒に家に帰ることになった。今日はとりあえずリーナの部屋で寝ることになった。本気で家のことを考えなくてはならなくなった。セシリアにシェリルの件を話し、一緒に教国に行くことにした。


 次の日、アルトとナナが帰ってきた。2人とも晴れやかな顔をしている。ナナは嬉しそうに、

「サトシ様、私、石つぶてを取得しました。初めての攻撃魔法です」

「石つぶてを取ったんだ、バルナバーシュさんが使っていたのを見たけどすごい威力だったよ」

僕も嬉しくなってくる。アルトは、

「技の使い方を再学習してきました。以前と変わらず動けるはずです。セシリア、もう落ち着いた?」

「いえ、アルトさんですよね。まだ落ち着きません。魔法や剣は父やバーナード様に相手していただいたので前と同じに動けるはずです」


 それから今までの経緯を話し、通信機の試作品が出来たら教国に行くことを告げた。セシリアが、

「一段落したら、みんなといった場所をみんなで回りたいと思うんですがいいですか」

「私もやりたいです、それ。当然知っている人や宿や通りの名前などを確認したいです」

とアルトも言う。

「落ち着いたら回ろう。僕からも1つ提案なんだけど家を買いたい。この家はナウラに使ってもらうことにして、マリリアの外のそんなに遠くないところに家を買って住もうと思う。馬や馬車も買いたい」

「馬を買うって、世話するだけでも大変ですよ」

とナナがいう。

「実はね、ロチャが来ているんだ狼人族の恋人と一緒に」

「えっ、ロチャが」

ナナが驚いた顔になる。

「命の恩を返したいって、ヴァンデル教徒だから」

「そこまで考えなくてもいいのに、でもヴァンデルのすぐ近くのウシュアイア出身ですものね、あのあたりは信仰があついからそうなるのかなあ」

「『黒龍の牙』に加えるわけにもいかないし、家のことや馬の世話なら任せられると思うんだ」

リーナも、

「追い返せない雰囲気なのよね、あの2人。もし戦いたければ徐々に鍛えていけばいいしね」


 次の日は、僕はレオネスさんに呼ばれて実験に付き合い、みんなはスウェードルさんの店に行った。


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