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異世界はバラ色に  作者: 里中 圭
第4章 北の遺跡編
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第24話 奴隷解放

 いよいよアルトの首輪を外す。同席するのは、魔力を使う僕とリーナ以外は、首輪を着ける前から一緒にいたセシリアとカーラだけにした。


 僕がアルトの右から、リーナが左から首に手を当てる。そして同時に魔力を流す。アルトの首が白く光り、そして消えた。

「首輪はどこ」

とアルトが探す。今まで持っていたはずの首輪を探しているようだ。

「アルト」

と、僕は言いアルトを抱きしめた。アルトは僕の肩越しにカーラを見つけ、

「カーラ、なぜここに」

と言った。


「アルト、目を閉じて。落ち着いたら声をかけて」

「はい、でも首輪が」

「それはいいから、落ち着いたら声をかけて」

「はい、私は大丈夫です。何かあったのですか。カーラはスカーレット様のところに行ったはずよね」


「これから、僕の言うことを黙って聞いて」

「はい、分かりました」

僕は諭すように、言葉を句切りながら、ゆっくりと言った。

「アルトは隷属の首輪を着けて、僕の奴隷になり、数か月過ごして、今、首輪を外した。そして、首輪を着けていた間の記憶が消えた。そして、アルト自身が書いたノートがここにある。時間をかけて理解して欲しい。そして、できれば、今までどおり一緒にいて欲しい」


「何かの冗談ですか」

アルトは目を開き言った。信じられないような表情だ。首輪の奴隷だった期間の記憶が薄れているのではない、全く無いのだ。今まさに首輪を着けようとする瞬間に戻ったのだ。

「本当なんだよ。今日は黒帝龍の36日。アルトと出会ってから1年が経つ。信じて欲しい。これが君が書いたノートだ」


 アルトは何が何だか分からないままノートを受け取った。

「確かに私の字ですけど・・・」

「今日はカーラと2人で部屋を使って。僕とセシリアはリビングで寝るから」

と、カーラを残し僕たちは部屋を出た。

「ご主人様、私のときはどうするんですか」

「ご両親に同席してもらうよ。僕のことも記憶から消えるだろうから」

「いやです。そんなの」

「また、出会いから始めよう」

「でも、・・・」

「冒険者カードを見てごらん。『黒龍の牙』の文字、これがパーティー名だってことは、首輪を着ける前から知っていたよね。セシリアなら、一緒のパーティーのメンバーってことは納得できると思うんだ。そこからまた始めよう。今日のアルトのこともノートに書いておいて、きっと役に立つから」


 2日後の朝、シェリルが、

「兄から手紙が来ました。一度、教国に戻って来るようにと。1年間の約束は必ず守るからとも書いてあるの。どうしよう」

「僕たちもしばらくは動けないから構わないけど。リーナも連れて行く?」

「いえ、私1人で行きます。戻ってこなかったらみんなで助けに来て下さい」

「それはないと思うけどね。あと半年経ったら確実に戻って来ることになってるのだから」

「できれば、王女に戻らなくて済むように説得してみるつもりなの。そしたら閉じ込められるかもしれないわよ」

「じゃあ、そのときは必ず助けに行くよ」

「そのときは待ってるよ。必ず来てね」


 セシリアの首輪を外すのは昼食の後だ。アルトはだんだんと不安定になってきている。納得できることなんて出来ないのかもしれない。それでも冒険者ギルドの水晶でステータスのレベルや魔法を見て現実なのだと頭では理解してきたようだ。


 そのこともあって、セシリアの首輪を外す様をアルトにも見せることにした。同席するのは、黒龍の牙のメンバー、セシリアのご両親、アラスティア様とバーナード様だ。以前からの知り合いが多い方が良いだろうと思ったからだ。


 場所は、冒険者ギルドの応接室にした。水晶がすぐに使えるほうがいいだろうとクラウディオさんが言ったからだ。セシリアの視界に入る位置にご両親とアラスティア様たちがいる。その後ろにアルト、シェリル、ナナ、それにナウラさんもいる。テーブルには水晶とノートが置いてある。


「じゃあ、始めるね」

と僕が言い、セシリアの首に手を当ててリーナと魔力を通す。セシリアの首が白く光る。

「お父さん。あれ、ここはどこ」

「セシリア、ステータスを見せてくれ」

とクラウディオさんが水晶を差し出す。セシリアは、

「ステータス」

と言って、水晶をのぞき込む。レベルを見て、

「レベル18って、どうして。12のはずよ」

「それは後で説明するから、ここにいるのがお前のパーティーだ。顔を覚えておけ」

「パーティーを探しているってどうして分かったの」

「サトシです」

「マルチェリーナ、リーナって呼んでね」

「シェリルよ」

「ナナルです、ナナって呼んで下さい」

「アルトです」

セシリアに考える暇を与えずに一気にここまで進めて、クラウディオさんが、

「じゃあ、君たちは帰って、後は任せて欲しい」

と手はずどおりに部屋を出る。この場に立ち会ったことでアルトは何か1つ山を越えたような感じだった。


 部屋を出るとシェリルがリーナに言った。

「私、一度クラチエに戻るね。兄が話があるらしいの」

「また、戻って来るのよね」

「もちろん、期限は1年だもの。戻ってこなかったら『黒龍の牙』が救出してくれる手はずになっているのよね、サトシ」

「そうだよ」

「じゃあ、安心ね」

リーナとナナが笑っている。アルトはきょとんとしている。


 リーナが、

「でも、サトシ。これからどうするの。セシリアのご両親を助けることと、首輪の奴隷を解放することが目標だったよね。達成したじゃない」

「そうだね。とりあえず今の目標は『黒龍の牙』の全員がきちんと揃うことだね」

そういうとシェリルが笑って言った。

「そうね、ひょっとしたら教国が相手になるかもね」


第4章が終わりました。

読んでいただきありがとうございます。

物語が最初の計画とはかなり違ってきているので、

プロットを練り直さなければいけなくなりました。

リアルも忙しくなり・・・。

完結めざして頑張ります。

第5章は「迷走編」の予定です。

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