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異世界はバラ色に  作者: 里中 圭
第4章 北の遺跡編
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第21話 帰途

 いやと言われても、僕は他の世界から来たのだし、いつ地球に転送されるかも分からないのだ。18才だった僕がこちらに来て15才になったのだから、18才のバラ色祭の日に何かが起こる可能性が最も高いと思っている。もちろん、何も起きないかもしれない。もし地球に転送されたとして、そのときに首輪の奴隷はどうなるのか。僕が死んだことになってセシリアやアルトの力がなくなるのか、地球で死ぬまで力が残るのか。この世界からいなくなるのだから死んだことになるのではないかと考える方が普通だろうな。


 そういう可能性が少しでもあるのだから、2人を奴隷から解放したいと思う。たとえ、セシリアを失うことになっても。アルトも確実に残ってくれるとは限らない。アルトはもう十分、命を助けたお礼以上のことをしてくれている。首輪の奴隷になるってことはそれ以上のことだと思う。それを解放するのだ、たとえ離れていっても止める権利は僕にはない。


 僕との関係が壊れても、「黒龍の牙」に残ってくれれば問題はないのだけれど。家は考えなくてはいけないだろうな、個室中心の家に。いずれにしても、奴隷からの解放は絶対にしないといけない。


 ノートを読み進めていく。記憶以外の後遺症は確認されていないようだ。奴隷になっている間は主に対し好意を持つことは書いてある。それが急に外されるのだから、アルトにも嫌われるだろうな。


 リーナが聞いてきた。

「記憶を吸い出して、それを戻すような魔道具はないの」

「ノートを全部見た訳じゃないから分からないけど、今までのところには無かったよ。有ればいいのにね」

「じゃあ、自分で記録していくしかないわね。ウスパジャタのノートの翻訳は私たちが記録していくから、2人は首輪を着けてから今までのことを記録していって」

セシリアが不安そうだ。

「記録っていっても何を記録するの」

「全部よ。何から何まで、できるだけ詳しく。着けた直後からのこと全部」

セシリアとアルトは何をどう書けば良いのか迷っているようだ。

シェリルが優等生らしくアドバイスする。

「個人的なことは私たちに知られたくないこともあると思うので、まずは魔法や修行の内容なんかを記録していきましょう。それだと全て具体的だから。書くことに慣れてきたら、何があったのかを書いて、そのときにどう思ったのかも付け加えていく作業をすればいいわ」

リーナも、

「そうね。何があったかはみんなで話し合いながら書けばいいわ。そのときどう思ったのかは1人で書いたほうがいいよね」

「シェリル、リーナ、ありがとう。ナナもお願いね」

とアルト。ナナも頷く。


 僕とシェリルでウスパジャタのノートを読み進め、重要なところをメモしていく。その間にもいろいろな質問が飛んでくる。作業はなかなか進まない。


 そして、ウスパジャタの祠に来て1週間が過ぎた。黒帝龍の5日、シェリルの16才の誕生日だ。闇の袋に入れておいた指輪を贈った。とても喜んでくれた。リーナがちょっと寂しそうだ。指輪をしていないのはリーナだけになってしまった。みんな、作業を中断して、今日はお祝いをすることにした。アルトとナナが料理を作る。特別な日はドラゴンステーキだ。もちろん、お酒も出てきた。

「傷が痛む間はお酒はだめです」

と、僕は飲ませてもらえなかった。


 次の日からまた1週間、作業を続けた。痛みも引き、ある程度動けるようになったので、そろそろ出発することにした。


 地下に下り、魔道具やリトルフェンリルの皮、他の魔物の皮も、すべて闇の袋に入れた。箱の中に魔石が入っていた。闇の魔石が3個と光の魔石と木の魔石が1個ずつ入っていた。もちろん魔石も闇の袋の中に入れた。これで闇属性の武器を作ることができる。最後にノートを入れて、綺麗に祠を掃除した。


 昼食を食べて、闇のランプに魔力を通し、6人が固まるようにしてゆっくりと来た道を戻る。リトルフェンリルもジャイアントコングも僕たちに気付かない。攻撃魔法を使うとランプの効力が一定時間無くなると書いてあったが、生活魔法はどうなのだろう、フリーズなら。そういう誘惑に駆られたが、自重することができた。


 無事に1つめの結界を抜けた。

「恐かったね。リトルフェンリルから10mも離れてなかったよ」

「ジャイアントコングもね」

「偶然にでもぶつかったらどうなったんだろうね」

「助かったーって感じね」

「まだ、牙竜くらいはいるんだからね」

みんな口数が多くなっている。


 2つめの結界を抜けた。夜になり、暗くなったので野営することにした。

「ここまで来ればもう大丈夫ね」

「ほんとは森を抜けてから野営したかったけどね」

「結界を張ってれば大丈夫だよ。オークやゴブリン、水猿が相手だからね」

「森を抜けたら、エルフ軍とか竜人族の軍がいるなんてことはないよね」

「それはないでしょ。あるとしたらメロ村での待ち伏せね」

とシェリル。

「それもないと思うよ。聖なる森から帰ってきたとなると、リトルフェンリル並みに強いと思ってくれるだろうから」

「じゃあ、リトルフェンリルをやっつけたよって言ってやりましょ。皮もあるし」

「まあ、襲われることはないだろうからね。そのときは魔法を見せれば大丈夫だよ。震地かけて逃げるよ」

と僕が締めくくる。


 次の朝、セシリアとシェリルが、

「今日は闇のランプは使わないで。体がなまってるので剣で戦いたい」

「いいよ。僕もリハビリがてら体を動かしたい」

ということで、結界石を取り除き森の入り口まで歩いていく。ゴブリンや水猿が出てきたが何の問題もなく、歩くスピードも落ちることがなかった。


 昼前には、森の入り口に着いた。辺りを見回しても誰もいなかった。

「カルロタさんたちがいると思ったのに」

とナナ。

「彼らだって、じっとここで待ってはいないだろう。僕の怪我で思ったより日にちがかかったしね。死んだと思っているかもね」

「じゃあ、2日間歩きだね」


 それから2日間は何事もなく、のどかな景色の中をメロ村目指して歩いていった。何人かの人とすれ違ったが、カルロタさんたちはいなかった。特に警戒されることもなかったようだ。


 メロ村が近づいてきた。

「ご主人様、メロ村に寄るんですか」

いろいろな場合を考えていたので、みんな面倒なことは避けたいと思っているようだ。

「そうだね。このまま神の門を目指そう。ペドリドさんは悪い人ではないと思うけど、いろいろ話をさせられて帰りが遅くなりそうだしね」

アルトも、

「そうね。バラ色祭までには帰りたいわ」

「じゃあ、西回りね。尾根からだと14日くらいでパジェまで着けるはずよ」

北の遺跡までのルートを検討するときに教国経由のルートも調査済みだ。

「山越え14日。山越えだけならルグアイ周りの2倍だね」

「でも、それからは急げば2日よ」

「ぎりぎり間に合う計算ね。じゃあ、長老さんところには寄れないね」


 ということになり、メロ村の北を回り森に入る。カルロタさんたちに最初に会った小川のあたりで、また猟師と出会った。残念ながらカルロタさんではなかった。ペドリドさんに手紙を書き、届けてもらうことにした。


 シェリルとリーナが作った地図を見ながら遺跡までたどり着いた。神の門を開けイグナシオ大陸へ、そして北の遺跡に入り神の門を閉じた。シャイアス大陸の滞在は20日間だった。


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