表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界はバラ色に  作者: 里中 圭
第4章 北の遺跡編
81/142

第14話 メロ村

 深い森林地帯を進んでいくと小さな道に出た。けもの道かもしれないけれど、そこを進むことにした。セシリアの索敵には魔物の姿はないらしい。進んでいくと小川があった。

「ここは、かなり上流に位置しているみたいですね」

とナナが言うと、セシリアも、

「そうみたい、水がものすごくきれい。魚もいます。飲んでいいですか、ご主人様」

「ちょっと待って、一応鑑定するから」

といって鑑定する。異常はない。

「いいよ」

と言うと、セシリアは手ですくって水を飲む。

「おいしい、凄く美味しいです」

アルトも飲むと、

「ほんとだ、美味しい。魔法で作る水は味気ないですからね」

みんな、明るい笑顔になった。


 小川からできるだけ離れないように下っていく。小川は合流しながら、だんだんと大きくなっていく。

「ゴブリンです。3匹います。このまま行けば遭遇します」

「ゴブリンかあ、久しぶりって感じだよね」

「そうですね。寒いところにはいませんでしたからね」

みんな、余裕の表情だ。ゴブリンの近くまで来たところで索敵をしてもらう。

「他にはいません。はぐれゴブリンです」

シェリルが、

「私が倒します」

と近寄り、ウインドストームを放つ。それだけでゴブリンは3匹とも倒れた。


 それからはまた、何事もなく過ぎていく。木々が少なくなり、少し開けた場所に出た。突然リーナが言った。

「あれっ、兔だよ。魔物じゃない野生の兔」

セシリアが、

「猪もいますよ。このあたりは魔素が少ないのかもしれませんね。あっ、アプリの木があります」

と言うので、ファイアーでアプリの実を落とす。

「トリニダの森を思い出しますね。あのときのサトシ様は人見知りで、何を考えているのかよく分からなかったですよね、今は堂々とされてますけど」

思い出したくない過去を・・・、みんなこっちを見るんじゃない。


「誰かいます。弓を持っています。左前方です」

とナナが言う。セシリアは、

「魔物ではないようです」


 そっと隠れて、ナナが消気をかける。人が2人いる。2人とも弓を持っている。猟師のようだ。

「すみませ~ん」

とシェリルが笑顔で声をかける。この笑顔は魔物にでも通用するかもしれないと思える。猟師は、こちらに気付き、何やら相談している。1人の男が、

「誰だ、そこで何してる」

と叫んだ。僕には翻訳でそう聞こえるのだが、みんなはどうだろうと見ると、シェリルが言った。

「道に迷ったんです」

「そうか、この道を真っ直ぐ下ったところに街道がある。そこに出れば分かるだろう」

と答えが返ってきた。言葉は通じるみたいだ。アルトに聞いてみると、

「意味は分かりますけど、シャイアスの言葉なんでしょうね。ひどく訛っているように聞こえます」

でも、言葉は通じるんだ。僕が全部通訳しないと行けないかなと思っていたので大助かりだ。


 僕はそっと鑑定をかけてみる。

『エルフ族 男 28才 レベル9』、『エルフ族 男 26才 レベル8』と出た。鑑定の能力が上がっているようだ、レベルまで分かる。それにしてもレベルが低い。猟師で魔物を相手にしていないなら、これくらいが妥当なのかなとも考えられる。

「セシリア、エルフ族の人らしい。セシリアが前に出た方がいいかもしれない。レベルは9と8らしいから危険は無いと思う」

それを聞いたセシリアは、髪を耳にかけエルフであることを強調して近寄っていく。最初に声をかけたシェリルも一緒に行く。僕たちは姿を見せて、その場にとどまる。僕はアルトに、

「何でレベルまで分かったのか、聞かないのかい」

と言うと、

「サトシ様の魔法でいちいち驚いていたら身が持ちません」

当然という表情で、こちらを見ている。


 エルフの男たちは美少女2人を相手に緊張しているが、話をして警戒を解いたようだ。セシリアが手を振る。

「この人たちの村に連れて行ってくれるんだって。長老様にいろいろ教えてもらえって言われたわ」

僕たちは2人について行く。しばらく行くと村が見えてきた。木の柵で囲まれた30軒ほどの集落だった。村に着くと、長老の家に通された。長老は『エルフ族 男 112才 レベル13』だった。やはりレベルが低い。


「儂はこの村、メロの長老をしておるペドリドと申します。森の奥で迷われていたとか難儀なされたでしょう」

「いえ、木の実は豊富でしたし小川もあって、魔物も少なかったですし、それ程のことは」

「ゴブリンと会いなさったか、大変でしたね」

「いえ、3匹でしたので」

「その若さで、冒険者なのですか」

「はい」


 何か話がかみ合わない。ゴブリン3匹程度でって思えるのは僕らが冒険者だからかな。このあたりには冒険者は少ないんだろうか。と思っていると、

「森の奥には、水猿やアナコンダというランクの高い魔物がいます。奥には近づかないようにしなさいよ」

とまで言う。いっぱい倒してきたんだけどな水猿は、アナコンダは1匹ですけど。

「僕たちは冒険者のパーティーです。水猿もアナコンダもDランクですよね。それって強いんですか」

「強い。倒すと経験値が100も入る。聖なる森にいる魔物を除くと、Dランクが最強なはずじゃ。常識じゃよ」


 僕たちが、非常識な田舎者に見えているのかもしれない、見た目だけでも、ローブやアサシンスーツなんていう立派な防具を着けているのに。神の門のことは伏せたいので、

「僕たちは田舎から出てきて、このあたりの常識に疎いのです。小さい頃から修行してて、みんな腕に覚えがあります。水猿やアナコンダくらいは問題なく倒せます」

「レベルはどのくらいなんじゃ」

そう聞かれて困った。レベル17とは言えない。長老ですら13なんだから。

「レベルを見る水晶が無いのでわかりません」

と答えると、長老は不思議なものでも見るように僕をみて、

「ステータスと念じれば見られるだろう。お前たちは見えないのか」

「はい、見えません。僕は15才になったばかりのときは見えていたんですけど、今は見えなくなってしまいました」

「そうか、このあたりでは見えない者はいないんじゃがのお」

と言う。


 リーナが、

「じゃあ、魔法は使えないんですか」

と尋ねる。長老は馬鹿にしたように、

「ファイアーやウォーターは誰でも使える。レベルをあげるとフリーズやクリーンも使えるようになる」

「遠距離操作は」

「なんじゃそれは、聞いたことがないな、魔法なのか」

「いえ、噂でそんなものがあると聞いたもので、つい」

「攻撃魔法を使える人はいないんですか」

「魔法は魔道具で使えば誰でも使える。それがないとFランク以上の魔物には苦労するからな」


 話していくうちに、魔道具はかなり発展しているというのが分かる。強い冒険者の装備は高価な魔道具だらけということだ。魔道具を使うにもMPが必要で、威力の高い魔法は1発で魔力切れになるらしい。


「冒険者のレベルは大体どれくらいなのですか」

「儂が聞いたことのある冒険者では15が最高じゃな。昔は20を超える者もいたらしいが」

「けっこう低いんですね」

とセシリアが小声で言うと、聞こえたのか長老が睨む。


「これをもらって下さい」

と雪狼の毛皮を出す。

「森の奥にいた雪狼をみんなで倒しました」

「雪狼、ときどき森の奥にいるという。Dランクなはずだ。6人で狩ったのか」

「はい、何とか」

「君たちはそんなに強いのか」

「強いのか弱いのかはよく分かりません。他の人と比べたことはありませんから」

「そうか」

長老は混乱しているようだ。

「かなり高価なものだが、もらっても良いのか」

「どうぞ」

嬉しそうな顔は隠しきれない。

「今日は、ここに泊まるがいい。妻のレヒナが病でな、料理は大したものは出せないが」

と言って、部屋に案内してくれた。2部屋使っていいらしい。荷物は闇の袋に入れているので、片方の部屋にみんなで集まる。


「レベル17のパーティーなんて言ったら卒倒するかもしれないね」

「死んでしまうかも」

「奥さん、病気だって。治してあげようか」

「でも、魔法が使えるってばれるよ」

「薬を飲ませればいいのよ。水でも何でもいいから、そして魔法で治す。セシリアの治療魔法か、私の光の癒しのどちらかで治せるよ」

「そうね、いい薬があるって言えばごまかせるよね」

「でも、料理はアルトがしてよ。山菜ばかりじゃいやよ」


 そういうことになって、レヒナさんを治療することにした。長老のところに行き、

「いい薬がいろいろあるので奥様に会わせて下さい。ここにいるセシリアは薬師です。きっと合う薬を選んでくれます」

「そうか、よろしく頼む」

そう言って、長老はレヒナさんのところにリーナとセシリアを連れて行った、シェリルもついていく。


 アルトが料理を作りに行き、ナナもアルトと一緒に行こうとしたので、ナナを呼び止めた。

「ナナ、誕生日おめでとう」

そう言って、指輪を渡した。そう、今日は蠍の7日なのだ。ナナは涙目になって抱きついてきた、そして、

「ありがとうございます」

と言ってキスをした。僕の方が固まってしまった。ナナはすぐに離れてアルトの元に急いだ。


 しばらくして、リーナとセシリアが帰ってきた。セシリアが報告する。

「うまくいきました。魔法を使ったのはばれなかったと思います」

「レヒナさんは58才なんだって、エルフだから人族なら30才くらいに見えるよ。長老も元気ね」

とリーナも言う。


 夕食はアルトが作り、長老夫妻と一緒に食べた。もちろんナナの誕生日をみんなで祝った。レヒナさんはセシリアが魔法を使ったことが分かっていたようだ。セシリアを魔導師様と呼んでいるくらいだ。長老も魔導師がいるなら雪狼くらいは倒せるだろうと言っている。


 この大陸の魔物について詳しく聞くことにした。そして一番大切なことも。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ