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異世界はバラ色に  作者: 里中 圭
第4章 北の遺跡編
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第13話 北の遺跡

 だんだん霧が深くなる。「龍の祠」の記述と同じだ。歩いていくと白い雪と霧の中に黒いものが見えた。上は雪をかぶっているのだろうけど、近くに寄って見上げると黒い岩肌が三角形に見える。

「これが三角岩ですね」

とナナが言う。

「ここから登ろう。少し急な坂だけどリーナ、大丈夫」

「大丈夫、魔物が出ないことを祈っててね」

「周りに魔物はいません。今のうちに登りましょう」

とセシリアが言った。


 リーナのペースに合わせて登っていく。かすかに道がついている。しばらく進むと道が分かれている。「龍の祠」の記述通りに左に進む。洞窟があったのでそこで1泊することにした。1泊して、次の日も歩き続ける。また道が2つに分かれる。「龍の祠」の記述では残り2つの分岐は右だった。右に行くとすぐにまた分岐があった、それも右に行く。最後の分岐から5分くらい進むと霧が晴れてきた。


 霧が晴れると遺跡が見えた。遺跡は、南の遺跡とほぼ同じ外観だった。遺跡に入ってもやはり南と同じ作りだった。誰が作ったのか気になるところなのだが、同じ人物が設計したのは間違いないだろう。遺跡の周りに結界石を置き、みんなで壁の文字を写す。


 ほぼ同じ記述なのだが、南と違い、床に簡単な訳が書いてある。神の門、開ける、水、風、闇と書かれている。闇の文字は丸で囲んである。

「とりあえず、神の門を閉じよう。じゃあ、セシリアとシェリル、左手だよ、いいね。3、2、1,はい」

と魔力を通して神の門を閉じた。魔力を通すときに南の神の門でリーナが言ったように、閉じるイメージが流れ込んでくる。視点はこの遺跡の上空から神の門に向かっている。反対側にはもう一つの遺跡がある。景色は分からない。遺跡と神の門だけがくっきりと浮かんでいる。


「閉じたよね」

とシェリルが聞く。

「閉じた。でも今回は閉じただけでは終わらない。シャイアス大陸に行くよ」

と答えると、

「もちろん」

とシェリルは、笑顔を返す。


「ナナ、アルト。神の門が見えるところまで行って。神の門を少しのあいだ開けるからどんなところか見てきて」

と僕が言うと、リーナが、

「私も行きたい、・・・、いや、行かない方がいいよね」

悲しそうな顔だ、南の神の門も見ていないんだからしょうがないよね。シェリルが、

「どうせ、みんなで行くんだから、あせる必要はないわよ。合図を出す係をして」

と慰める。


 ナナとアルトが神の門が見える位置に着いたと合図をする。リーナがそれを見て、

「合図です」

と伝える。

「じゃあ開けるよ、3、2、1、はい」

数秒後、

「閉めるよ、3、2、1、はい」


 ナナとアルトが帰ってきた。ナナが、

「森です。大森林が見えました。門が開くと緑の大森林でした」

と明らかに興奮している。

アルトも、

「トリニダの森よりも密度の濃い森です。その中に遺跡も見えました」


「行きましょう。シャイアス大陸に」

と、みんなが言う。

「今日は、ここで1泊しよう。とりあえず寝て朝になったらシャイアス大陸に入ろう。何があるか分からないから」

時差もちょっと心配だしね。アルトがフォローしてくれる。

「せっかくだから、しっかり疲れを取って行きましょう。戦いの連続になるかも知れないんだし」

シェリルも納得したような表情だ。

「じゃあ、美味しいもの作って」

「まかせといて」

何とかみんなも納得してくれたようだ。


 次の朝、みんなは早起きだった。朝食を食べて、結界石を回収し、神の門を開いた。セシリアの索敵には魔物はかからない。雪道を神の門まで行く。

「雪の中に緑の森が浮かんでいる」

とシェリルが言う。まさにその通りの風景だった。神の門を通ると温度が急激に上がる。フードを外すと、氷点下から摂氏30度くらいまで一気に上がったように感じだ。


 セシリアが、

「魔物がいます。猿の魔物です。バラバラに3匹です」

「ウォーターボールだけ気をつけてればいいね」

注意しながら進んだが、猿たちは襲ってこなかった。猿が肉眼でも見えたので鑑定すると「水猿」とでた。


 遺跡に入り、神の門を閉じる。

「私たち、今、シャイアス大陸にいるのよね」

「凄いね、別の大陸なんて」

「どんな魔物がいるかしら」

「ユージン様が悔しがるでしょうね」

「だれか住んでいるのよね、大陸だし、神の門があるくらいだから」

みんな、何かしらしゃべっている。不安の裏返しかも知れない。ただ興奮しているだけかも知れない。


 こちら側の遺跡の壁の文字は、北の遺跡と対になっているだけに同じものだった。ただ、床に書かれている訳はシャイアス大陸共通語で書いてあった。

「だれか住んでいるよね。僕は翻訳スキルがあるから何とかなるけど、みんなは言葉が通じないかも知れないので、絶対にはぐれちゃだめだよ」

と注意すると、

「笛があったよね。この前シェリルを探したときに使ったやつ」

とリーナが言う。

「あるよ」

と言って、僕は闇の袋から笛を取り出し、みんなに渡す。5個しかないのでリーナは受け取らなかった。傷のために遠慮したんだろうけど。

「はぐれたときは雷槍を空に向かって放つからそれで気づいて」

と言ってごまかした。けが人を1人にはしないことを確認しあった。


 落ち着いたところで出発することにした。最初の目標は大魔導師ウスパジャタに縁のある所だ。だけど今は森の中、何の手がかりもない。とりあえず町か村に出るしかないだろう。

「トリニダの森のときみたいですね、ご主人様」

「そうだね、ゴブリンなんて出なきゃいいけど」

「今のところ猿が1匹いるだけです。襲ってきそうな雰囲気はないし、こちらをつけてくる気配もありません」


「あっ、魔物です。10mのアナコンダが1匹います」

アナコンダはDランク、黒色狼くらいの強さだ。特に大きいわけでもないので、セシリアに任せる。セシリアは一撃で倒した。魔物よりも森を抜ける方が問題かも知れない。シェリルとリーナは、必死で地図を作っている。帰り道はしっかり把握しておきたい。マッピングは学園で習ったようだ。木に傷を付けると誰でも簡単に遺跡に行けるようになるかもしれないので印は最小限にとどめておいた。


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