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異世界はバラ色に  作者: 里中 圭
第4章 北の遺跡編
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第11話 ウインディドラゴン

 前方の崖の下からバサバサッと音がして、甲高い風がなるようなヒューという風の音が聞こえ、その後にギャーという耳をつんざく物凄い音がする。すぐには鳴き声とは思えなかったほどだ。そして再び羽ばたく音がして、何かがせり上がってくる。


 音のする方を見ていると、薄灰色の大きなものが空に舞い上がった。ウインディドラゴンだ。翼開長は20m以上ありそうだ、それが空に浮かんでいる。翼開長7m前後である翼竜の比ではない。威圧感も半端無い。ワイバーンに比べるとこれでも半分以下の大きさなんだろうけど。


 僕たちの上で、旋回している。鷹や鳶が真下の獲物を狙っているような感じだ。突然スピードを増し、旋回の半径を大きくする。


「来ます。身体強化、加速、魔法防御」

とナナが叫ぶ。支援魔法を受け、僕たちは一斉に戦闘態勢を取る。


「左翼を狙う」

指示し、ファイアースピアを放つ。シェリルは風のレイピアでウインドカッターを、アルトはファイアーアローを、リーナは雷槍を、セシリアはウォーターカッターを放つ。ナナは最後に土の加護をかけてくれた。


 ウインディドラゴンの左翼に亀裂が入る。しかし、大きな翼にとって致命傷にはならない。翼の付け根への攻撃もそれほど気にしていないようだ。


 ウインディドラゴンは、正面から突っ込んできた。口を開けている、のどの奥がわずかに光っている。ナナが叫ぶ、

「エアーブレスが来ます」

僕は、盾で正面から受ける、もちろん豪力も使う。アルトとナナは僕の後ろに隠れる。シェリルは風の盾で受け。セシリアは右へ走りエアーブレスの圏外に逃れる。リーナもセシリアの後を追ったが、間に合わなかった。

「リーナ」

とアルトが叫ぶ。リーナは吹き飛ばされていた。マントが捲れ上がり、光のローブが見えていた。ローブの背中がナイフで切ったように裂かれていた。エアーブレスには、風の勢いだけでなくウインドカッターの効果も含まれているようだ。


「セシリア、リーナを頼む」

と叫んで、2人から離れる。そして、

「アルトは、僕の後ろに、ナナはシェリルの後ろに」

と指示を出す。風の盾はエアーブレスを防げるようだ。

「また来ます」

再び左翼を攻撃して、エアーブレスを受ける。左翼は少しずつ亀裂が大きくなっているようだ。


 3度目の攻撃を防ぐと、ウインディドラゴンは、攻撃を変えてきた。エアーブレスを使わず、通りすぎるときに爪で掴もうとする。スピードが鈍る。その時、アルトがファイアーラプチャーを左翼に炸裂させた。左翼の付け根が切り裂かれ翼が背中の上に折れ曲がった。


 爪は僕の右肩を掠め空を掴んだ。ウインディドラゴンは、地面にぶつかり1回転して立ち上がった。そして、口を開けた。喉が光る前に、マインドボールを打ち込んだ。ウインディドラゴンの動きが止まった。混乱しているのかどうかは分からない。


 チャンスだ。翼竜を解剖したときに確認した心臓の位置、右大胸筋の内側にフリーズをかける。

「グッギャーッ」

とウインディドラゴンは悲鳴をあげるが、動きを止めない。左側にもかけるが心臓を凍らせることはできなかったようだ。


 それでもかなりのダメージを与えているようだ。ウインディドラゴンは身体を反らせて耐えている。その隙をみて、アルトがファイアーラプチャーを喉元に打ち込み切り裂いた。首は半分以上切れ、真っ赤な血が吹き出している。ウインディドラゴンは倒れた。


「セシリア、リーナは?」

シェリルが聞く。

「大丈夫です。命に別状はありません。背中の傷も残りません。ローブの防御力に、身体強化の重ねがけのおかげです。魔法防御をかけてもらってこれだけ切れてるってことは強力なウインドカッターが含まれていたんですね。痛みが取れるのには時間がかかるかもしれません。私が上級の治療魔法が使えれば早く治せるんですけど」

「ありがとうセシリア、リーナは治るんですね。良かった」


 僕とナナで、ウインディドラゴンを解体した。爪と牙、それに肉を闇の袋にいれた。心臓は胸骨の下方、人間でいうなら臍の所にあった。魔物の身体は不思議なものだと改めて思った。


 また、ウインディドラゴンを食べ尽くすために山ハイエナが集まってきているようだ。山ハイエナが来ると面倒なので、移動することにした。リーナは僕が背負う。次の祠まで、洞窟でもいいけど、早くたどり着きたい。

「山ハイエナは付いてきてる?」

と、シェリル。

「付いてきてるわ、20頭ほど。ウインディドラゴンの争奪戦に加われなかった群れのようね」

「良かった。しばらくは安心ね。周りに強い魔物はいないってことよね」

「私の索敵より、警戒範囲は広そうですものね」


 しばらく行くと洞窟があった。結界石を置き安全を確保する。アルトは、リーナのローブを脱がせ、ローブの破れた背中を縫い合わせ始めた。セシリアは、もう効果はあまり期待できないと言いながら治療魔法をかけている。


 僕がじっと見てるのも変なので、

「見張りをしてくる」

と言って外に出た。ナナが付いてくる。

「雪道は土の加護が無いと歩きにくいにゃん」


 洞窟から離れ、上を見上げると、灰色の重くのしかかったような空だ。翼竜が飛んでいる。シェリルの弓でないと届かないなと思っていると、後ろで山ハイエナのキャインという鳴き声がした。振り向くと白い狼がいた。

「雪狼です」

とナナが言う。


 雪狼は、振り向くと同時に襲ってきた。豪力を使い素手で殴る。雪狼は思わぬ反撃にまともにパンチを受けてしまった。倒れ込んで一瞬朦朧としたようだ。フリーズをかけ心臓を凍らせる。雪に囲まれて生活している雪狼にフリーズが効くかどうか不安だったが、どうやら効いたようだ。


 真っ白な毛皮を剥ぎ取り、肉は山ハイエナのために残すことにした。これで、山ハイエナはウインディドラゴンの見張り代わりになってくれるだろう。


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