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異世界はバラ色に  作者: 里中 圭
第4章 北の遺跡編
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第7話 ブルグマン

 セシリアは、

「ご主人様、魔封じの盾を貸してください。シェリル、風のレイピアを貸して」

と言う。何か考えがあるらしい。盾とレイピアを借りると、ナナを庇うように立つ。


「失礼じゃないか、いきなり顔を見せろなんて」

いつものセシリアよりも威圧的で好戦的な態度だ。

「お前じゃない、その猫人族だ」

「同じだ。お前に命令されるいわれはない」

ブルグマンの迫力にセシリアは負けていない。ブルグマンは思わぬ反撃に顔を真っ赤にして怒っている。


「俺を誰だと思っているんだ。ブルグマンだぞ、この辺ではちょっと有名なんだがな。田舎者のお前らは知らないだろうがな」

と馬鹿にしたように言う。

「知ってるよ。弱いくせに、亜人を騙す自分勝手な冒険者だってな」

セシリアは、わざと怒らせているようだ。

「お前はエルフだな。亜人のくせに俺様のいうことが聞けないのか。お仕置きが必要なようだな」

と言って、剣を抜く。ブルグマンのパーティー3人も戦闘態勢に入る。いつの間にか人だかりができている。きっとブルグマンの仲間も多いはずだ。


 セシリアはナナに合図をする。ナナはフードを脱ぎ顔を見せる。

「おっ、ニャニャルじゃないか。探したぞ、戻ってこい」

「馬鹿じゃない。誰がお前なんかのところに戻るもんか」

とナナも精一杯の強気を見せる。


「生意気な、今更後悔しても遅いからな。また俺の奴隷にしてやる」

とブルグマンたちが仕掛けてくる。ナナは1歩下がり支援魔法をセシリアにかける。ブルグマンの後ろからウォーターボールが飛んでくる。セシリアが魔封じの盾で受ける。

「私はセシリア、エルフのセシリア。覚えておくがいい、セシリアにやられたってね」

といいながら、風のレイピアでウインドカッターを連射する。ウインドカッターはシェリルが放つときよりも小さく、威力も弱いようだ。


 セシリアは圧倒的な早さでウインドカッターを放ちながら、ブルグマンに近づき、着ている防具をレイピアでズタズタに切り裂く。ブルグマンの妻はウインドカッターをまともに受けて体のあちこちから出血している。残りの2人は後ずさりしながら、逃げだそうとした。そこに、セシリアがウインドカッターを連射して2人を傷つける。4人とも防具はもう使い物にならないくらいにズタズタになり、血が滲んでいる。


「弱いくせに、威張るんじゃないよ。悔しかったらいつでも相手してやるよ。セシリアがね」

と言って、僕たちの所に来て、

「さあ、出発しよう」

と、まるでパーティーリーダーのように言った。僕はセシリアにクリーンをかけ返り血を落とし、馬車の駅に向かった。


 ◇ ◇ ◇


 残されたブルグマンは、周りで見ていた冒険者たちからの嘲笑を受けながら、治療魔法で傷を塞いでいた。見物人は、ほとんどいなくなった。

「ちくしょう、覚えてろ。絶対に復讐してやる」

と強がっている。残っていた見物人の1人がブルグマンに近寄ってきた。

「ブルグマン、派手にやられたな」

「油断したんだ。あんなに早く動けるとは思わなかった」

「あのエルフ、セシリアって言ってたな。あいつは相当強いぞ」

「数でかかればあっさり倒せるだろう」

「そうだな。あいつの仲間は上玉揃いだった。俺たちが遊んだ後に売っても相当高く売れるだろうよ。お頭も動くぜ、きっと」

「ヴァンデル行きの馬車駅に入って行ったな」

「大丈夫だ。跡はつけさせている」


 ◇ ◇ ◇


 駅に向かう途中、シェリルが、

「セシリア、格好良かったわ。私もあんな風に名乗って懲らしめたい」

「だめよ、あんなことは目的も無しにやるもんじゃないわよ」

とリーナが答えた。

「やっぱり分かった。でも今は言えない」

とセシリアが笑っている。そうだよねと僕も思った。

「ねえ、何かあるの」

とシェリルが僕に聞く。

「その話しは後で、油断はしないように」

というと、シェリルは周りをさっと見回した。そして、

「分かった」

とだけ言った。


 駅に着き、馬車に乗ろうとすると、

「ヴァンデル教の印を見せて下さい」

と言われた。そんなものは持っているはずもなく、

「持っていません」

というと、

「ヴァンデル教の信者でなければヴァンデルには入れません。馬車にお乗せするわけにはいきません」

と断られてしまった。仕方なく、馬車を雇ってウシュアイアまで行くことにした。


 馬車は、まず西に進み山沿いに北に進みウシュアイア村に着いた。ウシュアイア村はロチャから聞いて想像していたよりも大きな村だった。トレーヴ山脈の最も北の入り口にある村で、冒険者向けの宿や装備屋が並んでいた。ただ、亜人には冷たかった。宿を頼むと、

「亜人は部屋に通せないよ」

と言われた。仕方なく、食材を補充し、山の麓まで続くウシュアイアの森を抜け、そのまま山には入ることにした。


 森に入るとすぐに、

「ずっとつけてきています。3人です」

とセシリアが言う。

「距離は」

と聞くと、

「100mくらい後ろです」


「どうする」

と僕がみんなに尋ねると、

「ひと塊で追ってきてもらいたいよね。一度、見失わせましょ」

とリーナ。少し進むと、木々が少し開けたところに出た。前には登山道が続き、左側は小高い岩場、右は深い針葉樹の森になっている。

「じゃあ、セシリア、このあたりで緑の結界を張って」

セシリアが緑の結界を張る。結界を張ったままにして、ナナが全員に加速をかけ、坂道を上っていく。つけていた3人は、僕たちを見失い慎重に道を進む。結界は張ってあるが一本道なので真っ直ぐに結界の中に入っていく。結界の中に入り僕たちがいないことが分かると、急に不安になったようだ。左の岩場から襲われると感じたのだろう。3人は一旦、そこから逃げ、岩場の方を回りまた登山道に戻った。1人が後ろから来る仲間に合図をし合流する。合流したところで慎重に、僕らの追跡を再開した。


 夜になった。僕たちは、かなりの時間を稼ぐことができた。道から逸れ森の中に入り、結界石で結界を張り1泊することにした。シェリルが僕に向かって、

「答えを聞かせて」

と言う。セシリアが名乗ってブルグマンを懲らしめた理由が分からないらしい。


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