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異世界はバラ色に  作者: 里中 圭
第4章 北の遺跡編
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第4話 震地

 ルートは山脈越えの方、その中でもテラッセンからトレーヴ山脈に入るコースを選んだ。あえて地竜のいる地区を選んだのだ。単体への魔法攻撃であるファイアースピアが使えるようになったので、範囲攻撃も1つは欲しいと考えたからだ。地竜ならスカーレット様たちが討伐したときに見学していたので動きも分かる。


 御者着きの馬車を借りて、テラッセンに行きコンラッド夫妻に挨拶した。

「これから北の遺跡の調査に行きます」

「調査だけか」

「いえ、神の門、シャイアス大陸へ道が開けば行くつもりです。隷属の首輪を外す方法を見つけてきます」

「そうか、それが目的か」

「はい」

「南がリトルサラマンダーなら、北はリトルフェンリルだぞ。こちらの方が、数が多い。イグナシオ大陸にもわずかだが生息しているしな。Sクラスだぞ」

「できれば会いたくないですね」

「倒せば、魔法を通さない皮が手に入る。ものすごく高く売れるんだけどな」


 馬車に乗り、山に向かう。山に入り、スカーレット様に同行したときの宿に泊まる。そこで馬車を帰した。これからは徒歩での山脈越えとなる。ルグアイ王国の南の町、アジメールまでは魔物討伐や山越えを含め、7日かかる行程だ。


「地竜がいれば良いですね」

とシェリル。震地を魔食いしたいことを分かってくれてるようだ。

「地竜もAランクの魔物ですよ。そう簡単には倒せません」

とナナ。ナナは僕以外の人としゃべるときはにゃんは付けないようだ。セシリアは、

「私たちもAランクのパーティーよ」

と言う。リーナは、

「キングベアもいるし、空を飛ぶ魔物もいるらしいから油断はできないよ」

という。僕とアルトは部屋の隅で黙って聞いている。出発前に何度も話した内容だ。


 次の朝、僕たちは徒歩で山を上る。雨期の後ということもあり、地面がぬかるんでいるところもあったが、ナナの土の加護で何の問題もなかった。便利な支援魔法だ。1日目は魔物とは出会わずに距離を稼ぐことができた。結界石を置き、テントを張る。見張りは2人ずつ交代ですることにした、組合せはくじで決めた、1日目の担当は3番目でセシリアとだった。


 2日目は、灰色熊やオオトカゲが出たが群れていないDランクの魔物は瞬殺できる。3日目に入り、山の頂上付近になるとビッグネイルとよばれる爪の大きな鷲の魔物が出て来た。シェリルが風の弓で1射で落とす。

「シェリル、凄いね」

と言うと、

「この風の弓は凄く良い物ってイバダンさんが言ってました。しばらく貸していて下さいね」

とにっこり笑う。可愛い・・・。セシリアの手が目の前を上下する。セシリアを見るとジト目で睨んでいた。


 しばらく進むと、セシリアが、

「魔物の群れです。およそ30匹、ビーファルコンです。空から真っ直ぐこちらに向かってきます」

「ナナ、加速と身体強化をかけて僕の後ろに。アルトとシェリルは範囲攻撃を」

アルトはファイアーストームをシェリルはウインドストームを放つ。セシリアは氷の刃を構え、みんなの前に出る。リーナはライトボールを、僕はマインドボールを放つ。魔物たちは、攻撃をまともに受け、バタバタと落ちていく。それでも残った数匹がこちらに一直線に飛んでくる。セシリアが氷の刃で叩き切る。僕は盾で受け止める。全滅したかに見えたが、

「まだ上に1匹います」

とナナが言う。その1匹は高く舞い上がり地面に向かってものすごい早さでぶつかり潰れてしまった。リーナが、

「マインドボールの効果ですね」

と言ったが確認することはできない、でもおそらくそうなのだろう。


 今回の行程で最も高いところを過ぎ、あとは長い下りとなる。小さな洞窟を見つけ、そこで野営する。ナナが言う。

「ここから先が、地竜のよく出る地域です」


 4日目、しばらく進むと岩のむき出しになった所に出た。セシリアの索敵に魔物がかかった。

「地竜がいます。前方160mの所です。30mくらいの大きさです」

「30mか、この前のが25mくらいだったからけっこう大物ね」

とリーナ。


 50mくらいの距離まで近づいて、

「できるだけ気付かれないように近づいて、魔食いをする。ナナ消気をかけて。地竜の上に僕が乗ったら、セシリアとアルトは魔物の正面に立って注意を引きつけて、シェリルとリーナは後ろから攻撃を。いいね」

とナナに消気をかけてもらい気配を消して地竜の右後ろ足に近づく。みんなの方に合図をして地竜に飛び乗る。


 加速をかけ右脚から素早く駆け上がり、すぐ上の棘にしがみつき魔食いを唱える。ゆっくりと地竜が首を動かし後ろを向こうとする。そのときシェリルが地竜の顔をめがけて矢を放つ。矢ははじかれたが地竜は首を戻し前を睨む。前にはセシリアとアルトがいる。


 地竜は右前足を振り上げ激しく振り下ろした、震地だ。だが、震地は発動しなかった。僕は魔食いが成功したことを確信した。加速を使い素早く地竜から離れる。アルトがファイアーラプチャーを放つ。シェリルが左目を射貫く。リーナの雷槍が炸裂する。


 地竜は暴れるように動き、アルトをめがけて突進しようとする。僕は地竜に震地をかける。地竜はよろめいたように腹を地面に着く。再びアルトがファイアーラプチャーをかける。僕は心臓めがけてフリーズをかけ、セシリアが左から近づき喉元に氷の刃を突き入れ、とどめを刺した。シェリルのレベルが上がったようだ。これで全員がレベル17になった、経験値の差は変わっていないのだが。


「震地を魔食いできましたね」

「できた。地竜にも震地が効くとは思わなかった」

シェリルが、

「魔食いって凄いですね。技が使えるだけじゃなく技を盗むんですね。盗まれた方は技が使えなくなるなんて、とんでもない技ですね」

「そう、相手が使えないのを実感したのは初めてだよ、もともとマジャルガオンの袋の呪いからだから、相手の技が消えるのは当たり前だよね」

「そうよ。ジェイハンという風の騎士が使っていたものよ、その弓と一緒に」

とリーナ。

「この風の弓と一緒に」

「そう、伝説ってほど古くはないらしいけど、文献に出てくるらしいわ」

「へー、そうなんだ。この弓も相当な物らしいよ。イバダンさんが言ってた」


 ナナが興奮したように言う。

「黒竜の牙だけで、Aランクの地竜。それも30m級の物を倒したんですよ。ねっ、サトシ、実力もかなり付いてるにゃん」


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