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異世界はバラ色に  作者: 里中 圭
第3章 魔物侵攻編
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第20話 神の門

 遺跡の中に入ると、祠があった。日記のとおりだった。祠の中に入ると壁一面に古代語が刻まれていた。

「なんて書いてある」

ユージン様から言われ、壁の文字を読み、ざっと概略を話す。

「神の門の位置と門の操作方法が書いてあります。他にも神の門がサマルカン大陸に通じていること、サマルカン大陸はサラマンダーを中心に火属性の魔物が多いこともかかれています。古代の遠征隊は何度かサマルカン大陸に遠征していたようです」

「神の門の閉じ方が書いてあるのだな。すぐに閉じよう。リトルサラマンダーに入り込まれる前に」

「はい、じゃあ、リーナ、ナナ、アルト、魔方陣を囲んで」

3人は魔方陣を取り囲む。魔方陣には、手形が6か所あり、それぞれに火、土、光の飾り文字が書かれている。文字盤には右手で開けて左手で閉じるとある。僕は属性に合わせて位置を誘導し、その左手の絵に3人が手を重ねるように指示した。


「3つ数えたら魔力を絵に通して。用意はいい。じゃあ、1,2,3」

3人は魔力を込めた。魔方陣が光り、そして静かに消えた。リーナが、

「閉じたと思います。神の門とこの祠、それにサマルカン大陸にあるここと対になっている祠のイメージが頭の中に浮かび、神の門が閉じていく様子が見えました」

「私もです」

アルトとナナが言う。


「神の門は、ここから南に2kmの所だったな確かめてくる」

と言って、ユージン様は従者を1人連れて南に向かって走り出した。

「昨日も、オアシスに到着してすぐに会議をやるし、今もすぐに走り出す。ユージン様ってせっかちですね」

とセシリアが言う。それを聞いたスカーレット様は思わず吹き出してしまった。


 夕食後、ユージン様たちは帰ってきた。

「神の門は閉じていた。この壁の絵にある岩と岩の間には何もなかった。サマルカン大陸は見えていなかった。開いているところを見ていないので何とも言えないが、岩の間からこちら側にだけ魔物の足跡があったから間違いなくあそこが神の門だろう。明日、もう一度確かめる。ここから見えるあの大きな砂山、分かるか」

「はい」

「あそこからは、この祠も、神の門も見える。明日あそこに行って合図をするから門を開いてくれ。そして開いたらすぐに閉じる。その様子を見てみたい。どうだ、頼めるか」

「私も行きます」

とスカーレット様。

「私も」

とシェリルとセシリアが続く。

リーナが、

「分かりました。3人残って門を開けます」

「護衛に、近衛隊からも残そう」

「必要ありません。開けて閉じるだけですから。それよりも開けたとたんに昼間のリトルサラマンダーの親でも出て来たら大変ですのでそれに備えて下さい」


 その夜は、リトルサラマンダーの肉でドラゴンステーキを楽しんだ。最高の味だった。石畳の中には魔物は入れないと壁に書かれていたので、見張りも最低限の人数ということで近衛隊の方で出してくれた。ぐっすり眠ることが出来た。


 夜が明け、朝食を食べるとすぐに神の門に向けて出発した。やはりユージン様はせっかちみたいだ。

砂山に近衛隊の3人を残し、神の門のそばに近づく。ユージン様が、

「合図を送れ」

というと、近衛兵の1人が白い旗を振る。それを見た砂山の近衛兵も白い旗を振る。リーナは白旗が振られるのを見て祠に入り、

「合図だよ、いい」

といって、右手を絵に置く。

「1,2,3」

で魔力を込める。頭の中に神の門が開くイメージが浮かぶ。すぐにナナが祠の入り口から出て閉じる合図を待つ。


 岩と岩の間、その中心に縦に1本、光の線が現れる。その線が2つに別れ、徐々に広がりまるで扉のように開いていく。そして開いたところから景色が広がっていく。大地は赤茶けた土に、ごつごつした岩石、近くの山からは煙が出ている。以前ネットで見た火山地帯の風景だ。それが砂漠の中に突然現れた。圧倒される。


 ユージン様が叫ぶ、

「みんなここで待て」

そして走って神の門の中に入っていく。みんなはあっけにとられ黙ってみている。ユージン様は100mくらい進み、入って行ったときと同じように走って戻ってきた。

「門を閉じる合図を」

とスカーレット様が叫ぶ。赤い旗が振られる。


「合図です」

とナナが言って祠に戻り、今度は左手を乗せ、魔力を流す。閉じるイメージが3人の頭に浮かぶ。

「大丈夫だよね」

と言って祠から出る。砂山からこちらに合図を送った近衛兵がゆっくりと下りてくる。大丈夫そうだと3人とも頷き合った。


 ユージン様は興奮したように、

「ははは、サマルカン大陸に行ったぞ。別の大陸に行ったのは俺1人だあ~」

スカーレット様があきれ顔で、

「それでみんなを待たせたんですね。まるで子供だわ」

「何とでも言ってくれ。とりあえず今だけだろうからな。これから遠征隊も組まれるだろうし」

「そうですね。いずれは調査したいですよね」

「俺も、いつかあの大陸に遠征したいな。光と土と火の属性を揃えれば行けるんだよな」

確かに子供みたいだ、あのユージン様が。


 もちろん僕も同じ考えだ。僕たちの場合はいつでも行けるけどね。

「火属性の魔物の進入で南の魔物が活発化したんだな。これでだんだん治まってくるだろう。よし、昼飯食ったら帰るぞ。それまでに手分けして祠の文字を書き写せ」

と言って、自ら紙とペンを持って祠に入っていった。僕らもそれに続く。セシリアは、

「すぐに帰ると言い出すのかと思った」

なんて言っている。『ユージン様せっかち説』が定着しているようだ。


 昼食後、近衛隊の結界石を設置してマディアに向けて出発した。途中、巨大なサンドワームに遭遇したが近衛隊の精鋭30人にかかると瞬殺だった。それ以外は何事もなくマディアに着いた。マディアでも魔方陣を写し取ったりして調査をし、第1近衛隊のベースキャンプにたどり着いたのは遺跡を出発して5日目だった。


「サトシ、楽しかったぞ。これから近衛隊を撤収する。ここでお別れだ。何かあったら近衛隊に来い。お前のパーティーならいつでも歓迎する」

「ありがとうございます。ではいずれマリリアで」

「気をつけて帰れよ」


 それから2日後、第3近衛隊のベースキャンプでスカーレット様たちと別れ、僕たちはマリリアを目指した。マリリアに着いたのは、それから2日後の鰐の8日だった。


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