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異世界はバラ色に  作者: 里中 圭
第3章 魔物侵攻編
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第19話 リトルサラマンダー

 次の日、昼過ぎに第1近衛隊の精鋭部隊30名がマディアのオアシスに到着した。野営用のテントはオアシスの南端に設営された。スカーレット様と僕たちが出迎えると、ユージン様が、

「すぐに会議を開きたい」

と言われた。さすがに時間を無駄にしないんだなと思い、

「はい、こちらへ」

と、例の地下室のある廃墟に案内する。


 これまでの経緯を話し、遺跡までの地図を見せる。ユージン様は新たに調査した地図を比べながら、おそらくこのあたりだろう、とユージン様の地図に印を付ける。

「リトルサラマンダーか、いたらやっかいだな」

スカーレット様が答える。

「そうですね。ワイバーン級ですものね。それにファイアーブレスが強力ですわ」

凄い違和感。スカーレット様が女性らしい言葉遣いをしている。

「伝説の通りだとすると、レッドウルフや火トカゲを従えているはずだ。俺のパーティーでリトルサラマンダーを相手にするとして、レッドウルフの群れを任せて良いか近衛隊25名も付ける」

「はい、よろしいですわ。サトシのパーティーと私の従者だけでも雑魚は押さえられます。私もリトルサラマンダーの方に行ってもよろしいですか」

「いや、雑魚を片付けてから、俺の隊の援護をして欲しい。2匹いたら1頭押さえるのを任せたい。3匹以上いたら全力で逃げる。マリリアに帰って軍を使わないと勝てないだろうからな」

「1匹でも」

とスカーレット様が食い下がると、

「君らの力を信用していないわけじゃない、雑魚の方がやっかいかもしれないからな。雑魚をやる間くらいはリトルサラマンダーを押さえられると思う。雑魚が片付いたら、一斉攻撃する」

「そう言って、ご自分だけで倒してしまうんでしょうね」

「それくらいの強さなら良いのだがな。サトシはそれで良いか」

「はい」

「明日の朝、出発ということで」

「分かりました。細かい打合せは従者たちにさせましょう」

「では、明日」

と、ユージン様は野営地に戻られた。


 次の朝、僕たちは南の遺跡に向けて出発した。小型のサンドワームやスコルピオンなどの虫系の魔物を瞬殺しながら進む。さすが近衛隊の精鋭たちだ。


 10kmくらい進んだときに異変が起きた。先行していた近衛隊のパーティーが戻り、

「リトルサラマンダーがいました。レッドウルフ、火トカゲ、ファイアーバザードを確認しました」

「数は?」

「リトルサラマンダーは1匹だけです。レッドウルフは20、火トカゲはおよそ300、ファイアーバザードは確認できただけで12です」

「スカーレット、サトシ、手はず通りに」

「はい」


僕はファイアーバザードは初めてだ。リーナに聞く。

「ファイアーバザードってどんなの」

「火属性のハゲタカよ」

「じゃあ、空を飛ぶんだ」

「あたりまえでしょ」


 ユージン様が指示を出す。

「戦闘配置に、武器を用意。そのまま進むぞ」


 10分後、魔物たちと遭遇した。後方にリトルサラマンダーが見える。大きい。体長は30mくらいだと思う。近衛隊が範囲攻撃で火トカゲを押さえていく。レッドウルフの1匹がこちらに突っ込んできた。

「マインドボール」

マインドボールがレッドウルフにあたる。レッドウルフは頭を振り、辺りを見回している。そうして火トカゲを攻撃し始めた。


ザリアさんが、

「錯乱してますね。今度は何か、洗脳するようにマインドボールを放ってみて下さい」

そう言うので、リトルサラマンダーを攻撃するように念じて、次のレッドウルフにマインドボールを放った。だが、錯乱しただけでリトルサラマンダーには向かわなかった。

「ダメみたいですね」

と言いながら、ザリアさんは持ち場に戻る。始めに錯乱したレッドウルフは周りの火トカゲをあらかた殺していたが、正気に戻ったようだ。こちらを攻撃してきた。フリーズで心臓を凍らせる。


 シェリルとアルトがファイアーバザードを攻撃している。近衛隊からも矢や魔法が放たれている。どんどん魔物の数が減っていく。シェリルの放つ矢は、僕が射るときよりも数段早く威力がある、さすが風属性の弓だ。


 リトルサラマンダーはこちらを睨んだまま動こうとしない。攻撃するにも味方の魔物が邪魔なんだろう。


 魔物たちと乱戦になり、辺り一面に魔物が広がったところで、スカーレット様のファイアーラプチャーが中央に炸裂する。リトルサラマンダーまでの道が開ける。すかさずユージン様のパ-ティーが突っ込んでいく。リトルサラマンダーはユージン様をにらみつけている。


 リトルサラマンダーの口元が光る。ユージン様たちはさっと広がる。ファイアーブレスが炸裂する。ユージン様たちは素早く避けて、攻撃魔法を仕掛ける。ファイアーブレスで倒れたのは近くにいた魔物だけだった。ユージン様たちは四方から攻撃し、リトルサラマンダーを前に進ませない。


 その間に、僕たちは魔物を殲滅する。スカーレット様のパーティーは有利な展開になっているので戦いから外れるように待機している。リトルサラマンダーに備えているのだろう。僕のパーティーも魔法を使わずに戦っている。僕はレッドウルフにだけフリーズを使っている。ファイアーバザードはもういなくなった。シェリルは風の弓を外し、風のレイピアを持った。


 雑魚といってもAランクのレッドウルフもいたのだが、被害なく雑魚の魔物たちを全滅させることができた。あとはリトルサラマンダーだけだ。ユージン様のパーティーだけで十分押さえられている。ユージン様の放つ石つぶてが砂嵐となってリトルサラマンダーを襲う。そしてユージン様の戦斧が左足を切り裂く。リトルサラマンダーは左へゆっくり倒れていく。スカーレット様のファイアーラプチャーがリトルサラマンダーの頭から炸裂する。しかし硬い鱗は飛び散ったものの、それほど効いていない様子だ。火の属性攻撃には耐性があるようだ。


 僕も近づき、心臓のあたりにフリーズをかけるが少し苦しむだけだ。口元が光ったので喉元にウォーターとフリーズをかける。違和感があったのかファイアーブレスは中止された。その隙にユージン様が首を戦斧で切り裂き、スカーレット様がファイアーラプチャーを先ほどと同じか所に放つ。それぞれの従者がユージン様やスカーレット様に対するリトルサラマンダーの攻撃に備えている。いつのまにかセシリアも脇腹に氷の刃を突き刺している。リーナも雷槍を頭に炸裂させた。


 リトルサラマンダーは動かなくなった。

「小さいやつで良かった。伝説に出てくるリトルサラマンダーは70m級だったからな。まだ子供だろうな、これは」

それでもみんなレベルアップしたようだ、もちろん僕も。


 イバダンさんがリトルサラマンダーの解体を始めた。近衛隊の3人が手伝っている。ユージン様から、

「1時間休憩する」

との声がかかったので、僕とナナも解体を手伝うことにした。アルトも来た。

「ドラゴンの肉は美味しいそうです。リトルサラマンダーもドラゴンの一種ですよね」

と言って、切り取る部位をナナに指示して、シェリルの闇の袋に詰めている。僕はイバダンさんが解体した牙や爪、鱗などを闇の袋に入れていく。肉以外はマリリアに帰ってから分配を決めるそうだ。


 サンドイッチをほおばり、1時間後に出発して、夕方には遺跡に着いた。結界石を置き、近衛隊は野営の準備を始めた。僕たちは遺跡の中に入る。


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