第15話 火トカゲ
こちらは14人、Dランクの火トカゲ30匹くらいは簡単に倒せる数だ。スカーレット様は2つのパーティーの連携を確認するのだと僕は考えた。右にスカーレット様の従者、左に僕のパーティーメンバー。みんな魔法を使わずに戦っている。こんなところでMPを無駄にしないということを理解しているのだ。
なんかあっけなく終わってしまった。シェリルは多少興奮している。
「魔物が連携していなかったし、口からの火だけを警戒していればいいのだから楽勝だね」
冷静なリーナは、
「そう、他の魔物が現れない限りはね」
セシリアとパフィアさんが左右に分かれ、索敵をしているようだ。アルトとカーラがそれぞれに付き添っている。
「サトシ、お前のパーティーもよく訓練されているな。それぞれがやることを分かっている」
とスカーレット様。みんなの動きは合格点のようだ。僕も含まれていればありがたいのだが。
「はい、師匠たちのおかげです」
「紅バラの剣に鍛えられたんだからな。これくらいは動けないとな」
そうしてまた南に向かって進んでいく。途中で、火トカゲや中型のサンドワームが単独で襲ってくることは有ったが、特に何事もなく進むことが出来た。夕刻になり野営の準備をすることになった。結界石で結界を張り、テントを張る。料理はジャンティさんとアルトが担当だ。
見張りは交代で行った、僕は外された。その代わりクリーンを全員にかけさせられた。クリーンをかけるくらいで見張りをせずに済むならありがたいものだ。魔物の気配はあったらしいが、特に何事もなく朝を迎え、朝食を食べて出発した。
午前中は何事もなく進み、意外と早くオアシスに着くのかと思っていたときに魔物の群れが襲ってきた。
「魔物です。ものすごい数です」
とパフィアさん。セシリアも、
「火トカゲが数百匹います。他の魔物はいません」
スカーレット様が静かに言う。
「戦闘隊形を取れ、支援魔法の準備を」
静かに言っているのだが叫ばれる以上に威圧感がある。魔物たちが一気に近づいてきた。支援魔法師たちは土の加護、身体強化、加速と唱えていく。前線に立つみんなも魔法で攻撃を仕掛けている。火トカゲたちも一斉に火を噴く。周りの温度がぐんぐん上がる。みんなマントは着たままだが背中の方に跳ね上げているので暑さは防げない。
「およそ600というところでしょうか」
「そのくらいだな」
戦闘は一方的なのだが魔物の数が多い。次から次に襲ってくる。怯んで逃げ出すというのは期待できないようだ。シェリルが辛そうな顔をしている。僕は叫んだ、
「シェリル、戻れ」
シェリルは僕を一睨みしたが、戻ってきた。僕は大きめのコップに水を作り氷を浮かせシェリルに渡した。シェリルは一口目で口をゆすぎ、スカーレット様が差し出した塩をひと舐めし、コップの水を飲み干した。真っ赤な顔をして言った。
「ふーっ、ありがとうございます」
支援魔法師のディアレさんと僕で、ウォーターを使い桶を水を満たす。それに僕はフリーズをかけて氷を作っていく。そして塩の入った袋をナナに渡す。これで脱水症状が防げる。
「シェリル、休んだら誰かと交代するように」
と言って僕は火トカゲの群れの中に飛び込む。交代しながら長い戦闘を戦い抜く。
僕が下がると、後方にカーラとリーナがいた。その周りには火トカゲの死骸があった。乱戦になりただでは休ませて貰えないようだ。リーナが、
「もう、残り50匹くらいだよ。あとは任せて」
といって走り出す。イバダンさん、スカーレット様も戻ってくる。カーラが走り出す。
「終わったようだな」
とスカーレット様。戦いは終わった。ナナとシェリルはレベルが上がったようだ。あたりは火トカゲの死骸で溢れている。嫌な匂いが漂っている。
パフィアさんが叫ぶ、
「サンドワームです。巨大なものが2匹。100m級です」
今、戦うのは不利だ。みんな疲れているしMPも残り少ないはずだ。
「逃げましょう」
と僕はスカーレット様に言う。スカーレット様も、
「みんなに土の加護と加速をかけられるか」
と支援魔法師たちに聞く。
「はい」
と一斉に答えるので、
「じゃあ、南に向けて出発」
火トカゲの死骸の横をすり抜け南へ向かう。サンドワームが火トカゲを食べ尽くす前にできるだけ離れたい。2時間も南に進んだ頃、索敵の範囲に魔物の姿がいなくなった。地図が正しければ残り4kmくらいだ。ここでみんなのMPが回復するまで待ちオアシスに入ると夜になる。オアシスでは戦闘になる予定なので夜に入るのは避けたい。
スカーレット様も同じ考えのようで、
「ここで野営する」
と言われた。結界石を置き野営の準備を始める。南にはレッドウルフ、北には巨大なサンドワーム、どちらにもAクラスの魔物がいる。警戒を強め、索敵が出来るセシリアとパフィアさんを早めに休ませる。
夜中にセシリアが見張りをしているときに巨大サンドワームが近くを通った。セシリアはみんなを起こしたが、サンドワームはこちらに気付かずに通り過ぎていった。スカーレット様はみんなに休むように指示した後、僕に話しかけてきた。
「サトシ、第1近衛隊の報告によるとオアシスにはレッドウルフと火トカゲがいるそうだ。他にも何かいるかもしれないし、数も分からない。どういう作戦がいいと思う?」
口調は穏やかだが、不用意な発言は許さないといった雰囲気が漂っている。強さはレッドウルフが圧倒的だがやっかいなのは火トカゲの方だ。死骸の処理を誤るとサンドワームを呼び寄せてしまう。
「レッドウルフはともかく、火トカゲはオアシスの外で何とかしたいですね。一気にオアシスの中央部に行き結界を張る。というのが良いと思います。じわじわ広げるとオアシスから追い出せそうですし」
「結界は、人には嫌な感情をもたらす物もあるが、魔物にはその効果は薄い。中の気配を感じないだけで偶然になら入ってくると考えておいた方が良い。結界だけで追い出すのは無理だ。中で戦闘したり、攻撃魔法を使ったりすると結界は一時的に中断される。なかには高級な物もあるらしいが、それでも全く魔物を寄せ付けないわけでは無いだろう」
シェリルの持っているのは高級なやつだろうな。狭い範囲で使えば相当な結界となるらしい、でも範囲が広がる訳じゃないから今回使うのは難しいかもしれない。
「そうなんですね。でも偶然に入ってくるだけなら一斉には襲われなくなります。できるだけ広く張りたいですね」
「オアシス全体に張ればオアシスがあることすら分からなくなるので、入ってくる魔物は少なくなるはずだ。よし、一気に中に入り拠点作りをする作戦で行こう」




