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異世界はバラ色に  作者: 里中 圭
第3章 魔物侵攻編
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第13話 遠征前

 マリリアに戻り一息つく。僕とアルト以外はまだ3日修行が残っているようだ。夜、久しぶりにみんなが揃って、

「コンラッド様から僕たちのパーティーは紅バラの剣よりも強くなったかもしれないって言われたよ」

と言うと、リーナがあきれた顔で言う、

「馬鹿じゃないの。そんなわけ無いよ。あの人たちの凄さが分からないの」

「まあ、それはそうだけど。お世辞でも言ってくれると嬉しいもんだよ」

ナウラさんがまじめな顔で、

「アラスティア様やバーナード様が言ったんだったら冗談だと思うけど、コンラッド様が言ったんでしょ。コンラッド様は冗談でそういうことは言わない人だと思う」

セシリアも、

「でも、今の私たちじゃ絶対にかなわないよね。越える可能性があるよってことじゃないかな」

シェリルが疲れてもうどうでもいいという感じで、

「まあ、若さだけは勝ってるけどね。いつか抜きましょ」

みんな、紅バラの剣の実力を抜くことが不可能とは考えていないんだ。直接指導を受けているのに。


 みんなは修行がまだ残っているので早めに部屋に戻っていく。僕たちも部屋に帰ることにした。

「ご主人様、私、装備を揃えました。ストリームスーツです。それに龍手も」

ストリームスーツはレンジャースーツの上位バージョンで水の加護の付いたものらしい。籠手にも魔法がかかっているようだ。

「アルトは?」

とセシリアが聞くと、

「魔法防御の指輪だけ、あとは明日イバダンさんに注文する。ハルバードの魔石を上位ものに変えるのと、炎のローブを買うわ」

「その指輪、もしかしてご主人様が買ったの?」

「そうだよ。誕生日のプレゼントにね」

と僕がさらりと言う。隠したっていずれ分かるんだよね、こういうのは。

「じゃあ、私のときも期待していいですよね」

「もちろん」

セシリアの誕生日は鰐の16日だったよな、44日後か、忘れたら許してもらえないな。遠征前に指輪を買って闇の袋に入れておこう。アルトは、静かに笑っている。こういうのは最初にもらった方が気持ちが優位に立てるらしい。


 次の朝、久しぶりにセシリアのキスで目を覚ます。朝食後、みんなは修行に出かけた、アルトとナウラさんは朝食の後片付けをしている。ナウラさんは今日は休みらしい。ギルドは年中無休なので黒月日が休みとはならないようだ。


 僕は特に装備を揃える必要は無いので、今日はのんびりしようと思っている。アルトは、近衛隊の詰め所にも行った後に、イバダンさんのところに装備を買いに行く予定だ。ナウラさんは片付け物があるらしい。


 アルトが出かけた後、ナウラさんから、

「サトシ様、ちょっと部屋に来て下さい」

と言われた。部屋に行くと。

「私たち姉妹のこと、ここまでよくして下さって本当にありがとうございます」

「いや、特に何かしてるって訳じゃないし、みんなと同じくらいにしか、・・・」

「好きなんです。サトシ様」

と抱きつかれた。

「でも、ナウラさん年上だし」

「ナウラって呼んで下さい。アルトさんも年上でしょ」

「いやアルトは、・・・、分かった。じゃあ僕のことはサトシって呼んで下さい」

「そうはいきません。サトシさんとお呼びしますから。私のことはナウラって呼んで下さい」

「分かった、・・・」

いきなり唇をふさがれた。そのままベッドに倒れ込んでしまった。とてもしなやかで抱き心地の良い体だった。猫耳も尻尾も触ると心地よかった。


 その後も、抱き合ったままでいて時間が経つのを忘れそうになったが、

「アルトさんが帰ってくる前に昼食を作りますね」

とナウラさん、いやナウラが起き上がったので、服を着るのをじっと眺めていた。そしてナウラにもう一度キスをしてクリーンをかけて服を着た。

「少し出かけてくる」

と言って、セシリアの指輪を買いに行く。もちろんナウラにも買おう。ナウラにも手を出してしまった。これで良かったんだろうか、なんて一瞬考えたが、考えてもしょうがないと考えないことにした、どうせこの世界の常識も分からないんだし。


 買い物から帰ってくると料理がほぼ出来上がっていた。アルトはまだ帰ってきていなかった。

「ナウラ、これ」

と言って指輪を渡す。

「ありがとうございます。指に嵌めずに紐を通して首からかけて良いですか」

指に嵌めるとみんなにばれるからかなと思っていると、

「ダメですか、猫人族は指輪をはめる習慣が無くて、首からかけても効果は変わりませんし・・・」

「いや、ごめん。それ知らなくて指輪なんか買ってきて」

「いえ、とても嬉しいんです。指輪を送られるって特別なことなんですよね。大切にします、今日の記念に」

そう言って、飾り紐を探しに部屋に戻っていった。僕もセシリアの指輪を闇の袋に入れるために部屋に戻った。


 アルトが帰ってきて昼食を一緒に食べ、ナウラと3人で食料や日用品の買い出しに出かける。きっと砂漠への長い遠征になると思うので準備をしっかりしておかなくてはならない。闇の袋に入れておけば腐る心配もないし、今でも1月分くらいは入っているんだけど、僕の袋はどれだけでも入りそうだし、重さも関係ないし、買えるときに買っておいた方が良いというアルトの考えなのだ。それに各地で食料を買っておくといろいろな料理が楽しめるというのも頷ける。


 そうして3日が過ぎ、みんなの修行が終わった。今日の夜は打ち上げパーティーだ。いつでも出発できるように準備は整っている。3日後の朝、近衛隊の馬を借りて出発する予定だ。今回の遠征には、近衛隊の精鋭パーティーが多数参加する。冒険者の傭兵も多数参加しているそうだ。魔物相手には圧力をかけていく組織だった軍隊と突出できる個別に動けるパーティーの組合せが重要らしい。


 メルカーディア王国、プエルモント教国、ルグアイ王国の3か国で話し合いが行われ、ルグアイと教国が北を、メルカーディアが南を担当することになったそうだ。冒険者たちの多くが傭兵となり軍の指揮下に入っている。お金に余裕のある僕たちは傭兵にはならず、予定通りスカーレット様の友軍として参加することになった。


 給料は出ないから魔素で稼ぐことになる。

「魔物をばったばった倒さないと赤字だよ」

とナナ。リーナが、

「大丈夫、みんな相当強くなってるから」

シェリルも、

「他のパーティーには負けられないからね。負けたら師匠に申し訳ないわ」

強気のシェリルの言葉に、セシリアが少しあきれているようだ。

「シェリルって、冒険者になってまだ1か月の初心者なんだからね、無理しないでよ」

「セシリアだって1年も経ってないでしょ、冒険者になって。一緒だよ」

「まあね、ご主人様がリーダーなんですからね、ちゃんと指揮してくださいよ」

あ~あ、どうせ最後は僕に来るんだよな。


 次の日からは、束の間の休日である。みんな体を休めたり頭を休めたり、思い思いの休日を楽しんでいる。遠征でこれからずっと一緒にいるんだから、みんなで過ごす必要は無いという意見が多かった。でも、1人で何をするかといわれても何もすることがない、これは僕だけではなかったようだ。


 庭ではシェリルとセシリアが木剣で打ち合っている。シェリルもなかなかに強そうだがセシリアにはかなわないようだ。それに僕も入れてもらう。まず、セシリアと。

「ご主人様、腕を上げましたね」

とセシリアが言う。以前のように防戦一方にはならない、反撃も出来る。勝てるかなと思ったときに1本取られた。

「次は私」

とシェリルが打ち込んでくる。初めてのシェリルとの手合わせなので防御から入る。けっこう早く打ち込んでくるが、全て見える。見えれば防御できる。隙を狙う余裕もある。隙を狙って攻撃をかける。1本取れた。

「参りました」

とシェリルが言う。

「相当強くなってますよ、ご主人様。剣の扱いが分かったようですね」

とセシリアから誉められる。もちろんダメ出しもある。

「あとは打ち込むときに気持ちを無にすることが出来ればいいんですけどね、今のままでは強い相手なら気付かれます。シェリルは気持ちが出すぎです。もっと肩の力を抜けば動きを読まれなくなりますよ」

「さすが、師匠の娘ね。クラウディオ様にも同じことを言われたわ。サトシやみんなの剣の腕は貴方が鍛えたのね、強いはずだわ。私も頑張るからこれからもよろしくね」

「はい」


 遠征を明日に控えた夜、イバダンさんがアルトの装備を届けに来た。

「アルト、炎のハルバードは砂漠まで使うなよ。威力が相当上がっているからな。サトシ、今度の遠征には俺も付いていくから、調整は任せてくれていいぞ。その代わり、俺の道具をサトシの袋に入れさせてくれ。馬車は先に出発させたんでね」

「馬車1台分ですか?」

「いや、俺の愛用の道具と私物だけだ。近衛隊の馬車にも予備の武器は積んでもらったしな。もうクーヴァンに付いている頃だ。砂漠の冒険者村までは馬車で行けるが、砂漠に入ってからは歩きになる、よろしくな。お前たちもスカーレット様の近くにキャンプ張るんだろ?」

「はい、そのつもりです」

「じゃあ、荷物を頼む」

僕がイバダンさんの荷物を運ぶのは決定事項のようだ。


 次の朝、ナウラさんに見送られ、イバダンさんとスウェードルさんの店のドワーフ族3人とともに砂漠の冒険者村に向かって出発した。


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