表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界はバラ色に  作者: 里中 圭
第3章 魔物侵攻編
52/142

第7話 捜索

 次の朝、心配そうな顔をしたナウラに見送られ僕たちは出発した。アルトが、

「ナウラさんは留守番ばかりですね。といって一緒に行くわけにもいかないし」

「そうだね、ギルドの仕事もあるしね」

「姉さんは大丈夫だにゃ。ずっと一人暮らしだったし」

「でもね、ナナ。今はみんなと一緒に暮らし始めて、大勢の楽しさも分かったことだし寂しいと思うよ」

とアルトはやはりこのパーティーのお姉さん役だ。セシリアが、

「この仕事が終わったら『紅バラの剣』の皆様に鍛えてもらう手はずだし、マリリアにいることになるんでしょ。そしたらナウラさんも寂しくないよ」

「いや、僕とアルトはテラッセンに行って修行だよ。コンラッドさんとアイリーンさんから呼ばれているし」

「えーっ、アルトだけが一緒に、そんなのずるい」

「遊びに行くわけじゃないから、鍛えてもらう間だけだから」

「でも、でも、・・・ご主人さまぁ〜・・・」


 タンガラーダで食料と合図用に笛を人数分買った。1泊した後、馬車を借り、カルビニア鉱山に行ったときと同じ道で国境を越えた。国境を越えて西へ進む。カルビニアとクラカウティンの森の中間あたりを通り山脈の麓を北西に向かう。フーベルの草原の北を通り、パジェに着いた。


 パジェに着くとすぐに学園演習場の管理事務所に行き、リーナが入場許可を取った。卒業生のパーティーということで簡単に許可が取れたようだ。そして馬車を預けた。演習場内は徒歩に限られているそうだ。


 演習場を進んでいくと、見回りの職員に会った。入場許可証を見せて、

「何か変わったことは有りませんか」

とリーナが聞く。

「これは、巫女姫様。懐かしいですね。お父様は残念でした、心よりお悔やみ申し上げます。巫女姫様のパーティーですか」

「ありがとうございます。でももう巫女姫ではありませんよ。ただの冒険者です。私のパーティーで、彼がリーダーのサトシです」

見回りの職員は、微笑んで、

「それはそれは失礼いたしました。冒険者になったんですね。そうですね。演習場は変わったことは有りませんが、演習場の北で魔獣を狩っている冒険者がいるみたいです。戦った跡が残っていました。演習場には入っていないようです」

「この辺には冒険者は来ないのですか」

「いえ、来ますよ。でも演習場がある関係で南からは入れず、山から下りてこないといけないので人は少ないです。木々に新しい傷跡はあるのですが、野営の跡がどこにもなかったんでちょっと気になったんですよ」

「そうなんですか。ありがとうございました」

「いえ、お気を付けて」


 職員と別れるとすぐに、リーナは厳しい表情になり、

「シェリルがいる。きっと結界石を使ってどこかに野営してるはず」

「リーナ、シェリルって冒険者なの、属性は」

とセシリアが聞く。

「冒険者登録はしていないと思う、王女だし。でも、学園では剣も弓も抜群の腕前だったわ。それに武器は超一流の物が王家には有るし、狼くらいなら簡単に狩れると思う。属性は風」


「結界を張っているとなると見つけるのが大変かも」

とナナ。

「そうね、見つからないために結界を張っているんだもんね」

とアルトが続く。僕も、

「とにかく行ってみよう。何か分かるかもしれない」


 演習場の北に移動し、あたりを調べると、木々に比較的新しい傷跡が有った。

「ウインドカッターの傷ですね。カーラの付けた跡と同じような感じです」

とアルト。セシリアが、

「あたりを調べてみましょう。何かあったら笛で知らせて」

と手分けして手がかりを探す。バラバラになって調査することを想定してタンガラーダで笛を買ったのだ。


 僕が東に向かうとすぐに笛が鳴った。急いで笛の音がした方に行くと、洞窟の前にセシリアとナナがいた。笛を吹いたのはセシリアだった。

「この洞窟の中に野営の跡があります。いまは使っていないようです」

「足跡を見ると女の子のものだにゃ」

リーナとアルトも駆けつけた。

「ここに隠れていたんだね。でも移動した」

リーナが、

「ここから少し上に新しい傷跡が有りました。上に移動したんだと思います」

「よし、じゃあ上に移動しよう」


 みんなで傷跡を探すとこのあたりに居そうだということは何となく分かる。でもどこにいるのかは分からなかった。どんな結界が張れるのかと聞いてみる。

「結界石でできる結界ってどんなの?」

「いろいろよ。そこに興味を示さなくなるものや、入るといやな感じがするものとか、入ると痛みや痺れを起こす呪いのものとかあるみたい」

リーナが答える。

「呪いのはいやだにゃ」

わざと使っているのだろうが、だんだん板に付いてきているようだ。少し馬鹿にされてる気はするが、可愛いから許す。セシリアが、

「どうやって探すかが問題ですね。結界から出て来てくれればいいけど」

アルトも続ける。

「大声で探してもリーナ以外の声がしたら逆効果かもしれないしね」

「どうしよう」

とリーナが泣きそうな顔をする。


「じゃあ、この辺にいるとして地図を作って調べたところを消していこう。そうすれば何か手がかりがつかめるかもしれない」

と提案して、捜索範囲を決め大きな木を結び地図に線を引いていく。同じ物を5枚作って、

「線で囲まれたところを調べていって。いやな感じがしたとかも有ったら教えて」

とみんなに言い、地図を渡す。大まかに調べる位置を決めて調べていく。しばらくしても誰も笛を吹かない。やはりこの方法でもダメだったのかなと思っていると、セシリアが来た。

「そろそろ野営の準備をする時間です」

というので笛を吹き、みんなを集めた。みんな何の成果もなかったようだ。


 アルトが夕食を作り、みんなでテントを張る。セシリアが緑の結界を張って夕食にする。食べ終わって、みんながどこを調べたのかを地図で確認する。僕の地図にみんなが調べたところを書き込んでいくと2か所空白の場所があった。

「ねえ、こことここが抜けてるよ」

「あっ、ほんとだ」

「じゃあ、このどちらかに」

「たまたまかもしれないけど、明日、調べてみよう」


 次の朝、朝食もそこそこにみんなで残った2か所のうちの1か所に行く。だんだん近づくと何となく近づいてはいけないような気がしてくる。

「近づきたくないにゃん」

「ということは、結界石の効果だろう」

「絶対にここだ。結界石ってどんな物?」

リーナが答える。

「白い魔石です」

「じゃあ、下を向いてみんなで白い魔石を見つけよう。有ったら闇の袋に入れれば何とかなると思う」

「はい」


 重い足を引きずるようにみんなで結界石を探した。すると有った、白い石だ。拾い上げ闇の袋に入れる。目の前には洞窟が現れた。ただ、近づきたくない嫌な気分は晴れていない。

「結界石って何個使うの?」

「シェリルの持っていたのは4個のはず。とりあえず回収しましょう」

1つ外すと後は簡単に見つかった。全て闇の袋に入れた。嫌な気分が消えた。


 洞窟の中に向かってリーナが叫ぶ。

「シェリル、私よリーナよ、マルチェリーナよ。いるんでしょ、出て来て」

何も返事はなかった。

「よし、中に入ろう」

と言うと、リーナが中に向かって、

「今から私のパーティーが中に入るからね」

と叫んだ。


 みんなで中に入る。入り口のそばには野営の後があった。調理器具や食器はそのままだ。闇の袋も置いてある。

「闇の袋を置いていくわけはないので、まだ中にいるはずよ」

とリーナ。アルトが野営の道具を片付け闇の袋に入れる。闇の袋の中には武器はなさそうだったという。入れた者でないとはっきりとは分からないのだが、剣や盾や槍を取り出そうとしても何も出てこなかったと言っていた。


「奥に、魔物がいます。ゾンビとスケルトンです。5匹います」

とセシリアが叫んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ