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異世界はバラ色に  作者: 里中 圭
第3章 魔物侵攻編
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第4話 地竜

 兔の9日、氷の刃を受け取り、僕たちはキングベアを討伐の依頼を受け出発した。スカーレット様は次の日に帰り、そのまますぐに従者を連れてアリンガム侯爵領へ出発するそうだ。山岳地帯に地竜が出たらしく、アリンガム領の平野に降りてくる前に討伐を依頼されたらしい。


 僕たちは、アリンガム領までは乗合馬車で向かい、宿をとり、それから先は馬車を借りてトレーヴ山脈に向かった。スカーレット様のパーティーはアリンガム領で馬を乗り換え。同じ山の中腹の宿に馬を預けた。中腹には馬や馬車を預けられる宿は1件しか無く同じ宿に泊まることになった。


 スカーレット様が話しかけてきた。

「キングベアの討伐か、地竜のいる場所の上だと聞いているが」

「はい、そう聞いています。地竜のいるところを迂回して行こうかと思っていましたが、スカーレット様たちの地竜討伐を見学してもよろしいでしょうか」

「それは構わない。戦いを見るようにコンラッド様から言われたのだろう。他のグループの戦い方は参考になるからな。紅バラの棘も成長して、紅バラの剣くらいになって欲しいからな」

「ありがとうございます。邪魔にならないように見学させていただきます」


 地竜のいるところまでは徒歩で向かう。徒歩で2日のところだ。安全のため、スカーレット様と同じ場所で野営をさせてもらう。もちろん見張りは1人ずつ出す。それでも凄く楽になることは間違いない。最初の見張りは、アルトとカーラだ。


「カーラ、だいぶ強くなった?」

「そうとうね。リリアーヌ様からも1本取れるようになったからね。レベルも15になったし、従者としても1人前だと思うよ」

「スカーレット様に恩返しは出来ている?」

「それはまだ、今は強くなって行くことだけを考えている。だって、スカーレット様に恩返しが出来るようになるためには強くならなきゃダメなんだもん。身の回りの世話は侍女がいるし、第2従者のジャンティさんは料理がうまいしね。戦いのとき以外は出番がないの」

「まだまだ、カーラのほうがお世話になっているってことね。じゃあ、早く強くなりなさい」

「明日は地竜との戦いね。私の動きも見ててよ」


 次の日、山を上っていくと勾配の緩い岩場に出た。岩にどうかするように地竜がいた。大きい。長さは25mはあるかという大物だ。それがよく見ないと分からないくらい皮膚の色が岩の色と同じなのだ。


「じゃあ、いくよ」

とスカーレット様が声をかける。スカーレット様が中央、第1従者のエトシャさんとカーラが右に、左にジャンティさんと第3従者のパフィアさんという配置である。ジャンティさんとカーラが同時に仕掛ける。ウォーターストームとトルネイドが炸裂する。地竜は身を固くしてそれを受ける。従者4人が走る。その瞬間、地面が揺れる。揺れる範囲は半径30mくらいだろうか、僕たちが見ているところは揺れていない。


「地竜の周りだけ地面が揺れてる」

「震地です。そうとう強い揺れですね」

従者たちがさっと身を低くする。揺れは収まる気配を見せない。

「全員下がれ」

とスカーレット様が叫ぶ。従者たちはよろめきながら少しずつ下がる。

「ファイアーラプチャー」

炎の爆発が地竜めがけて走る。地面が揺れていたせいか狙いが外れる。距離もあるし、たいしたダメージを与えられない。

「ファイアーストーム」

スカーレット様が立て続けに魔法をかける。その隙に従者たちは地竜から離れる。

「一旦、退避する。地竜の動きに気をつけろ」

スカーレット様たちはこちらに向かって、下がってくる。


 地竜は、こちらを睨んでいる。そして這っている状態から四つ足で立ち上がった。そしてまた、震地をかける。近くには誰もいないので被害はないのだが、威圧感は十分だ。


「サトシ様、私なら震地を止めれるにゃん」

「本当?」

「支援魔法の土の加護で、揺れを感じなくなるはずにゃ」

「スカーレット様に、そう言っていい? だいぶ楽になるはずだよ」

「はいにゃ」


「スカーレット様」

「なんだサトシ」

「ナナが震地を無効化できるそうです。お手伝いしたいと言っています」

「本当か、頼む」

「ナナ」

「はい。分かりました」


 スカーレット様たちは隊列を組みナナはスカーレット様の後ろに立つ。地竜がゆっくりと歩いてくる。右前足で地面を叩き震地をかける。その瞬間、ナナが土の加護をパーティーにかける。

「揺れを感じない。よし行くぞ」

とエトシャが従者たちを促して一斉に攻撃に出る。左右から挟まれて、地竜は再び震地をかける。ナナが無効化する。地竜は、4人の従者の攻撃に頭や尻尾を動かし懸命に防ぐ。従者たちの動きは素早く、特にカーラの動きは抜群に速い。地竜の鱗に傷がどんどん入っていく、地竜は防戦一方になる。その隙に、スカーレット様は一気に地竜に近づき、

「ファイアーラプチャー」

と爆音を轟かせ、頭から炎の大剣を振り下ろす。地竜の頭から首にかけて切り裂かれる。地竜は動かなくなった。


 後ろでアルトが言った。

「私もファイアーラプチャーを取る。ハルバードでも出せるはずだから」

セシリアは、

「私は、パフィアさんと相談してみる」

と言っている。


 スカーレット様が、近づいてきた。

「ありがとうナナル」

「いえ、お役に立てて嬉しいです。私は支援魔法しか使えなくて少し自信をなくしていたのですが、カタリナ様に出会って、支援魔法のすばらしさを教えていただきました。こうして自信を持って支援できるのは私の喜びです」

「すばらしい支援魔法だった。なにか礼をしたい。何が良い?」

「それでは、キングベアを殺さずに動けなくしたいので手伝って貰えますか」

「サトシの魔食いのためにか、それで良いのか?」

「はい、サトシ様は私を差別せず、仲間にしてくれましたから」

「分かった、協力しよう」


「良かったにゃ、サトシ様」

これで「豪力」が手に入る、嬉しい。しかし、それより僕はとても違和感を覚えている。ナナの言葉使いだ。スカーレット様と話すときは「にゃ」とは言っていない。僕と話すときだけ「にゃ」とか「にゃん」とか言っている。嬉しいのは嬉しいんだが・・・。


 従者たちが地竜の牙や爪を剥ぎ取っている。それを僕たちも手伝った。剥ぎ取りの手際は僕たちのほうが上だ。イバダンさんの弟子だものな。


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