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異世界はバラ色に  作者: 里中 圭
第3章 魔物侵攻編
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第3話 黒日祭

 レベルは僕とセシリアが16に、ナナが15,アルトとリーナが14になった。ナナには自分を守る魔法を取って欲しかったのだが、ナナは支援魔法の魔法防御を取得した。セシリアとアルトはポイントをため込んでいる。僕とセシリアはギルドレベルもCになった。


 兔の2日から黒月日の6日まで休みとした。兔の3日は黒日祭の日だ。大陸中がお祭りとなる日である。僕がこの世界に来て半年が過ぎた。なんだか突っ走って来た気もする。本気でこれからのことを考える時期なんだろうな。


 町中が黒日祭の準備で大忙しだ。教国はこれに戴冠式まで加わるのだから大変だろうなと思いつつ、セシリアと手合わせをしている。もちろん夜のではなくて剣の手合わせである。少しでも手を抜くとクラウディオさんから叱責が飛ぶ。僕は盾と片手剣用の木剣、セシリアは両手剣用の木剣を使用している。使いこなせるようなら、氷の刃という両手剣を買おうということになったのだ。


 セシリアに聞いた。

「お金が貯まったから、魔石付きの武器か防具を買おう。どっちが良い?」

「ローブも魅力的だけど、武器が良いです」

と答えたので、クラウディオさんに相談したところ、両手剣の「氷の刃」を勧めてくれたのだ。アイスカッターという遠距離攻撃と相手によっては切り口から体温を奪い麻痺させる効果が付く剣だそうだ。今まで片手剣と盾を使用していたので、両手剣の適性がどうかみるために手合わせをしているという訳なのだ。


 クラウディオさんが、

「もう慣れたか」

とセシリアに聞く、

「はい、慣れました」

と答えると、

「では、本格的に手合わせをしてみよう。サトシ、代われ」

と、僕の木剣と盾をひったくるように奪う。予想はしていたが、僕ではセシリアの剣の適性を測るには役不足なのだ。慣れるまでの当て馬だったのだ。


 それから、すさまじい勢いで剣戟が行われた。

「よし、合格だ。セシリア、氷の刃を使え」

と許可が出た。セシリアの顔がぱっと明るくなり僕の胸に飛び込んでくる。おいおい、お父さんが見てるよ、恐い顔で。

「じゃあ、スウェードルさんの店に行こう」

と言うと。セシリアは着替えに行った。クラウディオさんが、

「氷の刃を使うと魔物が麻痺する確率が上がる、セシリアの働きを無駄にするなよ」

「麻痺している間に魔食いですね。ありがとうございます」


 僕たちは、スウェードルさんの店に行き、イバダンさんに注文を出した。

「氷の刃の調整に1週かかる。値段は金貨130枚だ」

最近、金銭感覚が麻痺しているような気がする。1300万円のものを即金で買うなんて。


 黒日祭の日、街は大変な賑わいとなった。西マリリアも西門から中央への大通りと、北から南へ延びる大通りの中央に屋台が出て、道の両端の店舗も祭り仕様の飾りとなっているのだ。屋台のせいで日頃よりも少し狭くなった上に、いつもの5倍くらいの人出があり、大賑わいである。黒日祭の本番は、この世界の日食だとは思うのだが、午後4時くらいからの2時間も続く暗闇からが本番となる。そのときの人出はいつもの休日の10倍くらいだという。それから夜通し祭りは続くらしい。


 僕たちは、昼間に街で祭りを楽しみ、本番は家の庭で楽しむことにした。午後4時になった。あたりは急にひんやりしてきて、太陽が隠れていく5分ほどで真っ暗になった。このまま日没するらしい。地球では考えられない日食だ。街では一斉に明かりが灯され、幻想的な世界になっている。続々と人が増えていく中、僕たちは家に戻った。


 もし、日本で同じような現象が起こるなら花火でも打ち上げるんだろうな。この世界には火薬が無いみたいなのでそれは無理かなどと思っていると、あちらこちらで炎が打ち上げられる。火属性の魔法、ファイアーボールやファイアーアローなどを空に向かって放っているようだ。花火とは違い爆発音は聞こえないけど、それなりに綺麗なものだった。


 庭は十数個の灯明に照らされ、アルトが準備した料理とお酒が映し出されている。料理を堪能し、お酒も入ったところで、紅バラの剣の人達も合流してきた。コンラッド様が大声で言った。

「サトシ、お前らは北へ行け。スカーレットたちの動きを勉強してこい。スカーレットに頼り切っているパーティーではあるが、やるべきことがきちんと分かっているパーティーの動きは勉強になるぞ」

「はい、分かりました。北の方の依頼を受けていきます」

クラウディオさんが依頼を教えてくれた。

「キングベア討伐の依頼が来ていた。Aランクだ。やつは『豪力』を使う。できれば魔食いで取ってこい」

「やってみます」


 ナナはカタリナさんにべったりとくっついている。ナウラさんが熱い目で僕を見つめている。でも、たぶん酔っているだけなんだろうな。


 ◇ ◇ ◇


 シェリルは新しい洞窟で過ごしていた。昼間は狼を狩る。灰色狼しか狩らない。黒色狼も1匹だけ相手にしたが時間がかかりすぎる。その間に他の狼が来たらと思うとぞっとする。夜は入り口から見えない位置で寝る。食料はまだまだ闇の袋に入っている。100kgも入る高価な袋が有って良かった。


 頭の中に霞がかかったような重い気分になっている。1人でいるんだから仕方がないかなと思っている。お兄様を殺して19日目の夕方、いきなりあたりは真っ暗になった。

「今日は、黒日祭か」

とつぶやき、街の喧噪を思い出して涙を浮かべる。

「どうしてこうなったんだろう」

洞窟に戻る。心なしか暗い洞窟の中でもあたりが見渡せるようになっている。真っ暗のはずなのに。なぜだか分からないが、洞窟の奥に行かなければならないような気がしてくる。


 そうしてシェリルは誘われるように洞窟の奥へと入っていった。


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