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異世界はバラ色に  作者: 里中 圭
第3章 魔物侵攻編
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第1話 レッドウルフ

 シェリルは北へ逃げていた。とにかく、追っ手の来ないところ。北へ逃げようと思った。北へ行くとクラチエ学園の冒険演習場に入った。ここは定期的に見回りがあるのでもう少し北の山岳地帯に行かないと。捕まればただでは済まないはずだ。決して兄を殺したことを後悔していない。ああするしかなかった、少しでも民の血を流させないためには。それでも途中何度も嘔吐した。


 ◇ ◇ ◇


 ガルシアスの戴冠式が黒日祭の日に決まる。それに伴いディオジーニはルグアイ王国とメルカーディア王国に戴冠式の招待状を送った。それを受け取ったメルカーディア王国からアドリアナ第1王女が参列することになった。アリンガム侯爵も随行する。第3近衛隊もアドリアナ王女を護衛するために同行する。また、コンラッドが鍛えた侯爵軍の精鋭もアリンガム侯爵に随行することになった。


 サトシたちは5人での連携を深めるために、再びアダラートの森に来ていた。

「黒色狼が5匹います。全て前方です」

とセシリア。

「ではいつもの体勢で行こう。ナナは僕とリーナの中央1歩後ろに」

5人でV字型になる。左からアルト、僕、ナナ、リーナ、セシリアの順だ。黒色狼が来た。アルトがファイアーアローを、リーナが雷槍を撃つ。2匹が倒れ、残りをセシリアと僕とアルトが倒す。ナナは見ているだけだった。

「みんな凄いにゃ」

とナナは興奮している。

「いつも黒色狼で連携の確認しているからね。次は、ナナに支援魔法をかけてもらうよ」


「黒色狼が4匹います」

「じゃあ、今度は僕とセシリアが攻撃する。アルトとリーナは撃ち漏らした奴を頼む。ナナ、支援魔法をお願い」

「はいにゃ」

ナナの支援魔法を受けた僕とセシリアは走り込み狼を倒していく。身体は軽く、剣を振るうスピードも速い。カタリナさんにかけてもらったのと同じくらいの補助効果だ。

「いけそうだね」

と、そのあとも4グループの狼を倒し、家に帰った。


 クラウディオさんとカタリナさんに報告した。

「連携はうまくいきました。ナナの支援魔法が有ると無いとでは全く違いますね」

「そうですよ。支援魔法って良いでしょう。ナナはまだ自分を守る手段が少ないのでみんなで守って下さいね」

とカタリナさん。

「分かりました」

「明日からいよいよレッドウルフか。Aランクの魔物だからな、油断するなよ。無理したら必ず誰か大けがするからな」

とクラウディオさん。

「はい、決して無理はしません。約束します」

と僕は誓った。


 次の日、レッドウルフを狩りに行く。ファイアースピアを取得すれば移動している相手にも遠距離攻撃が打てるようになる。アダラートの森の奥深くに入っていく。途中で2度、狼の群れに遭遇するも難なく討伐した。セシリアの緑の結界でその日は1泊した。


 2日目も森の奥に進む。もうすぐルグアイ王国の国境というところで、セシリアが言った。

「いました。大きな狼が1匹、おそらくレッドウルフです。それに黒色狼が10匹。灰色狼が7匹います」

「18匹か。多いな」

リーナが、

「サトシはレッドウルフに専念して。あとは私とセシリアとアルトで何とかする。ナナは全員の補助ね」

「ファイアーストームを打つからね。一気に乱戦になるわよ」

とアルト。

「ナナ、加速と身体強化をお願いね。かけ続けてよ。それとケガしたらヒールって叫んで、かけるから」

「分かった」


 レッドウルフが近づいてくる。凄い威圧感だ。20mくらいのところで黒色狼と灰色狼が一気に突っ込んできた。

「ファイアーストーム」

アルトが叫ぶ。炎の嵐が巻き起こり、灰色狼が体勢を低くして耐える、2匹が倒れる。黒色狼も立ち止まる。僕も「フリーズ」で2匹の黒色狼を倒す。レッドウルフが動いた。ナナが支援魔法の加速と身体強化をかける。


 僕は前に進みレッドウルフと対峙する。レッドウルフがファイアースピアを撃ってきた。魔封じの盾を使い受ける。受けたとたんに体当たりされた。前足にフリーズをかけるもあたらない。肩や腹をめがけてフリーズをかけるが攻撃はとどまるところを知らない、少し顔をゆがめるくらいだ。ファイアースピアを4回、体当たりを2回受けたところで、瀕死にするのは無理だと判断した。受け流しても横にはじき飛ばされるくらい強い衝撃が来る。セシリアたちもまだ戦っている。ここらで決めないとやられてしまう。レッドウルフの体当たりが来た。身体強化をナナの魔法に重ねがけして盾でレッドウルフを正面から受けた。そして心臓めがけてフリーズをかけた。レッドウルフは倒れた。そして僕の左腕も動かなくなった、折れたみたいだ。


「セシリア、ヒールを」

と叫んだ。セシリアが飛んできた。そしてヒールをかけてくれた。3度かけてくれた。だが痛みは治まらなかった。それでもフリーズで黒色狼を1匹倒した。痛みをこらえ後ろに下がりナナのそばに行く。残りは5匹。3人に任せて問題がない頭数だ。そして戦いは終わった。


 セシリアが再びヒールをかけてくれた。

「ありがとう、もういいよ」

「しっかり折れていたみたいですね。帰ったらお母さんに上級魔法をかけてもらいましょう」


「ファイアースピアは取れなかったみたいですね」

とアルト。

「しかたないよ。そんなに甘くないと分かっただけで十分だ。もっと早くあきらめて倒すべきだった」

ナナが言った、

「レッドウルフを倒して、がっくりしているなんて誰かに聞かれたらびっくりされるよ」

「そうですよサトシ様。自信を持って良いんじゃないですか」

「そうだね。ランクAの魔物だもんね。レッドウルフは」


「魔素だけで金貨10枚以上はあるんですよ。誇って良いのに」

とリーナ。

「依頼も達成したし、初日からの狼全部たしたら凄い収入ですよ、きっと」

セシリアとナナに手伝ってもらって、ほとんど右手1本でレッドウルフの毛皮を剥ぎ取り、黒色狼の毛皮はナナに任せた。ナナも剥ぎ取りは結構うまかった。前のパーティーでやらされていたそうだ。灰色狼の毛皮は今回は諦めた。帰りも狼を狩りながら帰った。僕の出番はほとんど無かった。


 ギルドで依頼達成金の金貨100枚、魔素で金貨15枚、毛皮で金貨30枚になった。レッドウルフの毛皮が金貨20枚になったのが大きかった。合わせて金貨145枚である。

「また、5人で分けよう」

と僕が言うと、リーナが、

「とりあえず経費分を引いて、1人25枚ずつね」

「じゃあ、マントを買うにゃ。足りるかな」

「マントは金貨30枚だよ。半額でいいよ。僕が残り出すから、無理やり買わせるんだし」

「私たちの分で払って下さい」

とアルト。

「ありがとう、そうさせてもらう。セシリアの武器もそろそろグレードアップしないといけないよね」

「ありがとうご主人様。でもまだいいです。Aランクの依頼をいくつか受けてからで」


 スウェードルさんの店でナナのマントを買って、武器を預けて磨いたり調整してもらうことにした。


 家に帰ると、アラスティア様が来ていた。クラウディオさんと話していた。要件は西マリリアの冒険者ギルドのギルドマスターを依頼しに来ていたのである。ギルドマスターが高齢で引退するのに後継者を紹介して欲しいと王宮に依頼があったため、元冒険者のアラスティア様が人選することになったらしい。西マリリアの冒険者ギルドはギルドの総本山みたいなものだから誰にでもという訳にはいかないそうだ。

「どうだ、やってくれないか」

「分かった、そこまで言うなら受けることにする。ただし、夫婦でね。それでもいいか」

「よし、決まりだ。早速手続きする」


 クラウディオさんがギルドマスターになるんなら頼んでおこう、

「クラウディオさん、お願いがあります」

「なんだ、サトシ」

「ナナのお姉さんがタンガラーダでギルド職員をしています。ナウラさんっていいます。マリリアに移動希望を出していると思うので移転させて下さい。優秀な人だと思いますよ」

「タンガラーダで会った人だね。分かった、調べてみる」

「俺も推薦書を書いておく。そうすれば就任早々贔屓したと陰口をたたかれることは無いだろう」

とアラスティア様。

「ありがとうございます。猫人族にこんなに優しくしてくれるにゃんて・・・」

ナナが泣き出した。


「ギルドマスターの宿舎はあるよな」

「冒険者ギルドの裏にギルドマスターの宿舎がある。たしか今は空いているはずだから宿舎にはすぐに入れるようにしておく。どうせ引き継ぎで通うことになるしな。ギルドマスター就任は兔の1日でいいか」

「いつからでも」


 僕はカタリナさんから高位の治療魔法をかけてもらった。1週間くらいで元に戻るだろうとのことだ。


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