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異世界はバラ色に  作者: 里中 圭
第2章 プエルモント教国編
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第14話 連携

 次の日、朝はいつものようにセシリアに起こしてもらう。昨日はアルトはリーナの部屋で寝た。セシリアはアルトがどこに寝ようと僕と一緒のベッドに寝る。朝食を食べながら今日の計画を話す。

「リーナ、今日アラスティア様に僕の属性が闇だったことを伝えて」

「はい、闇ということだけでいいですか」

「そうだね、それと、できれば相談したいことがあると伝えて欲しい」

「わかった。そう伝えます。サトシさんたち、今日はどうするんですか」

「スウェードルさんとこに行って、ハルバードの改良をしてもらおうと思う、イバダンさんにもいろいろ聞きたいことがあるんだ。それが終わったら家にいる」


 朝食を食べ終わり、スウェードルさんの店に行く。イバダンさんを呼び出してもらう。イバダンさんと一緒にスウェードルさんも出てきた。

「おはようございます。ハルバードの改良をお願いします」

と言ってハルバードと火の杖を渡すとスウェードルさんが、

「火の魔石は予備があります。金貨5枚でお分けしますよ。火の杖はそのまま予備の武器として持っていたほうがいいと思います。火の属性が無くても使えますしね」

「そうですね、では材料費と改良費で金貨7枚ですね」

これくらいの出費は問題ない。いざとなったら火の杖を売れば良いのだし。さすがスウェードルさん商売上手だ。考えてみるといつも予算より少し出費が多くなっている。嬉しい出費ばかりだけど。

「明日の朝までには仕上げとくよ」

と、イバダンさん。


「イバダンさん、大ムカデとか、スコーピオンとか、砂漠の虫の魔物はどうやって解体するんですか。殻が固くて解剖できなかったんですけど」

「外骨格型の魔物は、解体用のナイフでは無理だ。まず、殻を専用の道具で割らないと」

「どんな道具ですか」

「小型の斧と木槌だ、おい、ちょっと持ってきてくれ」

と店員に声をかける。店員が斧と槌を持ってくる。

「これだよ、槌は片側が木で、もう片方が鉄で出来ている。斧は背のほうが厚めでたたけるようになっている。これを殻に当てて木槌で叩き切っていく。殻を外せばあとはナイフで解体できる」

「2つで金貨1枚です」

とスウェードルさん。

「では、それを下さい」

と金貨1枚を渡す。


「しかし、虫の身体は人や動物とは全然違うぞ、どこが心臓なのか分からないくらいだ、拍動する大きい血管みたいなものだったりする。拍動も少ないし、血液が凍っても死なないかもしれないぞ」

「脳とか、肺とかへの攻撃は有効なのですか」

「魔物による。人型、動物型は心臓や肺への攻撃は有効だ。脳はいろいろだ。頭に斧が深く刺さったままのオークと戦ったことがあるし、頭を一突きされて死ぬ奴もいる。効果がないわけではないが、心臓を止めるほうが確率は上のようだ」

「ありがとうございます。魔物ってなんなのでしょうね」

「それが分かれば苦労はしない」


 黙っておこうかと思っていたのだが、聞いてみることにした。

「僕の属性は闇になりました。闇の属性にあう武器はありますか」

「闇、聞いたことがないなあ。リーナの光でも珍しいのに闇なんて1人も知らない。神話や伝説でも闇属性の武器は見たことがない」

スウェードルさんも、

「私も聞いたことがありません。闇の属性なんてこの大陸に1人かもしれませんよ。光もイグナシオ大陸で10人いるかどうかですよ。同じパーティーに光と闇がいるなんてとんでもないことです」

「では明日の朝、取りに来ます」

といって店を出て、家に帰った。


 しばらくして、アラスティア様の侍従が王宮に来るよう呼びに来た。俺たち3人は侍従と一緒に王宮へ向かう。武器と闇の袋を預けようとすると、袋はアラスティア様が持ち込みを許可してくれたらしく預けなくて通してくれた。アラスティア様の部屋に入るとバーナード様も一緒にいた。


「属性は闇だったらしいな」

「はい、闇でした。それに特殊能力に『魔食い』というのがありました。他のステータスは変わっていません」

「『魔食い』、聞いたことがない、それも調べてみる。魔の探査の魔道具を持ってきたのでマジャルガオンの袋をもう一度調べさせてくれないか」

とアラスティア様、僕は袋を渡す。アラスティア様は、白い魔石の付いた魔道具を使い、呪文をつぶやきながら袋を調べている。


「闇かあ、有ったんだな。有りそうだとは思っていたが、初めてだ。どんな魔法が取れるんだ?」

「それが、取得可能魔法は出てきませんでした。『魔食い』だけです」

「ますます分からんな」

バーナード様も闇の属性を持つ人を知らないようだ。


 アラスティア様が僕の方にむけて呪文をつぶやいている。緊張するな面と向かってやられると、

「サトシ、闇の袋から呪いが感じられなくなっている。そしてお前から嫌な気配が感じられる。『魔の探索』を使ってやっと分かるくらいだが」

「それって、俺が呪われているっていうことですか」

「いや、おそらくその『魔食い』の能力が俺に危険を知らせているのだろう。恐ろしい能力が加わったのかもしれないな、急いで調べてみる。分かったら知らせるから待っていてくれ」


 バーナードが話し始める。

「セシリア、クラウディオとカタリナはまだアルバーノ側にいるそうだ。他のエルフはガルシアスの方に付いたみたいだ。もうすぐ内乱が始まるだろうから危険な状態だな」

「父や母はエルフの方々と戦うのでしょうか」

「それはないだろう。クラウディオの性格だと戦わずに捕らえられることを選ぶだろうからな、カタリナも。まあ命までは取られないだろう。アルバーノが勝ってもエルフの力は無視できないからね」

青ざめたセシリアは、命までは取られないの一言で少しだけ落ち着いたようだ。


「リーナ、教国の情勢が流動的になったので、修行はひとまず中断してもらう。その間はみんなと連携を深めることと雷杖を使いこなすようになることを心がけて欲しい」

「はい、分かりました。『光の槍』を取っていいのですね」

「そうだ、『光の槍』を雷杖を通して使うと『雷槍』になる。威力は大幅に上がるはずだ。レベルアップしたら『光の癒し』も取るべきだ。残ったら『身体強化』は取っておいて損はない」


「サトシ、連絡が付くようにしていてくれ」

「はい、バーナード様、連携を高めるための討伐は日帰りでやります。夜には必ず家に帰ることにします」

「分かった、それでいい」


 僕たちは王宮を出て、冒険者ギルドに行った。明日からの依頼を検討するためだ。連携を高めるための依頼だから、動きの速い群れでいるものが良いと考え、黒色狼5頭以上の討伐を選ぶ。レベルはDレベルだが俺の苦手なタイプだ。討伐場所のアラダールの森は、マリリアから山の方へ馬車で1時間、それから歩いて1時間くらいのところなので日帰りも可能だ。


 次の日、アルトのハルバードを受け取り、アラダールの森に向かった。アラダールの森は、うっそうとしているのだが、広場になっているところがあちらこちらにあり戦いやすい地形に見える。もちろん、魔物側からしてもそうなのだが。


 セシリアの索敵に7匹の灰色狼がかかった。囲まれているらしい。正面から4匹、右と左、それに後ろから1匹ずつだ。

「リーナ、後ろの奴を仕留めてくれ、それから右の奴。アルトは左を頼む、前は僕とセシリアが受ける」

「分かりました」

リーナが杖を構え、

「雷槍」

と唱える。稲妻が走り狼に突き刺さる。灰色狼は1発で沈んだ。狼たちが一斉に襲ってくる。僕は前方4匹のうち左の2匹を担当する。1匹に盾を思いっきりぶつけ、もう1匹を剣で切り裂き殺す。盾にぶつかった狼に対し「魔食い」と叫ぶ。手の先に魔方陣が浮かんだが、何もおこらずに消えた。仕方がないのでフリーズで倒す。


 セシリアも難なく2匹倒したようだ。アルトはハルバードからファイアーアローを出し仕留めていた。リーナも雷槍で残りの1匹を倒した。

「ハルバードは狙いを付けやすいですね。槍の先からファイアーアローを出せますので、突っ込んでこられても安心感があります」

セシリアも、

「アルトの構えが様になっているのが不思議なくらい。剣や杖より槍のほうが使いやすそうね」

「そうね、しっくり来る感じ。リーナの雷槍は凄いね」

「凄い威力に見えるけど、まだアラスティア様の10分の1の威力もないんですよ、これでも」

それでも凄い、さすが金貨200枚の杖だ、いやリーナが凄いのかな。


 とはいえ、討伐依頼はレベルDの黒色狼、レベルEの灰色狼じゃないので、森の奥に進む。

「いました。黒色狼です。6匹います。全て前方からです」

セシリアの探索も知力が上がり、魔物の種類もかなり分かるようになったそうだ。

「俺たちも横に並ぶ、左端のアルトと右端のセシリアが1歩前に進み、中央左の僕と右のリーナが1歩下がる。アルトとセシリアは武器を振り回したいための位置取りだ。


 6頭の黒色狼が突っ込んで来る。俺以外の3人が魔法を飛ばす。ファイアーアローと雷槍とウォータボールだ。3頭が倒れ3頭が突っ込んで来る。アルトがハルバードを振り左の狼を切り裂く、一瞬届かないと思ったのだが、炎の刃がハルバードの穂先に出て狼を切り裂く。狼は俺の盾にぶつかって動かなくなった。セシリアは右から走り込んできた狼を切り裂き、そのままウォータボールで倒した狼に止めを刺す。リーナは2匹目の雷槍を放つも外した。僕が盾で受け流し、フリーズをかける。6頭の黒色狼を倒した。


 討伐証明部位の牙を抜き、帰ることにする。帰り道でも、1匹のはぐれ狼を見つけたので魔食いをかけたが、何にもおこらなかった、リーナが雷槍で倒した。馬車に乗りマリリアに帰る。冒険者ギルドで依頼金の銀貨10枚と魔素分の金貨1枚と銀貨5枚を受け取る。


 家に帰り着き、リーナがいるので各々4分の1ずつに報酬を分ける。セシリアとアルトは受け取ろうとしなかったが、奴隷の持ち物は主人のものだからと言って受け取らせる。リーナは苦笑いしている。


 次の日も同じ依頼を受けた。今日の目標は、「できるだけ遠距離から攻撃する」ということにした。僕は弓で、セシリアはウォータボールで、アルトはファイアーアローで、リーナは雷槍で攻撃する。5匹の黒色狼と12匹の灰色狼を倒した。黒色狼が目の前に来たのは僕の弓が外れたときの1度だけで難なくセシリアが倒した。弓も練習しなくてはいけないと強く思った。明日は黒月日、休みにしよう。


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