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異世界はバラ色に  作者: 里中 圭
第2章 プエルモント教国編
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第12話 バーナード

 ノックも無しに1人の男が入って来た。

「セシリア」

「バーナード様、お久しぶりです」

「3年ぶりかな。きれいになったな。お父さんは教国に捕まったって、情報では今、内乱が起こってるらしいぞ」

「そうらしいですね。国王様も教皇様も亡くなったって」

「そうだ、第1王子と第2王子の争いだ」


「ガルシアス様はご無事だったんですか」

リーナが思わず聞く。

「ああ、ガルシアス王子が巻き返しを図っているようだ。え、ひょっとして、あなたはマルチェリーナ様、何でここに」

「アルバーノに傀儡の教皇にされそうになってカルビニアに逃げたんです。そこで、こちらのサトシさんに会って、教国を出て冒険者になるためにメルカーディアに来ました。今はサトシさんのパーティーに加えてもらっています」

「マルチェリーナ様、もし良ければ教国の人間関係なんかを聞かせてくれるとありがたい、無理にとは言わない、できれば後で話を聞かせてくれ」

「はい、あまりお役に立てないとはおもいますけど」

「セシリア、俺がご両親の情報を探るので待っていてくれ。今はどちらに側にいるのかも分からない」

「ありがとうございます」


 アラスティアが言った。

「バーナード、『マジャルガオンの袋』について何か情報はあるか」

「いや、みんなが知っているくらいしか俺も知らない。なぜ」

「このサトシが使っている」

「すぐに捨てたほうがいい。いや、研究させて欲しい、かな」

「いえ、僕が使い続けます」

「いいのか、属性がなくなるぞ。呪いは強力で気付きにくいらしい。ジェイハンという高レベルの騎士でも気付かなかったくらいだからな。周りには魔術師もけっこういたのに」

「僕は属性が元々無いんでこれ以上悪くならないと思います。今も生活魔法くらいしか使えませんし」

「それなら、良いのだが。何かあったら勇気を持って手放すことだ」


 バーナードの目が少しきつくなった。

「サトシ、奴隷を解放する気はあるか」

「もちろんです。方法さえ分かればすぐにでも」

「それなら良いんだ。その方法も調べてみる」

とバーナードは隷属の首輪について語り出した。


「隷属の首輪は、シャイアス大陸の大魔導師が作ったと言われている。もともとは魔獣を使役するために作ったらしいのだが、人や精霊族、獣人族にも効果があり、魔獣には使わず悪用されるようになった。そこで、納得して自分で付けないと効果を発揮しないことや奴隷の子供が奴隷にならないように子供をできなくすること、一度首輪を外すと二度目からは効果がなくなることという機能を付けたらしい。首輪を外す方法もあるらしい、もちろん方法は難しい条件があるのだそうだ。その方法を使えば奴隷でも他人でも外せたために方法は極秘扱いになっていたらしい。その後、シャイアス大陸では奴隷解放が行われその知識は一般的になったのだそうだが、イグナシオ大陸には伝わらなかったらしい。

 獣人族の中には他人が付けても効果を発揮する種族もいて、多くは奴隷として絶滅したか、南のサマルカン大陸に逃げ延びたらしい。

 問題は他の大陸にどうやって行くのかなのだ。海を越えて行けばいいのだが、海竜と飛竜が邪魔をする。たどり着ける確率はほとんど無いと思われる。他の大陸から誰か来たという話は昔はよくあったらしいが最近聞いたことがないからな。もう一つの方法は、神話や伝説にある神の部屋と呼ばれる転移する場所があるらしい、それを使えば一瞬で移動できるそうだが場所が分からない。ジェイハンが調査に行ったのもそいつを捜すためだったんだが」


「シャイアス大陸にいけば解放する方法が分かるんですね」

「いや、分かるかもしれない、という程度だ。遺跡を調べれば何か分かるかも知れないが古代語は分かるのか」

「はい、何とかなると思います」

翻訳2があるので何とかなるはずだ。


「教国の情報は続々と入っている。マルチェリーナ様の」

「リーナって呼んで下さい」

「そうか、じゃあ、リーナ。リーナの情報は何も入っていない。ディオジーニが隠しているのか、無視されているのかだが、俺は無視されている方だと思う。リーナに特殊能力があるわけでもなく、教皇の娘というだけだ。教皇が死んで新しい教皇が決まればもう必要ない人材だしな。使い道は、可愛いから愛妾くらいだろう。この混乱期に、わざわざ探し出すほどの手間はかけないさ。

 何か分かったら知らせるから待っていてくれ。リーナ話が聞きたい、今から良いか。俺が責任をもって家まで送るから、セシリアたちは先に帰っててくれ」

と言い、バーナードはリーナを連れて出て行った。それから連絡方法などをアラスティアと相談し家に帰った。


 リーナが帰ってきたのは、それから4時間後の夕食前だった。いろいろ聞かれたのは1時間くらいで終わったらしいのだが、属性が光ということがわかったため、アラスティアにまた呼ばれたそうだ。アラスティアの属性も光なのだが、光の属性は珍しいために情報が少なく、取得魔法の選択に苦労したそうだ。


「アラスティア様から、しばらくアラスティア様のもとで修行しないかと言われたんですけど行って良いですか」

「もちろん。リーナのためになると思う。修行がんばって」

「そう、光の属性は珍しいですからね。剣は教えられても魔法の使い方は分からないし、何の魔法があるかも知らないし」

「で、夜は帰って来るのでしょう?」

「はい、そのつもりです」

「そうだね、バーナード様は教国からの脅威は無いみたいに言っていたけど、まだまだ心配だしね。王宮が守ってくれるならそれに越したことはないよね」

「では、明日から王宮に通います」


 次の日、僕たちは依頼を受けに冒険者ギルドに行った。掲示板には依頼が数多く張り出されていた。その中でも群を抜いて多いのが、「砂漠の魔物討伐」でランクはD以上で、討伐した魔物によって貢献ポイントや報奨金が出るそうだ。これを受けることにした。受付で魔物リストと討伐証明部位が書かれた書類を受け取った。


 砂漠にはこの依頼のために馬車も頻繁に出ているそうだ。僕とアルトは王都に来てから乗馬の練習はしているのだが、やっと乗れるくらいにはなったのだが、ゆっくり走らすぐらいしかできない。闇の袋のおかげで荷物は持たなくて馬に乗れるのはありがたいのだが、馬での遠征はまだまだ無理のようだ。


 馬車に乗り、南の砂漠へと向かう。砂漠の入り口には村ができ、冒険者に必要な食料や道具が売られていたり、武器の手入れをする工房が開かれていたりした。僕たちは、闇の袋のおかげで十分な荷物を持ってきているので、その村を素通りし砂漠へと入っていった。砂漠は思ったより暑かった。温度調節付きのマントのおかげで苦痛ではなかったが、それでも暑い。水は生活魔法1で作れるので困ることはない。


 砂漠に入るとすぐに砂漠狼がいた。はぐれていたらしく1頭だけだ。僕が進み出る。狼がこちらに気付き仕掛けてくる。狼の突進を盾で受け、ぶつかったところにフリーズで心臓を凍らせる。狼は倒れた。生活魔法2も遠距離操作も消えていないようだ。


 砂漠の奥に進む。ムカデのような魔物が出てくる。4mくらいはある。それほど大きいものではないらしい。牙には毒があり、噛まれるとやっかいだ。心臓の位置など分からないので頭にフリーズをかける。一瞬怯んだが、動きは止まらない。どこを凍らせればいいのか考えが及ばない。ムカデが襲ってくる。僕が盾で対応する。盾で頭突きを止め、叩き左に受け流す。その直後に後ろからアルトがファイアーアローをムカデの頭にヒットさせる。右にいるセシリアがムカデの胴体にある節の柔らかいところを剣で刺す。僕もムカデに飛び乗り首の後ろに剣を突き刺す。ムカデは大きく仰け反り、僕は砂の上に飛ばされる。アルトが首の後ろの僕が剣で突き刺したところをファイアーアローで焼くとムカデは動きを止めた。牙を抜き闇の袋に入れた。


 コップに水と氷を作り一息つく。砂漠では、生活魔法2は絶対に便利だ。セシリアの索敵に何かが引っかかった。スコーピオンだ。7mくらいの魔物だ。カーラ達が戦ったやつとほぼ同じだな。と作戦は目と足を攻撃して動きを止める方法が良いらしい。僕が正面に立つ。牙の攻撃と鋏の攻撃を引き受ける。アルトは左から右目の攻撃、セシリアは左足の攻撃を担当する。


 頭の中を凍らせる。予想通りの効果はなかったが、顔を突き出してくるのはやめたみたいだ。鋏による攻撃が来る。アルトとセシリアが攻撃を始めた。僕は左からの攻撃を盾で、右からの攻撃を剣で受け流す。スコーピオンがセシリアの方に気を取られた。その隙に思いっきり飛び込み顔のあたりを切り裂く。あまり深くは切り裂けなかったが、スコーピオンの攻撃目標は僕に定まった。セシリアが左足を2本切り裂き、身体は左に傾き、左の鋏は体重を支えるのに使っている。アルトも何とか右目を潰したようだ。

「尻尾が来ます」

とセシリアが叫ぶ。予想通りの展開だから余裕がある。スコーピオンの左目はしっかりと俺を見ている。尾が上からくる、盾で受け流すことはせず、素直に避ける。尻尾が砂に刺さったところを剣で思いっきり切り裂く。セシリアはスコーピオンの身体の上だ。急所を剣で刺している。スコーピオンの動きが止まった。


「ご主人様は視野が広くなりましたね。動きも無駄がなくなってきたし、かなり強くなっているんじゃないですか」

とセシリアが誉めてくれた。

「そう、魔法が効かないので剣や盾に集中できたのが良かったのかもしれない。まあ、厳しい練習にも耐えているしね」

「そういってもらうと鍛えがいがあります」


 セシリアが索敵であたりに魔物がいないことを確かめた。証明部位を切り取り、砂漠から少し北に行ったところにある町、クーヴァンまで戻り宿をとる。マントで温度調節はできるとはいえ、暑いのには変わりない、特に戦いの時はマントにくるまっている余裕はないので暑さが身にしみる。疲労を溜めないことも冒険者としての努めだ。


「ご主人様の魔法が効きませんでしたね」

「そうだね。虫系の魔物は急所がどこか分からないしね。ゴキブリなんて頭を切り落としても生きてるって言うしね。ワームなんかもどこを凍らせれば良いのかよく分からない。でも、怯ませるくらいの効果は有ったかもしれない。ちょっとだけどね」

「砂漠は暑いですね。砂が目や口に入るし、日焼けもするし、動きにくいし」

とアルト。

「そうそう、やはり森や山のほうがいいよね」

セシリアも同意する。

「じゃあ、いったん引き上げる? 別にここじゃなければダメってことはないんだし」

「そうですね。マリリアから日帰りできるところが良いですよ、リーナのことも気になるし、情報も入りやすいですから。魔物も2匹倒したし、稼げましたしね」

「じゃあ、いい経験になったということで、明日帰ることにしよう」

その夜は疲れを癒し、次の朝には馬車に乗った。


 ステータスが見られたころはあまり見る気は無かったんだが、見られなくなったら何度も見たくなる。どう変化するか楽しみもあるわけだし。帰ったら、ステータスを確認しに教会に行ってみよう。


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