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異世界はバラ色に  作者: 里中 圭
第2章 プエルモント教国編
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第6話 マルチェリーナ

 マルチェリーナは独りぼっちになっていた。ディオジーニ様に逃がしていただいたのは嬉しかったけど、事態が悪くならなかっただけで好転したわけじゃないのだから。この別荘の管理人さんご夫妻はよくしてくれるけど、ミレットさんもあまり会いに来てくれないし、話し相手もいない。


 幼い頃に母を亡くしたけれど、父に愛情一杯に育てられ、周りのみんなからは巫女姫なんて煽てられ幸せに育つことができた。父の教会は居心地が良く、無断で水晶に触ったりしても誰からも叱られなかった。


 そして今、父が死に、いや殺されてディオジーニ様の言うとおりにここまで来たけれど、他に行くところもないし、アルバーノよりはましだけれどディオジーニ様にいいように利用されると思うと、ここからも逃げてしまいたい。でも、どこへも行くことができない。行く方法すら分からない。


 外は雨。まるで私の気持ちを表しているかのようだ。明日は誕生日なのに、これでも15歳、大人になるんだ。


 コンコンとノックの音がする。

「マルチェリーナ様、入ってよろしいですか」

「ミレットさんね。どうぞ」

ミレットは、なんだか浮かれて入ってきた。この部屋には不釣り合いだなんて悪い考えもよぎった。

「マルチェリーナ様、明日はお誕生日ですよね。お祝いのパーティーを開こうと思って知らせに来たんです」

「パーティーなんて気分では・・・」

「来る途中に狼から助けてくれた冒険者の方々も一緒に祝っていただけるそうです。ものすごく料理が上手な方がいらっしゃるんですよ」

「あのときの、・・・、まだお礼も言っていなかった。きちんとお礼を言わなくちゃ」

「そうですよ。明日、また迎えに来ます」


 もう少し、話したかったがマルチェリーナは我慢した。私のことを利用しようというのではなくて、考えてくれる人がいるんだ。そう思うだけでも嬉しかった。どんな服を着ていこう。

「うふ、普通の女の子みたい。着ていく服を考えるなんて」

さっきまでの自分を思い出して、少し浮かれているのに驚いていた。


 そして次の日、全体的には黒っぽいが、それでも所々に赤やピンクの刺繍が入った品の良いものを着てミレットを待った。昼少し前にミレットが迎えに来た。

「マルチェリーナ様、お誕生日おめでとうございます。お迎えにまいりました。準備はよろしいですか」

「はい」

と返事して、ディオジーニの別荘を出て馬車に乗った。馬車は「カルビニア山荘」に着いた。


 中に入ると、豪華な料理が並んでいた。肉や野菜をふんだんに使い、彩りも鮮やかに盛りつけられている。そして、ミレットのご両親、冒険者の4人に迎えられた。

「お誕生日おめでとうございます」

「「おめでとう」」

みんなに声をかけられ思わずマルチェリーナは泣き出した。

「父が殺されてまだ1週間ほどです。で、私がこんなに祝福されるなんて、こんな、こんなことって許されるのかしら」

イバダンが珍しく発言した。

「許される。先に逝ったものは残された者が幸せかどうかが最も心配だったはずだ。お嬢ちゃんが幸せだったら嬉しいし、涙に明け暮れていたら悲しいはずだ。もし、逆の立場だったらどう思う。残された者が幸せになったら悲しいか」

マルチェリーナはイバダンの胸にすがりつくようにして泣いた、そして言った、

「ありがとうございます。その言葉で救われたような気がします。私が幸せになっても良いんだって」

「そう、幸せにならなきゃいけないんだよ」


 いかん、イバダンさんに良いところを全部持っていかれた。僕の胸なら立ったままでも十分貸せたのに、わざわざ膝を折ってイバダンさんの胸に飛び込むなんて。僕は内心焦っていた。だって可愛いんだもん。身長は150cmちょっと、アルトやセシリアよりも10cm以上小さいかも。まだ未発達な身体もそれはそれで魅力的だ。髪は濃いめの茶色、目は碧眼、色白で守ってやりたい、そんな存在だ。セシリアの表情豊かな可愛さとも、アルトの色気のある可愛さとも違う魅力だ。また、目の前で何かが上下している、セシリアの手だ。セシリアを見るとジト目で睨んでいる。


 もう一度、みんなから

「お誕生日おめでとう、成人おめでとう」

と声がかかり、

「ありがとうございます。幸せになります。それから、冒険者の皆さん、狼に襲われたときはありがとうございました。お礼が遅くなってごめんなさい」


 そして宴が始まった。イバダンさんと女将さん、旦那さんはもう酔っぱらっているようだ。僕も飲もうとしたとき、

「冒険者になるってどうしたらいいんですか」

とマルチェリーナが聞いてきた。

「マルチェリーナさん」

「リーナって呼んで下さい。呼び捨てで」

「じゃあ、リーナさん、いや、リーナ。冒険者ってお嬢様がなるものではないと思うよ」

「私はお嬢様ではありません。今は1人の孤児です」

ミレットが

「でも、マルチェリーナ様、プエルモント教国の冒険者ギルドでは登録は危険だと思います。他の国でも、いったん登録すれば分からないと思いますが、登録時に気付かれると危険です」

何のことだろう、気になった僕は、

「リーナって何者なの?」

「マルチェリーナ様は教皇猊下のお嬢様です」

「アルバーノに殺された教皇の娘です、そして今は1人の孤児。ミレットさんもリーナって呼んで下さい」


「それって僕たちに明かしても大丈夫なの?」

「いえ、凄く危険です。普通は。でも皆さんを見ていると大丈夫な気がします。政治的な裏もなさそうですし」

とミレット。

「じゃあ無事に登録できるところにいけばいいんだ。あてがあるよ」

「ガビー村ですね」

「そう、口の堅いギルドマスターがいるところ」

「よし、採掘が済んだらそこを経由して帰ろう」

僕が口を開くと、アルト、セシリアが続き、イバダンさんが締めた。良いとこの独り占めは難しい。


 リーナは、自分のことがどんどん決まっていくことに少し焦った。でも、このままここにいるより安全だと思った。何の根拠もないけれど。


「明日から、一緒に行動させて下さい。別荘に1人でいるのも辛いんです。ここならミレットさんもいるし安心です」

「冒険者になるのなら鍛えますよ。いいですか」

セシリアが言った、僕の方も見ている、僕も鍛えられるんだということが伝わってきた。

「はい、お願いします」

「じゃあ、部屋は私たちの部屋の2階を使ってください」

とセシリアが言ったが、ミレットが、

「いえ、部屋はこちらで用意します。料金はいりませんから。別荘の方には私から伝えておきます」

階段続きの部屋なら音は筒抜けだし、夜のこともあるし教育上良くないことだよね。セシリアも分かってないなあ。


「僕はリーナがパーティーに加わってくれることは大賛成なんだけど、1つだけ条件がある」

「えっ、何ですか。私に出来ることかしら」

とリーナが不安な顔をする。

「もちろん出来るさ。それは、奴隷にならないこと」

「えっ、何で奴隷になるんですか。そんなことあり得ない」

リーナは何を言っているんだろうと思った。奴隷になることが条件と言われたほうが理解できる、なる気は無いけど。でも、2人のうつむいた少女を見ると、

「もしかして、アルトさんとセシリアさんてサトシさんの奴隷なんですか」

「「はい」」

「解放してあげてって、隷属の首輪の奴隷なんですね。でも、どうして」

アルトは言った、

「呼び捨てでいいですよ。敬語もいらないし。実は」

とセシリアとアルトが奴隷になったいきさつを話し始めた。ときどき、僕の方を常識の無い人てきな感じで見られるのが怖いんだが。


「アルトって、やはり年上だし言いにくいな、アルトさんってヴァンデル教の信者だったんですね」

「いえ、父はヴァンデル教の信者でしたけど、私は入信していません。私が生まれたころメルカーディアではヴァンデル教の教会はありませんでしたから。今も少ないですけど、でも、どうして」

「お父様との3つの約束です。その3つはヴァンデル教の教えなのです。とても厳格な教えだと父が言っていました」

「私はヴァンデル教徒ではありませんが、父との約束で3つのことは守ります。今でも父を尊敬していますから」


 そして、リーナは続けた、

「父が言っていました。隷属の首輪の奴隷も解放する方法があるって、どういう方法かは分かりませんが・・・」

「本当、その方法はどうやったら分かるの」

と僕が言うと、セシリアもアルトもうつむいて、

「奴隷だと迷惑なんですか」

と聞いてきた。

「いや、迷惑ではないんだけれど・・・。僕もよく分からなくて」

と沈黙。もし、突然日本に戻るようなことになったときに2人が奴隷のままだと、どういうことになるんだろう、まさか生きていけないということは無いだろうけど。それに戻れるなんて可能性は無いかもしれないしね。まだ日本に未練があるのかな、絶対に今のほうが恵まれているのに。


 セシリアが、

「リーナの属性って何だろう。ねえ、何だと思う」

「私の属性は光です」

「でも、まだ測っていないよね。今日が15才の誕生日だし」

「私の家は教会です。小さい頃から水晶に触っていました。私が触ってもみんな許してくれていたし属性見るんだって『ステータス』って言えば見られるんですよ」

「でも、小さい頃は分からないはずよ」

「属性が現れたのは今年のバラ色祭の日からでした」

イバダンが割り込んだ。

「光か珍しいな。属性が光なら、アンデッドには相性がいい。ライトボールを使えるようになってくれ」

「じゃあ、明日から剣の鍛錬とレベル上げしましょ。とりあえずレベル3までは簡単に上がるからライトボールはすぐに取れるからね」

セシリアはなぜだか張り切っている。


 リーナは嬉しかった。私を必要としてくれている。アルバーノとは違う意味で。ディオジーニ様とも違う意味で、リーナ個人の力を期待されていることが嬉しかった。


とうとう題名を変えてしまいました。

あとは、視点の統一をどうしようかと考えています。

それも含めて大幅改訂をしないといけないですね。

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