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異世界はバラ色に  作者: 里中 圭
第1章 メルカーディア王国編
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第2話 トリニダの森

 のどが渇いたので水でも探そう、森なんだから川や泉くらいあるだろう。


 周りを見渡せば、大小様々な木々に囲まれている。上を見れば、薄暗いわけではないのだけれど、木々の葉で空もほとんど見えないくらい覆われている。下を見れば、日が差さないためか地面がむき出しになっている。土の色は茶色と言うよりも黒ずんでいて、石塊がところどころに突き出している。木々は、種類は詳しくないから分からないが、広葉樹であることは間違いない。少なくとも手入れがされている森ではない、それくらいは想像が付く景色だ。


 耳を澄ませば、鳥のさえずりが聞こえ、旅行で来たのなら癒される絶好の森林浴だと感じたことだろう。獣の鳴き声も足音もしないし、水の流れる音がすることもないのでこの場を移動することにした。水と食料は確保したい、そうしなければ生きていけない。


 異世界にしても、地球の辺境にしても、どんな危険があるか分からないので、とりあえず武器になるものを探そう。初心者だがアーチェリーの経験はあるし、ゲームでは弓師だし、弓と矢を作れればいいんだけど、贅沢は言えない。


 棒の一つでもあれば何とかなるかな。そう思い、直径5~6cmくらいの太さの枝に手をかけ力一杯引っ張り折ろうとしたがびくともしない。非力だ。


 あきらめて投擲用に手頃な石を2個拾って両手で持つ。少し歩くと緩やかな坂になっているところに出る。下りるか上るか迷うところだが、川に向かうのなら下へ向かうべきだ。行き止まりで戻ることになったときには立ち直れないかもしれないが、そうならないことを祈ろう。


 しばらく行くと、持っている石がばからしくなるくらいに石がゴロゴロしてきた。乾いた空気が、だんだんと湿気を帯びた感じになってきた。下生えも増え、薮になっているところもある。崖や段差も多くなってきた。右を見るときらきらと光っているのが見える、川だ。


 けもの道を右に進み河原に出る。やや丸みを帯びたごつごつした石が河原を敷き詰めている。川の中には折れた枝も落ちている。


 まずは、両手で水をすくいのどを潤す。けっこう冷たい。山の中腹くらいかなと予想を立てる。町や村までは結構あるかもしれない。人がいる世界なのかどうかも分からないし、いたとしても言葉が通じるかどうかも分からないし、人見知りだし。生きていくだけなら、これだけの自然があれば何とかなるだろう、と考えながらため息をつく。


 まずは、武器を作ろう。川の中に膝まで浸かり折れた太い枝を取る。道具がないので石を石にぶつけて割り石器を作る。大きい音はするが、わりと簡単に割れた。何個か石を割っていくうちにいびつだが片方が鋭角になった物ができた。包丁にも使えそうだ。まずはこれで細かい枝を落として棒を作る、ごつごつしていて、長さは2メートルくらいある。ちょっと長いけど切断するには時間が掛かりそうだし、振り回すにはこれくらいが良いのかもしれない、と妥協して満足する。


 木の蔓を切ってひもを作り、真ん中のあたりが少しへこんだ石を選んで棒の先に固定してハンマーを作る。これでけっこう殺傷力が確保されたはずだ。本当は短槍を作ろうと思ったのだけど、石で穂先を作るのは僕にはできないのでやめた。


 次は食料だ。ここは森の中だし木の実くらいはあるはずだ、でも歩き回るのは危険と判断し、川で魚を捕ることにした。川縁の一角に岩でできた池状のところがある。中を覗くと20cmくらいの魚が2匹いる。銛を作って刺すのは難しいと思い、石や枝を使って魚がそこから出られないようにする。とりあえず魚2匹を確保した。この川は魚が多いようだし、明日は竹篭をつくり罠として仕掛ければ食料は確保できるかもしれない。でも生で食べるのは寄生虫なんかが怖いので焼かないといけないな。そうなると火が必要だ。


 乾いた木を裂いて、手頃な枝を拾ってきてキリで穴を開けるようにこする。こする、こする。手が痛くなっても、だるくなってもこする。黒いかすが出てきて煙みたいなものが出てきた、でも、もう限界だ、根性が足りない。火を起こすのは無理だ、もう見たくもない。


 もう少し簡単に火がつくかと思っていたのだが考えが甘かったようだ。他に食べるものが無かったら生で食べるしかないのかな、などと思いつつ、魚はあきらめて木の実を探しに行くことにした。見回すと何か変だ。鳥の声がやみ、急に静かになった。


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