表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界はバラ色に  作者: 里中 圭
第2章 プエルモント教国編
28/142

第4話 カルビニアへ

 マルチェリーナはアルバーノに呼び出された。そして最も聞きたくないことを聞かされた、

「サルバティ14世は、殉死を選択した。今頃は父王と2人して神の御前に並んでいることだろう」

マルチェリーナは気丈にも声を上げなかった。ただ、涙がぽろぽろと流れ落ちていた。耐えられなくなって床に這いつくばるような格好になっている。アルバーノには平伏しているようにしか見えない。

「14歳のお前には辛いことだろうが耐えてくれ。そして父の後を継ぐように。もうすぐ15歳になるんだったな、15歳になったら愛妾に加えてやるから俺の元へ来い。それまでは、命令書にサインするだけでよい。まずは、宰相のところに行って教皇受諾のサインをしてこい。誰か、連れて行け」


 ディオジーニは今後のことを考えていた。王権は混乱するだろうが政治は滞りなく行わなければならない。国王も教皇もいなくなった今、事務方が落ち着いていなければ国民の生活が壊れてしまう。

「宰相閣下、国王陛下の命により教皇猊下をお連れいたしました」

誰が国王で誰が教皇なのかな。見ると、兵がマルチェリーナを連れていた。

「わかった、下がってよい。マルチェリーナ様、こちらへ」


「私、教皇なんかにならない。あいつの愛妾にも」

「わかっております。ではお逃げなさい」

「逃がしてくれるんですか」

「はい、どこへでも。行く当てはありますか」

「いえ、ありません」

「では、カルビニアにある私の隠れ家に行っていただきます。絶好の避暑地です。まだこの時期では肌寒いかもしれませんが」

「でも城から出られるかしら」

「その金髪は目立ちます。髪を切って、茶色に染めていただきます。よろしいですか」

「はい、そのくらいで良ければ」

「案内は、ミレットに頼みます。カルビニア出身の私の侍女です、剣も使えます」

ミレットが手を差し出し、

「こちらで髪をお切り下さい、ご案内いたします」

ディオジーニは、教皇受諾書に左手でマルチェリーナの名前を書いた。


 ◇ ◇ ◇


 荷物は闇の袋に入れた。イバダンの物は馬車に積んであった。

「サトシ様、俺の荷物も袋に入れてくれ、入ればだが」

「サトシでいいです。こっちがセシリア、それにアルト。みんな呼び捨てでいいです」

「そうか、助かる。敬語は苦手なんでね」

「袋に全部入りました。大丈夫みたいです」

「やはりすごい袋だな。これで馬の負担が減る。助かった」

スウェードルが見送ってくれた。スウェードルにも呼び捨てにするよう頼んだが、商人ですからと断られた。


 雨の中、馬車はまず、ラウニオン街道を西に行き、懐かしいモンテロ伯爵領に入り1泊し、オルソノ街道を北に向かった。途中、町や村で3泊した。その町の一つがコモドラドだった、セシリアが売られるために連れて行かれそうになった町だ。2人は宿から出ようともしなかった。そして、森を抜け、森では灰色熊を3匹ほど倒し肉を堪能し、そして国境を越えた。プエルモント教国に入った。


 壁も検問もない、なんかいい加減な国境に思えた。冒険者カードがあれば国境は関係ないらしいが。あとは北に行くだけ。だんだんと山が迫ってくる。このあたりで1泊することにした。小さな町に入り宿に入る。2人部屋が2つ取れた。部屋割りはもちろん3人と1人。イバダンはその夜、遊びに行って帰ってこなかったらしい。それなら1部屋で良かったのに。


 それからは、魔物を倒し、レベルの低い物しか出てこなかったが、イバダンの指導のもと、必要部位の剥ぎ取り方と内臓の位置を勉強しながら進んだ。


 2日後カルビニアのすぐ南。山あいを上り、気温も下がる。マントがあるので何ともないが、無かったらと思うとぞっとした。雨期の時期にこのあたりに来る人はまばららしい。鍛治師でなければ真夏にしか来ないらしい。それでも1台の馬車が狼の群れに襲われているところを助けたくらいだから、全く人が通らないわけでもない。


「ありがとうございます。助かりました。女2人の旅で、この時期に狼が群れで来るとは思いませんでした」

「僕はサトシ。冒険者で、今は鍛治師の護衛中です。カルビニアまで行きます」

「私はミレットと申します。勤め先のお嬢様を旦那様の別荘までお連れしている途中です。私の実家が宿をしておりますので、もし宿がおきまりでなかったら利用して下さい」

馬車のほうをみると目だけしか見えないが、碧眼の少女がいた。きっと美少女だ、絶対、だってお嬢様だもの。

「では、出発しましょう。ついてきて下さい」

青龍の20日、2台の馬車はカルビニアに入っていった。


 ◇ ◇ ◇


 そのときはまだ、アルバーノは国王への地固めに自信を持っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ