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異世界はバラ色に  作者: 里中 圭
第1章 メルカーディア王国編
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第19話 カーラ2

 帰り道、喜び一杯だった。ウインドカッターを枝に向かって放ち、枝が落ちてきたときはもの凄く興奮した。攻撃魔法、最高だ。興奮しながらも、周囲への注意は怠らなかった。馬に乗った不穏な一団にも気付いた。


 あれは、山賊だ。女性2人をさらってアジトに帰るところだろう。あの女性たちを助けたい。ゴブリンに連れられた私たちと重なって見えた。相手は6人、なりふり構わず飛び出した。飛び出したが無視された。相手は馬、こちらは歩き、追いつくはずはない。ウインドカッターを放つ。距離があったためか悠々と避けられる。山賊の1人がこちらに向かってきた。


「あの女性を解放しろ」

1対1になったので強気で押す。

「やかましい、お前もなかなかの上玉だな、一緒に連れて行ってやる。ありがたく思え」

にたりと笑って山賊は言う。

「ウインドカッター」

先制攻撃だ。これしかない。だが山賊は盾で簡単に防いだ。

「魔法はこの盾を通らない。あきらめるんだな。たっぷり可愛がってやる」

といって、馬を降りた、殺すのではなく捕らえるつもりのようだ。山賊はゆっくりと剣を抜く。カーラも双剣を抜き、戦闘態勢に入った。


 加速を使い、双剣を振るうが、相手ははるかに強い。負ける。遊ばれている。攻撃がまったく届かない。

「ほう、なかなかやるじゃないか。無傷では捕らえられないな。少し痛い目にあってもらおう。攻撃はなかなかだが防御はどうかな」

と山賊は、本格的な攻撃を始めた。遊んでいるのか技は使わず上から大剣を振り下ろすだけ。双剣で受けるのが精一杯で、こちらからの攻撃は全くできなくなった。一つ一つの攻撃が重く、意外なほど早い。隙をみて「ウインドカッター」をとも考えていたけど、その余裕はない。左の剣が折れた。


 両腕がしびれだした。目の前もかすんできた。そのとき山賊は攻撃パターンを変えた。横からの攻撃が来た。右の剣が大きくはじかれた時、カーラは勢いで後ろを向いてしまった。そのとき、山賊の剣がカーラの背中を襲った。ザクッ。背中が燃えるように熱くなった。そのまま気を失ってしまった。


 アルト姉さん、サトシ様、セシリア、ごめんなさい・・・。


 山賊は、ちょっと深く傷を負わせすぎたかなとは思ったが、ヒールでもかけさせれば身体は使えるな。と口元がほころんだ。跳ねっ返りの少女、好みのタイプだ。


 そのとき、火の塊が飛んできた。「ファイアーボール」だ。山賊は盾で防ぎ、新たな敵を見据える。

「近衛兵が何で?」

驚いて、馬を走らせた、逃げたのだ。


 メルカーディア王国第3近衛隊隊長スカーレット・アリンガムは、逃げていく山賊から視線を外し、倒れている少女を抱え起こした。

「大丈夫か」

声をかけても全く返事がない。仕方なく抱えて馬に乗せ、ゆっくりと街へ向かう。途中、商人の馬車に出会ったので、金貨10枚と銀貨数枚を渡し教会へ連れて行くように頼む。


 カーラは、目覚めた。


 目を開けると神様がいた。天使様や精霊様もいっぱい。「死んだんだ・・・」、ぼんやりとその姿を眺めていると、

「気がつきましたか」

とシスターの声。あっ、ここは教会か、神様たちは壁に描かれた絵なんだ。でも死んだはずでは・・・。起き上がろうとすると背中に激痛が走る。生きている、はっきり分かった。

「ここは?」

「タンガラーダにあるアムナート教会です。背中は治療を終えていますが、しばらくは痛みますので、ゆっくりと休んで下さい。ご家族の連絡先は?」

「サルダニア通りに姉がいます。お城側の雑貨屋の前の家です」


「あの、どうしてここに?」

「ルクソールさんという行商の方が連れてきてくれました。スカーレット様からここに連れていって治療を受けされるように頼まれたとかで」

「スカーレット様?」

「はい、近衛隊の。スカーレット・アリンガム様です」


「治療って、魔法治療ですか?」

「はい、重傷だったので高位の魔法治療を使いました」

「私は、お金が・・・」

「治療費はスカーレット様からいただいております。安心して休んで下さい」

「いくらですか? 返さなきゃ」

「金貨10枚です」

あまりの金額に絶句してしまった。また、サトシ様に迷惑をかけてしまう。と、壁画の神様を見ながら涙が止まらなかった。しばらく動けそうにもないし。


 山賊や連れられていた女たちのことは誰も知らなかった。


 スカーレットはスウェードルの店に来ていた。イバダンに武器の手入れをしてもらっている。スカーレットの武器は「炎の大剣」、もちろんイバダン作である。この武器を使い出してスカーレットは他の武器に興味をそそられなかった。自分にとって最高の武器だと確信している。


 スウェードルは血だらけのスカーレットに「クリーン」をかけた。そう、スウェードルも「生活魔法2」を取得していた。顧客サービスには最も必要な魔法だと思っている。馬の背にもかけさせられるとは思っていなかったが。


「イバダン、王都に来る気は無いか」

「私は、スウェードルに恩ある身。彼の元にいたい」

「じゃあ、スウェードル。王都マリリアに来い。店は用意する。お前の商才とイバダンの腕なら、王都でも十分やっていけるだろ」

「ありがとうございます。そろそろ周りの国が不穏になってきているようで武具の需要も増えそうだと思っておりました。良い機会かもしれません」

「そうしてくれ。これで剣の手入れがいつでも出来る」


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