第18話 遠征2
次の日の昼、例の食堂で定食を食べて、出発した。夕食は、マスターの奥様エリシュカさんの手作り弁当だ。次の朝はパンとアプルの実か、ポフリの実だ。セシリアの索敵があるので安全に進むことができる。野営予定地に着いた。
野営の準備をする。ポフリの実とアプルの実を取った。アプルの実を取るときは魔法を使い、それを見たマスターは、使い道がいろいろあるな、と言っていた。撹乱に使えると考えているのだろう。あとやることは枯れ枝を集めるくらいだ。
マスターが結界をはり、セシリアが結界についていろいろ聞いていた。セシリアはポイントが貯まっているので何をとるか迷っているそうだ。土の結界ではないが、緑の結界というのが取れるそうだ。美味しくお弁当を食べて、見張りの順番を決めて寝た。
次の日は、夜明け前にマスターに起こされた。もちろんキスではなく肩を叩かれて。セシリアはすでに起きていた。
「ゴブリンが動く前に決行する、いらない荷物はここに置いとくように、結界は残す」
「はい」
と返事して、武器をもってマスターに続く。顔を洗い損ねた、まあいいか、顔に「クリーン」をかけておく。サッパリしたけどスッキリはしなかった。
ゴブリンの巣に付く、
「オークとゴブリンロードは巣の中です。9匹います。ゴブリンは巣の周りで寝ているようです。巣の前に20匹は固まっています。巣の上方に8匹、見張りがバラバラに10匹くらいです」
「俺が『石つぶて』を巣の前に放つ、それを合図に坊主とセシリアで上方の8匹を殺れ。俺が20匹を殺る。オークやロードが出てきたらそっちを中心に攻撃する。いいな」
「「はい」」
巣の上部に移動する。
「石つぶて」が飛ぶ、というより、石の嵐だ。これでは20匹のゴブリンで生き残ったのは2、3匹だろう。凄い技だ。セシリアが飛び出した。僕も続く。ゴブリンが寝ている間にできるだけ殺したい。8匹全部殺せた。巣の方を向く。
ゴブリンロードが勢いよく飛び出した。その後ろからオークがゆっくり出てきた。マスターが2度目の「石つぶて」を放つ。僕が後ろからオークの心臓を凍らせる。ゴブリンロードは石つぶてを耐えているが、武器を落としたもの、片膝をつくものとダメージは大きそうだ。1匹めのオークが前のめりに倒れた。ゴブリンロードよりマスターがビックリしている。
2匹目のオークもあわてて出てきて倒れたオークを見ている。「フリーズ」を決めた。オークは重なるように倒れた。マスターが驚いて見ている隙をついてゴブリンロードが襲いかかる。セシリアが「ウォーターボール」を飛ばし援護する。マスターが正気に戻った。
大きい魔物が勢いよく飛び出してきた。レッドオークだ。身の丈約6mはある化け物だ。手には丸太といったほうが良いような棍棒を持っている。セシリアが「ウォーターボール」を飛ばす。こちらを向く。距離は20m、射程外だ。マスターが「アースウォール」で土の壁をレッドオークのこちら側に築く。レッドオークは、こちら側に集中したようだ。
土の壁を棍棒で一叩き、土壁はもろくも崩れた。そこにセシリアが再び「ウォーターボール」を顔に放つ。レッドオークはセシリアめがけて走り込み棍棒を振り下ろす。セシリアはひらりとかわす。そこに「フリーズ」を心臓めがけてかける。念のために3発放つ。肺に「ファイアー」も使う。レッドオークがうずくまる。そこに首をめがけてハルバードを振り下ろす、セシリアも脇腹を剣で突き刺す。決まった。「ピロン♪」レベルアップしたようだ。セシリアと同じ15になった。
ステータスを見てみる。
サトシ・ヒライ
人族 男 16才
レベル 15(経験値 18486)
職業 冒険者E
属性 無
HP 65/65
MP 10/25+7
力 22
敏捷性 23
持久力 22
知力 25
魔法 生活魔法1、生活魔法2
特殊能力 鑑定、翻訳1(大陸共通語のみ)、遠距離操作
ポイント 6P
所有奴隷 セシリア(エルフ)
取得可能特殊能力
特殊能力<レア>
翻訳2(1言語ごとに)/2P
以上
MPを2増やした。
こんなに早くレベルが上がるのは異常だとマスターに言われた。でも16に上がるのには経験値が32768にならないといけないのだから、これからは、どんどん上がりにくくなるはずだ。ドラゴン種を倒せば1発アップなんだけど、まだまだ無理だろうな。命は1つしかないのだから。
セシリアの索敵によると近くにゴブリンの姿はないそうだ。完全勝利だ。
「サトシ、お前が秘密にする理由が分かった。凄い魔法だ」
おっ、どうやら「坊主」を卒業できたみたいだ。
「秘密でお願いします」
「分かった。では、巣に入るぞ」
僕たちは巣に入った。巣は30m程の奥行きがあった。大きく左右に分かれていた。左に進んでいくと、呻き声が聞こえた。セシリアの索敵にかかっていないんだけど。
「様子を見てくる。お前らは待ってろ」
とマスターが、中に入っていく。悲鳴が聞こえ、やがて静かになる。僕たちが入ろうとすると、
「来るな、そこにいろ」
とマスターが怒鳴った。マスターは小剣を血で染めて出てきた。
「お前たちは見るな。ゴブリンに子供を産まされていた女たちだ。もう下半身はゴブリン化していた。正気も保てて無かった。残念ではあるが・・・」
それ以上は聞けなかった。この世界の残酷さが痛感させられた。
右の部屋に入っていった。大きな部屋だった。オークたちのねぐらだろう。その奥に、いろいろな物が積み上げられていた。
「こいつらは、光る物が好きなんだ」
金貨は、200枚ほどあった。それに、質は分からないが宝石も魔石もあった。がらくたも一杯あった。光ってれば何でも良かったんだろう。
「悪いな、金貨にして500枚分以上はあるだろう。これは俺が使わせてもらう」
セシリアが何か持ってきた。
「ご主人様、良い物がありました。弓です、かなり良い物のようです。それに魔術のかかった袋もありました」
鑑定してみると、「風の弓」と「闇の袋」だった。
「風の弓の価値はよく分からんが、闇の袋は最低でも金貨200枚はするものだぞ。これで遠慮無く金貨がもらえる。打合せ通りの配分で良いな」
「はい、マスターも個人の取り分はしっかり取って下さいよ」
「魔素も2500くらい入ったし、ギルドに納めても1割はボーナスでくれる。また、俺の裁量で金を有効に使えるのだから、何も文句はない」
「あと、指輪も何個かと火の杖があったのでこれもいただきます」
とセシリア。さすが、しっかりしている。
「あとめぼしいのは、ほとんど無いな。約束だ、それで良い」
大成功だ。時間はとっくに昼を過ぎていたので、前日の野営地に戻る。結界は破られていなかった。風の弓も指輪も、僕のハルバードもみんな闇の袋に入った。身軽になった。その夜は、そこで寝て、次の朝、村に戻って、奥様の手料理を堪能して、タンガラーダ行きの馬車に乗った。




