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異世界はバラ色に  作者: 里中 圭
第1章 メルカーディア王国編
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第15話 スウェードル

 ヴェシエ村から帰り、終了報告をした。時間が遅かったせいかギルドは混雑していた。ナウラさんは早番だったのかカウンターには姿が見えなかった。魔素が金貨8枚と銀貨90枚分くらい貯まったので、金貨1枚と銀貨90枚を現金化した、当面の生活には困らなくなった。普通の人の平均月収は金貨1枚分らしい。


 家に帰ると、足を引きずっているのを見たアルトに泣かれてしまった。思いっきり叱られるかと覚悟していたんだが、泣かれるほうが辛かった。金貨1枚と銀貨40枚をアルトに渡し生活費にしてもらう。


「どうして怪我なんかしたんですか、ブルーウルフって強かったんですか、何か強い魔獣でも出たんですか?」

とアルトが尋ねてくる、この展開はやはり叱られるんだ。

「ブルーウルフは1発で倒したんだけど、手下の狼にやられてしまった」

「油断したんですね」

「いや、集団で襲われるのと、動きが速いのは苦手なんだ。相手が雑魚でも」

「私がもう少し防がなければいけなかったんです。ご主人様は悪くありません」

とセシリアが割り込む。助かった、得意の言い訳と話をそらすスキルを発揮できる。

「セシリア、そういう問題ではないんだ。僕の戦い方とか2人の連携とかを今後どう改良していくかの問題なんだ」

「ご主人様の装備も良くしないといけません」

「そうだな、スウェードルさんに相談してみよう」

「あのときの商人ですね」

「この街に店があるらしいので行ってみようと思う」


 うまく話をそらしたと思ったら、

「しばらくは依頼は受けないで下さい。じっくりケガを治すことに専念して下さい」

と釘を刺されてしまった。カーラが話題を変えてくれた。

「でも、サトシ様って変わったよね。この2週間で筋肉が付いて逞しくなったし、顔も締まってきたし、アルト姉さん好みになったんじゃない」

「ご主人様はもともとステキです」とセシリア。

アルトは黙ったままだ。カーラがまた沈黙を破ってくれた。

「じゃあセシリアと毎日、剣の稽古ができるよね」

「誕生日はもうすぐだから、しっかり鍛えますよ、覚悟しといてね」


 部屋に分かれ、いつもの体の点検をしてベッドに入った。セシリアはケガした僕を気遣ってか違うベッドで寝た。セシリアの体を点検してその気になっていたのに辛い。結局そのまま寝てしまった。


 朝は、いつも通りキスで起こされた。引きずり込もうとすると逃げられた。ベッドから降りて足が治っていることをアピールしようと勢いよく立ち上がると、足の痛みに耐えられずベッドに座り込んでしまった。

「まだまだ治っていないようですね。完治するまでは3週くらいはかかるかもしれません」

まさか、それまでずっと違うベッドで寝るってことはないよね。


 昼までぐだぐだして、昼からはリハビリ目的で散歩をしたりアルトの手伝いをしたりして過ごす。セシリアとカーラが剣の稽古を始めると、それを見学して過ごした。カーラはなかなか筋が良いようだ。1年間魔法剣士の父親に鍛えられただけあってセシリアの強さは別格のようだった。この世界の標準を知らないので何とも言えないけど。


 痛みを感じなくなったのは、セシリアの予想通り3週後だった。ベッドでの運動?は、3日間しか我慢できなかったが、セシリアは許可してくれた。何でもアルトの胸を見る目が異常だったらしい。自覚はないんだが。


 黒帝龍の末日である60日にステータスを見ると16才になっていた。その夜はセシリアと大いに盛り上がった。


 3週後、白龍の月に入って僕も剣の稽古に加わった。どうも剣の素質は無いようだ。槍がわりの棒を使って稽古に励んだ。カーラにも剣以外の武器との戦い方を教えるのによかったらしい。カーラには何本かに1本はとれるようになったがセシリアには完敗の連続だった。予想はしていたが手加減してはくれなかった。


 そろそろ依頼を受けようかと思っていたころ、セシリアから武器を買うように勧められた。鉄の槍では威力不足だそうだ。スウェードルさんの店にセシリアと2人で行くことにした。スウェードルさんの店は間口はそれほどでもないが、奥行きの広い、工房も付いた立派な店だった。


 店に入り、スウェードルさんを呼んでもらう。

「こんにちは、あのとき名前を教えていただけなかったので来られないのかと思っていました」

セシリアがあきれた顔でこちらを見ている。

「あっ、それは失礼いたしました。サトシと言います。よろしくお願いいたします」

「ははは、いいですよ。それで今日は何をお求めで」

「私に合う槍が欲しいんですが、何か良いものがありますか、金貨7枚くらいまでなら払えます」

「ご主人様、そこまで言うと値切れなくなります」

とセシリアが小声でささやく。

「値切ろうにも相場も分からないし、スウェードルさんを信用してるから大丈夫だ」

「ありがとうございます。商人は信用が大切ですからね。あのときの戦い方をみると槍の扱いも巧く無かったようですが槍でいいのですか」

「剣はもっとだめですから」

「では、短槍をお持ちでしたから、柄の短い、穂先の小さいハルバードはいかがでしょう」

といって従業員に武器を持ってこさせる。いかにも危なそうなのが出てきた。柄は2mくらいの槍で、穂先の根本に小さいが鋭い斧が付いている。これなら振り回すだけでいけそうだ。


 持ってみると以外に軽い、気に入った。でも慎重に、セシリアの意見を聞いてみよう。

「セシリア、これどうかな?」

とハルバードを渡す。セシリアの入念なチェックが始まる。

「良いものです。でも金貨10枚くらいするんではないですか」

「いえ、うちで作った物ですから7枚でけっこうですよ、もちろん穂先のカバーもお付けします」

「作るって、この前の・・・イバダンさんだったかな、彼が作るんですか?」

「そうです、イバダンの手によるものです」

「これに決めます、魔素で払えますか」

といって魔素で金貨7枚分支払う。良いものが手に入った。


 次の日からも無理せず、槍や剣の稽古の日、依頼の日、休みの日というサイクルで、3日に1回、熊やオーク討伐中心のCランクの依頼を受けていった。一度、野犬に囲まれたがハルバードを振り回し無傷で撃退することができた。レベルは僕が14、セシリアが15になった。冒険者レベルはまだEとDのままだ。ポイントが10Pあるので、翻訳2が必要になるかもしれないので4P保留にして、残りを全てMPに振った、MPは31になった。


 そして赤龍の1日がきた。カーラの誕生日だ。朝早く、セシリアのキスで起きる前にドアを叩く音がする。カーラだ。

「早く起きて下さい、登録に、冒険者ギルドに・・・」

と騒いでいる。

「分かったから、静かにしろ」

と怒ると、セシリアがそっとキスしてきた。怒りは収まった。


「今日は登録して、スウェードルさんところに武器を買いに行こう」

「依頼は?」と心配そうに聞いてくるので、

「昼から出て終わるくらいのものなら受けてもいいよ。まずは朝食を食べてからだよ」

と笑顔で答えておく。Gランクのものなら危険も少ないし早く終わるはずだ。アルトも後ろで笑っている。


 朝食を終え、冒険者ギルドへ向かう。ナウラさんの猫耳が見られるかな、いたいた、ナウラさんとこで登録させようと思ったが、登録カウンターは別の所だった。


 あんなに張り切っていたのにカーラはガチガチに緊張していた。

「冒険者登録ですね。では水晶に手を置いて『ステータス』と言って下さい」

「ステータス」とカーラが言うと、

「登録完了しました。属性は『風』ですね。銀貨1枚になります」

僕は、銀貨1枚を渡し聞いてみる。

「属性『無』って何ですか?」

「属性が無いってことです。精霊の加護が無い人に出ます」

残念、やはり全属性とかいう甘いことはなかった。多少落ち込んだが、もう割り切っていることだ。


 登録が終わり、掲示板へ向かう。僕たちの依頼も決めないといけない。カーラは僕と同じ白ヨモギの採取を選んだようだ。僕たちは初めてBランクへ挑戦しようと思っている。

「あっ、これガビー村のギルドマスターさんだ」

とカーラ。依頼の1つにガビー村のものがあった。依頼主はバルナバーシュとなっている。あの暇そうなマスターってバルナバーシュって名前だったんだ。この依頼には貢献ポイントが付かないという但し書きがある。ナウラさんに聞いてみよう。紙を剥がしてナウラさんの所に行く。少し並んでしまった。

「ねえナウラさん、貢献ポイントが付かないってどういうこと?」

「あ、それですね。誰も受けてくれなくて困っていたんです。内容はレッドオークがボスのゴブリンの巣を潰す依頼なのですが、バルナバーシュさんと一緒にやっていただきたいのです。そうなるとAランクのパーティーになるので貢献ポイントは0になります。報酬はちゃんと金貨10枚支払われます、1週間くらいは期間を見て欲しいと連絡がありました、どうされますか?」

お世話になったし、受けることにしよう。

「じゃあ、お願いします。出発は明日で良いんですよね」

「私はこれを」とカーラも一緒に依頼を渡す。カーラは「あたし」ではなく「私」と言った、大人を意識しているな。

「助かります。ガビー村のマスターも喜ぶでしょう。明日の朝一番の馬車に乗って下さい」


 依頼を受けたあと、スウェードルさんの店に向かう。スウェードルさんが出てきた。

「こんにちは、今日はこの娘の武器と防具をお願いします」

「属性は何ですか?」

「風です」

とカーラは元気よく言う。

「風ならスピードを重視したほうが良いでしょう。武器は片手剣と盾、あるいは、双剣。どちらが良いですか。弓や投擲用のナイフも使えますよ」

「カーラは両手とも器用に使えるから双剣のほうが良いかもしれない。使いこなすには相当練習しないといけないけど、どうする?」

セシリアがアドバイスする。

「双剣がいい。私頑張る」とカーラは決めた。

「では、双剣で鋼性のものは金貨3枚になります」


「防具は何がお勧めですか」と聞くと

「早さを重視するなら、レンジャースーツがあります。軽装備ですが防御力も高いです」

「帽子も含めて金貨5枚です」

「では、それを2着。セシリアも選んで」

というとセシリアはビックリした顔をして、

「ご主人様の防具を先に選んで下さい。ご主人様は身体強化が使えないのですから」

「いいよ、セシリアが守ってくれるから。それよりセシリアの剣も買おうか」

「その剣は、安い割りに良いもののようです。加護付きのものを買われるのでしたら別ですが、高い値段払っても威力は少ししか上がらないと思いますよ」

とスウェードル。セシリアも納得していた。前に剣を買った店でさんざん選んだもんな。


 他に、薬草や討伐部位を入れるリュックやコップ、薬をおまけに付けてもらい、金貨13枚分を魔素で支払って店を出た。カーラはすぐに依頼を達成しに行きたがったが、セシリアがやめさせた。昼食を食べさせるためだ。この世界は狩猟民族が多かったためか古代から3食だそうだ。それに一度落ち着かせることも大切なのだ。


 アルトはカーラの気持ちが分かっていたのか、昼食はサンドイッチと熱々の野菜のスープを用意していた。それでもカーラは食べ終わると、すぐに準備を仕始めた。セシリアは、カーラに双剣での素振りを100回させて、出発の許可を出した。白ヨモギの採取は、初めての依頼の定番で一番簡単な1人1回しか受けられないものだそうだ。いわば冒険者ギルド入会者へのご祝儀依頼なのだ。


 2時間後、カーラは銀貨1枚もらって帰ってきた。途中でアーントという大蟻を2匹倒したそうでレベル2になっていた。「生活魔法1」と「加速」を身につけたそうだ。良い選択だとセシリアが誉めていた。そういえば、アルトも生活魔法1は冒険者でないにもかかわらず使えるので、聞いてみると、成人するとレベル1の魔物を親と一緒にレベルが1つ上がるまで狩るそうだ。カーラはレベルアップしたとき爽やかな突風を感じたそうだ。アルトはなぜか教えてくれなかった。


 夕食は、4人で、カーラの「誕生日」と「成人」と「初めての依頼達成」のお祝いをした。お酒も飲んだ、15才が2人と16才が1人と18才が1人なのに。でも、みんな成人なんだよね。


プロローグを少し変更しました。夢の中でセシリアが上目使いでお願いするので、サトシの容姿を変更しました。

その他、誤字も修正しました。

プロットを大幅に変更したのと、リアのほうが忙しくなったので、毎日更新が難しくなってしまいました、できるだけ頑張って亢進します。

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