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異世界はバラ色に  作者: 里中 圭
第1章 メルカーディア王国編
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第13話 休日の夜

 楽しい休日を過ごし、夕食は「光の森の泉亭」で食べた。料理は美味しかったが、屋台でいろいろ食べ過ぎて皆あまり食べられなかった。夕食後、部屋に戻り4人でいろいろ話をした。ちゃんと僕も入れてくれた。


 アルトたちの生い立ちも聞けた。アルトとカーラは、ケンプ村で生まれ育った。アルトは小さい頃から器用で親の手伝いをよくする子供だった。カーラは活発でガキ大将的な存在だった。学校は貴族だけしか行かないらしく、両親から、読み書きや計算など、一応のことは習ったようだ。


 この世界では大人になるのは15才らしい、アルトは15才になったとき、村に残り幸せな家庭を築くことに決めた。どうやら彼氏がいたらしい、まあ、どうせそうだよな、これくらい美人で胸が大きければ恋人の1人や2人は当然だよな。


「私は、この春の雨期に、ヨハンと結婚するはずだったんです。でも、あのバラ色祭の日にゴブリンに村が襲われて両親もヨハンも殺されました。そして、カーラと一緒に捕らえられ、ゴブリンたちから衣服は破られ、下着は脱がされ、べたべた触られ・・・」

涙いっぱいで話すアルトを僕はどうしてやることもできない。


「ねえ、こんな話しなきゃならない?」と聞くと、

「いえ、聞いて下さい。一緒に生活していくのですから知っていて欲しいんです。

 それから、ゴブリンに強引に歩かされました。巣に連れて行かれる、もう人間じゃなくなると思って死のうと思いましたが、カーラの存在が私を生かしてくれました。1時間以上歩かされ何も考えられなくなってしまったときに、サトシ様に助けていただきました。

 サトシ様が神様みたいに見えました。でも、その後の態度は、意味が分かりませんでした。隷属の首輪のことも知らず、私たちのことは、乱暴するわけでもなく、慰めることもなく、ちらちら見るだけで、よく分からない存在でした。でも、ぜんぜん恐くなくて良い人なのかなあと思いました」


 ちらちら見てたのはしっかりバレている。恥ずかしい。

「それからは、私は自分で出来ることをしっかりやって、サトシ様のご恩に報いようと決心しました。一生かかっても返せない恩だとは思いますけど」


 あのバンガローで抱きついてきたことについてはスルーか。まあ、この場では無理だよな。カーラが話し始めた。

「私は、小さい頃から活発で、村の子供たちを束ねるくらい強かった。15才になったら絶対に冒険者になると決めていた。でもゴブリンたちに子供たちが殺されていくのを見て、一歩も動けなかった。やっと正気に戻ったときにはゴブリンたちに縛られた後だった。

 私がもっと強かったら、何人かの命が助かったのに・・・。

 でも、サトシ様って面白い人だよね。攻撃魔法は使えないのに冒険者で十分やっていけそうだし、女には手を出さないのかと思ったら、昼までセシリアと」

「こらっ」とアルトがカーラの頭を叩く。セシリアは真っ赤になってうつむく。

「あーあ、早く冒険者になりたいな」に対して、仕返しとばかりセシリアは、

「うーんと鍛えてあげます。ゴブリンロードに勝つくらい」


 セシリアが続けて話し出した。

「ご主人様って不思議な人ですね。冒険者でもないのにバラ色祭の日にあんな森の中にいるなんて、強いのか弱いのかもよく分からないし、交渉ごとは下手なくせに口を出したがるし」

「ちょっと待って、今日は僕の悪口の言い合い?」

「申し訳ありません、ご主人様」とセシリアが黙る。いかん、盛り上げないと凍ってしまう。


「どうせ、こんなんだから、そろそろ敬語やら、サトシ様やら、ご主人様ってやめないか」

「「だめです」」とセシリアとアルト。

「この国では、そういうケジメだけは成人する前に叩き込まれます。他人が聞いたら常識の無い人と思われます、一人前に扱ってもらえなくなります。そういう風には見られたくありません。それが許されるのは子供だけです」

「でも、この4人しかいないときだったら・・・」

「だめです、神様が許しません」

これは僕が折れるしかないんだろうな、神様まで出てきちゃったし。

「じゃあ、我慢する」と言うと、

「我慢するとかいう問題ではありません。常識の問題なのです」

敬語や丁寧語を使うのなら、罵倒しても良いらしい、この世界の常識がよく分からん。


「バラ色祭って祭りがあるの?」

カーラが説明する。カーラは子供だから敬語でなくても良いらしい。

「この国の大きい祭りは4つあって、バラ色祭、新緑祭、黒日祭、豊饒祭っていうんです。新緑祭と豊饒祭は、春と秋の雨期明けにあって、バラ色祭は夜明けから2~3時間、空がものすごく綺麗なバラ色になる日で黒帝龍の30日、そうサトシ様と出会った日です。黒日祭は兔の3日で日没前の2~3時間太陽が消えて暗くなる日です」

大人を意識しているのか、丁寧語になってきているようだ。そうか、こっちに来た日の朝は、この世界はバラ色だったのか。


「バラ色祭の日も黒日祭の日も異変が起きる日とされています。だからお祭りをするんです」

なるほどね。僕が来たのも異変というわけだ。やっぱり帰れるチャンスがあるとしたら3年後の18才のバラ色祭の日だな、妙に納得する。


 その後も僕を入れてくれて、いろんな話をして、アルトとカーラは部屋に帰っていった。部屋を出るときのカーラの視線が妙に痛かった。


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