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異世界はバラ色に  作者: 里中 圭
第6章 三つの水晶編
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第22話 交渉

多くの誤字脱字等の指摘をありがとうございます。

時間が取れたら修正させていただきます。


「シェリル王女を国王に推薦する」

「承認します」

「承認する」

「異議ありません」

「では、ここにシェリル王女が戴冠することを認める」

ここはプエルモント教国、聖心の間。政治の代表としての宰相ディオジーニ、軍務の代表として大将軍モリエール、魔法師の代表としてのカルメリット、それに宗教の代表である教皇の代役サンアシス大司教が集まる最高会議である。


 ディオジーニが発言する。

「サンアシス殿、国王戴冠の前に教皇を決めたいのだが」

今回の事件で教皇や大司教も亡くなり、宗教界も大混乱している。サンアシス大司教がこの場に来ているが高齢でもあり教皇になることは固辞している。

「どの大司教がなっても力不足。それなら象徴的意味でもマルチェリーナ様を推したいと思う。故サルバティー14世を尊敬する者は多い。その子であるマルチェリーナ様なら皆が支えてくれるだろうし、その地位を脅かしたい者などいないだろうと思われます」

「しかし、教皇に世襲制はないし、宗教家ではなく冒険者だろう彼女は」

とモリエール。

「そうなのですが、属性も光であるし教皇には最適かと」

「みんなで支えられればだな。ディオジーニはどう思う」

「意義はありません。ただ、王女もマルチェリーナも受けてくれるかどうかが問題なので」

「そうだな、他の者なら一も二もなく受けるのだろうが『黒竜の牙』かやっかいかもな」

とカルメリット。

「その『黒竜の牙』のメンバーの妹が最後にファジルカに飛び込んだカーラなのです」

「あの『風のカーラ』と呼ばれている、今じゃ大人気となっている娘・・・」

「カーラを助けに行きたいと2人は思っていることでしょう。シェリル王女は国王になることは仕方のないことだと受け入れてもマルチェリーナは受けるかどうか」

モリエールがサンアシスに言う。

「では、マルチェリーナにはそのカーラを救出した後に教皇に推すという条件で、それまではサンアシス殿に教皇を勤めるということにしては」

「分かりました。短期間だけということならお受けしましょう。それでもマルチェリーナ様の性格を考えれば受けてはもらえないでしょうね」

「受けてもらえたら幸い。辞退されても一時的に混乱を避けられます」


 シェリルとリーナは聖心の間に呼ばれた。

「最高会議の結果、シェリル王女を国王に推挙することを決定いたしました」

シェリルは、やはりという顔をして、

「何か条件はあるのですか」

「2つだけ」

「それは?」

「子を生していただきたい」

「誰の子どもでも良いのですか。異国の方でも」

「それは構いません。人であれば。例え婚姻をされていなくても」

「結婚は認めないと、そういうことなのですね」

「そのとおりです」

「で、もう一つは?」

「国が安定するまで親征は避けていただきたい」

「ファジルカには行くなと」

「はい」

「それは覚悟しておりました。でも可能な限りの支援は出来るのですね」

「もちろんです。わが国の問題でもあります」

「分かりました。お引き受けいたします」

最高会議の面々はホッとした様子でシェリルを見た後マルチェリーナに注目する。マルチェリーナがビックリした顔で固まる。


 ディオジーニが言葉を発する。

「マルチェリーナ様、教皇になっていただきたい」

「無理です。私では務まりません」

「それは我々が補佐します」

「サンアシス様、でも・・・、ファジルカにカーラを助けに行かないと、シェリルがいけないんだったら私が・・・」

「では、我々も譲歩しましょう。ファジルカ遠征の後に就任していただくということで。それまではサンアシス大司教に教皇をお願いする。いいですね」

「また、そのときに考えさせてください。ファジルカで何が起こるか分かりませんから」

「いいでしょう。しっかりと考えてください。よろしいですかサンアシス猊下」

「そうですね。どちらにしても私はマルチェリーナ様がファジルカから帰られるまでの教皇ということで。私の仕事はシェリル陛下に王冠を授けることだけにしていただきたい」


 ◇ ◇ ◇


 ミノタウロスからの条件とは何だろう、炎獅子はラフィーを巫女にと言った。ここにいるのはセシリアとアルトとナナだ。このうち1人を差し出せなんて言われたら、無理だ断るしかない。交渉ごとはリーナがいないと難しい。


「僕たちに出来ることなら」

「女3人は置いていけ、そうしたら雷の水晶はお前にやる」

「どこかの山賊みたいな言い方ですね」

「戦えば俺が勝つのだから、これでも相当譲歩してやってるのだぞ」

「4対1でも」

「やってみるか、相手になるぞ」

ミノタウロスが斧を構える。

「言い合いは時間無駄。私らがお前のものになるなんてあり得ない。ウォーターカッター」

「炎獅子は紳士的だったのに。ファイアーラプチャー」

セシリアとアルトが魔法を放つ。2つの魔法は少しの時間差でミノタウロスを襲う。しかし、ウォーターカッターもファイアーラプチャーもミノタウロスの斧に吸い込まれていく。

「我に魔法は効かぬ。諦めろ」

そう言ってミノタウロスは斧を振り上げる。すかさずナナが補助魔法を展開する。これは斧に吸い込まれることなく効いた。


 斧がうなりを上げて襲いかかる。セシリアとアルトが素早く離れる。左胸に向かって

「フリーズ」

と唱える。ミノタウロスは左胸を押さえる。大したダメージは受けていないようだが動揺しているようだ。斧を見て僕を見て、そして少し距離を取り、斧で防御する形を取った。

続けて頭、肘、膝に立て続けにフリーズを、肺に2発のファイアーを放つ。ミノタウロスはそのたびに顔をしかめるものの膝をつくようなことは無い。


 加速の勢いを生かしセシリア、アルトが斬りかかる。ミノタウロスの動きは少し遅くなっているが余裕を持って斧で受ける。そのとき祭壇の後ろから黒い煙があふれ出した。

「待て」

ミノタウロスが言う。思わず僕たちの動きが止まる。

「結界が解けたようだ。もう水晶なんてどうでも良い。持って行け」

そう言うと祭壇から降り南に向かって走り出した。ナナが、

「追いますか」

と聞いたが雷の水晶は祭壇にあるので、

「追う必要は無いよ、戦っても勝てるかどうか分からないし」

「勝てるよ」

「セシリア、勝てるかもしれないけど。無傷では済まない」

「そうね、無事では済まないでしょうね。6人いたら何とかなったのに」

「目的は雷の水晶だからね」

そう言って水晶を台座から外し闇の袋に入れる。


「祠から魔素が吹き出しています」

ナナが祠に近づいていくと、魔素の吹き出しはだんだんと弱くなっていく。

「祠に入ってみよう」

そう言って祠に入る。台座の中央にある小さな闇の魔石から魔素が吹き出している。魔石はみるみる小さくなり消えてしまった。

壁にある文字を読むと、

「サンセベの森の結界がある限りアルヘンの結界は守られる」

とある。

「サンセベの結界が消えた。魔物達が外に出てくるんですね」

「メロ村が危ない、ペドリドさんに知らせなくては」


「緑鰐の牙」と合流し、急いでメロ村に向かう。


 ◇ ◇ ◇


 アルヘンの森を出たサトシ達はメロ村を目指す。

「やっぱり魔素が濃くなってるみたい。もうイグナシオ大陸と変わらないくらいになってるよ」

とセシリア。ナナも同意する。


 馬車を走らせると兵達が続々と逃げ帰っている。すれ違う馬車を一瞥するが関わる気はないようだ。サンセベの森の近くを通ると辺りは地獄さながらの様相だった。兵士やゴブリンの屍が散乱している。

ゴブリン達は馬車にも攻撃を仕掛けてくるがアルトのファイアーストーム一発で振り切ることが出来る。


遠くには、牙竜も見える

「やはり結界が破られたんだ。ミノタウロスの話は本当だったんだ」

「それで魔素が濃くなったのね」

「アルヘンの森からも魔物が出てくるね」

とコリーさんが言う。

「ミノタウロスはどこに行ったんでしょうか?」

「ミノタウロスが炎獅子みたいに竜人族やエルフと友好的なら良いんだけど」

「あの態度じゃあ期待できないかな。早くペドリドさんに報告しなきゃ」


 メロ村に着き、ペドリドさんに報告すると、ペドリドは国王に使者を出したが意外にも落ち着いている。

「村には結界が有るのでな。いや、結界が有るところに村を作ったと古文書には書いてある。この村が襲われることはないよ。それよりも森には結界は掛かっていない。急いで神の門に行かないと帰れなくなるぞ」

「本当に大丈夫なのですか」

「大丈夫だ。結界が破れるときに属性が戻ると古文書にある。強い冒険者がこれから育つだろうよ。昔に戻るだけだ」

古文書を見てみたかったが、馬車を返し神の門へと急いだ。


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