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異世界はバラ色に  作者: 里中 圭
第6章 三つの水晶編
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第21話 ガルム

 アルトが前に出る。ナナはその後ろ、セシリアは右に、そして僕が左だ。ガルムがアルトの攻撃を避けた瞬間が勝負だ。

「ファイアーラプチャー!」

アルトが叫ぶ。ガルムはファイアーラプチャーが発動する直前までピクリとも動かない。炎の剣が一直線にガルムに向かう、炎が通過した所にガルムの姿は無かった。逃げたところも見えなかった。


「左!」

セシリアが叫ぶ。左から黒いブレスが来る。避けようとしたが左足にまともに食らう。黒いブレスは消えた。

「黒いブレスも魔法みたいですね。リトルフェンリルの皮は通らなかったみたい」

「サトシ様もわざわざ足で試すことはないのに」

とナナ。わざと当たったんじゃないんだけど・・・。ガルムも驚いているようだ。さっと、距離を取りこちらを睨んでいる。そこに、心臓めがけてフリーズを試す、脳にも1発。なんの効果も無い。顔さえしかめない。ガルムの体の中はどうなっているのだろう。


 ガルムはブレスが効かないと見ると物理攻撃に切り替えたようだ。鋭い牙で迫ってくる。早いだけの物理攻撃だけなら、何とか避けることができる。必死で攻撃を避ける、とても反撃する余裕はない。そこにセシリアが蔓の捕縛を飛ばす。ガルムはさっと体を捻り蔓を避ける。ナナが石つぶてをアルトがファイアーストームをかける。ガルムの視線から僕が外れる。ガルムがセシリアのほうに飛ぼうと構える。

「震地」

と叫ぶ。もちろん無詠唱でも発動するのだがチームで戦っているのならみんなに分かった方が良いのだ。ガルムの動きが一瞬止まる。そこにナナから加速をかけてもらっているセシリアが突っ込み氷の刃を一閃する。ガルムはそれを避けようと身体を右に捻る。氷の刃が右後ろ足を切り裂く。動きが止まる。そこにアルトがファイアーラプチャーをかけると今度はヒット。ガルムの首が半分ほど切り裂かれ黒い血が噴き出す。ガルムは倒れた。

「強かったですね」

「リトルフェンリルの皮がなかったら無理だったよね、ご主人様」

「左足が無くなってたにゃん」

3人は落ち着きを取り戻したようだ。


 ガルムの解体をナナに任せて、アルトの魔法で燃えている森にセシリアと僕とでウォーターボールを使って消していく、けっこう大変な作業だ。アルトは済まなそうな顔をして見ている。

「ガルムの居たあたりで野営しますか」

「かなりMP使いましたからね、では夕食を作ります」

「ここから先が第3相か、何がいるんだろう」

「炎獅子みたいに話し合えれば良いんだけどね」

「ガルムの心臓の位置は確認されますか」

「もう戦うことはないと思うけど、一応確認しておく」

心臓は血液を全身に送る器官ではあるのだけど魔物の場合は魔素を全身に送る器官となる。弱点ではあるのだが複数ある魔物も多い。ガルムには5つの心臓があった。


 次の朝、食事を取り第3相に入る。第3相は木々もまばらになり魔物も出てこなかった。そしてその中央には祭壇があり、それを取り巻くようにオークがいた。レッドオークが14匹、ひときわ大きいオークキングが3匹いた。


 震地や石つぶてを使い足を止め、フリーズで倒していく。オークなら何の問題もない。レッドオークだろうがオークキングだろうが経験値も効率よく入るのでお得意様だ。祭壇の周りにいたオークを全て倒すと祭壇の扉が開いた。祭壇の中央に黄色い水晶がある。そしてその横にはミノタウロスが立っていた。


 ミノタウロスはつぶやいている。

「ほーっ、オークどもを倒せる奴らが残っていたとは思わなかった」

「話せるんですね」

「話せるぅ、それは俺のセリフだ。龍語が分かるとは」

「私の名はサトシ、私達は『黒竜の牙』という冒険者のパーティーです。雷の水晶をお借りしたいと思いここまで来ました」

「ファジルカで何か有ったのか」

「なぜそれを」

「ファジルカに行くときくらいしか使い道は無いのだろう、これは」

「はい、ファジルカから侵攻されて、攫われた者がいます。それを助けに行きたいんです」

「では、渡さないと言ったら」

「それでも持って帰ります」


「条件がある」

ミノタウロスはここで言葉を切った。


 ◇ ◇ ◇


 第3相に入ったおよそ1000人が移動を始めた。100人ずつの10部隊に編成を変え前方に見える祠に向かう。第1部隊がミミックツリーの林に差しかかったときにミミックツリーが一斉に攻撃を始める。応戦するも何人かが倒れる。後ろから弓隊が火矢を射て援護し第1隊を回収する。木々が魔物であることが分かると対処方法はいくらでもある。相手は動けない木の魔物だ。


 組織的に動き、通り道だけのミミックツリーを攻略しながら進む。攻撃してくるミミックツリーに火矢を射て燃やす。1本1本少しずつ倒していく。祠までは約500m、時間さえかければ大した被害は出ない。


 マグルティは助かると確信し魔方陣から魔石を外した。そしてそれを抱えるように祠の外に出た。

「助かった。もうすぐここまで届く。帰り道も十分出来ているようだ。この大きな魔石を持って帰れば使命は達せられるはずだ。もうすぐだな」


 そのときドンドンドンという太鼓を叩くような音が聞こえた。左後方からゴリラが現れた。ジャイアントコングだ。だんだんとゴリラが近づく、近づいてくると尋常の大きさでないことが分かる。ミミックツリーを避けるように細い直線で進んでいた部隊がパニックを起こす。応戦するために広がるとミミックツリーから攻撃を受ける。逃げ出す者、戦う者が入り交じり部隊はどんどんと魔物達の餌食となっていく。呆然としたマグルティは魔石を抱えたまま祠の結界の外に出た。その瞬間、リトルフェンリルに囲まれる。一番大きい一頭が近づき恐怖で動けなくなったマグルティの両腕を魔石ごと飲み込んだ。魔石を飲み込んだフェンリルの青白い体が藍色に染まっていく。他の2人もリトルフェンリルに襲われ絶命していた。


 突入隊は壊滅し、後方の数人のみがその知らせを持ってヌグルマの所まで戻ってきた。知らせを受けたマグルティは帰還することを決意する。

「ベースキャンプまで戻ろう」 


 ベースキャンプまで戻ると牙竜がいた。

「ここには結界で来られないはずなのに」

と振り返るとジャイアントコングが襲ってきた。マグルティはジャイアントコングに潰された。


 森の外で休んでいた負傷兵の所にゴブリンの群れが襲いかかる。部隊は壊滅し、バラバラになって竜人族の国アルヘンティーノに逃げていった。


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