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異世界はバラ色に  作者: 里中 圭
第6章 三つの水晶編
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第19話 聖なる森の情報

 その夜、通信機を使った。

「シェリル、話は進んだ?」

「あっ、サトシ。出発も遅れたし100人での移動だから着いたばかり。ディオジーニさんとも挨拶だけ」

「そうなんだ。もう条件とか手続きとかいろいろ聞いたのかと思った」

「まだよ。王になるとか、教皇になるとか」

「シェリル、私は教皇にはならないって」

とリーナが割り込んでくる。

「えっ、そんな話もあるの」

「違う違う。シェリルが勝手に言っているだけ。そちらはどうなの?」

「明日、シャイアス大陸に入る予定」

「じゃあ、もう通信できないんだ。相談できなくなるね」

何か言おうと思ったらセシリアに先を越された。

「大丈夫だよ。『黒竜の牙』は解散しないんだし。王だろうが教皇だろうが私達には何の関係もないわ」

「だから、教皇には・・・」

リーナが焦っている。シェリルのほうが落ち着いているようだ。

「そうだよね。こっちのことは任せて。雷の水晶を早く持って来て」

「通信機はロチャに渡しておくから何か有ったら伝えておいて欲しい」

「分かった。こまめに連絡入れておくね。じゃあお休み、チュッ!」


 次の日、神の門を開けるところをみんなに見せた。レオネスさんが指示を出す。

「サトシだけ左手を置いてみて」

神の門は開かない。

「じゃあ今度は両手で」

やはり神の門は開かない。

「うーん、魔力の波動が人によって違うことは分かっているのだが、右と左か・・・」

レオネスさんが黙り込む。


 神の門が開いて岩山の中に緑の森が現れたり消えたりするのを見てパースさん達も一気に緊張が高まったようだ。

「さあ、そろそろ行こうか」

「まずはメロ村だね」

そう言って神の門から森の中へ入っていった。


 森は前回来たときと変わらなかった。出てくる魔物もゴブリンや水猿、アナコンダ程度だ。10人のパーティーで連携を確認しながら進んでいく。「緑鰐の牙」は予想以上に強くこの森の魔物くらいなら全く問題は無かった。


 夕方にはメロ村に着いた。メロ村は相変わらず長閑で小綺麗な村だった。村長の家に行きペロリドさんに、挨拶もせずに帰ったことを誤り、また泊めてもらうことにした。

「何も気にしとりはせんよ。それよりもレヒナの病気を治してもらったのにあまり役に立てんで、そっちのほうが気になっておったくらいだよ」

「そんな、あれくらいのことで」

「あれくらい。高い薬を使ったり魔法治療をしてくれたんだろ」

「いえいえ、ちょうど持っていた薬が効いただけですよ」

「そのせつはありがとうございました。こちらに来られたらいつでもこの家を使ってくださいね」

とレヒナさんも笑っている。


 夕食を食べて話が一段落したところで、聖なる森の話を聞く。

「聖なる森に変化はありませんか」

「それが大有りでな。アルヘンティーノがサンセベの森に軍を送ったようだ」

「アルヘンティーノって竜人族の国ですよね」

「そうだ。万を超える大軍で入って行ったそうだ」

「じゃあ、サンセベの森は制圧されたんですか」

「いいえ、森の外の怪我人がどんどん増えているようです。恐いですね」

とレヒナさん。


 さらにペドリドさんが続けて、

「アルヘンの森には入っていないようなんですよ。一時期入ったらしいのですが、すぐに出てきてサンセベのほうに向かったようです」

「アルヘンの森の魔物の情報はありますか」

「マンティス、レッドボア、オークがいるそうです。ゴブリンも当然います」

「マンティスってカマキリの魔物よね。虫系は苦手なのに」

ナナとアルトが不安な顔をする。

「奥に行けば違うのもいるでしょうけど、竜人族に聞けば分かるかもしれません」

「そうですか、ありがとうございます」

「で、今回はどちらに行かれるのですか」

「アルヘンの森に行こうと思います。馬車をお借りできますか」

「構いませんよ。ただ、アルヘンの森までだとすると御者をする者がいないので・・・」

「それは俺たちがするからいいよ」

とハリスさん。

「では明日の朝、出発したいと思います」

そう言って、用意して貰ったそれぞれの部屋に入りやることをきっちりやって眠った。

やることって、武器の手入れとか・・・。


 ◇ ◇ ◇


 ヌグルマは、負傷兵を退避させる部隊と派手に騒ぐ部隊に分けた。ヌグルマ達が派手に騒ぎ出し、牙竜を引きつけることに成功する。他の魔物も一斉にそちらに向かう。ある地点まで来ると魔物はそこから出てこない。ホッとした兵士がヌグルマに、

「結界が有るのですね」

「そうみたいだな。だが油断するな、ここから先もゴブリンや水猿はいるからな。だが強い魔物はいない、この辺りにベースキャンプを置いて狼煙を待とう。援軍を送る際は結界を利用しながら今と同じ方法で送り込めば何とかなる」


 マグルティ達精鋭100人は無傷で第3相に入る。その他にもどさくさに紛れて突入した者が200人を超えた。祠の見える位置まで来た者は300人を超える数となった。300人は祠に向けて歩き始めた。

「ここから先は魔物が見あたらないようですね。我々はアルヘンの森の最深部に到達したのですか。祠が見えます」

「うむ、あの祠に何か有るかもしれん。行くぞ」

索敵の魔道具はこの大陸には無く、誰も木々が魔物、ミミックツリーであることに気付かない。歩き出すとすぐにミミックツリーが一斉に襲いかかる。


「全員一塊になってあの祠を目指す。走れ!」

ミミックツリーの枝が襲いかかり塊の外側の者からだんだんと削られていく。火の魔道具からファイアーボールが飛ぶ。ファイアーボールが当たると一瞬だがミミックツリーの動きが止まる。通り過ぎるくらいならこれで何とかなりそうだった。だが、集団の後ろのほうは燃えている枝で攻撃を受け置き去りにされていく。

 

祠まで40名がたどり着く。後ろには悲惨な光景があった。

「40人か、この人数で帰れるかな?」

「大丈夫です。ここにいるのは精鋭ばかりですから。この木々が魔物であることも分かりましたから」

ほっと一息つき祠のほうを向いたとたん。祠を作っていたミメシスが擬態を解き襲いかかる。兵達は反撃するのが遅れあっという間に10名が倒れた。マグルティが叫ぶ。

「奥に祠が見える。あそこまで全力で走れ」

ミミックツリーやミメシスに襲われどんどんと兵が倒れていく。祠にたどり着いたのはマグルティと2人の兵士だけだった。もしもこの祠がミメシスだったら間違いなく全滅したことだろう。2万に及ぶ大部隊でここまで来られたのは僅かに3人だけだった。しかも、帰ることを考えるともう絶望しかなかった。


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