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異世界はバラ色に  作者: 里中 圭
第6章 三つの水晶編
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第17話 北の遺跡への道

 ヴァンデル教の教皇ルナミュケットはまだ北の遺跡を見つけられずにいた。

「三角が見つかったのは2つだけなのだな」

「その通りです。1つ目は岩、もう一つは池です。岩の所からは上り道が、池の畔からは下り坂が続いています。どちらもかなりの分岐が確認されています」

「シダク、どっちが本命だと思う?」

「ルナミュケット様」

「ルナだ!」

「ルナ様、どちらも分岐が多く怪しい雰囲気です。この辺りは霧が深く魔物もいろいろといるらしく地図も満足に作られていません」

「じゃあ、二手に分けるしかないか。キンディア、意見は」

「はい、岩の方が本命かと思います」

「なぜだ」

「年月とともに形は変わるもの。池は変わりやすく、岩は変わりにくい。形が変わるかもしれない池を指標にはしないのではないでしょうか」

「そうだな、よく気付いた。動けるものは全部で何人いる」

「末端の山賊まで入れて150人ほどです」

「じゃあ、念のため10人を池のほとりで待機させ、残りで岩に向かうぞ」


 ルナ達は三角岩の所まで来て10名を残し坂を上っていった。上ると真っ直ぐな道とともに左右に分岐がいくつもある。

「3人組を作れ。左右に下る道を1つずつ調べてこい」

シダクはそう指示して、残りで野営の準備に入った。斥候から報告が入ってくる。すぐに行き止まりになる道もあったが、分岐が続く道も少なからずあった。ただでさえ上り下りが激しい山道であり探索は進まなかった。幸い、魔物は出てきても灰色熊やオオトカゲ、それに灰色狼くらいであった。それでも、魔物にやられたのか道に迷ったのか3組の斥候が夜になっても帰ってこなかった。


 それから1週間が経った。道を真っ直ぐに行ったところにも分岐があるということが分かったこと、その分岐までの小さい下り道では進むほどに広くなる3つの有力な道が見つかったということくらいが収穫であった。

「ルナ様、そろそろ食糧の補給を考えないといけなくなりました」

「そうか、トゥーバ、今のままであとどれくらい持つ」

「およそ1週間。ノスヒルに食料調達に行くとしても荷駄を引く関係で5日はかかるかと」

「じゃあ、潮時だな。一度帰るぞ。人海戦術をやるにしてももっと数が欲しい、王に軍を出してもらおう」

「ではノスヒルにむけて」

「いや、龍の祠に行ってもう一度何か無いか調べてウシュアイアに出よう」

「ははっ」

ルナ達は池の畔に野営していた山賊と合流し龍の祠に向かった。


 ◇ ◇ ◇


 今回はすぐに山には入るのではなく街道を行く。本来ならヴァンデル教の信者以外は入れない地域であるが、国王の通行許可証があるために何の問題もなくウシュアイアから北へ行くことができた。穏やかな街道が続く東には麦畑が広がり、西には森が続く森の向こうはトレーブ山脈だ。体高は3m以上ある見た目は大きな馬のスピードは桁違いに速く、ヒールをかけながらだと2頭立てでも力強く進んでいく。


 途中は何事もなくヴァンデル平野の北端のノスヒルに着いた。この地方には宿はないため旅人は教会に泊まるらしい。

「ヴァンデル教徒じゃないから宿屋は無理だね」

と少し山に入ったところで野宿することにした。ヴァンデル教徒であるロチャとオルモスが交渉し、馬車はノスヒルの村で預かってもらった。


 「このあたりからだと山を上れば三角岩に出られると思います」

とナナ。ナナはこのあたりには何度か来ているらしい。

「じゃあ山に向かおう」

セシリアが

「レイアさんが、山賊の動きが変だと言ってらっしゃったけど。気配も全く無いね」

「どこかでアジトでも作っているのかな。教皇様も行方が分からないらしいし」

とパースさん。敵がいないなら行程も進むだろう。そう思いながら僕たちは山に入って行った。


 山には入ると灰色狼や灰色熊、それに大トカゲなんかも出てきた。足止めされるほどの魔物は出てこない。進んでいくうちに、

「山ハイエナが付いてきています」

とナナが言う。レオネスさん達の前だと「にゃ」と言わないようだ。

「この前のやつかな。あいつらだったら大丈夫だろう」

「この前のやつとは限りませんが」

「魔物を倒してもそのまま放置なんで、山ハイエナはそれが目当てで付いてきてるわけだし、僕らを襲ったりはしないよ」

と、何とものんびりした山登りである。


 三角岩がだんだん近くなってきた。コリーさんが、

「三角岩の近くに誰かいます」

とこちらを向く。

「どうする、サトシ」

とセシリア。

「小人数なら襲ってきても相手にはならないだろう。できれば見つかりたくないけどね」

「ちょうど三角岩の上り口の所です。通り道だから素通りは無理ですね」

とコリーさん。

「見たところ囲いを作っているようです。山賊の住処というより小さな砦といった感じです。10人くらいいるようですね」

「山賊10人なら問題ないだろう。パースさん達でレオネスさんとセオスさんの警護をお願いします」


 砦に近づくと思いのほかしっかり作ってあった。

「10人程度で作れる物じゃないわね。回りも警戒しておいて」

とセシリア。こちらの姿が見えるように近づいていく。50mほどに近づくと。砦の門が開き、中から2人が出てきた。灰色熊の毛皮を厳つい男と黒色狼の毛皮を着た痩せた男だ。

「お前らは誰だ。俺たちは教皇様の手のものだ。名を名乗れ」

と厳つい方が大声で叫んだ。僕たちは歩みと止めずに答えた。教皇の軍か、本物かどうか、どっちでも良いけど。セシリアが答える。

「『黒龍の牙』よ。この先に用があるの、できれば邪魔して欲しくないんだけど良いかな」

山賊達の表情が変わる。

「『黒龍の牙』だと本物なのか?」

「試して見ても良いわよ」

とセシリアが剣に手をかけると、男達は、

「いや、それには及ばない。通ってくれ」

と砦に戻って行った。そしてしっかりと門が閉ざされた。

「行きましょ」

とセシリアが先導して登っていく。


 坂道を上り終えたところで振り返ってみると。砦から煙が上がっていた。

「狼煙ですね」

「近くに誰かいるんですかね」

とパースさん達が話している。セシリアが、

「2人ほど付いてきているようです。私とナナで何とかします」

と登り坂の頂上付近で2人が残る。僕たちは先へと進む。


 2人は、後をつけてくる山賊達に、

「後をつけて何するつもり」

と大声で聞いている。それを聞いた山賊はすごすごとそしてゆっくりと下って行く。

「あの様子じゃ、すぐに登ってくるね。結界を張りながら行きましょ」

土の結界と緑の結界を交互に張っていく。


 2人に話を聞くと、道が分かっているのだから強引に進めば大した障害にはならないのだが、結界を破るのは結界を張った者よりレベルが低いと精神的負担は相当なものになるという。それもいくつも掛けているのだから山賊くらいじゃとても無理だそうだ。時間が経てばだんだんと消えるのだが半日くらいは持つとのこと。2人は僕たちに追いつくとそう説明した。

「じゃあ、道がばれることはないね」

そう言うと、2人はにっこりと笑った。


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