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異世界はバラ色に  作者: 里中 圭
第6章 三つの水晶編
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第14話 依頼

 僕はシェリルと向き合い、じっと目を見る。シェリルは一旦下を向き、思いつめた表情で僕の目を見た。そして、

「私・・・、クラチエに、教国に帰らないと」

そう言うと目には涙を溜め唇が震え次の言葉がでてこない。僕はシェリルをしっかりと抱きしめ、

「マリリアで一泊してすぐにクラチエに向かおう」

「私が王にならないと・・・」

シェリルはギュッと力を込めて抱きつき言葉を続けた。

「内戦になる。私が王位についても内戦が始まるかもしれないけど。それは最小限におさえられる。叔父同士の争いになれば国が割れる」

それは、僕に言っているのかシェリルが自分自身に言っているのか分からないくらいの小さな声だった。


「ここでは情報が少なすぎる。マリリアとクラチエでしっかり情報を集めて決めよう」

「・・・」

「やらないといけない事はたくさんあると思う。僕たちにしか出来ないこともあるだろう。シェリルにしか出来ないことも。でも1人で抱え込まないで欲しい。頼って欲しい。みんなもそう思っているはずだ」

どこまで聞こえていたのか分からない。シェリルは泣き崩れてしまった。


「出発しますよ」

とアルトが起こしてくれた。知らない間に眠っていたらしい。シェリルはまだ僕の腕の中で眠っている。

「ありがとう」

と言って、近づいてきたアルトにキスして、シェリルを起こした。マリリアに向かう馬車の中ではみんな無言だった。


 マリリアに近づくにつれ、人の動きが騒然としていく。事件は教国だけの問題ではなく大陸中に広がっていたのだ。小国も含めて大陸中の貴族が集まっていたのだから影響は広範囲にでている。数十の貴族の後継問題や派遣されていた護衛の被害に対する補償や軍の再編など問題は山積みなのである。


「サトシ様、このまま家に戻ります」

御者台からロチャの声が聞こえた。

「王宮に行かなくていいの?」

「マリリアは混乱しています。今、『黒龍の牙』が入るともみくちゃになると予想されますで。アラスティア様が家にいらっしゃっているはずです」

「わかった。任せる」


 マリリアには西から近づく。家の周りは近衛隊が護るように囲んでいた。セシリアが、

「アラスティア様の警護があんなに厳重なんて、治安がよほど悪くなっているんでしょうね」

と言う。

「アラスティア様に警護は必要ないでしょ。ナウラ達が拉致されないように護っているんじゃない。脅されて『黒龍の牙』が利用されないように」

とリーナ。ちょっと嫌な予感がした。


 馬車は止まることなく門を入り馬止めまで進む。馬車を降りると、侍女長のエミレーツが迎えてくれた。

「お帰りなさいませ。お疲れのところ申し訳ありませんが、皆様がお待ちかねなのでお急ぎください。サトシ様、皆さんにクリーンをお願いします」

ちょっと汗くさかったのかなと思い、みんなにクリーンをかける。


広間に入ると『紅バラの剣』が並んでいた。そしてその中央には国王が座っていた。

「警護がすごかったのは・・・」

とセシリアが言おうとすると、エミレーツが

「静かに」

と小声で注意する。


 アラスティア様が、

「急いでもらって申し訳ない。陛下も無理に時間を作られて来られている。君達もいろいろ事情があるだろうが、まずは陛下の話を聞いてくれ」

僕たちが陛下の方を向くと、シンプソン国王が話し出した。

「事の詳しい経過はアラスティアからじっくりと聞いて欲しい。これは無理な願いではあるのだが、妻を王妃を救い出して欲しい」

と声を絞り出すように言い、さらに続けた。

「私は国王であるから国の事を第一に考えなくてはいけない。だから軍は動かせん。そなた達『黒龍の牙』が頼りなのだ」

アラスティア様が続けた。

「王妃救出なのだから軍を動かしても問題は無いのだが、混乱している教国に出兵するのが問題なのだ。君達で救出して欲しい」


「『黒龍の牙』全員で受けることは無理だと思います」

僕以外のみんなが驚いている。僕は考えていたことを一気に話した。

「いえ、受けないと言っているのではありません。シェリルは教国の王女ですし、リーナとともにすぐにでも教国に戻って欲しいと思っています」

「私も」

とリーナ。

「ナウラも一緒に行ってもらおうと思っています。その事を踏まえた上でファジルカ大陸に向かうことを了承していただきたいのです。ファジルカ大陸に行くためには、まずシャイアス大陸に行く必要が有ります。シャイアス大陸で神の門の鍵を手に入れなくてはなりません。手に入れることが出来るとしても時間もかかるでしょう。それでもよろしければ全力を尽くしたいと思います」

「方法は任せる。サディオラが、王妃がその時までに命を落としていてもそれは運命だ。第3近衛隊の何人かも一緒に拉致されているらしいし、スカーレットのところのカーラもファジルカ大陸に飛び込んだという。攫っていった魔物たちも力尽きかけていたらしいし、生きている可能性は残っているはずだ」

「分かりました。では、こちらからもお願いですが、シェリル達をクラチエに無事に送っていただくための護衛をお願いします。混乱はこの国よりもひどいと思いますので」

「分かった。アラスティア、人選を任せる」

遅くなって申し訳ありません。仕事が・・・。

不定期更新がしばらく続きますが、必ず完結させます。

無謀にも第一回オーバーラップ文庫WEB小説大賞に応募してしまいました。応援よろしくお願いいたします。

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