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異世界はバラ色に  作者: 里中 圭
第6章 三つの水晶編
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第12話 異変の情報

 話を終わり通信を切ろうとするとエミレーツさんが言った。

「サトシ様、私に敬語を使うのをいい加減にやめていただけませんか」

「あ、いや、その、エミレーツさんの方が年上だし」

「そう言う問題ではありません。今日は時間がありませんのでこれで通信を切りますが、シェリル様やマルチェリーナ様と十分話合って下さい」

そう言ってエミレーツさんは通信を切った。聞いていたみんなはうなずいている。


 シェリルが、

「身分というものが有るのです。上の者は命令語だろうが、敬語だろうが、砕けた言い方でも何にもとやかく言われることはありません。だけど、下の者は上の者から敬語を使われると違和感が有るはずです」

と言う。リーナも続ける。

「そう、シェリルが言うとおり、それにそれを他人に聞かれると後ろ指をさされることになるんですよ」

そういうことは分かっているのだが、急に貴族になったこともあるし、日本人には難しいことだよね。

「努力するよ」

「そうね、私たちも同じ立場ですけどね」

とアルトが言う。ナナは、

「私もですか・・・」

と困った顔をしている。


「さあ、オアシスに急ごう」

とセシリアが言った。

「そうだ、急がなくちゃ」

とシェリルが慌てて用意する。僕たちは通信機を闇の袋に入れ出発した。


 途中火トカゲやサンドワーム、スコーピオンの襲撃を受けたが小物なら何ら障害にはならなかった。そして夜になった。

「このままオアシスまで行こう」

と言うとみんな賛成してくれた。ナナが土の加護と加速をかけてくれるので思ったよりも早くマディアのオアシスに着くことが出来た。


 オアシスの入り口でギルドカードを見せ中に入る。マディアのオアシスはメルカーディアの野営地として整備されていた。レッドウルフに支配されていた頃と違い、建物も石と天幕を組み合わせた簡素なものではあるが整然と町並みが作られていた。ただ店舗は無く、物資や食料等の配給所があるだけだった。


 案内されたのは中央の建物、僕たちが地下でレイスと戦った建物だ。そこが野営地の中心になっていた。

「黒龍の牙の皆さん、お待ちしておりました。私はメルカーディア国軍のオルウェリと申します。砂漠駐留隊の隊長をしております」

「サトシです。敬語はやめて下さい」

「そういうわけにはまいりません。すぐに食事を用意いたしますのでしばらく部屋でおくつろぎ下さい。話は長くなると思いますので」

「分かりました。そうします」

と言って、僕たちは客間に案内された。


 客間と言ってもそこは野営地、ベッドが6つあるだけの簡素な部屋だった。清潔で広さが十分あったのはありがたかった。闇の袋から通信機を出しナウラを呼び出した。

「ナウラ、ただいま」

「サトシ様、『おかえりなさい』はマリリアに着かれてから言いますね。話は聞かれましたか」

「今、オアシスに着いたところ。話は長くなるらしいので食事の後と言うことになった」

「では、私にも聞かせて下さい。通信機は付けたままで。私の情報とも照らし合わせたいので。古い情報も有るかもしれませんし」

「そうだね。そうして貰うとありがたい。何が本当なのか分からないからね。まあ、僕たちを騙す必要もないだろうけど」

「お姉ちゃん、戻ってきたよ。色々あったようね。兎人族にあったよ」

その後はガールズトークが続いた。


 クリーンでサッパリして着替えて、食事はこのまま客間で取らせて貰った。食後、話を聞くためにオルウェリさんの所に行く。部屋に入ると机の上にイグナシオ大陸の地図が広げられていた。

「オルウェリさん、マリリアのナウラにも聞かせたいので通信機を持って来ました。使っても良いですか」

「はい、アラスティア様からも通信機のことは聞いております。どうぞ使って下さい」

と言って、地図の上にいくつかの駒を置いていく。人型の駒、魔物の駒などいろいろ。そうしてオルウェリさんは話し始めた。


 アドリアナ王女とガルシアス王が顔合わせの儀を行うためにバフーサムに入ったこと、顔合わせの儀が始まるときに魔物の襲来が起こったこと、多くの海辺の魔物が襲来してその対策に追われているところに羽の生えた魔物が襲来し網を投げかけられ、男達は殺され女達が連れ去られるという悲劇が起こったことを細かくじっくりと話してくれた。


「アドリアナが攫われたの?」

とシェリルが聞く、本当はもっと他に聞きたいことがあるだろうに。オルウェリさんは落ち着いて話を続ける。

「アドリアナ王女も魔物達に攫われました。サディオラ王妃様もルグアイの王妃ティレニア様も貴族の奥様方も侍女の方々も攫われました」

「でもユージン様やスカーレット様がいらっしゃったのでしょう」

とリーナ。

「ユージン様やスカーレット様は青大蟹を含む魔物達と戦っておいででした。ただ、近衛隊の方は何人か残られていたので応戦はされていたようですが魔物の数が多かったのと網が邪魔をして苦戦を強いられたようです」

「で、アドリアナは」

「王女様はスカーレット様の従者の方が神の門の寸前で救出されました。ティレニア様も。ただ、サディオラ王妃は捕らわれたまま神の門の中に連れ去られました。王妃を含めて14人の女性がファジルカ大陸に連れ去られました。教国の近衛隊が神の門を守るなかスカーレット様の従者のカーラ様がファジルカに飛び込まれたということです」

「カーラが」

とアルトがつぶやく。

「カーラ様が飛び込まれたあと、神の門はピッタリと閉じたそうです」

「王妃の他の女性の名前は分かっていないの。貴族のお嬢様とか侍女とか軍人とか」

「それは分かっておりません。まだ、混乱は続いております」


 ゴクリ、と音がするくらいシェリルが唾を飲み込むのが分かった。そうしてオルウェリさんの方をじっと見て、

「それで、お兄様は」


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