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異世界はバラ色に  作者: 里中 圭
第6章 三つの水晶編
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第10話 再び兎人族の村へ

 ギルドマスターは困惑した表情になった。

「冒険者になるという生贄が現れるとは思わなかった。まさか死にたいと思っておるわけではないのだろうな」

「はい、火トカゲなら倒すことができると思います」

「そうか、ではまず冒険者登録をしてもらおう」

そう言って水晶を持って来た。ラフィーは水晶に手を当てて、

「ステータス」

としっかりした声で唱えた。水晶に文字が浮かび上がる。


 ラフィー

 兎人族 女 16才

 レベル  11(経験値 1056)

 職業   炎獅子の巫女

 属性   炎


と出た。ほかにもいろいろ出ているようだがここからは見えなかった。ラフィーの左手が炎を纏ったようになったのが11回だったからレベルは11だろうと予測していたがやはり間違いなかった。


 ギルドマスターはビックリして言葉も出ないようだった。少しして、

「え、え、えん、・・・、炎獅子の巫女・・・」

ラフィーは落ち着いている。

「そろそろ試験を始めていただきたいのですが」

「いや、その必要は無いだろう。ルシュカを呼べ」


 ギルド内は騒然としていた。それくらい炎獅子の巫女というのは衝撃的だったのだろう。入り口から1人の女性が入ってきた。そしてラフィーに向かって跪く。

「炎獅子の巫女様、ルシュカと申します」

「ラフィーと申します。お立ち下さい、跪かれるような理由はありません」

「いえ、私たち一族は炎獅子の巫女様に使えるために生きております。どうかお気を使われないように」

「そうはいけません。そのままではお話も出来ません」

ラフィーはそう言ってルシュカを立たせた。


 ルシュカは1枚の羊皮紙を取り出した。

「ラフィー様、申し訳ありませんが1つだけ試させて下さい。ここに書いてある問いに答えて下さい」

そう言って羊皮紙をラフィーに向ける。ラフィーはそれを読んだ。もちろん僕にも読める。それは龍語だった。ラフィーは答えた。

「ジャクロック様」

「おお、確かに巫女様です」

とルシュカは再び跪く。ギルドマスターは、

「ギルドの水晶が間違うはずはない。何を疑う必要があるのだ」

と少し怒り気味に言う。ルシュカは、

「すみません。家訓により、この問いに答えることが出来る人に私が仕える条件でしたので」

「それでジャクロックとは何者だ」

「それは、答えにそうあるだけで問いの文字は巫女様しか分かりません。答えは我が家の秘中の秘です」

とルシュカは恐縮したように答えた。ラフィーが説明する。

「龍語で書いてあるのです。『炎獅子様の名前は何か』と」

「答えが分かってしまっても良いのか」

「また新たな問いを巫女様に書いていただきます。ラフィー様、私たちとパーティーを組んでいただきたいのですが、いかがでしょう」

そう言われてラフィーは僕たちの方をみる。ぼくは頷き返す。

「私は今レベル11です。最低でも15まではレベルを上げるようにジャクロック様から指示を受けております。こちらこそよろしくお願いいたします」


 ラフィーは僕たちの方を見て、

「サトシ様、皆様、今までありがとうございました。これからルシュカさん達と一緒にレベルを上げたいと思います。サトシ様達が再びこの地にいらっしゃるときにはジャクロック様と一緒にお会いできるようになっていたいと考えております」

リーナが、

「あまり無理はしないでね。ゆっくりでも良いから着実にレベルを上げてね。私たちも用事が済んだらすぐにでも来るからね」

「じゃあ、僕たちはそろそろ行くね。元気で」

「ほんとうにありがとうございました」

とラフィーは涙ぐんでいた。


 そう言って冒険者ギルドを出て馬車を借り西へと急いだ。この世界の馬は地球の馬と違い高速な上に持久力も桁違いだ、それにセシリアがヒールも使えるし。それでも西の山岳地帯までは馬車で4日かかるのだ。途中は何事もなく進んでいった。馬車の中でセシリアとリーナが話している、

「ラフィー可愛かったね。サトシがまた仲間に入れるんじゃないかってハラハラしたね」

「そう、絶対そう思った。あんなに可愛かったら私たちは絶対に捨てられたよね」

「そうそう、ねえ、そう思うでしょ、サ・ト・シ」

そうやって、僕に同意を求める。これで何度目だろう・・・。何にも答えられるわけがない。


 そうして4日後、僕たちは西の山岳地帯に着いた。馬車を返し兎人族の村に急いだ。真夏ような暑さの中、赤い色をした岩山を上っていくと何となく見覚えのある地形に出た。そこから少し上がり大きな黒い岩を右に曲がると村の入り口があるはずだ。


 目印の岩を右に曲がり、村の細い入り口に入った。そこを抜けると質素ではあるが清潔そうな家々が並んでいた。だが、様子が少し変だ。人の気配が無い。広場にも、水場にも、そして家々にも。

「誰もいないみたいね」

「そうだね」

「魔物に襲われたのかしら」

とシェリルが心配そうな顔をする。

「いや、計画的にどこかへ行ったんだと思う。結界も感じなかったし、血の後もないし」

いくつかの家に入ってみると家財道具はなくきれいに片づいていた。


 セシリアが、

「誰か来ます」

と小声で言った。索敵では魔物や敵ではないらしい。


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