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異世界はバラ色に  作者: 里中 圭
第6章 三つの水晶編
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第9話 生贄の未来

 メルカーディアでは、アラスティアが教国からの知らせを受け、バーナード、クラウディアと対策を練っていた。

「とりあえず、シェリル王女には知らせないとな」

「そうだな。黒龍の牙は今はサマルカン大陸か。クラウディオ、連絡はつくのか」

「通信装置は持って行ってるのだが、大陸が違うと通信できないようだ」

「じゃあ、神の門をくぐって通信してみるか、光と火と土が揃えばいいんだろ」

「そうなんだが、通信装置はかさばるのでおそらく闇の袋に入れているだろうな」

「待つしかないのか、アラスティア」

「まあ、我々でできることをやろう」


 ◇ ◇ ◇


 洞窟を出るとゴブリンがいた。2匹だけのはぐれゴブリンだ。ゴブリンは槍を構えている。

「ラフィー、倒してみる?」

と聞くと、

「はい」

と言って剣と盾を構えた。そしてゴブリンに向かって剣を鋭く振った。


 剣の先から炎が飛び出し右のゴブリンに命中した。ゴブリンが倒れると同時にもう1匹のゴブリンがラフィーに向かって駆け出してきた。十分な距離があったのだがラフィーはもう1回剣を振ることはせず盾を構えた。ゴブリンが盾に向かい槍を突き出す。槍が盾にぶつかった瞬間、槍は跳ね返され炎に包まれた。ゴブリンは慌てて槍を放り出して逃げ始めた。

「ラフィー、剣を振ってファイアーボールを当てて」

とアルトが叫ぶ。ラフィーは落ち着きを取り戻し剣を振った。炎はゴブリンを倒した。


「私の風の剣と同じで魔法がでるのね。ファイアーボールが出るのは魅力よね。それに盾も弾き返すだけじゃなくて火が付くし、いいなそれ」

とシェリルが言うと、

「ファイアーボールじゃなくてフレイムボールだそうです。火よりも炎の方が属性が上で火トカゲにも効果があるそうです」

とラフィーが答えた。きっと炎獅子から聞いているのだろう。


 巫女服にも何かありそうだしラフィーのことは心配無さそうだなと思っていると、

「でも恐いです」

とラフィーはまだ不安なようだ。

「落ち着いて遠くから攻撃すれば大丈夫だよ、火トカゲくらい」

「そうね、冒険者になってからゆっくりとレベル上げすればいいよ。炎獅子は焦ってはいないんでしょ」

とセシリアとリーナが言う。ラフィーはホッとした表情を見せた。

「まずは火トカゲね、あの岩の向こうにいるみたいよ」

とセシリアが索敵で火トカゲを見つけたようだ。

「2匹いるから1匹は任せて」

とセシリアはラフィーを連れて岩の方に歩き出した。ラフィーは緊張しているようだ。


 僕たちも後に続く。岩陰を通るといた。少し大きめの2匹だ。

「ラフィー、右のをお願い」

と言ってセシリアが走り出す。ラフィーは右手の剣を振る。フレイムボールが火トカゲに当たる。火トカゲは炎に包まれる。だが倒れない四肢で体をしっかりと支え耐えるとラフィーに向かって走ってくる。ラフィーはもう一度剣を振るが外れた。ラフィーは慌てて盾を構える。


 火トカゲが盾にぶつかる。火トカゲは5mほど跳ね飛ばされ背中を下にひっくり返っている。ラフィーも後方にひっくり返されていた。火トカゲは素早く跳ね起きた。

「ラフィー、起きて盾を構えるんだ」

と叫ぶと。ラフィーは盾をしっかりと構えた。火トカゲが口を開け火を吐く、火が盾に当たると何事もなかったように消えた。ラフィーは剣を振りフレイムボールを叩きつける。火に包まれたのを見て剣で火トカゲの頭を切った。


 ラフィーの力が弱いせいか火トカゲの頭の傷は大したことは無かったのだが、傷口から炎が上がり火トカゲは力尽きた。戦いは終わった。

「ラフィー、大丈夫?」

「大丈夫です。衝撃はあまり無かったのですがビックリしてしまって。魔法も衝撃も消してくれるようですし火トカゲ1匹なら怖くありません」

「私が剣と盾の使い方を教えてあげる」

と風の剣と盾を使っているシェリルが言う。ラフィーは、

「お願いします」

と言ってシェリルの横に並んだ。

「じゃあ、もう少し魔物を狩って帰ろう」


 それから5日ほど火トカゲや灰色狼、それにはぐれゴブリンを狩って生贄の台に戻った。ラフィーのレベルは11になった。生贄の台で昼食を食べていると冒険者のグループが近づいて来た。

「俺はペテル、生贄の確認に来た冒険者だ。そこは神聖な生贄の台座なのだが何をしておる」

と威嚇的に聞いてきた。

「生贄を護っているんだ」

ペテルは、

「何から護るんだ。生贄はリトルサラマンダーに捧げられたんだぞ」

「リトルサラマンダーなら僕達が殺した。火トカゲやらゴブリンから護っているんだ」

「リトルサラマンダーを倒しただと、いいかげんなことを言うな。まあ良い。生贄が生きているならこちらに渡してもらおう」

リーナが、

「生贄をどうする気」

と聞くと、

「生贄は奴隷になるか、火トカゲを倒して冒険者になるかのどちらかだ。それくらいのことは知ってるだろう。火トカゲと戦っても死ぬだけだ。奴隷になれば兎人族だし可愛がってもらえるだろうな」

何か言い返してやろうと考えていると、

「とりあえず町まで戻るぞ」

と待ってくれなかった。


 ラフィーはペテル達に囲まれて山を下り始めた。僕たちも後に続いた。イスラスの町に着くと町の人たちが集まってきた。真っ白な生贄の服だったラフィーが真っ赤なローブを着ているのを見て驚いている。冒険者ギルドに入りペテルが報告する。

「依頼の生贄を連れ帰った。確認してくれ」

ギルド職員は騒然となり奥からギルドマスターが出てきた。

「ラフィーで間違いないな」

「はい」

「死ななかった生贄の定めはわかっておるな」

「はい、冒険者になります」

ラフィーはしっかりと答えた。


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