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異世界はバラ色に  作者: 里中 圭
第6章 三つの水晶編
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第3話 異変

「身分証明書を」

「ありません。田舎から出てきました、冒険者になろうと思うのですが」

そう言うと、

「じゃあ、これに必要事項を書いてくれ。6人とも同じパーティーになるのか」

「はい、そうです」

「字は読めるな」

「はい、私は大丈夫です。彼女たちはちょっと」

「じゃあ、お前が代筆しろ」

そう言って、誓約書と未記入の身分証明書カードを出してきた。字は読めなかったので翻訳スキルを取った。サマルカン大陸語だった。 

「これで良いですか」

「よし、では1人銀貨1枚だ」

「魔素で支払えますか」

「もちろん」

と言って機械を出す。魔素で支払い西の端の町ウニオンに入った。冒険者ギルドに行き登録する。長い説明を聞き、イグナシオ大陸と同じシステムだということを確認した。違っていたのは魔物の襲撃の際には必ず防衛に参加しなければいけないことだ、例えリトルサラマンダーであっても。


 冒険者ギルドを出て商店街に行く。

「見て、Gランクだよ。みんな一緒だね」

「そうね、最強のGランクよねきっと」

「依頼は受けられないわね。早く仕事を済ませて帰りましょ」

みんな口々に勝手なことを言っている。少し大きい店に入る。


 交渉係はもちろんリーナだ。

「この金貨を買い取って欲しいのですが」

「金貨ですか」

そう言って、店の主人はじっくりと興味深そうに見ている。

「これはどこの金貨ですか」

「田舎の私の家に昔からあるものです」

そういうと考え込んでいる、いや鑑定をかけているのか。にやりと笑って、

「ここでは使えませんね。でも鋳つぶせば素材で使えます。銀貨30枚でいかがですか」

と言う。普通なら銀貨100枚なのだからせめて70枚くらいにはなると思ったんだが。

「じゃあ、いいです。他を当たってみます」

そう言うと、

「50枚だそう、それならいいか」

「いえ、まだ何枚かあるのでもっと大きい店に行きます」

そう言うと店の主人はちょっと考えて、

「何枚もあるのならそう言ってください。5枚ならこちらの金貨3枚、10枚あるなら金貨で7枚出しますよ」

「じゃあ、10枚を金貨7枚と銀貨50枚でいいよね」

そうリーナが言うと、店の主人はすぐにお金を用意して換金に応じてくれた。店を出て宿をとる。


 金貨を2つ並べて鑑定をかけてみると、イグナシオ大陸の金貨の方が金の含有量がはるかに多かった。

「もう少し頑張れば良かったね」

とリーナが言う、

「いや、上出来だよ。あとは馬車だね」

その日は宿で食事をした。料理は火トカゲの肉と野菜だった。あまり美味しくなかった。次の朝、馬車を雇い東端の町イスラスに向かう。4日後イスラスの町に着いた。


 イスラスの町のすぐ東にリトルサラマンダーの山、アルティカス山が見える。アルティカス山の情報を調べに冒険者ギルドに行く。洞窟までの道がはっきりと載っている地図が貼ってあった。ギルドには屈強な冒険者たちがいた。

「何かあるんですか」

と聞くと、

「生贄の儀式だ。洞窟まで生贄を届ける。リトルサラマンダーの怒りを静めるのだ」

そう狐顔の冒険者が言った。

「リトルサラマンダーは何匹いるんですか」

「洞窟を拠点にしているのは1匹だけだ。そいつの縄張りにイスラスも入っているのさ」

「生贄を捧げれば襲ってこないんですか」

「まあ無理だろうな町の奴らは真剣だが。お前もこの依頼を受けるならBクラス以上なんだろう」

「いえ、冒険者に登録したばかりです」

「なんだ、そうか」

と無駄な話をしたという顔をして狐顔の男は他の冒険者の所に行った。


 ◇ ◇ ◇


 シャイアス大陸。第1師団長のヌグルマは王に失敗の報告した。王は、

「そうか、では第1師団を率いて第2師団の元に行け。マクルディの指揮下に入れ」

「はっ」

と敬礼して1万の師団を引き連れてサンセベに向かった。


 一方、マクルディは聖なる森の第1層で陣を築き、少しずつ奥に浸食し始めていた。


 ◇ ◇ ◇


 アドリアナ王女たちはクラチエのすぐ南の町、バフーサムに着いた。ここでガルシアス王との顔合わせの儀が行われる。初めての顔合わせである。アドリアナは緊張を隠しきれない様子で待っている。町の大きな広い公園が会場になっている。南側にはメルカーディアの近衛兵が真っ赤な第1正装で整然と並んでいる。そこに北から黄色の軍服を着た近衛兵とエルフの魔法師隊に守られてガルシアス王が入ってきた。中央にはプエルモント教国の王母、王弟、それに副宰相が、メルカーディア王国からは王妃と副宰相が出席し、ルグアイの王妹も立会人として参加している。


 そのとき、西の岩山から魔物の群れが襲いかかってきた。その先頭にいるのは青大蟹だ。後ろには岩蟹が10匹ほどいるだけだった。

「蟹が11匹だ。魔法師隊任せたぞ」

とガルシアス王が叫ぶ。両国の近衛兵たちは王族を守る。青大蟹は突進してきたが魔法師隊の活躍で動きを止めた。岩蟹も討伐されてしまった。


 何事もなく治まったと思ったときに、黒い大きな昆虫のむれがあっという間に押し寄せ、その後ろから極彩色に彩られた絨毯が怒濤の如く押し寄せてきた。魔物の群れだった。フナムシとウミウシの化け物だ。

「町ごと押しつぶされる。全軍で魔物たちの動きを止めよ」

とガルシアス王が指示を出す。ユージンも近衛隊に魔物に向かうように指示を出す。

「クランドとバンジェルは王族を守れ、後は俺に着いてこい」

スカーレットも、

「リリアーヌ、兵たちでここを守りなさい。エトシャ、パフィア、王妃様と王女様をお願い。ジャンティ、カーラ、行くわよ」

と言って走り出した。


 魔物たちの侵攻は町のすぐ西側で止まっている。魔物の数も多かったが強い魔物が青大蟹1匹だけだったのが救いだった。徐々に魔物を減らし押し返している。もう大丈夫だと思った頃、突然、空からいろいろな網がいくつも降ってきた。網は公園の中央、王族たちがいるところを中心に次から次に降ってきた。そしてそこに羽のある魔物が降りてきた。数匹で1人を抱えるように女性たちを攫っていく、王女も王妃も侍女たちも。


 彼女らが盾になっているため、魔法師隊は魔法を、弓隊は矢を射ることができなかった。そして広場の中央では魔物による殺戮が始まっていた。男たちが次々に殺されているのだ。魔法師隊のライスナーはいち早く広場に戻り羽のある魔物を何匹か倒した。しかし、それが精一杯だった。広場は地獄絵図と化していた。


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