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異世界はバラ色に  作者: 里中 圭
第6章 三つの水晶編
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第2話 兎人族の村

 マリリアはアドリアナ王女の結婚式で盛り上がっていた。クラチエへ向かう準備も整い、まずは副宰相のゴーティエが出発する。護衛の先発隊として、近衛隊の副隊長クランドを中心に、第1近衛隊からフエゴ、第3近衛隊からリリアーヌの部隊が隊列を組み随行する。総勢で50名ほどの行列であった。


 2日後、本隊が出発する。アドリアナ王女、サディオラ王妃を中心に侍女、侍従たちである。護衛は近衛隊隊長のユージンと第3近衛隊隊長のスカーレットが指揮をとる。総勢300名の正装に身を包んだ見事な隊列であった。沿道は、この行列を一目見ようと多くの市民が詰めかけた。


 ◇ ◇ ◇


 水竜の島から戻ったルナたちは、国王に会うためにカラプナルの王城に向かった。王城は騒然としていた。ルナは衛兵に、

「何かあったのか」

と聞くと、衛兵は答えた。

「宰相が何者かに殺害されました」

「犯人は誰だ」

「それは、・・・」

「貴族か」

「はい。宰相は3人の伯爵と面談中でした。他から賊が入った形跡はありません。宰相と伯爵2人が殺害されたと聞いております」

「もう1人は誰だ」

「トゥラスノ伯爵です」

「チャハリか、何が目的だったのだ」

「『黒龍の牙』が取ってきた水竜の宝石の魔力判定を行っていた最中の出来事だそうです」

「宝石はどうなった」

「正式な情報はありませんが、無くなったとの噂です」


 ルナは国王の執務室に行き、

「王よ、トゥラスノ伯爵と山賊討伐の依頼を冒険者ギルドに出して欲しい。我々を名指しでな」

「分かった、王の命令で教皇が動くわけにはいかないからな。ルナミュケットのパーティー指名の依頼を出そう。SSランクの依頼だな」

「そうだな、それで頼む」


 ◇ ◇ ◇


 急に声をかけられ僕たちはビックリして武器を持ち振り返った。兎人族の子供たちは僕たちが鋭い動きで急に振り向いたのに驚いたようだ。

「あっ、ごめんなさい」

と言って後ずさりする。アルトが話しかけようと1歩前に出ると、身体を翻し走って逃げていった。シェリルが神速を使い追いかける。すぐに追いつき、

「ねえ、お話を聞かせてくれないかな」

と話しかける、神速はやり過ぎだ。2人は怯えて震えている。シェリルは仕方なく2人から離れゆっくりと僕たちの方に歩いて戻ってきた。2人は走り去った。


 しばらくして、ナナが戻ってきた。ナナは消気をかけて2人を付けていたのだ。

「結界が張ってある一帯があります。兎人族の集落だと思われます。岩が壁のようになっていて入り口は細い通路になっていました」

「結界は強力なの」

「いえ、魔物除けだと思います」

「じゃあ入れるのね」

とシェリル。リーナが、

「でも外で待ちましょ、あの2人が報告したら何か反応があるはずよ」

と言ったので結界の所まで進むことにした。


 その日は全くの無反応だった。アルトが、

「子供だけで結界の外に出ていたくらいだから、この辺りは比較的安全なんだと思います。出てこないということは私たちがいたからではないでしょうか」

という。

「私たちも魔物扱いなんだ」

みんなも納得している。

「まあいつまでも閉じこもっていることはないだろう。明日にでも何か動きがあるよ」


 次の日、1人の若者が結界から出て来た。武器は持っていない。

「貴方たちは何の目的でこの集落に来られたのですか」

と聞いてきた。訛りはあるが言葉は通じるようだ。

「私たちは冒険者です。道に迷ったんです」

「では、付いてきてください」

そういって歩き出す。話合って決めたのだろう覚悟を決めているようだ、若者はかなり緊張しているのか歩き方がぎこちない。細い通路を抜け集落に入った。


 集落は兎人族だけの集落だった。子供は別としてみんな美男美女ばかり年齢は僕には全く分からなかった、鑑定で見れば分かるのだがそれは失礼だよね。みんな若く見えるしスタイルも抜群だ、人族が奴隷に欲しがったのが分かる。長老のところに連れて行かれた。

「この村は兎人族だけの集落だ。あなた方を泊めることはできない」

「分かりました。私たちは道に迷って6日になります。どこか町に行くまでの道をお教えていただきたいのです」

「わかりました、案内させます」

そう言って先ほどの若者に案内するように告げた。アルトは闇の袋を開けてリトルサラマンダーの肉を出し、

「お礼です。お納めください」

と言った。長老は鑑定を使ったのだろう肉を確かめて驚き目をこちらに向けた。

「これは、リトルサラマンダーですね」

「はい、私たちが倒したものです。小さいものでしたが」

「リトルサラマンダーを倒したのですか」

「はい」

とアルトは自慢げに言う。

「それではお願いがあります。レッドウルフが4匹、我々の農場の近くに住み着いて困っております。倒していただけませんか」

「はい、それくらいで良ければ」

と承諾すると長老は笑って、

「済みません。ちょっと試してみただけです。悪く思わないでください。若い貴方たちが本当にリトルサラマンダーを倒したのか疑ってしまいました」

「僕たちだけで倒したわけではありませんから、お疑いは当然です」

と僕が言うと、セシリアが、

「今なら私たちだけで倒せますよ、きっと」

と言う。長老は言った。

「どちらにせよレッドウルフ4頭を『それくらい』といえるのは凄いことですよ。ありがたく肉を頂戴いたします」


 雰囲気が和んだところで、

「僕たちはイグナシオ大陸から来ました。アルティカス山の洞窟に行きたいんですが」

「アルカティス山は東の火山帯にあります。ここは西の火山帯ですから中央平原を通る必要が有ります。東の火山帯は魔物の山と呼ばれています。こちら側には、はぐれた魔物が来るくらいです。もちろん火トカゲはどこにでもいますがね」

「アルカティス山まではどれくらいかかりますか」

「この山を降りるのに2日、平原を横切るのに馬車なら4日。アルカティス山に上り洞窟までは歩いて2日かかります。途中で何もなければじゃがな」

「魔物の襲撃があるのですね。リトルサラマンダーなどの」

「そうですね。冒険者なら国の通過は問題なくできますが、お金はお持ちですか」

「これなら持っていますが」

と言って、イグナシオの硬貨を出す。

「これは使えませんね。金貨と銀貨は買い取って貰えるかもしれませんが安く買いたたかれるでしょう」

そう言われた。リーナが、

「魔素は換金できないんですか」

と聞くと、当然というような顔で、

「できます。魔素があれば問題ありません」

「簡単な地図をお渡しします。この村は載っていません。これはお願いですがこの村の位置は秘密にお願いします。地図にも印を付けないでください」

何か事情があるようだ。

「分かりました」


 平原は小さな国が寄り集まってできた連邦国家で、いろいろな人種も特にどれが多いとかはないようだ。地方の勢力が強く小さな戦争はときどき起こるらしい。各町には冒険者ギルドがあるという。案内を受け山を下り平地に出た。山を下りたところで街道に出る、兎人族の若者と別れ街道を進む。


 高い壁が見える。

「リトルサラマンダー対策でしょうね」

「たぶんね」

「入れてくれるよね」

と少し心配になってきた。リーナが、

「冒険者カードは出さない方が良いと思う。いきなりよそ者のSランクの冒険者が来たら警戒されるよ」

「そうよね。最悪捕らえられるかも」

「イグナシオ大陸とサマルカン大陸のギルドが繋がってはいないでしょうから新規登録で良いんじゃない」

「そうだよね、でもお金はどうする」

「金貨や銀貨があるんだから安くてもそれを換金しましょ」

「中に入れたらね」

「じゃあ、魔素を貯めましょ」

そう言って、みんなはカードを闇の袋に入れた。もう一度山に入って火トカゲを10匹ほど狩る。銀貨で15枚分くらいの魔素があるはずだ。あたりは薄暗くなってきた。


 街道を進むと門があった。門には詰め所があり検問があった。門は町に入ろうとする人が数人並んでいた。厳つい顔をした竜人族の兵士が

「身分証明書を」

と言っている。横には犬人族の兵士がいる。

冒険者らしき人がカードを出す。カードは僕たちが持っているカードとほぼ同じ物だが水色だった。僕たちの順番が来た。


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