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異世界はバラ色に  作者: 里中 圭
第6章 三つの水晶編
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第1話 火山地帯

 メルカーディア翻訳室。レオネスらは古文書の翻訳をしていた。サトシの翻訳スキルを利用して古代語の研究が急激に進み、様々な古文書を読み進めることができるようになった。リトルサラマンダーが実際に現れて討伐されたので伝説も歴史に近いものであることが分かり重要視されるようになった。その中に神の門の記述もあった。

「神の門について興味深いことが書いてあります」

と歴史学者であるパルスティーヌが言った。

「パルスティーヌ、何か見つけたのか」

とレオネスが聞く。

「神の門は5つあると書いてあります。いや、5つあったかな」

「大陸は4つしかないのだから3つしかないはずだ」

「でも、そう書いてあります。1つはもう永遠に閉ざされた神界に通じる門。これは宗教上で意味がある架空のものかもしれませんね。永遠に閉ざされたのなら今は無いのでしょう。もう1つは人がコントロールできない門、これも意味がないかもしれませんね。あとの3つはそれぞれの大陸に通じる門と書いてあります」

「他の大陸には1つしか無いのか。例えばシャイアス大陸とサマルカン大陸をつなぐ門とか」

「それは無いようです。全ての門はイグナシオ大陸とどこかをつなぐと書いてありますので。イグナシオ大陸の者が書いているのだから、イグナシオ大陸を中心視しているかもしれないので正しいとは限りませんが」

「それで」

「大陸をつなぐ神の門は全てを完全に閉じることはできないとあるのです。全ての門は少しずつ、ごく僅かではあるけれど時間とともに開いていく。ただ、2つを完全に閉じるともう1つの門は不安定になるらしいのです」

「不安定なのか、開くとは書いてないのか。どうなるのかよく分からんな。今は2つの門が完全に閉じているはずだが特に異変の報告はないよな」

「はい、聞いておりません」


 ◇ ◇ ◇


 まだ生きている山賊たちに口を割らせる。

「誰の命令で妾を襲った」

「誰がしゃべるか」

「いいよしゃべらなくても、あなたの死が早くなるだけだからね。私が誰か知っているでしょ。死人にしゃべらせた方が早いかもね」

と美少女が微笑みを浮かべる、氷の微笑みを。

山賊は背筋が凍り付きしゃべり出した。

「頭領です。チャハリ様」

「サルト・チャハリ・トゥラスノ伯爵か、予想通りだな」

山賊が絶句する。チャハリが貴族だとは知らなかったようだ。

「頭領が貴族であったらおかしいか」

「い、いや」

「まあ、チャハリと名乗る者はいくらもいるだろうがな」

そう言って山賊を離す。山賊は逃げることもできずに蹲っている。教皇騎士の1人キンディアが、

「生かしておいて良いのですか」

と聞くと、

「まあ良い、それよりも島に渡るぞ」

と言って筏に乗った。


 水竜の湖に残された筏を使いルナたちは島に渡った。

「この祠に書いてある文字は何だ。古代語でも無いな」

「はい、初めて見る文字ですね」

と、シダクが答える。

「とりあえず写しておけ。この台座の上には何かが填っていたようだな。誰かが持って行ったのか、『黒龍の牙』が持って行ったと考えるのが自然じゃな」


 ◇ ◇ ◇


 僕たちは神の門を通りサマルカン大陸に入った。入るとすぐにナウラに通信機で呼びかける。

「ナウラ、聞こえる?」

しかし、返事は無かった。神の門は開いたままなのに通信機は使えないらしい。イグナシオ大陸に戻り、といっても1歩動くだけなんだが、

「ナウラ」

と呼びかけると、

「はい、旦那様」

と返事が来た。

「サマルカン大陸に入ると通信できないみたいだ。しばらく通信できなくなる」

「分かりました。こちらの方は打合せ通りにやっておきます」

シェリルが通信機に向かって、

「ナウラ、公爵領のことお願いね」

「はい、じっくり読んでおくわ」

「じゃあ、行ってきます」

「気をつけてね」


 僕たちは再びサマルカン大陸に入った。そして神の門を閉じた。赤茶けた土と黒いごつごつした岩が一面に広がっている。火山特有の光景だ。リトルサラマンダーの姿は見えない。

「火トカゲが数匹います」

とセシリアが索敵を使って報告する。

「じゃあ、魔法がこの大陸でも使えるかやってみよう」

そう言って、火トカゲを狩っていく。問題なく魔法も使えた。セシリアが言った。

「ご主人様、魔法が使えるのは分かっていましたよね。索敵が使えたんだから」

そうか、そうだよね。

「ははは・・」

と笑ってごまかす。みんなはいつものあきれ顔だ。


 火トカゲを倒しながら進んでいく。リーナが、

「どっちを向いても山ばかりだけどどっちに行く」

「地図もないし、どうしよう」

「風も強いし雨も少ないみたいだから足跡は残っていないと考えるべきね」

「とりあえず、見晴らしの良いところに行こう」

ナナが小高い丘の上を指差して、

「あの丘の上に行きましょ、加速くらいかけてあげるにゃん」

という。セシリアが、

「加速はいらないよ。重要な手がかりを見逃したくないからね」

周りを確かめながら進む。出てくる魔物は火トカゲばっかりだ。レッドウルフもいるはずだが今のところ索敵にはかからない。


 丘の上に行くと祠が見えた。それ以外には特に目立ったものは無かった。

「祠がある。行ってみよう」

とみんな駆け出す。祠に着くと落胆した。

「ぐちゃぐちゃね。リトルサラマンダーに壊されたのね」

丘の上から見ると壊れていない壁だけが見えてのだが、3分の1位の壁を残して後は上から押しつぶされていた。残っている壁にもひびが入り、文字が書いてあったとしても読める状態では無かった。


 それから3日目、マルチェリーナの誕生日が来た。これで全員に指輪を渡すことができた。もちろんイバダンさんに名前を入れてもらっている。

「誕生日おめでとう」

「ありがとう、やっと誕生日が来たわ。どんなに待っていたことか。指輪欲しかったんだ」

と言って、みんなの目の前でしっかりと抱き合い濃厚なキスをした。夕食はもちろんドラゴンステーキだった。


 2日後、遠くに上がる煙を見つけた。

「煙が見えるわ」

「火トカゲがいるからね。レッドウルフもね」

「あれは炊事の煙じゃないかな」

とアルトが言う。シェリルも、

「そうよね、大きく燃えているのとは違うようだよ」

と言った。リーナが、

「慎重に行きましょ。人かもしれないけど歓迎されるとは限らないわ」


 煙が出ているあたりに近づくと集落が見えてきた。魔物ではなく人であることは間違いなさそうだ。僕たちはゆっくりと近づいていった。突然、後ろから声がした。

「お姉ちゃんたち、何してるの」

振り返ると兎の耳をした男の子と女の子がこちらを見ていた。


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