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異世界はバラ色に  作者: 里中 圭
第5章 迷走編
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第18話 ブレス

 青龍の1日、外は雨期に入り雨が降ってきた。その夜は婚約パーティーとSランク昇格パーティーを開いた。緑鰐の牙の命名パーティーも兼ねた。バッセルトンさんが、

「この肉は凄く旨い。何の肉ですか」

とエミレーツさんに聞いた。

「リトルサラマンダーですよ」

「ドラゴンステーキかあ、初めて食べた。水竜が最高の味と思っていたけどこれは格別だね」

「噂には聞いていましたけど本当に倒したんですねリトルサラマンダー」

とジェラルドさんが言った。

「ユージン様たちが一緒だったからね」

そう僕が言うと、セシリアが、

「今度は『黒龍の牙』だけで倒すわ」

と強気の発言。そうやって楽しいひとときを過ごした。


 僕とセシリアが部屋に戻る。他のみんなはまだ騒いでいる。順番はみんなで話し合って決めたそうだ。初めての人からということになったらしい。セシリアは初めてではないのだけれど抱かれた記憶は一度もないのでセシリアが1番目になったようだ。すばらしい夜でした、そして朝も昼も。3日間は部屋から出られず3日目の夜は全員が同じベッドの上で過ごすという嬉しさだった。


 そういうわけで、クラウディオさんたちに報告に行ったのは4日目だった。とても喜んでくれた。ただ、セシリアが『ご主人様』と呼ぶのにはあきれていたようだが。


 ギルドを出てスウェードルさんの店に行く。イバダンさんが、

「手甲が出来た、着けてみろ」

着けてみると重さはほとんど気にならなかった。

「右手の魔石の部分が振動しているように思えるのですが」

と言うと、イバダンさんが説明してくれた、

「魔石とお前の魔力が共鳴しているのだろう。しばらくすると振動は収まる。収まったら波動が完全に合った証拠だ」

「合わないこともあるんですか」

「合うことの方が珍しい。合わなくても使えるようにするのが俺たちの腕の見せ所なんだがな」

しばらくすると振動は収まった。

「じゃあ、試しに行くか。調整は早いほうがいい。おいミルル、お前も来い」

とすぐに出発するように言われる。

「分かりました」

と言って馬車にイバダンさんとミルルさんを案内する。


 家に戻るとみんな出発の準備が出来ていた。今日できあがるということはすぐに試しに行くんだということが分かっていたらしい。分かってなかったのはどうやら僕だけだったようだ。


 砂漠の冒険者村に昼過ぎに着くと、そこは冒険者で一杯だった。イバダンさんが、

「雨期は砂漠に魔物を狩りに来る冒険者が多くなると聞いていたがこれ程とはな」

「多いですね。かなり奥に行かないと試せませんね」

「じゃあ行くぞ」

とイバダンさんを先頭に砂漠に入っていった。5人の婚約者たちはミルルさんと装備のデザインについていろいろと盛り上がっている。


 僕たちが砂漠の奥に入っていくと冒険者が何パーティーか離れて付いてきた。薄暗くなったところで野営の準備をする。付いてきた冒険者たちもそれぞれ野営の準備を始めた。夕食を取り、ナナが土の結界を張る。他の冒険者たちも結界を張っているようだ。


 ナナの結界を張ったまま、僕たちは明かりもつけずに出発した。夜の移動は危険だが冒険者たちを捲くためには仕方がない。セシリアの索敵で魔物を捜し魔法を使わずに倒していく。夜が明けるまでにかなり奥まで入ることができた。昼まで仮眠を取りさらに奥まで進む。


「サンドワームが来ます。あちらから50m級です」

とセシリアが指をさす。30m位まで近づくのを待って右手を突き出し、

「ウォーターブレス」

と叫ぶ。右手から黒い闇がまとわりついた水が勢いよく噴き出した。サンドワームは押しつぶされ砕け散った。

「成功ですね」

とリーナが言う。イバダンさんは考え込んでいる。

「勢いはあったが、水の量は思ったほどでは無かったな。闇の魔石を使ったからだろうな」

「でも口から出したときより威力は数段上です」

「そうなのか」

とまた考え込んでしまった。


 シェリルはナナやアルトと複合技をいろいろと試している。近くにいた魔物は全て倒してしまったようだ。イバダンさんが僕に言った。

「今度はブレスとだけ念じて打ってみてくれ。同じくらいのワームがいないかな」

と言って砂漠の奥に向かって歩き出した。僕たちも慌ててついて行く。しばらくすすむと、

「サンドワームです。80m級です」

とセシリア。僕は1歩前に進んで右手を構えた。先ほどと同じくらいの距離30m位に近づいたときに

「ブレス」

と叫んだ。右手から黒い風が吹き出す。サンドワームの動きが止まった。

「索敵から消えました」

とセシリアが言う。近づいて調べてみるとサンドワームは死んでいた。イバダンさんが呟いた。

「闇のブレスだな、そう名付けよう。光槍が雷杖を通ると雷槍になるように、ウォーターブレスが闇の魔石を通ると闇のブレスになる。おそらくそうなのだろう」


 僕たちはマリリアに帰ることにした。みんなもそれぞれの新しい魔法をMPが切れるまで試した。それをイバダンさんとミルルさんが見て、武器の調整や工夫を話し合っていた。また一つ『黒龍の牙』は強くなった。


 マリリアに戻り、ナウラに報告する。そして、

「ナウラ、誕生日おめでとう」

と言って指輪を渡す。その夜はナウラと2人だけで過ごした。


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